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第21話「伝わらなかった想い、すれ違う心」
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春の雨は、夜になっても止む気配がなかった。
私は自室のソファに身を沈め、窓の外をただ見つめていた。
音もなく落ち続ける雨粒が、まるで心に降る涙のようで。
(……あれで、よかったんだよね)
レオン様の決意は、ミリア様の言葉で掻き消されたと思っていた。
でも、本当は——私自身が、怖かったのかもしれない。
“選ばれること”が。
“傷つくこと”が。
(だったら、最初から何も望まなければよかったのに……)
けれどもう、心は知ってしまった。
あの温かさも、視線の優しさも。
——もう、戻れない。
⸻
「……来てくれて、嬉しいよ」
静かな声に、私は顔を上げた。
「ユリアン様……」
訪問の知らせもなく、彼は雨の夜にそっと現れた。
濡れた外套を脱ぎ、私の前に膝をつく。
「何かあったんだね。君は今、とても……脆い目をしている」
「そんなこと……」
「僕には、君の心が見える。ずっと、そうだった。
だから、今日ここへ来たんだ。
何があっても、君を放ってはおけなかった」
ユリアンは、そっと私の手を取る。
「クラリス嬢。君の選択が、たとえ僕じゃなくてもいい。
でも……“今のまま壊れてしまうくらいなら”、僕が君を守るよ」
その言葉は、私の中に染み込んで、
胸の奥に閉じ込めていた感情が、にじむようにこぼれてきた。
「……ありがとう。ごめんね、私、うまく笑えなくて」
「構わないよ。笑えるようになるまで、僕がそばにいるから」
まるで約束のように、彼はその手を強く握った。
⸻
そのころ、レオンは一人、王宮のバルコニーに立っていた。
(クラリス……)
ミリアとの対話のあと、彼女が来ていたことを知った。
——そして、去ったことも。
自分の“沈黙”が、彼女の心を遠ざけたと悟ったとき、
レオンは初めて、“後悔”という名の苦しみに飲み込まれた。
「守ろうとしたのに、傷つけてしまった……」
拳を握る。
仮面舞踏会の夜、彼女がクロードと踊っていたときの笑顔。
その裏にあった涙を、どうして見抜けなかったのか。
今の彼には、それが痛いほどにわかる。
「……次こそは、絶対に離さない」
その呟きは、雨音に紛れて誰にも届かなかった。
けれど確かに——
彼は“本気”を知ったのだ。
⸻
そしてその夜、
誰にも見られない離宮の書庫で、ミリアはひとり本を閉じていた。
「ふふ……おもしろくなってきたじゃない」
レオンが揺れ、クラリスが戸惑い、ユリアンが動き出す。
「でもね、クラリス。あの人の隣は、私がもらう」
仮面を外したミリアの瞳は、今や純粋な恋情ではなかった。
それは“執着”と“対抗心”が混ざった——歪な光。
「この世界の“正ヒロイン”は、私なのよ」
私は自室のソファに身を沈め、窓の外をただ見つめていた。
音もなく落ち続ける雨粒が、まるで心に降る涙のようで。
(……あれで、よかったんだよね)
レオン様の決意は、ミリア様の言葉で掻き消されたと思っていた。
でも、本当は——私自身が、怖かったのかもしれない。
“選ばれること”が。
“傷つくこと”が。
(だったら、最初から何も望まなければよかったのに……)
けれどもう、心は知ってしまった。
あの温かさも、視線の優しさも。
——もう、戻れない。
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「ユリアン様……」
訪問の知らせもなく、彼は雨の夜にそっと現れた。
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「そんなこと……」
「僕には、君の心が見える。ずっと、そうだった。
だから、今日ここへ来たんだ。
何があっても、君を放ってはおけなかった」
ユリアンは、そっと私の手を取る。
「クラリス嬢。君の選択が、たとえ僕じゃなくてもいい。
でも……“今のまま壊れてしまうくらいなら”、僕が君を守るよ」
その言葉は、私の中に染み込んで、
胸の奥に閉じ込めていた感情が、にじむようにこぼれてきた。
「……ありがとう。ごめんね、私、うまく笑えなくて」
「構わないよ。笑えるようになるまで、僕がそばにいるから」
まるで約束のように、彼はその手を強く握った。
⸻
そのころ、レオンは一人、王宮のバルコニーに立っていた。
(クラリス……)
ミリアとの対話のあと、彼女が来ていたことを知った。
——そして、去ったことも。
自分の“沈黙”が、彼女の心を遠ざけたと悟ったとき、
レオンは初めて、“後悔”という名の苦しみに飲み込まれた。
「守ろうとしたのに、傷つけてしまった……」
拳を握る。
仮面舞踏会の夜、彼女がクロードと踊っていたときの笑顔。
その裏にあった涙を、どうして見抜けなかったのか。
今の彼には、それが痛いほどにわかる。
「……次こそは、絶対に離さない」
その呟きは、雨音に紛れて誰にも届かなかった。
けれど確かに——
彼は“本気”を知ったのだ。
⸻
そしてその夜、
誰にも見られない離宮の書庫で、ミリアはひとり本を閉じていた。
「ふふ……おもしろくなってきたじゃない」
レオンが揺れ、クラリスが戸惑い、ユリアンが動き出す。
「でもね、クラリス。あの人の隣は、私がもらう」
仮面を外したミリアの瞳は、今や純粋な恋情ではなかった。
それは“執着”と“対抗心”が混ざった——歪な光。
「この世界の“正ヒロイン”は、私なのよ」
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