婚約破棄されましたが、もふもふと一緒に領地拡大にいそしみます

百道みずほ

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一時帰還して……作戦会議

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王子に別れを告げ、空間切り裂き魔法で、数秒。
我が家に到着です。ブラックナイトが潤んだ目でブラウンを見つめていましたが、ごめんなさいしました。

数日振りの我が家です。意外に時間がたってませんね。でもやっぱり懐かしい気持ちが湧いてきます。

お父さまとお母さまが、私の魔法の気配を感じたのでしょう、ホールに出迎えに来てくれました。フィリップも階段の手すりを滑り降りてきます。お母さまはちらっとみて少し嫌そうな顔をしましたが、きょうは大目に見るようです。

ブラウンは御小言発射3秒前。フィリップに目を見開いて、にっこりとしました。ああ、フィリップ。ご愁傷様です。懐かしの、お説教タイムを楽しんでください。

「お父さま、お母さま。ただいま戻りました」
「息災なようで……ほっとしました」
お母さまが抱きしめてくれました。お父さまは目頭を押さえています。そんなに離れてないのに、私も思わず涙ぐんでしまいました。

そんな私たちをよそにブラウンはフィリップを捕まえ、マナー違反を指摘しています。久しぶりのブラウンのお説教にフィリップはうれしそうな? 困り顔ですが、お姉さまの私が何とかして差し上げましょう。

「フィリップ、これよ。すごいでしょう?」
私は助け舟を出しました。

大きなビンを三本。マジックポケットから取り出します。
透明なビンに詰まっている黒い泥は、ここでも異彩を放っています。原油ってすごい。なんかオーラみたいなのがあるのよ。俺、大物だぜみたいな。
お父さまとフィリップは嬉々としていますが、お母さまもしかめっ面です。

「ブラウン、厨房長にバターを頼んであるから……、マジックポケットで持っていく分を取ってきてくれる? ついでに、厨房にベリーをおすそ分けしてきたら? ブラウンがよければ、ベリーパイをここで作ってもいいし。そうしたら……、みんなでお茶ができるわ」
私はブラウンの顔色をうかがいます。

「そうですね。では……、フィリップ様の指導はこれくらいにしておきましょう」
ブラウンは私の下手くそな助け舟に失笑しながら答えます。

「アリス様もフィリップ様も仲がよろしくて……ほほほほ」
ブラウンは楽しそうへ厨房へ向かいます。バレバレでしたね。

「この原油なんですが……、領地拡大をしようと歩いていたら、地図のここの草原で見つけたんです。この辺りに黒い沼が点在しています。もしかしたら……ですが、地下で原油の溜まりがつながっている可能性もあります。これが原因で、この草原には街道が整備されなかったんです」

「なるほど。これは、いいものを見つけたね」
お父さまは顎をさすりながら、地図を見ています。

「でも、じゃあ、道をどうするかっていうことなんですが……」
原油のでる沼をまとめてしまうか。それとも橋をかけるか。ここの地域を避けて通るか。

原油があることから橋をかけても、すぐに傷みそうな気がします。これから往来を増やし、荷物を行き来させるのであるなら、橋はあまりよろしくないかも……。
かといって、避けて通るのも、面倒だし。

「やっぱりここは原油のもとを特定し、点在している原油の沼をまとめてしまうというのが一番かなと考えています」
「ああ、そうだね。原油の沼か……」

「精製すれば燃える水だね……、ワクワクするなあ」
フィリップは大事そうに1ビン抱えています。もう実験する気満々ですね。
「重いから気をつけて運んでね」
「うん、僕、実験してくるね」
フィリップはお父さまと私に断ると、自分の実験室へ向かいました。
「蒸留の温度、注意してね」
私が言葉を投げかけると、フィリップは「わかった」と大きな声で返事をしました。

「リマーまではあと1日半ほどで着きます。草原一帯を開拓すればかなり領地が拡大されます」
私は地図上で件の草原を指でなぞりました。

「なるほど……。この辺りなら、農業、商業、工業がうまく配置できそうだな」
「はい。原油が移動できれば、なんとかなりそうです」
「しかしなあ、移動といっても……」
「そうなんです……」
私とお父さまは深いため息をつきました。

「いくらアリスでも……、大がかりすぎるだろ」
お父様は心配そうにつぶやきました。
「球体魔法で封じ込めても……どこに移動させるか」
お父様と私は互いの顔を見ました。

「お父様は、私がそれくらいのことができないとでも?」
思わずムッとしてしまいました。

「できるできないの問題じゃないんだ、アリス」
「そんな……、私ができない子と言われているみたい」
傷つきました。お父様が私を信じてくれないなんて。

「そういうのではないんだ、アリス。アリスの能力を疑っているのではない。アリスの身体が心配なだけだ。無茶はよくないよ。究極魔法ばかり使っているんじゃないのかい」
お父様が私の顔をじっと見ました。

「いいかい? アリスが努力をして魔力が増えていったのも知っている。毎日修行して究極魔法を使えるのもわかっている。でも、私たちは家族なんだ。無理をする前に助け合わなくてはいけないよ。顔色もよくないじゃないか……」
「……」
涙がじんわりと浮かんできました。泣きたくないけど泣けてきてしまいます。

「それに、無理をして、原油だまりを作っているアリスがこけたら……」
「こけたら?」
「それだけで大問題だろ?」
真っ黒の液体だらけになった自分を想像して、私とお父さまは苦笑しました。

「何痴話げんかしているのよ、親子で……。アリスの顔色は、そんなに悪くないわよ。ブラウンが管理しているから、ちょっと疲れているかなってくらいじゃない……。」
お母さまはあきれ顔です。

「いやあ、だってなあ、アリスが心配で……、それにしばらく離れていたからな……。」
お父様は私の顔を見つめます。
「お父様とお母様と離れて、一人旅なんて初めてなんですもの。(ブラウンは付き添いでいるし、マカミもいる。ついでに王子もいたことは、この際どっかに置いておきます)つい、お父様がいなくて、寂しかったことを思い出して……、八つ当たりしてしまいました」
私もお父さまの顔を見つめ返します。

「そうだよな、お父様も寂しかったぞ」
「もう……、そんなこと言うなら、私も言うけど……。お母様も寂しかったのに……、二人ばっかり楽しそうでずるいわ」
お母様はちょっとだけ唇を尖らせます。
「お母様、大好きです」
お父様とお母様が私を抱きしめてくれました。

「あのね、お父様、お母様。旅の途中で、ミロード王国に立ち寄りました」
思い切って、道中のことをお父様とお母様に告白してみました。お父様とお母様に言えないことなんてありません。隠し事なんかしたくなかったのです。

「……、そうか。それはよかった。やはり、お前はミロード王国の忘れ形見なんだなあ」
お父様は寂しそうに表情を陰らせました。

「ええ、それはよかったです。ここもあなたの故郷ですが、ミロードもあなたの故郷ですからね。そのことは忘れないようにしないといけませんね」
お母さまは私の頭をなでてくれました。

「……はい。でも、私はお父様とお母様の娘です……よね?」
「当たり前ですよ」
「うちの娘に決まっている」
お父様とお母様はもう一度きつく私を抱きしめてくれました。
お父さまとお母さまの体温を感じ、私は家族愛を完全に充電したのでした。

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