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第1章 修道院での子供時代
9、図書館の上にある秘密の部屋
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ニコラス先生と一緒に勉強できる日、私は図書館にある学習室でワクワクしながら先生を待った。
「やあ、ミゲル。私はこれから孤児院へ行って子供たちを連れてくる。君はどうする?この部屋で待っていてもいいし、私と一緒に彼らを迎えに行ってもいい」
「先生と一緒に迎えに行きます」
「それならすぐに行こう」
私たちが孤児院の前に到着すると、アルバロを先頭に10人の子供が並んで待っていた。
「ニコラス先生、おはようございます。先生に言われた通りに準備して待っていました」
「僕たちは昨日作業着を洗濯して乾かし、今日は朝食の後川に行って体を洗っています。すべての準備を整えて待っていました」
「そうか、では今から図書館にある学習室に行く。前にも話したが、図書館の中に入ったら静かに行儀よくしてなければいけない」
「そうだよ、お前たち。いつものように騒いだりふざけたりしたら俺が許さないからな。絶対に静かにするのだぞ」
「はーい」
子供たちは元気よく答え、私とニコラス先生の後について一列に並んで歩き始めた。アルバロが先頭でフェリペが列の後ろを歩いている。彼らは一言も話さずに行儀よく歩いて図書館に到着した。
「今から図書館の中に入る。いいか、お前たち、この中ではしゃべったり音を立てることは許されない。いいな」
「・・・」
子供たちは声は出さずに身振りで返事をした。ニコラス先生は前に出て図書館の入り口に立っている修道士に挨拶をした。
「おはようございます。今日は院長の許可を得て、孤児院の子供たちに勉強を教えるために来ました」
「・・・」
入り口にいる修道士はフードをかぶったまま何も言わずに身振りで中を指さした。ニコラス先生の後に続いて私や孤児院の子も中に入った。私はいつも入り口に立つ修道士に簡単な挨拶をして中に入っていたのだが、ここに初めて入る孤児院の子供たちは作法がよくわかっていない。息を止め、足音を立てないように注意してフードを被ったままの修道士の前を通り過ぎた。そして入り口近くにある学習室の中に全員が入り、ニコラス先生が扉を閉めた。
「もしかして君たちは息を止めているのか」
「・・・」
「息はしてよい。息を止めたままでは苦しくなって死んでしまう」
子供たちが深呼吸する音が聞こえた。
「そんなに緊張しなくてもよい。みんな席に座りなさい」
子供たちはかたまっていてピクリとも動かない。ニコラス先生が1人ずつ手を引いて椅子に座らせた。最後に先生はアルバロとフェリペを少し大きな机の前にある席に座らせた。
「ミゲル、このテキストとノート、そしてペンをみんなに配るのを手伝ってくれ」
「は、はい」
私はニコラス先生を手伝ってテキストなどを配り、自分の席に座った。
「私の名はニコラス、普段は病院で医師として働いているが、特別にカルロス院長の許可をもらって、君たちにスペイン語やラテン語の初歩を教えることになった。ミゲルとフェリペはもう習ったことあると思うが、しばらくは私の助手をしてみんなにスペイン語を教えてくれ。それからこの学習室では騒いではいけないが、勉強に必要なことは小声で話してもよい。息を止めるほど緊張しなくてもよい」
「・・・」
緊張しなくてもよいと言われても、みんな先生が話し始めると息を止めていた。それでも先生がスペイン語のアルファベットについて説明し、みんなで唱える頃にはかなり緊張もほぐれてきた。子供たちはノートを広げて文字を書き写し、私とフェリペは机を回って書き方が間違ってないか注意した。1時間ほど字を書く練習をした後、ニコラス先生はこう言った。
「私はこれからミゲル、アルバロ、フェリペの3人を連れて図書館の他の部屋に行く。みんなは続けて字の練習をしていて欲しい」
「はーい」
子供たちは聞こえるかどうかわからないほど小さな声で返事をした。
ニコラス先生は私たちを連れて写本室に入った。たくさんの修道士が机の前に座り、本の字を写したり挿絵を描いたりしている。私が生まれる前に印刷された本が出版されるようになり、勉強で使うテキストなどはみな印刷されたものであったが、それでも手書きの豪華な写本は人気があり、修道院では昔と同じやり方で写本が作られていた。
その次に広い図書室に入った。図書館の中は学習室、写本室、図書室とすべて窓が大きく作られ、外の光がよく入るように作られていた。図書館の中でランプを使うことは固く禁じられていた。図書室には美しい装丁の本がたくさんの本棚にきれいに入れられていた。
「この図書室にどれだけたくさんの本があるか、私にもよくわからない」
ニコラス先生はそう言って微笑んだ。そして先生は図書室の奥にある小さな部屋に作られた螺旋階段を上り始めた。その階段を上るのは私も初めてである。やがて螺旋階段の前に大きな石の扉が現れた。先生は小さな鍵を使って扉を開けた。中に入り、私たちを手招きして中に入れると内側から鍵を閉めた。
「この部屋の鍵は私とカルロス院長しか持っていない。普段修道士は入ることを許されない秘密の部屋だ」
その部屋は図書館の建物を外から見た時に見える塔の中にあるのだろう。いくつもの小部屋に分かれ、それぞれの部屋が階段や廊下でつながれて迷路のようになっている。それぞれの部屋は窓が大きく明るい部屋もあればほとんど光のささない部屋もある。どの部屋にも大きな本棚が置かれ、そこにはおさまりきらない本が床に積み上げられている。
「ここの部屋の話し声は下には聞こえないから安心して話してよい」
「ニコラス先生、ここは?」
「修道士が読むことを許されていない特別な本が置いてある。ヘブライ語やギリシャ語、アラビア語で書かれた本もあれば、古代エジプトの文字で書かれた本もある。本だけではない、旅人の手記、画家のスケッチ、貴族が毎日の食事を記録したもの、聖書をラテン語からスペイン語に翻訳したもの、字で書かれたあらゆる知識がこの部屋に集められている」
「・・・」
「私は若い頃人生に絶望し、死に場所を求めてさまよっていた。偶然カルロス院長と知り合いになり、ここに連れてこられた。ここにあるたくさんの本が私を絶望の淵から救ってくれた。私はこれらの本とここで働く修道士を守るためここの病院で働くことにした。ここにどれだけたくさんの本があるのか私にもわからない。でも私はこの本を守り、次の世代に手渡したい」
「・・・」
「私は君たちの未来が明るく希望に満ちたものであることを願っている。だがもしも、君たちが人生に絶望することがあったなら、私はここに案内しよう。きっとこの中に絶望から救う本を見つけられる」
「僕は7歳でここに連れて来られた時、絶望していました。懺悔室で鞭打たれ、あまりの痛さに早く死んでしまいたいと思いました。でも僕はあの時の自分に言い聞かせたいです。お前は今ここで死んではいけない。お前のいるすぐ近くにこんなにたくさんの本がある。無数の本がお前に読まれる日を待っている。本を読みその知恵を取り入れることでお前は生きていける。どんなにつらくてもお前は今ここで死んではいけない」
「フェリペ・・・」
「もし必要ならこの後君はここで本を選べばいい。君が生きるために必要な本を・・・」
「いえ、今の僕に1冊の本を選ぶことはできません。ここにたくさんの本がある、それを知っただけで十分です」
「そうか。必要ならいつでも私に言いなさい。私は喜んで君たちをここに案内しよう」
「ありがとうございます、ニコラス先生」
フェリペははっきりとした声でそう言った。
「やあ、ミゲル。私はこれから孤児院へ行って子供たちを連れてくる。君はどうする?この部屋で待っていてもいいし、私と一緒に彼らを迎えに行ってもいい」
「先生と一緒に迎えに行きます」
「それならすぐに行こう」
私たちが孤児院の前に到着すると、アルバロを先頭に10人の子供が並んで待っていた。
「ニコラス先生、おはようございます。先生に言われた通りに準備して待っていました」
「僕たちは昨日作業着を洗濯して乾かし、今日は朝食の後川に行って体を洗っています。すべての準備を整えて待っていました」
「そうか、では今から図書館にある学習室に行く。前にも話したが、図書館の中に入ったら静かに行儀よくしてなければいけない」
「そうだよ、お前たち。いつものように騒いだりふざけたりしたら俺が許さないからな。絶対に静かにするのだぞ」
「はーい」
子供たちは元気よく答え、私とニコラス先生の後について一列に並んで歩き始めた。アルバロが先頭でフェリペが列の後ろを歩いている。彼らは一言も話さずに行儀よく歩いて図書館に到着した。
「今から図書館の中に入る。いいか、お前たち、この中ではしゃべったり音を立てることは許されない。いいな」
「・・・」
子供たちは声は出さずに身振りで返事をした。ニコラス先生は前に出て図書館の入り口に立っている修道士に挨拶をした。
「おはようございます。今日は院長の許可を得て、孤児院の子供たちに勉強を教えるために来ました」
「・・・」
入り口にいる修道士はフードをかぶったまま何も言わずに身振りで中を指さした。ニコラス先生の後に続いて私や孤児院の子も中に入った。私はいつも入り口に立つ修道士に簡単な挨拶をして中に入っていたのだが、ここに初めて入る孤児院の子供たちは作法がよくわかっていない。息を止め、足音を立てないように注意してフードを被ったままの修道士の前を通り過ぎた。そして入り口近くにある学習室の中に全員が入り、ニコラス先生が扉を閉めた。
「もしかして君たちは息を止めているのか」
「・・・」
「息はしてよい。息を止めたままでは苦しくなって死んでしまう」
子供たちが深呼吸する音が聞こえた。
「そんなに緊張しなくてもよい。みんな席に座りなさい」
子供たちはかたまっていてピクリとも動かない。ニコラス先生が1人ずつ手を引いて椅子に座らせた。最後に先生はアルバロとフェリペを少し大きな机の前にある席に座らせた。
「ミゲル、このテキストとノート、そしてペンをみんなに配るのを手伝ってくれ」
「は、はい」
私はニコラス先生を手伝ってテキストなどを配り、自分の席に座った。
「私の名はニコラス、普段は病院で医師として働いているが、特別にカルロス院長の許可をもらって、君たちにスペイン語やラテン語の初歩を教えることになった。ミゲルとフェリペはもう習ったことあると思うが、しばらくは私の助手をしてみんなにスペイン語を教えてくれ。それからこの学習室では騒いではいけないが、勉強に必要なことは小声で話してもよい。息を止めるほど緊張しなくてもよい」
「・・・」
緊張しなくてもよいと言われても、みんな先生が話し始めると息を止めていた。それでも先生がスペイン語のアルファベットについて説明し、みんなで唱える頃にはかなり緊張もほぐれてきた。子供たちはノートを広げて文字を書き写し、私とフェリペは机を回って書き方が間違ってないか注意した。1時間ほど字を書く練習をした後、ニコラス先生はこう言った。
「私はこれからミゲル、アルバロ、フェリペの3人を連れて図書館の他の部屋に行く。みんなは続けて字の練習をしていて欲しい」
「はーい」
子供たちは聞こえるかどうかわからないほど小さな声で返事をした。
ニコラス先生は私たちを連れて写本室に入った。たくさんの修道士が机の前に座り、本の字を写したり挿絵を描いたりしている。私が生まれる前に印刷された本が出版されるようになり、勉強で使うテキストなどはみな印刷されたものであったが、それでも手書きの豪華な写本は人気があり、修道院では昔と同じやり方で写本が作られていた。
その次に広い図書室に入った。図書館の中は学習室、写本室、図書室とすべて窓が大きく作られ、外の光がよく入るように作られていた。図書館の中でランプを使うことは固く禁じられていた。図書室には美しい装丁の本がたくさんの本棚にきれいに入れられていた。
「この図書室にどれだけたくさんの本があるか、私にもよくわからない」
ニコラス先生はそう言って微笑んだ。そして先生は図書室の奥にある小さな部屋に作られた螺旋階段を上り始めた。その階段を上るのは私も初めてである。やがて螺旋階段の前に大きな石の扉が現れた。先生は小さな鍵を使って扉を開けた。中に入り、私たちを手招きして中に入れると内側から鍵を閉めた。
「この部屋の鍵は私とカルロス院長しか持っていない。普段修道士は入ることを許されない秘密の部屋だ」
その部屋は図書館の建物を外から見た時に見える塔の中にあるのだろう。いくつもの小部屋に分かれ、それぞれの部屋が階段や廊下でつながれて迷路のようになっている。それぞれの部屋は窓が大きく明るい部屋もあればほとんど光のささない部屋もある。どの部屋にも大きな本棚が置かれ、そこにはおさまりきらない本が床に積み上げられている。
「ここの部屋の話し声は下には聞こえないから安心して話してよい」
「ニコラス先生、ここは?」
「修道士が読むことを許されていない特別な本が置いてある。ヘブライ語やギリシャ語、アラビア語で書かれた本もあれば、古代エジプトの文字で書かれた本もある。本だけではない、旅人の手記、画家のスケッチ、貴族が毎日の食事を記録したもの、聖書をラテン語からスペイン語に翻訳したもの、字で書かれたあらゆる知識がこの部屋に集められている」
「・・・」
「私は若い頃人生に絶望し、死に場所を求めてさまよっていた。偶然カルロス院長と知り合いになり、ここに連れてこられた。ここにあるたくさんの本が私を絶望の淵から救ってくれた。私はこれらの本とここで働く修道士を守るためここの病院で働くことにした。ここにどれだけたくさんの本があるのか私にもわからない。でも私はこの本を守り、次の世代に手渡したい」
「・・・」
「私は君たちの未来が明るく希望に満ちたものであることを願っている。だがもしも、君たちが人生に絶望することがあったなら、私はここに案内しよう。きっとこの中に絶望から救う本を見つけられる」
「僕は7歳でここに連れて来られた時、絶望していました。懺悔室で鞭打たれ、あまりの痛さに早く死んでしまいたいと思いました。でも僕はあの時の自分に言い聞かせたいです。お前は今ここで死んではいけない。お前のいるすぐ近くにこんなにたくさんの本がある。無数の本がお前に読まれる日を待っている。本を読みその知恵を取り入れることでお前は生きていける。どんなにつらくてもお前は今ここで死んではいけない」
「フェリペ・・・」
「もし必要ならこの後君はここで本を選べばいい。君が生きるために必要な本を・・・」
「いえ、今の僕に1冊の本を選ぶことはできません。ここにたくさんの本がある、それを知っただけで十分です」
「そうか。必要ならいつでも私に言いなさい。私は喜んで君たちをここに案内しよう」
「ありがとうございます、ニコラス先生」
フェリペははっきりとした声でそう言った。
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