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63、王女は結婚披露パーティーの日を迎える
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◇ ◇ ◇
テイレシア様のパーティーのあと、その日お友達になった方のお手紙が邸に届くようになった。
プライベートでお手紙をもらうなんて……実ははじめてのことだ。
うきうきして、お茶の時間のあとも、ついつい何度もお手紙を読み返してしまう私に、イーリアス様が話しかけた。
「パーティーはとても楽しかったようですね」
「はい、とっても……まだ皆さん知り合ったばかりですけど、これから仲良くなっていけたらいいなって思います」
ヒム王国の急使についてはわからないままだけど。
友達ができたこと、いろんな人から情報が得られたことで、サブリナさんから手紙を渡された時よりもだいぶ心は穏やかになっていた。
「不安なく、結婚披露パーティーに臨めそうです」
「それは何よりです」
「どうか、されました?」
微妙なイーリアス様の顔の変化に気付き、私は問い返す。
「いえ、なんでもありません。ただ」
「ただ?」
「同性の友人からしか与えられない笑顔もあるのだな、と、そのように思っただけです。
そして、とても良い笑顔だなと」
あまりに嬉しすぎたのがイーリアス様にまで伝わってしまったらしい。恥ずかしい。
「あの、ちょっと伝わりにくいかも知れないのですが……。
お恥ずかしい話ですが友達いない歴=年齢だった人間にとっては、友達ができるというのはすごく特別な嬉しさなのです。
もちろん、まだまだ皆さんとは知り合ったばかりですし……実は王女ということで断りづらかったという可能性もなくはないとも思うのですが……」
「男ゆえ想像になりますが……殿下はとても魅力的な女性です。
知的でお優しく、時に気を遣いすぎるほど人を思いやれるお方です。そして強い責任感すらお持ちでいらっしゃる。
変な先入観さえなければ、同性も友人になりたいと思って当然ではないかと」
急に投下された賛辞に頬が熱くなる。
「そ、そんな誉められた女では……」
「変な色眼鏡で見ず、殿下という方を正しく知れば、自ずと皆お側にいたいと思うのではないでしょうか」
「……そう言っていただけると、嬉しいです」
赤くなってないかしら、と気になって両手で熱い頬を挟む。
その時、コンコンと部屋の扉がノックされた。
「殿下。王宮より急ぎのお手紙です」
「ありがとう。入ってきてくれるかしら」
ナナが王家の紋章の封蝋がついた手紙を持ってくる。
結婚披露パーティーの件かしら、と、ペーパーナイフで封を開ける。
パラリと手紙を開いた。
────唾を飲み込んだ。
「殿下?」
「…………結婚披露パーティー、トリニアスからは兄ではなく母が来るそうです」
「王妃陛下が」
「ええ。私のことを憎んでいる母が、です」
ぎりぎりまで兄が来ると思わせて、油断を誘ったのだろう、あの人は。
(これもまた、私の動揺を狙ってのことかしら)
直前までダンテス兄様が来る前提で支度をしていただろうベネディクトの王宮も、今頃あわてて王妃向けに整え直しているはず。
迷惑をかけているとは……あの人はきっと思わないわね。
イーリアス様が、そっと私の手を握る。
今はその手がただ温かく感じられる。
「大丈夫ですか、殿下」
「……ええ。大丈夫です」
不安がないわけじゃないけど、ここはベネディクト王国だ。
イーリアス様や、私を守ってくれた心強い人たちがいるこの国なら、トリニアスと違って下手なことはできないはず。
「問題ありません。
せっかくの結婚披露パーティーですから、楽しみます」
イーリアス様の手を頬に当て、夫の感触を確かめながら、私は微笑んだ。
◇ ◇ ◇
────数日後。
いよいよ王宮での結婚披露パーティーの日がやってきた。
ウェディングドレスと、完成したばかりのお色直しのドレス、宝飾品、その他の準備を整え、私は朝から王宮に入る。
薔薇の香りのお風呂で身体を磨かれ、肌を磨かれた上で、ドレスをまとう。
結婚式の時よりも髪を華やかに結い上げ、化粧もより手の込んだもので、さらに生花と宝飾品を仕上げにつけられ……王宮の美容師と女官の腕の素晴らしさに思わずため息がこぼれた。
「とてもお綺麗です」といわれ、思わず「あなた方のおかげです」と答えてしまうほどに、鏡の中の自分は素敵だった。自分の身体の悩みも一瞬忘れてしまうほどに。
(いまはそう思えるようになったんだわ、私)
それがすごく嬉しい。
────会場となる大広間に入ると、礼装姿のイーリアス様がいた。
やっぱり、とても素敵……!
鼓動がものすごく速くなりそうなのを、遠くから見て深呼吸して落ちつかせる。
(もしサブリナさんも今日のパーティーに出席するのだとしたら、『美しかった』なんて過去形で言った自分の間違いに気づいてほしいわ。
イーリアス様はこんなに素敵なんだもの)
そう思いながら、私を待つ夫のもとへ歩く。イーリアス様は私を見て一瞬目を見張る。
「……とてもお綺麗です」
「あ、ありがとうございます。王宮の皆様は、本当に凄腕ですね」
「いえ。殿下は元々美しいので……それをさらに魅力的に引き出してくれたのです……とてもお綺麗です」
少し、照れが入ったような褒め言葉に胸が熱くなりながら、
「やっぱりイーリアス様も素敵です」
と返した。
今日を素晴らしい日にしたい。
母がどうでるかわからないけど、パーティーはしっかり楽しむわ。
テイレシア様のパーティーのあと、その日お友達になった方のお手紙が邸に届くようになった。
プライベートでお手紙をもらうなんて……実ははじめてのことだ。
うきうきして、お茶の時間のあとも、ついつい何度もお手紙を読み返してしまう私に、イーリアス様が話しかけた。
「パーティーはとても楽しかったようですね」
「はい、とっても……まだ皆さん知り合ったばかりですけど、これから仲良くなっていけたらいいなって思います」
ヒム王国の急使についてはわからないままだけど。
友達ができたこと、いろんな人から情報が得られたことで、サブリナさんから手紙を渡された時よりもだいぶ心は穏やかになっていた。
「不安なく、結婚披露パーティーに臨めそうです」
「それは何よりです」
「どうか、されました?」
微妙なイーリアス様の顔の変化に気付き、私は問い返す。
「いえ、なんでもありません。ただ」
「ただ?」
「同性の友人からしか与えられない笑顔もあるのだな、と、そのように思っただけです。
そして、とても良い笑顔だなと」
あまりに嬉しすぎたのがイーリアス様にまで伝わってしまったらしい。恥ずかしい。
「あの、ちょっと伝わりにくいかも知れないのですが……。
お恥ずかしい話ですが友達いない歴=年齢だった人間にとっては、友達ができるというのはすごく特別な嬉しさなのです。
もちろん、まだまだ皆さんとは知り合ったばかりですし……実は王女ということで断りづらかったという可能性もなくはないとも思うのですが……」
「男ゆえ想像になりますが……殿下はとても魅力的な女性です。
知的でお優しく、時に気を遣いすぎるほど人を思いやれるお方です。そして強い責任感すらお持ちでいらっしゃる。
変な先入観さえなければ、同性も友人になりたいと思って当然ではないかと」
急に投下された賛辞に頬が熱くなる。
「そ、そんな誉められた女では……」
「変な色眼鏡で見ず、殿下という方を正しく知れば、自ずと皆お側にいたいと思うのではないでしょうか」
「……そう言っていただけると、嬉しいです」
赤くなってないかしら、と気になって両手で熱い頬を挟む。
その時、コンコンと部屋の扉がノックされた。
「殿下。王宮より急ぎのお手紙です」
「ありがとう。入ってきてくれるかしら」
ナナが王家の紋章の封蝋がついた手紙を持ってくる。
結婚披露パーティーの件かしら、と、ペーパーナイフで封を開ける。
パラリと手紙を開いた。
────唾を飲み込んだ。
「殿下?」
「…………結婚披露パーティー、トリニアスからは兄ではなく母が来るそうです」
「王妃陛下が」
「ええ。私のことを憎んでいる母が、です」
ぎりぎりまで兄が来ると思わせて、油断を誘ったのだろう、あの人は。
(これもまた、私の動揺を狙ってのことかしら)
直前までダンテス兄様が来る前提で支度をしていただろうベネディクトの王宮も、今頃あわてて王妃向けに整え直しているはず。
迷惑をかけているとは……あの人はきっと思わないわね。
イーリアス様が、そっと私の手を握る。
今はその手がただ温かく感じられる。
「大丈夫ですか、殿下」
「……ええ。大丈夫です」
不安がないわけじゃないけど、ここはベネディクト王国だ。
イーリアス様や、私を守ってくれた心強い人たちがいるこの国なら、トリニアスと違って下手なことはできないはず。
「問題ありません。
せっかくの結婚披露パーティーですから、楽しみます」
イーリアス様の手を頬に当て、夫の感触を確かめながら、私は微笑んだ。
◇ ◇ ◇
────数日後。
いよいよ王宮での結婚披露パーティーの日がやってきた。
ウェディングドレスと、完成したばかりのお色直しのドレス、宝飾品、その他の準備を整え、私は朝から王宮に入る。
薔薇の香りのお風呂で身体を磨かれ、肌を磨かれた上で、ドレスをまとう。
結婚式の時よりも髪を華やかに結い上げ、化粧もより手の込んだもので、さらに生花と宝飾品を仕上げにつけられ……王宮の美容師と女官の腕の素晴らしさに思わずため息がこぼれた。
「とてもお綺麗です」といわれ、思わず「あなた方のおかげです」と答えてしまうほどに、鏡の中の自分は素敵だった。自分の身体の悩みも一瞬忘れてしまうほどに。
(いまはそう思えるようになったんだわ、私)
それがすごく嬉しい。
────会場となる大広間に入ると、礼装姿のイーリアス様がいた。
やっぱり、とても素敵……!
鼓動がものすごく速くなりそうなのを、遠くから見て深呼吸して落ちつかせる。
(もしサブリナさんも今日のパーティーに出席するのだとしたら、『美しかった』なんて過去形で言った自分の間違いに気づいてほしいわ。
イーリアス様はこんなに素敵なんだもの)
そう思いながら、私を待つ夫のもとへ歩く。イーリアス様は私を見て一瞬目を見張る。
「……とてもお綺麗です」
「あ、ありがとうございます。王宮の皆様は、本当に凄腕ですね」
「いえ。殿下は元々美しいので……それをさらに魅力的に引き出してくれたのです……とてもお綺麗です」
少し、照れが入ったような褒め言葉に胸が熱くなりながら、
「やっぱりイーリアス様も素敵です」
と返した。
今日を素晴らしい日にしたい。
母がどうでるかわからないけど、パーティーはしっかり楽しむわ。
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