婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ

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初めてのデート

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「きゃ~っ!ソニア、見て見て!」
「お、お嬢様…落ち着いてください」
「兄様とお出かけするのよ!!」
手紙をメイドのソニアに見せるフォスティヌは興奮していた。
「まあ~っ、大変兄様今日来るんですって」
コンコン!
「もう来ているよ」
「あ、兄様!?」
クスッと笑顔を見せるフランシスはメイドのソニアに部屋を出る合図を指で指し、メイドのソニアは静かに部屋を出た。
「元気だったかい?フォスティヌ」
「兄様、いつも突然来るんだから」
「はははは、ごめん、ごめん、早くフォスティヌに会いたいと思って急いで来たんだ」
「嘘だわ。会いたいなら二ヶ月も待たせないもの」
「悪いと思っているよ。だから今日はフォスティヌとデートの誘いに来たんだ」
「!?デ、デート!!」
「顔が真っ赤だよ」
「っ…」
両手で頬を触るフォスティヌの手を掴んだフランシスはフォスティヌの顎に親指で顔を上げると唇を重ねた。
「ん……」
「可愛いよフォスティヌ」
「あ…兄様…」
フォスティヌの顎を親指で支えていた手を放したフランシスはフォスティヌを抱きしめていた。
「兄様!?」
「うん…しばらくこのままで良いかな」
「……うん…」
フォスティヌの肩に顔を埋めるフランシスに何かあったのだろうか?と心配していた。
「はぁ…落ち着くな…フォスティヌとこうしていると…お菓子の匂いがする」
「え?お菓子……あ!兄様、私お菓子を作っていたの疲れている時は甘い物を食べたら良いって、ソニアを呼んで…!」
フォスティヌがフランシスから離れようとした時、グイッと体を引き寄せたフランシスは、フォスティヌの後ろ頭を手で支え、腰には腕を回しフォスティヌは驚き見上げフランシスと唇を重ねていた。
「ん、んん…」
ヌルッとした舌先をフォスティヌの口の中に入れたフランシスは器用に舌を絡ませ、ビクッと体が動くフォスティヌを薄く目を開け笑みを見せていた。
「……はぁ…兄……」
声を出そうとしたがフランシスが唇を離してくれない
(い……いつもと違う……)
ドンドンとフランシスの胸を叩くフォスティヌにハッと我に帰ったように重ねていた唇を放した。
虚ろな目でフランシスを見上げて見ているフォスティヌの唇に流れた唾液を指先で拭っていた。
「…ごめん…フォスティヌ…久しぶりに会えたから抑えがきかなくて……大丈夫かい?」
「……はぁ、はぁ……」
フランシスの胸の中で顔を埋めるフォスティヌに謝っていた。
(やりすぎたかな…いつもシャロンにしていたから…)
「……大丈夫…驚いたけど…嫌だって思っていないよ…兄様が私にキスしてくれるのが嬉しい……」
「……フォスティヌ…」
モゾッとフランシスの胸に顔を埋めていたフォスティヌは頬を染め笑顔を見せていた。
(…僕は婚約破棄をフォスティヌに話さなければならないのに顔を見ると、いとおしくてキスがしたくなる…この関係が長く続いてくれたら……)
「兄様?」
「あ……」
「私…変な事でも言ったのかな……」
「…いや、嬉しいよ。急に悪かった早く身仕度をして出かけよう」
「う、うん」
フォスティヌに笑顔を見せたあと廊下で待っているメイドのソニアを呼び、フォスティヌの身仕度を頼んだ。
「気をつけて行ってらっしやい」
「行って来ます。お母様」
「フランシス、頼んだぞ」
「はい、行って来ます」
フランシスとフォスティヌはフランシスが乗っていた馬車に乗り二人は隣町へと向かった。








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