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28、国王、妻と語る【ウィルフレッド視点】
***
「────多分、もしも15年前に私がウィルフレッドに恋をしていたとしても、そして家族が亡くならなかったとしても、きっと求婚の返事は変わらなかったと思うわ」
2、3日してウィルフレッドの身体がだいぶ回復してきた頃、夫婦はもう少し深くお互いの話ができるようになった。
「4年間がんばって学んできたこと、家族や祖国の期待、そういったものを、あの時の私はなかったことにはできなかったと思うの」
「そうか」
答えを聞いてウィルフレッドの中に残念という気持ちはなく、むしろスッキリした心持ちだった。
「今、俺を愛しているならそれでいい。
…………俺は二度ともう間違えたくなかったんだ。
もう一度いなくなられたら心臓が動きを止めてもおかしくないぐらい、ルイーズなしじゃいられない。だから」
だから、かつてルイーズに拒まれた『愛している』という言葉を口にするリスクを取れなかった。
「……ウィルフレッドは私にガッカリしない?」
「なぜ?」
「あの時は求婚を断ったのに、今は……現金だな、とか、都合いいな、とか、思ったりしない?
幻滅するとかさ」
「べつに。
愛自体、綺麗なだけのものじゃないからな。
俺だって19年間の俺の頭の中をルイーズに見られたらドン引きされる自信がある」
「どんなよ?」
「そうだな、たとえば……いつか、人を好きになったりしないのかと聞いた時に『お兄様より素敵な人もいないし』と言っていただろ?」
「ああ、それ……?
もちろんお兄様は大好きよ?
でもそう言ってたのは、恋愛の話自体、面倒であまりしたくなかったから。
私が兄離れしてないようなことを言えば、そこで相手が引いて話が終わることが多かったのよね」
「おかげで俺はあの時から、会ったこともないおまえの兄が越えなきゃならん壁になった」
「…………っ。
ちょっと、ごめん、笑っていい?」
「笑ってから言うなよ。
どれだけ引きずったと思ってるんだ」
「そうね、いろいろ腑に落ちたわ。ふふっ」
「…………うちと違って、すごく愛された環境だったんだろう?
どんな夫になれば、どんな家庭を築けば、ルイーズにとって理想なのか……考えてた。
子どもを産むと言ってくれたとき嬉しかったんだ。おまえとの子どもが欲しかったから。
ただ、おまえ自身にかなり無理をさせるようならそれは本意じゃない」
「そうね……最初はあなたのためだったかも。
でも今は、自分でも望んでいるところがあってなの。やれるだけやってみたいわ」
不意に、2人の言葉が途切れた。
「…………愛してる、ルイーズ」
「………………私も……愛してる。恥ずかしいわね、なんか、これ」
顔を明らめるルイーズが可愛くて幸せだ。
愛してると互いに言い合えることが幸せだ。
生きていて……本当によかった。
「ブリジットとイヴェットは?」
「2人とも、少しずつ元気になってきたみたい。
本当に……私、今怒ってるの。
ガストラ王国に」
「うん、うん」
そっと抱き寄せ、ルイーズの髪を撫でながら、ウィルフレッドは続きを促す。
「ウィルフレッドの命を奪おうとして。
イヴェットをあんな風に泣かせて。
落ち着いたら腹が立って、本当に」
悔しそうに言うルイーズ。
聖職者になって国を支えると決めたのも、ヨランディアで国王じゃなく聖女として国を統治していたのも、王女ゆえの責任感だとウィルフレッドは思っていた。それも正しかったと思う。
だがそのさらに根底にあったのは、彼女が持つ情の厚さだったんじゃないだろうか。
ルイーズのことをわかった気になっていた。
「大丈夫だ。ガストラ王国にはきっちり落とし前をつけさせてやる。ヨランディアとの関係がどうなのかもな」
ルイーズの髪を撫でながら言う。
うぬぼれても良いだろうか?
彼女が、ヨランディアよりもグライシードを守ると言った理由は、グライシードの王妃としての意識以上に……ルイーズにとってそれだけウィルフレッドが大切だったからだと。
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「────多分、もしも15年前に私がウィルフレッドに恋をしていたとしても、そして家族が亡くならなかったとしても、きっと求婚の返事は変わらなかったと思うわ」
2、3日してウィルフレッドの身体がだいぶ回復してきた頃、夫婦はもう少し深くお互いの話ができるようになった。
「4年間がんばって学んできたこと、家族や祖国の期待、そういったものを、あの時の私はなかったことにはできなかったと思うの」
「そうか」
答えを聞いてウィルフレッドの中に残念という気持ちはなく、むしろスッキリした心持ちだった。
「今、俺を愛しているならそれでいい。
…………俺は二度ともう間違えたくなかったんだ。
もう一度いなくなられたら心臓が動きを止めてもおかしくないぐらい、ルイーズなしじゃいられない。だから」
だから、かつてルイーズに拒まれた『愛している』という言葉を口にするリスクを取れなかった。
「……ウィルフレッドは私にガッカリしない?」
「なぜ?」
「あの時は求婚を断ったのに、今は……現金だな、とか、都合いいな、とか、思ったりしない?
幻滅するとかさ」
「べつに。
愛自体、綺麗なだけのものじゃないからな。
俺だって19年間の俺の頭の中をルイーズに見られたらドン引きされる自信がある」
「どんなよ?」
「そうだな、たとえば……いつか、人を好きになったりしないのかと聞いた時に『お兄様より素敵な人もいないし』と言っていただろ?」
「ああ、それ……?
もちろんお兄様は大好きよ?
でもそう言ってたのは、恋愛の話自体、面倒であまりしたくなかったから。
私が兄離れしてないようなことを言えば、そこで相手が引いて話が終わることが多かったのよね」
「おかげで俺はあの時から、会ったこともないおまえの兄が越えなきゃならん壁になった」
「…………っ。
ちょっと、ごめん、笑っていい?」
「笑ってから言うなよ。
どれだけ引きずったと思ってるんだ」
「そうね、いろいろ腑に落ちたわ。ふふっ」
「…………うちと違って、すごく愛された環境だったんだろう?
どんな夫になれば、どんな家庭を築けば、ルイーズにとって理想なのか……考えてた。
子どもを産むと言ってくれたとき嬉しかったんだ。おまえとの子どもが欲しかったから。
ただ、おまえ自身にかなり無理をさせるようならそれは本意じゃない」
「そうね……最初はあなたのためだったかも。
でも今は、自分でも望んでいるところがあってなの。やれるだけやってみたいわ」
不意に、2人の言葉が途切れた。
「…………愛してる、ルイーズ」
「………………私も……愛してる。恥ずかしいわね、なんか、これ」
顔を明らめるルイーズが可愛くて幸せだ。
愛してると互いに言い合えることが幸せだ。
生きていて……本当によかった。
「ブリジットとイヴェットは?」
「2人とも、少しずつ元気になってきたみたい。
本当に……私、今怒ってるの。
ガストラ王国に」
「うん、うん」
そっと抱き寄せ、ルイーズの髪を撫でながら、ウィルフレッドは続きを促す。
「ウィルフレッドの命を奪おうとして。
イヴェットをあんな風に泣かせて。
落ち着いたら腹が立って、本当に」
悔しそうに言うルイーズ。
聖職者になって国を支えると決めたのも、ヨランディアで国王じゃなく聖女として国を統治していたのも、王女ゆえの責任感だとウィルフレッドは思っていた。それも正しかったと思う。
だがそのさらに根底にあったのは、彼女が持つ情の厚さだったんじゃないだろうか。
ルイーズのことをわかった気になっていた。
「大丈夫だ。ガストラ王国にはきっちり落とし前をつけさせてやる。ヨランディアとの関係がどうなのかもな」
ルイーズの髪を撫でながら言う。
うぬぼれても良いだろうか?
彼女が、ヨランディアよりもグライシードを守ると言った理由は、グライシードの王妃としての意識以上に……ルイーズにとってそれだけウィルフレッドが大切だったからだと。
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