身代わり婚約者になった元悪役令嬢役女優、塩対応しかしてないのになぜか溺愛されてます。

真曽木トウル

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◇17◇ 「エスコートさせてほしい」

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「……ということなのだが、マレーナはどう思う??」

「ええ、そうですわね……」

「マレーナが好きなものがあれば何でも知りたい。喜んでもらえるものを贈りたいのだ」


 お話ししながら、私は最低限の返ししかしないように気を付けている。
 ……だけど、ギアン様は私にもしゃべらせようと、話を広げようとしてしまう。

 マレーナ様の好きなものはさすがに把握しきれないので、時々私の好みで答えざるをえなくなる。

 ギアン様がレイエスのお菓子を持ってきてくれるようになったのも、私が好きなお菓子を聞かれて、だいたいのお菓子は好きだと答えてしまったからだ。

 一応、毎回隣の部屋からマレーナ様は会話を聴いているけど、ちゃんと私の答えを覚えててくれるんだろうか。
 お菓子、マレーナ様のぶんもいつも取り分けてもらってるんだけど、食べてくれてるだろうか。


「――――そういえば、だいぶ立て続けに会いにきてしまったな。
 試験と卒業式の準備もあるからこの先は忙しいだろう?
 この次は卒業式まで空けよう」

「そうですわね。
 まだ続けていらっしゃるようでしたら、ギアン様の成績が心配になるところでしたわ」

「はははは。善処する。
 マレーナはいつも〈淑女部〉で1位だから本当にすごいな」


 試験とか卒業式とかあるのか。
 教えといてくださいマレーナ様。
 てか1位なのかマレーナ様。


「私は人一倍勉強してどうにか上位争いに入れる程度だからな。
 毎日マレーナのことを考えているとつい会いたくなってしまうのだが、やはり学業第一だ。我慢する」


 ギアン様……好きで会いたいと言いつつ、迷惑にならないかも気にしている。

 こうして話しているときのギアン様は、ただただ一生懸命、好きな女の子とお付き合いをしている男の子だ。


 ――――たぶんギアン様は、愛のない結婚でもいいなんて思わないんだろうな。
 いくら好きな相手でも、相手が望んでいない結婚を強いたくはない人だと思う。

 マレーナ様が、ギアン様のことを愛せる人なら良かったのに。


「そうだ。パーティーの準備はもう進めているか?」

「……?」

「? 卒業式の後に先輩方のご卒業をお祝いする謝恩パーティーのことだ。
 マレーナも出るのだろう?」

「……ああ、そうですわね」

「在校生は基本的に制服で出るが、式典後に盛装に着替えることができるのは昨年と同じだ。
 だからもう、パーティー用のドレスの用意をしているかと思ったのだ」


(ほんとマレーナ様、そういうものがあるなら先に話してください!)


「そうですわね、進めていますわ(あの人のことだから抜かりはないと思う……)。それがなにか?」

「そ、そうか……もしもまだならと思ったが…………。
 いや、マレーナ。もし良ければ、謝恩パーティーのためのドレスを私に贈らせてくれないか?」

「…………え?
 贈り物については以前わたくしお願いをいたしましたけれども」

「わかってる。
 こどもの頃から、何度マレーナにドレス選びのセンスが悪いと叱られたか」

「いえ、そのような理由ではなく(マレーナ様何やってんだ)」

「だが……こういうときには、やはり愛する女性に贈りたいのだ」

「……………………」


 愛する?

 会いにきた婚約者を身代わりに会わせるマレーナ様を?
 それともマレーナ様に化けた平民の私を?


「…………マレーナ?」

「い、いえ。なんでもありませんわ」


 うっかりうつむいてしまった。
 良心と胃が、キリキリ痛い……。


「昨年の謝恩パーティー……マレーナも出席していたと思うのだが、完全に別行動になってしまっただろう。
 1年に一度きりの日なのに、私はとても残念に思っていた」


(おおう……学園行事で、婚約者放置ですかマレーナ様)


 入学以来会っていないのなら、そういうことになるんだよね。
 周りの人は……だいぶ不審に思っているんだろうなぁ。



「だから――――今年はぜひ、あなたをエスコートさせてほしい。婚約者として」



 ――――おもわず即答で『はい』って言ってあげたくなる目で、ギアン様は言った。

   ◇ ◇ ◇
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