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第3章
名前
しおりを挟む何時間寝たのか…全く把握できないが久しぶりにゆっくりと眠れた気がした。
「とにかく、冬のヤツらの暴走を食い止めなきゃな」
再びリビングに集まった咲恵、春組、夏組は今後のことを話し合っていた。
「なんでこんなことになったのか…私も彼らの口から話を聞きたい。」
友愛は少し重々しい表情ではあったが艶鐘と会いまみえた直後よりは顔色も良くなっていた。
「そして春が君の【心】を取り戻す。」
礼々は拳を握り静かにまとめた。
「どっちにしろこれ以上被害が増えない為にも秋組と手を組まなきゃならん。その為には秋の所へ行かねばな。」
伝轟はお猪口につがれた酒らしきものを一気に飲み干す。
「俺行きます!!」
「あぁ、私は行くのをパスしマス。極力あそこへは儀式の時以外は行きたくありまセン。」
黙々と食事を取りながらキッパリ断る霖。
黙々と食べる姿が断固として行きたくないという意志を主張していた。
「きっと凱旋君が先に行っているから話は早いと思います」
聚は伝轟に酒のお代わりを注ぎながら冷静な口調で話した。
咲恵達はテーブルに広げられた数々の料理を少しずつごちそうになる。
『口に合うか分からないですが…そちらの世界で食べるものと大差ないかと思いますので』
テーブルに広げる時に聚はそう咲恵に言った。
見ればどの料理も初めて見たが自分の世界でも出てきそうなものばかりであった。
「(というか…彼がこれ全部作ったのかな…?)」
味は至ってシンプルなものが多い。
ここで過ごして、人間の世界と変わらない所もあるなと咲恵は感じていた。
「誰かは、ここに残らなきゃならんがな」
そんな言葉に我に返る。
「春幸がいるからな。あいつはもうなるべく動かしたくない。何かあったら困るしな」
その場にいたものが頷き、考え込む。
うーんと伝轟が唸っているとすかさず霖が立ち上がり手を上げた。
「私がここに…」
「よし、俺と聚はここに残り、何かあった時に春幸を守ろう。」
「承知。」
「よっしゃぁ!!!!!任せてくだせぇ!!!」
「なっ……!!!」
予想外の提案に霖が崩れ落ちながらまた椅子に座り込んだ。
「だめでショ…!!!!秋が君に会うのに同じ地位の夏が君が行かなきゃだめでショ…!!!」
必死に抵抗をする霖。
「なぁに大丈夫さ。秋はそんな堅苦しい奴らじゃねぇからな!それに」
伝轟がニッカリと笑う。
「霖お前、アイツらに結構可愛がられてるじゃねぇか!だから大丈夫だ!!」
「はぁぁ!?!?可愛がられてまセン!!!あれは!!!可愛がられている内に!!!入りまセン!!!!!」
そんな会話に咲恵と春組はポカンと口を開けて見ていた。
「とにかくだ、話がまとまったら合流だ。それと何も無いだろうが何かあったら直ぐに呼べよ?」
「あなたが行けば話が早いんじゃないんデスカー!?!?」
その間に聚はほっとした表情で空いた皿を片付け、炎心はその場でスクワットを始めた。
「一体…何が起こるの…?」
戸惑いを隠せなかった。
咲恵は神殿を出て少し歩いたところにある大きな石に座って出発を待っていた。
この世界には夜は来ない。
寝ても覚めても世界は変わらず昼の陽気だ。
でもそれが咲恵を安心させた。
暗闇では何もかもを吐き出してしまいそうだったから。
手に持ったハリセンを再びキツく握りしめる。
この世界のこととか
闘うのが怖いとか
言っていられない。
「そう決めたから…」
「何をだ?」
「どうぇっせい!!!!!!」
ひょっこり伝轟の顔が目の前に現れ、訳の分からない言葉を口走ってしまった。
「ははは、びっくりさせちまったか?」
「い、いえ…大丈夫です…」
とはいうものの心臓を必死に落ち着けさせていた。
「ところでお前さん、その武器なんだが」
伝轟が本題を切り出す。
「ずっと手に持ったり身につけてるのもあれだろ?」
「は、はぁ」
「それしまえんだよ、名前をつけてやれば」
「な、名前…」
その反応をみて伝轟はウンウンと頷いた。
「あぁ。聞いてたかもしれねぇが俺の武器は轟焔ってんだ。んで心の中でも口に出してもその名前を呼べば…〔轟焔〕!!!」
そう伝轟が呼ぶと一瞬にして轟焔が現れ、伝轟がキャッチした。
「仕組みは分からねえが!神が名前をつけるとお互いに愛着が湧いてどうのこうのって言っててなぁ!!」
「あ、愛着…(人から武器への愛着は分かるけど武器から人へ愛着…??)」
「とりあえず、名前でも付けてみろ!」
「夏が君!!!どこにいまスカ!?!??まだ話は決着していまセンヨ!!!」
「おっといけね!霖だ!あいつはまだ納得いってねぇのか…ったく!」
そう言いながら霖の声がした方向へと去っていってしまった。
「あ、ちょっ……」
再び1人になる。
やはり夏は暑く、気づけば汗が滲んでいる。
「名前…か…」
春幸の【心】の欠片で出来たであろうこのハリセン。
流石に春幸と呼ぶには少し抵抗があった。
「呼びやすい名前…」
決めるのに時間は掛からなかった。
「〔銀葉〕」
そう名を呼ぶと。ハリセンはサァッと消えていった。
「決まり!」
咲恵は満足したように立ち上がり、皆がいる所へ足早に歩き出した。
近くて遠い記憶の中の一つ。
それは他愛もない話だった。
いつか彼と再び会えた時、
そんなこともあったねと笑い合いたい。
そう願いも込めて。
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