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第1章 修道院での子供時代
30、フアンの誕生日と復活祭の宝探し(1)
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復活祭の日は年によって違ってくる。その年とフアンが生まれた年はちょうど誕生日の3日後が復活祭だった。その年の復活祭はニコラス先生からの提案なのか、お昼には孤児院の子どもたちが修道院の食堂に招かれてご馳走を食べることができた。そういう時は私とフアンもいつもと違って孤児院の子どもたちと一緒に昼食をとることになる。食事が終わった後でニコラス先生が話し始めた。
「今日がなんの日であるか、君たちはもちろん知っているだろう。小さい子でもわかるかな?」
「はーい、イースター、復活祭です」
「では復活祭とはどういう日であるか?」
「キリストが復活した日です」
これぐらいのことは小さい子供でもよく知っていた。
「復活祭の時は卵型のお菓子を隠してみんなで探すことが昔から行われてきた。今回は土や草の中に隠すことも考えて、お菓子ではなく卵型の飾りをいろいろな場所に隠すことにした。飾りは昨日カルロス院長に隠していただいた」
「え、院長先生が隠したのですか?」
「どうしたアルバロ、何か不満でもあるのか?」
「いえ、ただカルロス院長はお忙しい方だから、こういうことはなさらないだろうと・・・」
「お忙しい方ではあるが、あの方は物を隠す名人でもある。昨日1日で見回りのついでに12個全部隠したと言っておられた」
「昨日の見回りの時に隠したのですか?そうとわかっていたら院長先生の後をついて隠すところを見ていたのに・・・」
「そんなことできるわけないだろう。すぐに見つかってしまうさ」
「とにかくこれからみんな1人ずつ外へ行って卵型の飾りを見つけて欲しい。全部で12個、見つけた飾りは本物のお菓子と交換する」
「他の子と一緒に探してもいいのですか?」
「いや、それぞれ自分で考えて見つけて欲しい。範囲はカルロス院長が歩いてまわれる場所までで、馬で行くようなところまで行ってはいけない。それから普段君たちが入ることを禁じられている修道士の部屋や図書館の上にある鍵のついた部屋に入ってはいけない。礼拝堂や写本の部屋は入ってもよいが、騒いだり邪魔をするようなことはあってはならない。それからフアンはまだ小さくて足も不自由だからミゲルと一緒に回るのがいいだろう」
「わかりました。よーし探すぞー!」
アルバロと他の孤児院の子は勢いよく食堂の外に出て行った。私とフアン、そしてフェリペだけが残っていた。
「どうした、フェリペ。探しに行かないのか?」
「もちろん行きます。でも修道院の敷地は広いので、むやみに地面を掘ったり木の上や草の中を探しても簡単には見つからないと思います。カルロス院長は信仰心の篤い方です。復活祭での宝探しでも、何か僕たちを導いてくださる、そんな場所に隠してあるのではないかと。カルロス院長がどのようなお考えで昨日見回りを行ったかを想像すれば、自然に隠し場所もわかると思います」
「なるほど・・・」
「例えばこの食堂にも・・・」
修道院の食堂にはキリストの最後の晩餐の絵が飾られていた。壁に直接描いたフレスコ画ではないし、有名な画家の絵でもない。それでもその絵があることで食堂にはおごそかな雰囲気が漂っていた。
「あの絵の下にある説教台のところでカルロス院長は食事の前にお祈りしています。あそこの引き出しを開けてもいいですか?」
フェリペは静かに立ち上がって歩き、引き出しを開けて卵型の飾りを取り出した。
「ありました!」
「ヒントをつかんだようだな、フェリペ。だがそれはミゲルとフアンには言わないでくれ」
「わかりました。僕も外に行って探してきます」
フェリペもまた食堂の外に出て行った。ふと隣の椅子に座っているフアンを見ると目を閉じている。
「おい、フアン、寝ているのか」
返事はない。私はイライラしてきた。
「おい、フアン、起きろよ。みんなもう外に行ってるよ」
「ミゲル、フアンはまだ4歳になったばかりだ。昼間眠くなることもあるのだろう」
「だってこうしている間にもみんな見つけてしまいますよ。フェリペなんて手掛かりがわかったみたいで、さっそく1個見つけてしまったし・・・」
「あせらなくてよい。カルロス院長は物を隠す名人だ。そう簡単に残りの11個は見つけられない。おそらく1番たくさん見つけるのはフアンだ」
「本当ですか、ニコラス先生」
ニコラス先生は笑いながら大きくうなずいたが、私はもう心配でしょうがない。こうしている間にも他のみんながどんどん見つけているような気がする。フアンの食後のお昼寝に付き合っている暇はない。
「ミゲルお兄ちゃん、ロバのビエホーのところに行こう!」
フアンが寝ていたのは短い時間だったかもしれないが、私には長い時間に思えた。
「ロバなんて毎日見ているだろう。僕は卵を探しに行く!ロバは後回しだ!」
「いやだー、ビエホーのところに行く!」
フアンが大声で泣き出した。私は助けを求めてニコラス先生の顔を見たが、先生は笑っているだけだった。
「しょうがないなあ。ロバのビエホーの所に行くよ」
とたんにフアンは泣き止み笑顔になった。私は彼を抱き上げて椅子から下した。彼は少し大きくなったがまだ椅子に座った時に足が届かない。普通の4歳の子供に比べてかなり小柄だとニコラス先生は言っていた。足も不自由なので階段を下りるのには時間がかかるし、外に出ても走れない。フアンと手をつないでゆっくり家畜小屋に向かった。
家畜小屋に着き、ロバのビエホーのいるところまで来た。いつものようにフアンを抱き上げてロバの顔と同じ高さになるようにした。
「ビエホー、元気だった?僕は元気だよ」
ロバへの挨拶など早く終わらせて欲しいのだが、彼は決まったことをしないと気が済まないらしい。
「そうか、カルロス先生も昨日近くに来たんだね。大丈夫、カルロス先生はやさしい人だから鞭で叩いたりはしない。乾草の束のところに・・・うん、わかった、ありがとう。ミゲルお兄ちゃん、乾草のところに行って!」
フアンに命じられるままに、彼を抱えて乾草のある場所へ行った。彼を下におろすとすぐに乾草の中に手を入れた。
「あったよ、ミゲルお兄ちゃん。卵の飾り」
うれしそうに発見した卵型の飾りを見せに来た。
次にフアンは私の手を引いて広場に行った。みんな考えることは同じなのか、私たちが公現祭の時に劇を行った場所はあちらこちら掘り返した跡があった。
「フアン、ここは無理だよ。キリストの誕生した劇を行ったから、みんなそれに気づいて見つけているよ」
「うん、天使に会った場所と僕がフェリペお兄ちゃんに抱かれていた場所はもう掘ってあって何もない。でも復活の場所はまだ卵が隠してある」
「復活の場所?」
「そう、ミゲルお兄ちゃんが死んだ後に復活して姿を現す場所。この広場の中にあるけど、劇をやった場所とは違うから誰も気づいてない」
「僕はまだ死んではいないよ」
フアンがまた変なことを言い、私はムッとした。彼がキリストの物語と私のことをごちゃ混ぜにして話すことがあると知ってはいるが、それでも目の前で無邪気な声で死んだ後復活したなどと言われてはいい気はしないし、何よりも不謹慎である。
「ここにミゲルお兄ちゃんは大きな光を持って立っている」
フアンが指さした場所は土の色が少し変わっていた。そっと掘り返すと卵型の飾りを見つけた。
「フアン、あったよ。これで2つ目だ。フアン、お前すごいじゃないか」
私は喜んだが彼は悲しそうな顔をした。そしてついに泣き出してしまった。
「どうした、フアン?」
「だってミゲルお兄ちゃんは死んだから復活したんだよ。鞭打たれ酷い苦しみの中で死んでいった」
私は彼の心の中でキリストと同一視されている。
「フアン、僕はキリストではない。普通の人間だ。だから苦しみの中で死ぬこともないし復活することもない。お前はいろいろな話をごちゃ混ぜにしている」
「僕のせいでお兄ちゃんは捕まってしまった。僕は復活祭の3日前に生まれた子だから・・・」
復活祭の3日前に何があったか思い出してぞっとした。
「大丈夫だ。フアン。僕は殺されたりはしない。お前はいろいろな話をごちゃ混ぜにしている。泣かなくていい、僕がお前を守るから心配しなくていい」
あの時は確かにそう思ったが、その後私は自分の人生での出来事を考えるのが精一杯で、フアンのことを考える余裕はなかった。まだ何も知らなかったあの頃、私はキリストの生涯をフアンと辿りながら、自分の未来についても彼と一緒に辿っていたのかもしれない。
「今日がなんの日であるか、君たちはもちろん知っているだろう。小さい子でもわかるかな?」
「はーい、イースター、復活祭です」
「では復活祭とはどういう日であるか?」
「キリストが復活した日です」
これぐらいのことは小さい子供でもよく知っていた。
「復活祭の時は卵型のお菓子を隠してみんなで探すことが昔から行われてきた。今回は土や草の中に隠すことも考えて、お菓子ではなく卵型の飾りをいろいろな場所に隠すことにした。飾りは昨日カルロス院長に隠していただいた」
「え、院長先生が隠したのですか?」
「どうしたアルバロ、何か不満でもあるのか?」
「いえ、ただカルロス院長はお忙しい方だから、こういうことはなさらないだろうと・・・」
「お忙しい方ではあるが、あの方は物を隠す名人でもある。昨日1日で見回りのついでに12個全部隠したと言っておられた」
「昨日の見回りの時に隠したのですか?そうとわかっていたら院長先生の後をついて隠すところを見ていたのに・・・」
「そんなことできるわけないだろう。すぐに見つかってしまうさ」
「とにかくこれからみんな1人ずつ外へ行って卵型の飾りを見つけて欲しい。全部で12個、見つけた飾りは本物のお菓子と交換する」
「他の子と一緒に探してもいいのですか?」
「いや、それぞれ自分で考えて見つけて欲しい。範囲はカルロス院長が歩いてまわれる場所までで、馬で行くようなところまで行ってはいけない。それから普段君たちが入ることを禁じられている修道士の部屋や図書館の上にある鍵のついた部屋に入ってはいけない。礼拝堂や写本の部屋は入ってもよいが、騒いだり邪魔をするようなことはあってはならない。それからフアンはまだ小さくて足も不自由だからミゲルと一緒に回るのがいいだろう」
「わかりました。よーし探すぞー!」
アルバロと他の孤児院の子は勢いよく食堂の外に出て行った。私とフアン、そしてフェリペだけが残っていた。
「どうした、フェリペ。探しに行かないのか?」
「もちろん行きます。でも修道院の敷地は広いので、むやみに地面を掘ったり木の上や草の中を探しても簡単には見つからないと思います。カルロス院長は信仰心の篤い方です。復活祭での宝探しでも、何か僕たちを導いてくださる、そんな場所に隠してあるのではないかと。カルロス院長がどのようなお考えで昨日見回りを行ったかを想像すれば、自然に隠し場所もわかると思います」
「なるほど・・・」
「例えばこの食堂にも・・・」
修道院の食堂にはキリストの最後の晩餐の絵が飾られていた。壁に直接描いたフレスコ画ではないし、有名な画家の絵でもない。それでもその絵があることで食堂にはおごそかな雰囲気が漂っていた。
「あの絵の下にある説教台のところでカルロス院長は食事の前にお祈りしています。あそこの引き出しを開けてもいいですか?」
フェリペは静かに立ち上がって歩き、引き出しを開けて卵型の飾りを取り出した。
「ありました!」
「ヒントをつかんだようだな、フェリペ。だがそれはミゲルとフアンには言わないでくれ」
「わかりました。僕も外に行って探してきます」
フェリペもまた食堂の外に出て行った。ふと隣の椅子に座っているフアンを見ると目を閉じている。
「おい、フアン、寝ているのか」
返事はない。私はイライラしてきた。
「おい、フアン、起きろよ。みんなもう外に行ってるよ」
「ミゲル、フアンはまだ4歳になったばかりだ。昼間眠くなることもあるのだろう」
「だってこうしている間にもみんな見つけてしまいますよ。フェリペなんて手掛かりがわかったみたいで、さっそく1個見つけてしまったし・・・」
「あせらなくてよい。カルロス院長は物を隠す名人だ。そう簡単に残りの11個は見つけられない。おそらく1番たくさん見つけるのはフアンだ」
「本当ですか、ニコラス先生」
ニコラス先生は笑いながら大きくうなずいたが、私はもう心配でしょうがない。こうしている間にも他のみんながどんどん見つけているような気がする。フアンの食後のお昼寝に付き合っている暇はない。
「ミゲルお兄ちゃん、ロバのビエホーのところに行こう!」
フアンが寝ていたのは短い時間だったかもしれないが、私には長い時間に思えた。
「ロバなんて毎日見ているだろう。僕は卵を探しに行く!ロバは後回しだ!」
「いやだー、ビエホーのところに行く!」
フアンが大声で泣き出した。私は助けを求めてニコラス先生の顔を見たが、先生は笑っているだけだった。
「しょうがないなあ。ロバのビエホーの所に行くよ」
とたんにフアンは泣き止み笑顔になった。私は彼を抱き上げて椅子から下した。彼は少し大きくなったがまだ椅子に座った時に足が届かない。普通の4歳の子供に比べてかなり小柄だとニコラス先生は言っていた。足も不自由なので階段を下りるのには時間がかかるし、外に出ても走れない。フアンと手をつないでゆっくり家畜小屋に向かった。
家畜小屋に着き、ロバのビエホーのいるところまで来た。いつものようにフアンを抱き上げてロバの顔と同じ高さになるようにした。
「ビエホー、元気だった?僕は元気だよ」
ロバへの挨拶など早く終わらせて欲しいのだが、彼は決まったことをしないと気が済まないらしい。
「そうか、カルロス先生も昨日近くに来たんだね。大丈夫、カルロス先生はやさしい人だから鞭で叩いたりはしない。乾草の束のところに・・・うん、わかった、ありがとう。ミゲルお兄ちゃん、乾草のところに行って!」
フアンに命じられるままに、彼を抱えて乾草のある場所へ行った。彼を下におろすとすぐに乾草の中に手を入れた。
「あったよ、ミゲルお兄ちゃん。卵の飾り」
うれしそうに発見した卵型の飾りを見せに来た。
次にフアンは私の手を引いて広場に行った。みんな考えることは同じなのか、私たちが公現祭の時に劇を行った場所はあちらこちら掘り返した跡があった。
「フアン、ここは無理だよ。キリストの誕生した劇を行ったから、みんなそれに気づいて見つけているよ」
「うん、天使に会った場所と僕がフェリペお兄ちゃんに抱かれていた場所はもう掘ってあって何もない。でも復活の場所はまだ卵が隠してある」
「復活の場所?」
「そう、ミゲルお兄ちゃんが死んだ後に復活して姿を現す場所。この広場の中にあるけど、劇をやった場所とは違うから誰も気づいてない」
「僕はまだ死んではいないよ」
フアンがまた変なことを言い、私はムッとした。彼がキリストの物語と私のことをごちゃ混ぜにして話すことがあると知ってはいるが、それでも目の前で無邪気な声で死んだ後復活したなどと言われてはいい気はしないし、何よりも不謹慎である。
「ここにミゲルお兄ちゃんは大きな光を持って立っている」
フアンが指さした場所は土の色が少し変わっていた。そっと掘り返すと卵型の飾りを見つけた。
「フアン、あったよ。これで2つ目だ。フアン、お前すごいじゃないか」
私は喜んだが彼は悲しそうな顔をした。そしてついに泣き出してしまった。
「どうした、フアン?」
「だってミゲルお兄ちゃんは死んだから復活したんだよ。鞭打たれ酷い苦しみの中で死んでいった」
私は彼の心の中でキリストと同一視されている。
「フアン、僕はキリストではない。普通の人間だ。だから苦しみの中で死ぬこともないし復活することもない。お前はいろいろな話をごちゃ混ぜにしている」
「僕のせいでお兄ちゃんは捕まってしまった。僕は復活祭の3日前に生まれた子だから・・・」
復活祭の3日前に何があったか思い出してぞっとした。
「大丈夫だ。フアン。僕は殺されたりはしない。お前はいろいろな話をごちゃ混ぜにしている。泣かなくていい、僕がお前を守るから心配しなくていい」
あの時は確かにそう思ったが、その後私は自分の人生での出来事を考えるのが精一杯で、フアンのことを考える余裕はなかった。まだ何も知らなかったあの頃、私はキリストの生涯をフアンと辿りながら、自分の未来についても彼と一緒に辿っていたのかもしれない。
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