四季夢

書楽捜査班

文字の大きさ
21 / 23
第3章

名前

しおりを挟む




何時間寝たのか…全く把握できないが久しぶりにゆっくりと眠れた気がした。



「とにかく、冬のヤツらの暴走を食い止めなきゃな」


再びリビングに集まった咲恵、春組、夏組は今後のことを話し合っていた。

「なんでこんなことになったのか…私も彼らの口から話を聞きたい。」

友愛は少し重々しい表情ではあったが艶鐘と会いまみえた直後よりは顔色も良くなっていた。

「そして春が君の【心】を取り戻す。」

礼々は拳を握り静かにまとめた。


「どっちにしろこれ以上被害が増えない為にも秋組と手を組まなきゃならん。その為には秋の所へ行かねばな。」

伝轟はお猪口につがれた酒らしきものを一気に飲み干す。

「俺行きます!!」

「あぁ、私は行くのをパスしマス。極力あそこへは儀式の時以外は行きたくありまセン。」

黙々と食事を取りながらキッパリ断る霖。
黙々と食べる姿が断固として行きたくないという意志を主張していた。


「きっと凱旋君が先に行っているから話は早いと思います」

聚は伝轟に酒のお代わりを注ぎながら冷静な口調で話した。
咲恵達はテーブルに広げられた数々の料理を少しずつごちそうになる。


『口に合うか分からないですが…そちらの世界で食べるものと大差ないかと思いますので』

テーブルに広げる時に聚はそう咲恵に言った。

見ればどの料理も初めて見たが自分の世界でも出てきそうなものばかりであった。

「(というか…彼がこれ全部作ったのかな…?)」

味は至ってシンプルなものが多い。

ここで過ごして、人間の世界と変わらない所もあるなと咲恵は感じていた。


「誰かは、ここに残らなきゃならんがな」


そんな言葉に我に返る。


「春幸がいるからな。あいつはもうなるべく動かしたくない。何かあったら困るしな」

その場にいたものが頷き、考え込む。

うーんと伝轟が唸っているとすかさず霖が立ち上がり手を上げた。

「私がここに…」

「よし、俺と聚はここに残り、何かあった時に春幸を守ろう。」

「承知。」

「よっしゃぁ!!!!!任せてくだせぇ!!!」

「なっ……!!!」

予想外の提案に霖が崩れ落ちながらまた椅子に座り込んだ。

「だめでショ…!!!!秋が君に会うのに同じ地位の夏が君が行かなきゃだめでショ…!!!」

必死に抵抗をする霖。

「なぁに大丈夫さ。秋はそんな堅苦しい奴らじゃねぇからな!それに」

伝轟がニッカリと笑う。

「霖お前、アイツらに結構可愛がられてるじゃねぇか!だから大丈夫だ!!」

「はぁぁ!?!?可愛がられてまセン!!!あれは!!!可愛がられている内に!!!入りまセン!!!!!」

そんな会話に咲恵と春組はポカンと口を開けて見ていた。

「とにかくだ、話がまとまったら合流だ。それと何も無いだろうが何かあったら直ぐに呼べよ?」

「あなたが行けば話が早いんじゃないんデスカー!?!?」

その間に聚はほっとした表情で空いた皿を片付け、炎心はその場でスクワットを始めた。

「一体…何が起こるの…?」

戸惑いを隠せなかった。



咲恵は神殿を出て少し歩いたところにある大きな石に座って出発を待っていた。

この世界には夜は来ない。
寝ても覚めても世界は変わらず昼の陽気だ。


でもそれが咲恵を安心させた。

暗闇では何もかもを吐き出してしまいそうだったから。
手に持ったハリセンを再びキツく握りしめる。

この世界のこととか

闘うのが怖いとか

言っていられない。

「そう決めたから…」


「何をだ?」

「どうぇっせい!!!!!!」

ひょっこり伝轟の顔が目の前に現れ、訳の分からない言葉を口走ってしまった。

「ははは、びっくりさせちまったか?」

「い、いえ…大丈夫です…」

とはいうものの心臓を必死に落ち着けさせていた。

「ところでお前さん、その武器なんだが」

伝轟が本題を切り出す。

「ずっと手に持ったり身につけてるのもあれだろ?」

「は、はぁ」

「それしまえんだよ、名前をつけてやれば」

「な、名前…」

その反応をみて伝轟はウンウンと頷いた。

「あぁ。聞いてたかもしれねぇが俺の武器は轟焔ってんだ。んで心の中でも口に出してもその名前を呼べば…〔轟焔〕!!!」

そう伝轟が呼ぶと一瞬にして轟焔が現れ、伝轟がキャッチした。


「仕組みは分からねえが!神が名前をつけるとお互いに愛着が湧いてどうのこうのって言っててなぁ!!」


「あ、愛着…(人から武器への愛着は分かるけど武器から人へ愛着…??)」

「とりあえず、名前でも付けてみろ!」

「夏が君!!!どこにいまスカ!?!??まだ話は決着していまセンヨ!!!」

「おっといけね!霖だ!あいつはまだ納得いってねぇのか…ったく!」

そう言いながら霖の声がした方向へと去っていってしまった。


「あ、ちょっ……」

再び1人になる。
やはり夏は暑く、気づけば汗が滲んでいる。


「名前…か…」

春幸の【心】の欠片で出来たであろうこのハリセン。

流石に春幸と呼ぶには少し抵抗があった。

「呼びやすい名前…」

決めるのに時間は掛からなかった。

「〔銀葉〕」

そう名を呼ぶと。ハリセンはサァッと消えていった。


「決まり!」
咲恵は満足したように立ち上がり、皆がいる所へ足早に歩き出した。


近くて遠い記憶の中の一つ。

それは他愛もない話だった。

いつか彼と再び会えた時、

そんなこともあったねと笑い合いたい。

そう願いも込めて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

繰り返しのその先は

みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、 私は悪女と呼ばれるようになった。 私が声を上げると、彼女は涙を流す。 そのたびに私の居場所はなくなっていく。 そして、とうとう命を落とした。 そう、死んでしまったはずだった。 なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。 婚約が決まったあの日の朝に。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

処理中です...