夫は家族を捨てたのです。

クロユキ

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打ち明ける勇気③

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「な……伯爵の娘と結婚?だがアイツは、君やアランを……」
「……夫は……屋敷の人達に自分は結婚をしていない独身だと言っていたそうよ……」
「は!?そ、それは本当なのか?」
お義兄さんは驚いていた…私も何かの間違いではと驚いた。
「…だから、屋敷の娘と結婚も出来た…今のあの人は貴族になって妻と子供に裕福な生活を手に入れた…私の知らない人なの」
「は……」
お義兄さんは肩を落とし俯く姿がとても辛かった。
「……アイツは……君を見なかったのか?」
「…夫は、あの人は…私に気付いて驚いた顔をしていた…家族から私の事を知っているのかと言われ夫は私から目を逸らし……
『知らない人だ』とあの人の口から言われたわ……」
「……」
お義兄さんは、テーブルの上に表肘を着いて両手を重ねた手を額を押すように隠し暫く黙ったまま話しをする事はなかった。
「……私、夫を待つのを止めます…」
「!」
「夫には家庭があります…貴族になった夫が平民になって帰ってくる事はないと思いました…夫は…あの人は、私達家族を捨てたのです……」
「シェリー…」
「私や息子のアランを心配していない事が家族を持ったあの人を見て分かったの…この七年帰って来なかった証拠です…」
私は、夫が帰って来ても受け入れる事はないと思った。
「……アランにはなんて言うんだ?」
「…お父さんは、亡くなったとあの子に話しをします…あの人の家庭を見て失望した程ですから…」
「失望?何を見たんだ」
「貴族となったあの人は、子供を我が儘に育てメイドに子育てを頼んでいると聞きました…」
「メイドに子育てを!?アイツが…」
お義兄さんは信じられないといった顔を私に見せていた。
「…私もこの目で見て来ました…アランが生まれて少しだけでしたが…一緒に子育てをしてくれた夫はもう居ないのです…」
「シェリー…」
カタンと座っていた椅子から離れたお義兄さんは、私が座っている椅子の側に立ち私を抱き締めてくれた。
「…俺がいる……君とアランの側には俺がいる……今もこの先も俺が君とアランを幸せにする……」
「……お義兄さん……」
私は、嬉しく涙を流した…私の事を想い続けてくれるエリックさんに私は心を開くと決めた。





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