倒したらめっちゃEXP貰える敵が倒せない

あの人

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メタルのスライム

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街の酒場で聞いた噂。
「東の森に出る、倒したらめっちゃEXPくれる敵」を探して遥々やってきて早二日。

道中エンカウントする敵をかたっぱしから倒しながら進んできたけど、それらしい敵には遭遇していない。

噂を頼りに街で色々と聞き込みをしたところ、実際に倒したという冒険者に話を聞けた。

なんでも、通常のスライムは青い透き通った身体をしているのに、そのスライムは銀色に輝いていたらしい。何度切り付けても手応えがなかったが、たまたまラッキーパンチで倒せてしまったと言う。倒してみると、通常では考えられないEXPを得て、ランクが爆発的に上がったと自慢げに語っていた。

その話しを酒場でしてからというもの、他の冒険者たちもその“メタルのスライム ”を倒して楽にランク上げをしてやろうと、こぞって東の森へ向かったが、メタルのスライムを倒したという報告はない。

そしてオレもその一人。

メタルのスライムを探しているうちにまた夜になってしまった。

持ってきた食料は三日分。帰路のことも考えると今晩がラストチャンス。

「何人もの冒険者たちが探し回っても倒せてないんだもんなぁ」

そうそう美味しい話は転がってないってことか。

探索を諦めて、テントを張って拠点にしているキャンプに戻ろう。

・・・・・・・・・・・・

ん? 草場の影で何かがキャンプの焚き火の光に反射している。

――まさか!

オレは剣を構えて腰を落としゆっくりと、息を殺して“反射する何か ”に近づく。

目を凝らすとそこには銀色に輝くスライムがいた!

(マジか! ウソだろ、あれだけ探し回った“ メタルのスライム”が自分からやってくるなんて、なんてツイてるんだ!)

今にも叫んでしまいそうな程に興奮する心をグッと押さえ込んで、一歩、また一歩と少しずつ距離を詰める。

あと数歩近づけば剣の間合いに入る。

・・・・・・ん?

何やら声が聴こえてくる。

「ママァ、お腹すいたよォ」

「待っててね、今何か用意するから」

ん? あれ? 銀色の塊が二つある・・・・・・まさか、二匹もいるのか!?

ん? あれれ? というか、スライムって言葉喋るの? 

ん? あれれれ? お母さん? え? 親子なの?

「ねえ、どうして最近は夜ご飯こんなに遅いの?」

「仕方ないでしょ、ママお仕事してるんだから」

「この間まではパパがお仕事してたもん! 夕方にはパパが帰ってきて一緒にごはん食べてたもん!」

「・・・・・・パパは遠くにお仕事にいってるから」

えっと、な、なんか暗くない? 深刻な雰囲気じゃない?

「じゃあいつ帰ってくるんだよぉ! ボク、パパに会いたいよぉ」

「ワガママ言わないの! ママだって寂しいのよ!」

「うぅ、うわぁーーーーーーん!」

あぁ、泣き出しちゃったよ子供のスライム。パパスライム出張中かな。わかるなぁ。オレの親父も冒険者で一回遠征に行くと数ヶ月は帰ってこなくて寂しかったもんなぁ。

「ご、ごめんね。ママ言い過ぎたわ。泣かないで」

「・・・・・・ぐすっ・・・・・・ボク、知ってるんだ」

「・・・・・・『 知ってる』って何を?」

「パパ、殺されちゃったんだ! わるいニンゲンに!」

「ど、どうしてそれを!」

あっれー、殺された?  何か最近そんな話聞いた気が・・・・・・

「ママが夜ひとりで泣いてるの見たもん! 泣きながらおばあちゃんと話してるのも聴いちゃったもん!」

「あ、あなたそれを知ってて・・・・・・」

「ママがボクに言わないのはきっと何か理由があるんだ、そのうちきっとボクにもちゃんと話してくれると思ってガマンしてたんだ」

「・・・・・・」

「パパが言ってたもん『男はガマン 』って。でも約束破っちゃった・・・・・・」

「いいの、いいのよ。ママが間違ってたわ。まだまだ子供だと思ってたけど、成長してたのね」

「だからね、ママ、もうひとりで泣いちゃダメだよ」

「ゔっうう・・・・・・ごめんね」

「・・・・・・ママ」

・・・・・・・・・・・・いや、EXPどころじゃないんですけど。こんなん倒せるわけないんですけど。オレ、絶対パパ殺したやつ知ってるんですけど。

これはダメだ、涙とまんねぇ。なんていい子なんだ子供スライム。

「――アッ! ママ、そこに人間が!」

しまった! 見つかった!

「あ、アナタ、私たち親子を殺しに来たの!?」

「い、いや、全然そんなんじゃなくて・・・・・・」

思いっきり殺しに来ました。

「お願いします、私はどうなっても構いませんからこの子だけは!」

「あ、いや、あの、ホントにそういうつもりじゃないですから、ホント。ただここを通りがかっただけっていうか」

「やめろぉ! ボクのママにひどいことするなぁ!」

「ボク? 違うよ、むしろもう君たちのファンっていうか、君たちは命にかえても絶対守るっていうか」

「やめなさい! ママの後ろにいなさい!」

「やだ! パパのかたきだ!」

「ダメよ! あなたまでいなくなったらママどうすればいいの」

「うおぉぉぉ! ボク達からはなれろ! ママはボクが絶対に守るんだ! この!このぉ!」

もうEXPなんていらねえ、こんなの倒せねえよ! ママを大切にしろよチクショウ!



オレは“メタルのスライム ”から逃げ出した。
獲得EXP0 ゴールド0
なんとも言えない気持ちと最近実家帰ってないしちょっと顔出してみようかなを獲得した。
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