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第1章 修道院での子供時代
11、フアンの世話を頼まれる
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翌日、カルロス先生は学習室に行く前に修道士の宿舎にある私の部屋に来た。
「ミゲル、部屋の移動をするので荷物をまとめなさい」
「は、はい」
「理由は昨日、ニコラス医師との話をお前も聞いていたようだから大体わかるだろう」
「は、はい。ただ娼婦という言葉と隠し子という言葉の意味がどうしてもわからなくて・・・」
突然カルロス先生の顔色が変わった。私は何か聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。
「そのような言葉は世俗の穢れた人間だけが使う言葉だ。お前のような子供は決して口に出してはいけない。よいな」
「ごめんなさい、カルロス先生。2度とそのような言葉は口に出しません」
「フアンが産まれた日のことはお前もよく覚えているな」
「は、はい」
「かわいそうに、あの子は父親と母親の顔を知らないまま孤児になってしまった。私はあの子を修道女が世話する乳児院に入れて時々会いに行っていた。だがニコラス医師が言うには、修道女の中にはフアンが娼婦の子、そしてあろうことか私の隠し子だと噂する者までいるという。そのような場所にこれ以上フアンをおくわけにはいかない。だからこの修道士の宿舎で育てることにした。わかったな」
「・・・」
わかったなと言われても、私は娼婦と隠し子という言葉の意味がよくわからないが、それは使うことが禁じられている言葉らしい。私はよくわからないままうなずいた。
「この宿舎でフアンもお前と同じ1人部屋に入れてもよいのだが、フアンはまだ3歳だ。そこでお前とフアンの2人を2人部屋に入れることを考えた。ずっと2人部屋というわけではない。フアンが5歳になるまでの2年間、同じ部屋で生活して彼の面倒を見てくれないか?」
「は、はい、カルロス先生」
8歳の私にはよくわからないことばかりだが、先生の言いつけに従うしかない。
「今からお前たちが使う部屋に行く。荷物をまとめなさい」
荷物といっても私の部屋には固定されたベッドと机があり、持ち運べる物は着替えと勉強用のテキスト、ノートぐらいである。すぐに荷物をまとめてカルロス先生が案内する2人部屋へと移動した。2人部屋の中には2人分のベッドと机があって1人部屋より少し広いが中に置いてある物はほとんど変わらない。
「2人部屋は主に修行を始めたばかりの若い修道士が使っている。修道士として修業が進むほどに瞑想で1人になる必要があるから1人部屋を使っている。私は今から乳児院へ行き、フアンを連れて来る。この部屋で待っていてくれ」
「は、はい」
カルロス先生は部屋を出て行き、私は持ってきた着替えや勉強道具を机の横の棚に入れた。部屋はきれいに掃除されベッドの上には布団と毛布も用意されていた。やることのない私は小さな窓から外をぼんやりと眺めた。
「フアンという子とこれからこの部屋で一緒に生活する。フアンは娼婦という謎の人の子で、しかも隠し子らしい。隠し子というのは秘密にしなければいけない子のことで、どんな秘密があるのだろう?僕にはわからないことばかりだ・・・」
カルロス先生が小さな男の子の手を引いて戻ってきた。
「フアン、今日からお前はここで生活することになる。ここにいるミゲルがお前にここでの生活を教えてくれる。ミゲルを兄と思ってなんでも聞くとよい。ミゲルお兄ちゃんだ」
「ミゲルお兄ちゃん?」
「・・・」
小さなフアンはまっすぐ私の顔を見てこう聞いてきた。私は顔を赤らめてドキドキした。いきなりお兄ちゃんと言われてもどう答えたらいいかわからない。
「私はこれから様々な用事がある。昼食の時間には呼びにくるから、それまでミゲルはフアンにいろいろ教えてやってくれ」
「先生、外に出てもいいですか?」
「いいだろう。昼食の時間までには戻ってきなさい」
カルロス先生は部屋を出て行き、私はよくわからない謎の子供フアンと2人だけ取り残されてしまった。
「ミゲルお兄ちゃん、これからどこへ行くの?」
小さなフアンが私の手を掴んで無邪気に問いかけてくる。スペイン語では初めて会った人と親しくしている人では話し方が違っている。フアンは初めて会った人にあてはまるのだろうか?
「初めましてフアンさん。私はミゲルという名前です。あなたにお会いできてうれしいです。どうぞよろしくお願いします」
ぎこちなく挨拶の言葉を唱えて握手のために手を差し出した。
「ミゲルお兄ちゃん、よろしく!」
3歳のフアンは何のためらいもなくさっと答えていた。
それから私はフアンを連れて孤児院へ行くことを考えた。孤児院のフェリペやアルバロなら小さな子供の扱いには慣れているはずである。フアンは足を少し引きずっていた。階段を降りる時は片手で手すりにつかまり、片手で私の手を握って1段ずつ慎重に下りている。時間をかけて階段を下り、宿舎の外に出た。薄暗い宿舎から外に出ると太陽の光がまぶしかった。私は小さなフアンと手をつないでゆっくり歩いて孤児院の近くにある家畜小屋まで来た。フェリペとアルバロがすぐに私の近くに来た。
「やあ、ミゲル。今日はカルロス院長と一緒ではないね」
「カルロス先生は忙しいから僕たち2人でここへ来た」
「その子は誰?孤児院に入るの?」
「違う。何か言ってはいけない秘密があるようで、修道士の宿舎で僕と一緒の部屋で生活することになった。僕はミゲルお兄ちゃんと呼ばれた」
「ミゲルお兄ちゃんか・・・」
フェリペがうれしそうに微笑んだ。
「それでミゲルお兄ちゃん、さっそくここへ来たということは俺たちになんか用事があるんだろう?」
アルバロも笑いながら聞いてきた。
「そうなんだ。カルロス先生にいきなり世話をして欲しいと頼まれたけど、僕はどうしたらいいかわからなくて、それで君たちに小さな子の世話の仕方を聞こうと思って・・・まず初めに新しい子が来た時の挨拶はどうするの?」
「挨拶って言っても俺はアルバロ、こいつはフェリペ、よろしく!そんなものだろう?」
「初対面の人に対しては丁寧な言葉を使わなくていいのか?」
「丁寧な言葉ってそれならミゲル、君はどんな挨拶をしたの?」
「初めましてフアンさん。私はミゲルという名前です。あなたにお会いできてうれしいです。どうぞよろ・・・」
「まさか、お前、そんな堅苦しい挨拶を小さな子供にしたのか?ハハハハハ・・・ああ、おかしい」
アルバロは大きな声で笑い出した。フェリペがアルバロの手を引いた。
「アルバロ、笑い過ぎだよ。ミゲルは僕たちと違って貴族の子だよ。将来王様に会うことだってあるかもしれないから丁寧な言葉遣いの練習をしている」
「でもここでそんな丁寧な言葉使わなくてもいいだろう。ミゲル、笑って悪かったが、俺たちは孤児院で小さな子供の世話をたくさんしてきた。困ったことがあったら遠慮なく俺たちに言ってくれ」
「僕たちにもミゲルの役に立つなんてうれしいよ」
「ありがとう。僕は小さな子の世話なんてどうしたらいいかわからないから途方にくれていた」
「カルロス院長も無茶なこと言うよな。・・・あ、この話は院長には言わないでくれ」
「ミゲルお兄ちゃん、カルロス先生に言ってはいけないことがあるの?」
フアンが泣きそうになって聞いてきた。フェリペがしゃがんでフアンと目を合わせて話しかけた。
「そうだよ、フアン。この修道院にはたくさんの決まりごとがある。特にカルロス院長には気をつけなければならない。でも大丈夫。ミゲルは賢くてやさしい。きっと君のいいお兄ちゃんになってくれるよ」
「ありがとう、フェリペ」
私はフアンと手をつないで修道士の暮らす宿舎へと戻った。
「ミゲル、部屋の移動をするので荷物をまとめなさい」
「は、はい」
「理由は昨日、ニコラス医師との話をお前も聞いていたようだから大体わかるだろう」
「は、はい。ただ娼婦という言葉と隠し子という言葉の意味がどうしてもわからなくて・・・」
突然カルロス先生の顔色が変わった。私は何か聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。
「そのような言葉は世俗の穢れた人間だけが使う言葉だ。お前のような子供は決して口に出してはいけない。よいな」
「ごめんなさい、カルロス先生。2度とそのような言葉は口に出しません」
「フアンが産まれた日のことはお前もよく覚えているな」
「は、はい」
「かわいそうに、あの子は父親と母親の顔を知らないまま孤児になってしまった。私はあの子を修道女が世話する乳児院に入れて時々会いに行っていた。だがニコラス医師が言うには、修道女の中にはフアンが娼婦の子、そしてあろうことか私の隠し子だと噂する者までいるという。そのような場所にこれ以上フアンをおくわけにはいかない。だからこの修道士の宿舎で育てることにした。わかったな」
「・・・」
わかったなと言われても、私は娼婦と隠し子という言葉の意味がよくわからないが、それは使うことが禁じられている言葉らしい。私はよくわからないままうなずいた。
「この宿舎でフアンもお前と同じ1人部屋に入れてもよいのだが、フアンはまだ3歳だ。そこでお前とフアンの2人を2人部屋に入れることを考えた。ずっと2人部屋というわけではない。フアンが5歳になるまでの2年間、同じ部屋で生活して彼の面倒を見てくれないか?」
「は、はい、カルロス先生」
8歳の私にはよくわからないことばかりだが、先生の言いつけに従うしかない。
「今からお前たちが使う部屋に行く。荷物をまとめなさい」
荷物といっても私の部屋には固定されたベッドと机があり、持ち運べる物は着替えと勉強用のテキスト、ノートぐらいである。すぐに荷物をまとめてカルロス先生が案内する2人部屋へと移動した。2人部屋の中には2人分のベッドと机があって1人部屋より少し広いが中に置いてある物はほとんど変わらない。
「2人部屋は主に修行を始めたばかりの若い修道士が使っている。修道士として修業が進むほどに瞑想で1人になる必要があるから1人部屋を使っている。私は今から乳児院へ行き、フアンを連れて来る。この部屋で待っていてくれ」
「は、はい」
カルロス先生は部屋を出て行き、私は持ってきた着替えや勉強道具を机の横の棚に入れた。部屋はきれいに掃除されベッドの上には布団と毛布も用意されていた。やることのない私は小さな窓から外をぼんやりと眺めた。
「フアンという子とこれからこの部屋で一緒に生活する。フアンは娼婦という謎の人の子で、しかも隠し子らしい。隠し子というのは秘密にしなければいけない子のことで、どんな秘密があるのだろう?僕にはわからないことばかりだ・・・」
カルロス先生が小さな男の子の手を引いて戻ってきた。
「フアン、今日からお前はここで生活することになる。ここにいるミゲルがお前にここでの生活を教えてくれる。ミゲルを兄と思ってなんでも聞くとよい。ミゲルお兄ちゃんだ」
「ミゲルお兄ちゃん?」
「・・・」
小さなフアンはまっすぐ私の顔を見てこう聞いてきた。私は顔を赤らめてドキドキした。いきなりお兄ちゃんと言われてもどう答えたらいいかわからない。
「私はこれから様々な用事がある。昼食の時間には呼びにくるから、それまでミゲルはフアンにいろいろ教えてやってくれ」
「先生、外に出てもいいですか?」
「いいだろう。昼食の時間までには戻ってきなさい」
カルロス先生は部屋を出て行き、私はよくわからない謎の子供フアンと2人だけ取り残されてしまった。
「ミゲルお兄ちゃん、これからどこへ行くの?」
小さなフアンが私の手を掴んで無邪気に問いかけてくる。スペイン語では初めて会った人と親しくしている人では話し方が違っている。フアンは初めて会った人にあてはまるのだろうか?
「初めましてフアンさん。私はミゲルという名前です。あなたにお会いできてうれしいです。どうぞよろしくお願いします」
ぎこちなく挨拶の言葉を唱えて握手のために手を差し出した。
「ミゲルお兄ちゃん、よろしく!」
3歳のフアンは何のためらいもなくさっと答えていた。
それから私はフアンを連れて孤児院へ行くことを考えた。孤児院のフェリペやアルバロなら小さな子供の扱いには慣れているはずである。フアンは足を少し引きずっていた。階段を降りる時は片手で手すりにつかまり、片手で私の手を握って1段ずつ慎重に下りている。時間をかけて階段を下り、宿舎の外に出た。薄暗い宿舎から外に出ると太陽の光がまぶしかった。私は小さなフアンと手をつないでゆっくり歩いて孤児院の近くにある家畜小屋まで来た。フェリペとアルバロがすぐに私の近くに来た。
「やあ、ミゲル。今日はカルロス院長と一緒ではないね」
「カルロス先生は忙しいから僕たち2人でここへ来た」
「その子は誰?孤児院に入るの?」
「違う。何か言ってはいけない秘密があるようで、修道士の宿舎で僕と一緒の部屋で生活することになった。僕はミゲルお兄ちゃんと呼ばれた」
「ミゲルお兄ちゃんか・・・」
フェリペがうれしそうに微笑んだ。
「それでミゲルお兄ちゃん、さっそくここへ来たということは俺たちになんか用事があるんだろう?」
アルバロも笑いながら聞いてきた。
「そうなんだ。カルロス先生にいきなり世話をして欲しいと頼まれたけど、僕はどうしたらいいかわからなくて、それで君たちに小さな子の世話の仕方を聞こうと思って・・・まず初めに新しい子が来た時の挨拶はどうするの?」
「挨拶って言っても俺はアルバロ、こいつはフェリペ、よろしく!そんなものだろう?」
「初対面の人に対しては丁寧な言葉を使わなくていいのか?」
「丁寧な言葉ってそれならミゲル、君はどんな挨拶をしたの?」
「初めましてフアンさん。私はミゲルという名前です。あなたにお会いできてうれしいです。どうぞよろ・・・」
「まさか、お前、そんな堅苦しい挨拶を小さな子供にしたのか?ハハハハハ・・・ああ、おかしい」
アルバロは大きな声で笑い出した。フェリペがアルバロの手を引いた。
「アルバロ、笑い過ぎだよ。ミゲルは僕たちと違って貴族の子だよ。将来王様に会うことだってあるかもしれないから丁寧な言葉遣いの練習をしている」
「でもここでそんな丁寧な言葉使わなくてもいいだろう。ミゲル、笑って悪かったが、俺たちは孤児院で小さな子供の世話をたくさんしてきた。困ったことがあったら遠慮なく俺たちに言ってくれ」
「僕たちにもミゲルの役に立つなんてうれしいよ」
「ありがとう。僕は小さな子の世話なんてどうしたらいいかわからないから途方にくれていた」
「カルロス院長も無茶なこと言うよな。・・・あ、この話は院長には言わないでくれ」
「ミゲルお兄ちゃん、カルロス先生に言ってはいけないことがあるの?」
フアンが泣きそうになって聞いてきた。フェリペがしゃがんでフアンと目を合わせて話しかけた。
「そうだよ、フアン。この修道院にはたくさんの決まりごとがある。特にカルロス院長には気をつけなければならない。でも大丈夫。ミゲルは賢くてやさしい。きっと君のいいお兄ちゃんになってくれるよ」
「ありがとう、フェリペ」
私はフアンと手をつないで修道士の暮らす宿舎へと戻った。
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