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一時帰還して……作戦会議 2
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屋敷の奥からバターの匂いがします。それからベリーの甘酸っぱい匂いも……。
やったあ! ベリーパイです。
ベリーパイが運ばれてくるまで、頑張ってお父様と作戦を立てちゃいましょう!執事のセバスチャンがきっとお茶の支度をしているに違いありません。
最近、お茶もさほど飲まず、働いてましたからね! ……。え? しっかり食べている? そんなことはありませんよ。
「アリス、この草原の向こう側がなんと呼ばれているか、知っているかい?」
お父さまが地図を指さしています。
「白い土でしたっけ?」
私はお父様の反応を見ます。
「そう、白い土だ。別名、死の大地とも呼ばれている……」
「え?」
がーん、そんな土地なんですか。草原の向こうまで統治すればかなり領地が拡大すると思っていたのに……。ぶっそうな名前がついてますね。
「知らなかったのか。まあ、あの辺の情報は出ていないから、アリスが知らなくても無理はないが……」
お父様は腕を組みました。
「全く知りませんでした。うわぁ、死の大地って……、もう足で土を踏んだら爆死しちゃうとか、そのレベルなんでしょうか」
どうしましょう。すっごい魔法の使い手が仕掛けた罠があちらこちらにあるとか? 怖いんですけど……。死の土地……、なんとかならないものなんでしょうか。
「行って見たことがないから確実ではないが、爆死はしないだろう、たぶん。作物が育たない、草も生えない、水も飲めないという意味だと思う……ぞ?」
お父様はくくくと喉を鳴らした。
「お父様……」
私はムッとしてお父さまを責めた。
「……、あれはおそらく塩だと思うのだ」
お父様は笑いをかみ殺している。
「はあ? 塩ですか?」
腹が立つのでお父様の態度は見なかったことにします。さっさと話を進めちゃいましょう。ああ、恥ずかしい。
「ああ。あくまで推測だがね、地下にある大昔の海水がたまっていて、それが土から滲み出ているんじゃないかと思うんだ」
お父様は私の頭をポンポンとして、「さて、アリスならどうする?」と優しい瞳で見つめました。
「ということは……、塩害ということですか」
「おそらくな」
お父様はにこりとしました。
塩害ですか……。塩土……ですよね。やっかいです。あそこで農業をするには、土壌を変えて、作物を植えるしかありません。そんなに土の入れ替えができるでしょうか。やってできないことはないですけれども……、地下の海水と追いかけっこになりそうです。
土壌を変えるには、根本を改革するしかありません。地下水が海水の溜まったものなら、その地下水の水質を変えないといけないでしょう。海水は一体どれくらいの量があるのでしょうか。水質を変えるって、どうやればいいのでしょうか。
うーん、海水ですか……。なんとかならないかな。土の塩を取ればいいんですけど……。ほかに方法があるかな。
うーん、塩を取る。塩! そうです。塩をとればいいんです。
「お父様! 塩を採ればいいんです!」
「よくできました。草原のほうも領地として治められるなら、死の大地も治めればいい」
お父様は微笑みました。
褒められた! いくつになっても褒められるのはうれしいんですよ。
私も思わず頬が緩みます。
あそこで塩を生産すればいいんです。おもわずスキップしたくなりました。ナイスなひらめきです。
あそこは、海からも離れてますし、自分たちの分だけでも塩が採れればそれだけで助かります。
山塩は海の塩と味が違うといいますしね。うまくいけば、特産品まで育てることができるかもしれません。
これは力がはいりますね! 待っててね、白い土地!!
廊下からカチャカチャとお茶の支度の音が聞こえます。ふんわり漂う甘酸っぱいベリーの匂いとバターの匂いが近づいてます。私の口まであと数分のことでしょう。
まずは英気を養うことにしましょう。
ベリーパイさま、カモーン。
次の日、お父様たちに別れを告げ、空間切り裂き魔法で草原の端までやってきました。
「ついに来たわ! 白い土よ。死の土地よ」
周りを見回して、びっくりしました。お父さまの言う通り、足元の土はうっすらと白いのです。
ちょっと指で土をつけてなめてみました。ブラウンは信じられないという目で睨んできましたが、そこは見なかったことにします。
「うう、しょっぱ! でも、なんか美味しい感じ」
「ええ? ほんとですか?」
ブラウンも好奇心に負けてか、指に塩をつけて味見してみます。
「しょっぱいけど、たしかにちょっと甘みがありますね。海の塩とは味わいが異なります。いいお塩ですね」
「そうだよね。これって、すごいよ。だって……、見渡す限り、白い塩なんだよ」
たしかに草木も生えない、乾いた大地です。白い塩に覆われています。でも、考えようによっては、財産です。ワクワクしてきます。
ここで塩を作れば……。この領地経営の主幹産業にもなりえます。
どれどれ。
マジックポケットからツルハシとシャベルを取り出してみましたよ。
王子がツルハシで、私がシャベルで地面に穴を掘っていきます。
土を少し掘るだけで、じわじわと水分が集まってきました。手を入れてみると、ほんのり温かな水です。
もしや、これって……、温泉!?
指で上澄みの、綺麗な水だけつけて、ペロッと舐めてみます。
ふふふ、やっぱり、しょっぱい。
お父様の言う通り、ここは太古の海水が地下にたまっているに違いありません。しかも温かいってことは、温泉地にもなる可能性があります。ミネラル豊富な温泉観光施設を展開させるって言うのもなかなか面白いじゃありませんか。
昨夜、お父様の持っている百科事典で調べたのですが、この塩水を精製するには、ゆっくりじっくり煮込むという方法が適しているようです。
究極魔法・風を使ってと言う方法もありますが、時間が育てるっていうのもロマンですよね。
それに……、現実問題としては、究極魔法が使えるのが私だけですから、いつも領主の私が風を起こしているというのもまずいです。みんなが作れる方法がベストです。
しばらく歩いていくと、私の大きさほどの白い塊がありました。巨大な塩なのかな。ラッキーと半分、好奇心が半分で、塊をポンポンと叩いてみると、岩が割れ塩泉が湧き出しました。
うわぁ、やっちゃった!? そんなに強く叩いてないですよ。え! なんで?
ブラウンと王子が目を丸くして、口を開けてます。
なんか喋ってくださいよ……。ええええ、その態度、寂しいです。
「すごい力……、まるで怪力みたい」
ブラウンが小さくつぶやきました。
ちょっとちょっと……、怪力とか言わないでください。私、本当は非力なんです。ブラウンのほうが力は強いんですよ。信じて~。
やったあ! ベリーパイです。
ベリーパイが運ばれてくるまで、頑張ってお父様と作戦を立てちゃいましょう!執事のセバスチャンがきっとお茶の支度をしているに違いありません。
最近、お茶もさほど飲まず、働いてましたからね! ……。え? しっかり食べている? そんなことはありませんよ。
「アリス、この草原の向こう側がなんと呼ばれているか、知っているかい?」
お父さまが地図を指さしています。
「白い土でしたっけ?」
私はお父様の反応を見ます。
「そう、白い土だ。別名、死の大地とも呼ばれている……」
「え?」
がーん、そんな土地なんですか。草原の向こうまで統治すればかなり領地が拡大すると思っていたのに……。ぶっそうな名前がついてますね。
「知らなかったのか。まあ、あの辺の情報は出ていないから、アリスが知らなくても無理はないが……」
お父様は腕を組みました。
「全く知りませんでした。うわぁ、死の大地って……、もう足で土を踏んだら爆死しちゃうとか、そのレベルなんでしょうか」
どうしましょう。すっごい魔法の使い手が仕掛けた罠があちらこちらにあるとか? 怖いんですけど……。死の土地……、なんとかならないものなんでしょうか。
「行って見たことがないから確実ではないが、爆死はしないだろう、たぶん。作物が育たない、草も生えない、水も飲めないという意味だと思う……ぞ?」
お父様はくくくと喉を鳴らした。
「お父様……」
私はムッとしてお父さまを責めた。
「……、あれはおそらく塩だと思うのだ」
お父様は笑いをかみ殺している。
「はあ? 塩ですか?」
腹が立つのでお父様の態度は見なかったことにします。さっさと話を進めちゃいましょう。ああ、恥ずかしい。
「ああ。あくまで推測だがね、地下にある大昔の海水がたまっていて、それが土から滲み出ているんじゃないかと思うんだ」
お父様は私の頭をポンポンとして、「さて、アリスならどうする?」と優しい瞳で見つめました。
「ということは……、塩害ということですか」
「おそらくな」
お父様はにこりとしました。
塩害ですか……。塩土……ですよね。やっかいです。あそこで農業をするには、土壌を変えて、作物を植えるしかありません。そんなに土の入れ替えができるでしょうか。やってできないことはないですけれども……、地下の海水と追いかけっこになりそうです。
土壌を変えるには、根本を改革するしかありません。地下水が海水の溜まったものなら、その地下水の水質を変えないといけないでしょう。海水は一体どれくらいの量があるのでしょうか。水質を変えるって、どうやればいいのでしょうか。
うーん、海水ですか……。なんとかならないかな。土の塩を取ればいいんですけど……。ほかに方法があるかな。
うーん、塩を取る。塩! そうです。塩をとればいいんです。
「お父様! 塩を採ればいいんです!」
「よくできました。草原のほうも領地として治められるなら、死の大地も治めればいい」
お父様は微笑みました。
褒められた! いくつになっても褒められるのはうれしいんですよ。
私も思わず頬が緩みます。
あそこで塩を生産すればいいんです。おもわずスキップしたくなりました。ナイスなひらめきです。
あそこは、海からも離れてますし、自分たちの分だけでも塩が採れればそれだけで助かります。
山塩は海の塩と味が違うといいますしね。うまくいけば、特産品まで育てることができるかもしれません。
これは力がはいりますね! 待っててね、白い土地!!
廊下からカチャカチャとお茶の支度の音が聞こえます。ふんわり漂う甘酸っぱいベリーの匂いとバターの匂いが近づいてます。私の口まであと数分のことでしょう。
まずは英気を養うことにしましょう。
ベリーパイさま、カモーン。
次の日、お父様たちに別れを告げ、空間切り裂き魔法で草原の端までやってきました。
「ついに来たわ! 白い土よ。死の土地よ」
周りを見回して、びっくりしました。お父さまの言う通り、足元の土はうっすらと白いのです。
ちょっと指で土をつけてなめてみました。ブラウンは信じられないという目で睨んできましたが、そこは見なかったことにします。
「うう、しょっぱ! でも、なんか美味しい感じ」
「ええ? ほんとですか?」
ブラウンも好奇心に負けてか、指に塩をつけて味見してみます。
「しょっぱいけど、たしかにちょっと甘みがありますね。海の塩とは味わいが異なります。いいお塩ですね」
「そうだよね。これって、すごいよ。だって……、見渡す限り、白い塩なんだよ」
たしかに草木も生えない、乾いた大地です。白い塩に覆われています。でも、考えようによっては、財産です。ワクワクしてきます。
ここで塩を作れば……。この領地経営の主幹産業にもなりえます。
どれどれ。
マジックポケットからツルハシとシャベルを取り出してみましたよ。
王子がツルハシで、私がシャベルで地面に穴を掘っていきます。
土を少し掘るだけで、じわじわと水分が集まってきました。手を入れてみると、ほんのり温かな水です。
もしや、これって……、温泉!?
指で上澄みの、綺麗な水だけつけて、ペロッと舐めてみます。
ふふふ、やっぱり、しょっぱい。
お父様の言う通り、ここは太古の海水が地下にたまっているに違いありません。しかも温かいってことは、温泉地にもなる可能性があります。ミネラル豊富な温泉観光施設を展開させるって言うのもなかなか面白いじゃありませんか。
昨夜、お父様の持っている百科事典で調べたのですが、この塩水を精製するには、ゆっくりじっくり煮込むという方法が適しているようです。
究極魔法・風を使ってと言う方法もありますが、時間が育てるっていうのもロマンですよね。
それに……、現実問題としては、究極魔法が使えるのが私だけですから、いつも領主の私が風を起こしているというのもまずいです。みんなが作れる方法がベストです。
しばらく歩いていくと、私の大きさほどの白い塊がありました。巨大な塩なのかな。ラッキーと半分、好奇心が半分で、塊をポンポンと叩いてみると、岩が割れ塩泉が湧き出しました。
うわぁ、やっちゃった!? そんなに強く叩いてないですよ。え! なんで?
ブラウンと王子が目を丸くして、口を開けてます。
なんか喋ってくださいよ……。ええええ、その態度、寂しいです。
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ブラウンが小さくつぶやきました。
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