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51、王女は反応を見られる
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◇ ◇ ◇
────しばらくぶりのベネディクト王宮。
今まで通されなかった王政関係者のみの領域へと案内されて、品のいいティールームへと通された。
待っていた王太子殿下とカサンドラ様に、私は礼をする。
「お招きいただき、ありがとうございます。とても光栄ですわ」
「少し急で申し訳ないことでした。どうぞおかけください」
「はい」
テーブルを挟み、私は椅子にかける。
クロノス王太子殿下は何度見ても神話級の顔面が眩しい。
彼がトリニアス王城にやってきた日から、ウィルヘルミナ以外の妹たちがきゃあきゃあ言っていたのもわかる。
カサンドラ様も同席しているのだけど、今日はやや離れて座っている。
お茶とはいえ、あらたまった空気を感じさせた。
「先日はご助言くださり、本当にありがとうございました。
西部の食糧危機の対策について抜本的に見直し、すでに進めております。
お礼を申し上げたく、この場をもうけました」
「お役に立ったなら何よりですわ。
わざわざお礼にこの場をもうけてくださったこと、恐縮ですが大変嬉しく存じます」
お茶とお菓子を頂きながら、しばらくおしゃべりをした。
「ベネディクトでの生活で、何か不自由や困っていることはありませんか」
「いいえ。過分なほど皆様には良くしていただいておりますわ」
「ならば良いですが、今後国が違えば風習が違うことも出てくるでしょう。そういった時は遠慮なく仰ってください」
「大丈夫ですわ。夫もとても気遣ってくれておりますので……」
そんな風にクロノス殿下からは気遣われ、私からは少しトリニアスにいた頃のことも話した。
といっても国の内情を詳しく話すわけにもいかないので、本当に当たり障りのないことばかり。
(王家同士仲良くしましょう……みたいな、こういう距離感での会話はわりと問題ないのよね)
それに、目のやり場に困るほどの美貌を除けば、意外とクロノス王太子殿下も私にとって話しやすい男性だ。
最初に会った時のイーリアス様と同じ様に、胸を見ないし不快な話をしない。
その態度は、こちらに性的な目を向けて性的な扱いをしてくる人の真逆だ。
(トリニアスにいらした際も思ったけど……女性との間にうまく一線引いている、そしてそれを相手にも伝わりやすくしている。そんな感じだわ)
彼の場合は、もちろん私をそういう対象としては見ていないからなのだろう。
私にとっては心地良い。
とはいえ社交界でモテる会話や洒脱な会話とされるものとはベクトルが違う。
ただ、桁違いの美貌にそういうクールな態度が合わさると……その美貌に惹かれている女性からすれば逆に焦がれてしまうのかもしれない。イルネアやエルミナのように。
(…………カサンドラ様、今日はあまり話さないわね)
今日は場をわきまえてか、しゃべりがいつもよりも大人しいカサンドラ様にちらりと目をやる。
(さすがにこの場で友達づくり作戦継続は失礼よね……うーん……)
もしかして、私、こういうところが友達できない理由なのかしら?
「……ところで、トリニアスから何かアルヴィナ殿下にご連絡はありましたか」
「連絡は……いえ、結婚以来ありませんわ。
気になってしまい、つい新聞を見ているのですけれど、やはり国外のニュースは本当に少ないのですね」
「そうですか……少し突っ込んだ、トリニアスには少々失礼な話をさせていただきたいのですが、よろしいですか?」
「? はい」
「元々ホメロス将軍から帰国後相談を受けておりました。
トリニアスの政務の多くを担っていらしたアルヴィナ殿下がベネディクトに来ていただくことになるが……おそらく早々に回らなくなるのではないか。殿下を帰国させてほしいという話をしてくる可能性が、結婚したあともゼロではない、と」
「…………??
イーリアス様が……?」
そういえば、いつか魔法でこっそり聞いたあの糾弾の場で、イーリアス様は『留学では早晩連れ戻される可能性があるから結婚にした』と言っていた。
なぜ連れ戻される可能性があるのか、私はわかっていなかったけど……え、そういう理由?
(……でも確かに、言われてみればうちの国王陛下、やりかねないわね)
イーリアス様の読みは正確だと言わざるを得ない。
「で、でも、いま私に何も言ってきていないのであれば、トリニアスは問題なく回っているということでは??」
「トリニアスとヒム王国は縁戚関係にありましたね」
「え、ええ。トリニアス国王の妹君がヒム王国に嫁がれ、今は王妃として政務に臨んでいらっしゃいます」
「ここ数年、ベネディクト王国はヒム王国とかなり近しい関係で、内部情報をかなり細かく互いにやりとりしているのです。
トリニアス王女でいらっしゃるアルヴィナ殿下にはお話しして良いとヒム王国からは言われているのですが、トリニアス王城はいま、かなりの混乱をきたしているとのこと」
「混乱……私が引き継いだ仕事がうまくいっていないということでしょうか」
「それもあるようです。ですが加えて『王家の秘密』が国民に暴露されたということもあると」
「暴露……? それは、その、もしかして、私以外は王妃陛下の子ではないということが?」
「はい」
私が出ていったあとに、そんなことが??
「で、でも、国王は存命ですし、それは王室法改正をすれば特に問題ないことかと?? 国王の子ども自体はいるのですから……」
どうせ国王陛下も王妃陛下も貴族たちも、ダンテス兄様以外を国王にするつもりはないはずだし……。
そう思って私が返すと、クロノス王太子殿下は一瞬私を観察するような目で見た。
(反応を見られた?)
私が本当にそれを知らなかったのか反応を見て確かめた。そう見えた。
もしかして、ベネディクト王国の上層部はそれ以外にもトリニアスの情報を何かつかんでいるのかしら??
何か、私には話せないような……?
────しばらくぶりのベネディクト王宮。
今まで通されなかった王政関係者のみの領域へと案内されて、品のいいティールームへと通された。
待っていた王太子殿下とカサンドラ様に、私は礼をする。
「お招きいただき、ありがとうございます。とても光栄ですわ」
「少し急で申し訳ないことでした。どうぞおかけください」
「はい」
テーブルを挟み、私は椅子にかける。
クロノス王太子殿下は何度見ても神話級の顔面が眩しい。
彼がトリニアス王城にやってきた日から、ウィルヘルミナ以外の妹たちがきゃあきゃあ言っていたのもわかる。
カサンドラ様も同席しているのだけど、今日はやや離れて座っている。
お茶とはいえ、あらたまった空気を感じさせた。
「先日はご助言くださり、本当にありがとうございました。
西部の食糧危機の対策について抜本的に見直し、すでに進めております。
お礼を申し上げたく、この場をもうけました」
「お役に立ったなら何よりですわ。
わざわざお礼にこの場をもうけてくださったこと、恐縮ですが大変嬉しく存じます」
お茶とお菓子を頂きながら、しばらくおしゃべりをした。
「ベネディクトでの生活で、何か不自由や困っていることはありませんか」
「いいえ。過分なほど皆様には良くしていただいておりますわ」
「ならば良いですが、今後国が違えば風習が違うことも出てくるでしょう。そういった時は遠慮なく仰ってください」
「大丈夫ですわ。夫もとても気遣ってくれておりますので……」
そんな風にクロノス殿下からは気遣われ、私からは少しトリニアスにいた頃のことも話した。
といっても国の内情を詳しく話すわけにもいかないので、本当に当たり障りのないことばかり。
(王家同士仲良くしましょう……みたいな、こういう距離感での会話はわりと問題ないのよね)
それに、目のやり場に困るほどの美貌を除けば、意外とクロノス王太子殿下も私にとって話しやすい男性だ。
最初に会った時のイーリアス様と同じ様に、胸を見ないし不快な話をしない。
その態度は、こちらに性的な目を向けて性的な扱いをしてくる人の真逆だ。
(トリニアスにいらした際も思ったけど……女性との間にうまく一線引いている、そしてそれを相手にも伝わりやすくしている。そんな感じだわ)
彼の場合は、もちろん私をそういう対象としては見ていないからなのだろう。
私にとっては心地良い。
とはいえ社交界でモテる会話や洒脱な会話とされるものとはベクトルが違う。
ただ、桁違いの美貌にそういうクールな態度が合わさると……その美貌に惹かれている女性からすれば逆に焦がれてしまうのかもしれない。イルネアやエルミナのように。
(…………カサンドラ様、今日はあまり話さないわね)
今日は場をわきまえてか、しゃべりがいつもよりも大人しいカサンドラ様にちらりと目をやる。
(さすがにこの場で友達づくり作戦継続は失礼よね……うーん……)
もしかして、私、こういうところが友達できない理由なのかしら?
「……ところで、トリニアスから何かアルヴィナ殿下にご連絡はありましたか」
「連絡は……いえ、結婚以来ありませんわ。
気になってしまい、つい新聞を見ているのですけれど、やはり国外のニュースは本当に少ないのですね」
「そうですか……少し突っ込んだ、トリニアスには少々失礼な話をさせていただきたいのですが、よろしいですか?」
「? はい」
「元々ホメロス将軍から帰国後相談を受けておりました。
トリニアスの政務の多くを担っていらしたアルヴィナ殿下がベネディクトに来ていただくことになるが……おそらく早々に回らなくなるのではないか。殿下を帰国させてほしいという話をしてくる可能性が、結婚したあともゼロではない、と」
「…………??
イーリアス様が……?」
そういえば、いつか魔法でこっそり聞いたあの糾弾の場で、イーリアス様は『留学では早晩連れ戻される可能性があるから結婚にした』と言っていた。
なぜ連れ戻される可能性があるのか、私はわかっていなかったけど……え、そういう理由?
(……でも確かに、言われてみればうちの国王陛下、やりかねないわね)
イーリアス様の読みは正確だと言わざるを得ない。
「で、でも、いま私に何も言ってきていないのであれば、トリニアスは問題なく回っているということでは??」
「トリニアスとヒム王国は縁戚関係にありましたね」
「え、ええ。トリニアス国王の妹君がヒム王国に嫁がれ、今は王妃として政務に臨んでいらっしゃいます」
「ここ数年、ベネディクト王国はヒム王国とかなり近しい関係で、内部情報をかなり細かく互いにやりとりしているのです。
トリニアス王女でいらっしゃるアルヴィナ殿下にはお話しして良いとヒム王国からは言われているのですが、トリニアス王城はいま、かなりの混乱をきたしているとのこと」
「混乱……私が引き継いだ仕事がうまくいっていないということでしょうか」
「それもあるようです。ですが加えて『王家の秘密』が国民に暴露されたということもあると」
「暴露……? それは、その、もしかして、私以外は王妃陛下の子ではないということが?」
「はい」
私が出ていったあとに、そんなことが??
「で、でも、国王は存命ですし、それは王室法改正をすれば特に問題ないことかと?? 国王の子ども自体はいるのですから……」
どうせ国王陛下も王妃陛下も貴族たちも、ダンテス兄様以外を国王にするつもりはないはずだし……。
そう思って私が返すと、クロノス王太子殿下は一瞬私を観察するような目で見た。
(反応を見られた?)
私が本当にそれを知らなかったのか反応を見て確かめた。そう見えた。
もしかして、ベネディクト王国の上層部はそれ以外にもトリニアスの情報を何かつかんでいるのかしら??
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