婚約破棄されましたが、もふもふと一緒に領地拡大にいそしみます

百道みずほ

文字の大きさ
37 / 83

道がないなら、作ります 7

しおりを挟む
「いやいや、私が迫るとかありえませんから」
そうそう、そんな恥ずかしいことできません。
だいたい王子には新婚約者がいるんですから。

「アリス、そんなこと言わないでください」
王子から甘く切なそうに抗議の声が上げました。

「僕の気持ちは分かりませんか? だいたい僕は最初からアリスがいいって決めていたんだからね」
そんなこと言われたら、私はどうしたらいいの?
鳩尾のあたりがキューとなります。なんだろう、この感情……。
ちらりと王子を見ると、王子も耳まで赤いです。

ダメダメ。いま、そんな状況じゃないですよね。
私は首を振ります。

現在カトリーヌ様が婚約者じゃないですか。ううん? ちょっと待って。
私は記憶を辿ります。

これって三角関係ってこと、決定ですか? ええ? これが?

愛読書の『エドワード王子の恋の物語~僕の運命の恋人は~』にも、エドワード王子をめぐって三角関係になるシーンが出てきたけど……。もっと切なくて、あああって感じで、心がきゅうっとなる感じだったのに……。

あ、そういえばさっき私も鳩尾がキュッとしました。これですか? もしかしてこれのこと? おおお。感動です。

いやいや、そうじゃなくて。

現実の三角関係って、こんなもんなんですか……。いつのまにか発生。ちょっとリアルの残酷さを知りました。

物語って美しく書かれているんですね。それとも、第三者の目から見たら、私たちも美しい三角関係に見えるんでしょうか……。

「とにかく、いまは領地拡大のために先を急ぎますので……」
ああ、また、領地拡大って王子の前で言っちゃったよ。
自分の口の軽さに嫌になる。

長く王子が一緒にいるから、王子を信じてるだわ、たぶん。私の自己解析によると……。

あわてて私があたふたしていたら、
「大丈夫。アリスは分かりやすいから、最初から分かっていたから」
王子に肩をつかまれました。

もう全部バレていたってこと? はあ?
これまでの私の気遣いは何だったんでしょうね……。なんだか疲れちゃいました。たいしてしてないじゃんとか、突っ込まないでくださいね。

「僕たちはいつも一緒だよ」
王子はあでやかに笑います。笑顔が黒いですよ、見た目は爽やかなのに……。

ブラウンは近くでしたり顔です。そう、うまく事は運びませんからね! 三角関係発生中ですから。

「アリス様? あの者たち、どうしますか?」
ブラウンはちらっと距離を置いて見ているマントの男たちを確認しました。

「そうねえ。あとで厄介になる前に、今やっちゃうって方法もあるんだけど……。それも面倒だし。放っておくっていうのでいいかな」
「え? そんなんでいいの?」
王子はびっくりしています。

「別に、後をつけたければ、つければいいんですよ。私にやましいところは何もないんですから」

「えええ? やましいこと? 僕としては歓迎だけどね」
したり顔の王子です。

「もう……、そんなの聞こえませんよ。とりあえず、平和にすごせりゃいいんです。襲われたら闘いますが、向こうから来ないので捨ておきましょう」

それよりさっさと歩かないと。

こんなんじゃ、私の神経がリマーまで持ちません。王子がいると、顔が赤くなって、全身が熱くなって、ドキドキするんです。

きっと、緊張しているからです。そうにちがいない。断じて「こ」の付くものじゃないですからね! たぶん……。きっと……。

「まあ、SUMOTORIをみて、アリス様を襲おうっていう輩はいないでしょうね……」
ブラウンは、かわいそうにとばかりに、後ろを見ました。同情は不要だと思うんですよ。もしもし、ブラウン?

別にSUMOTORIで人を襲うとかしませんよ? みなさま、安心してくださいね。

しかし、考えようによっては、リマーまでの人数が増えて、これなら、たとえ野盗に襲われても、赤マントの人たちに助けてもらえればいいし、楽に先に進めますよね。

この草原は大変見晴らしがいいのですが、その分、隠れようがないんです。野盗のような悪い人たちに襲われたらひとたまりもありません。

普通の人でしたら……敵に不意を突かれて、逃げるところなしなんて、ほんと怖いところなんですけど。私も普通の人ですからね……、ここは用心しないといけません。

え? 私も普通の人なんですよ?

究極魔法は、まだまだ魔力があるのでいつでも発動できますが……。なるべく魔法を使わない方がいいじゃないですか。

ちなみに寝るときはマジックポケットを使えばいいですから、寝ているときは絶対安全です。寝不足は冷静な判断を鈍らせますからね。お肌に悪いし。

そうだ! そろそろブラックナイトを外に出してあげてもいいかな。草原だし、きっと喜ぶに違いないですよね!

ブラウンにブラックナイトをマジックポケットから連れてきてもらいました。草原を見て瞳が輝いたのを私は見てましたよ。

ブラックナイトは王子の隣でかしこまってはみたものの、うずうずしているみたい。

「王子、ブラックナイトに乗って、この先を見て来てくれませんか?」
私がブラックナイトの背をポンポンと叩くと、ブラックナイトは嬉しそうにこっちを向いた。

そうよ、あなたの気持ちはわかるのよ。だから、私に懐くのですよ。うううん、懐け、懐け。
愛の念をブラックナイトに送ってみましたが……。あれ、こっち見た? やった!

ちょっと待って。その視線……、私の方でなくブラウンの方を見ていた? くう、がっくりです。

いいです。私はただブラックナイトを愛でることにします。マカミもいるし、寂しくなんかないですよ。

ま、まさか。これって、「フラれた」ってことなんでしょうか。ああ、なんて切ないんでしょう。フラれるとは感慨深いものですね。罪だわ。

もし、王子にフラれるとしたら……、ショックかも。いやいや、ちょっと待って。私婚約破棄されてるんだから、フラれてるってことよね。

なんだか改めてショック……。

王子は手綱を握り、ブラックナイトを走らせます。ブラックナイトは力いっぱい飛び跳ねて、私たちにあいさつをした後、猛スピードで前を駆けて行きました。

ブラックナイト、そんなに力が有り余っていたのね。ごめんね、活躍させてあげなくて……。

ブラックナイトにとっては草原に来れてよかったのかもしれません。それに、ブラックナイトに乗っている王子をちょっとカッコいいって思ってしまった。もちろん内緒です。

顔から笑みが溢れそうになりますが、急いで引き締めます。頬がピクピクするのは、見ないふりしてくださいね。

しかし……、場所によっては草が私たちの腰の位置まで高く生えているため、歩くのは容易ではありません。
これ、なんとかならないかな……。蛇とか、虫とかいそうで嫌な感じです。

背の高い草に覆われているため、足元が少々ぬかるんでいても見えません。おまけになんか臭いがどこからともなく漂ってくるのです。
こんな匂い、嗅いだことがないんだけど……。

ブラウンも嫌そうな顔をしています。究極魔法の風で草を切るっていうこともできますが……、広範囲にぬかるみもあるんじゃ、埒があきません。

「きゃー、黒いシミが!」
泥が服についていたらしく、ブラウンが悲鳴を上げました。

「なんなんですか、これ、落ちない。アリス様! 危険です。これ、すっごい危険」

ブラウンは少々パニック気味です。綺麗好きですからね。服に付く泥跳ねが気にいらないみたい。

あれ……。たしかにこの黒い泥、取れない……。

「ねえ、ブラウンはマジックポケットで夕飯の支度をしてくれる?」
「お嬢さま……、お嬢さまひとりで大丈夫なんですか?」
ブラウンは申し訳なさそうな顔をします。

適材適所という言葉もあります。ブラウンには美味しい夕飯をお願いしましょう。
この黒い泥、もしかして、もしかして……。私には思い当たることがあるのです。

「大丈夫よ。マカミもいるし」
ブラウンは、はっとマカミを見て、目を丸くしました。

「きゃー。マカミが……。いやああああ」
ブラウンの悲鳴にびっくりです。慌ててマカミを見つめます。いや、マカミさんは生きてますけど。元気そうですけど?

「泥で白い毛が……。ああ、しかも草の種まで毛にくっついて……」
ブラウンはショックを受けています。マカミの毛が臭くなりそうです……。

「あとで、ブラッシングするし、ちゃんとふわふわに洗ってあげるから……」
「お嬢さま、絶対ですよ?」
ブラウンは涙目で私をジトっと見ます。

「寝る前には、マカミをきれいにしますから大丈夫です。香油は何がいいか、ブラウンが決めてね」
ブラウンはほっとしたようにマジックポケットに入っていきました。

この泥をなんとかして、道を作り……、歩きやすくしたほうがいいですよね……。私は大きな岩に寄りかかり、地図を広げてルートを探りはじめました。

トラウデンの町からここまでと、ここからリマーまでか……。なるべく平坦なところで、安全な道がいいけれど。今までどうして太い道がなかったんだろう? 

この黒い泥のせいかな……。

それとも……、川のほうが移動が早いから、陸路は発達しなかったのかな? でも川だけだと不安なのよね。雨の多い時期も考えると、陸路もいる。

やっぱりこの黒い泥なんとかしないと!

岩の上にある地図を見ながら頬杖をついていますが、夕方とは言え、ジリジリと太陽光線が私を焼いていきます。西日による日焼けには気をつけないといけませんね。

ううう。暑い……。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...