最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第一章 地上編

第十三話 風の呪文

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「ラルド君、火の呪文はどうやって覚えたのかしら?」
「姉さんが買ってきてくれた、呪文の本で覚えました。その本によると、イメージが大事とかなんとか」
「イメージねぇ……当たらずとも遠からずというところかしら」
「どういうことですか?」
「呪文ってものはね、使うのに必要なものがあるの。知ってると思うけど、まずは魔力。けど、これは最低限あればそれで良いのよ。ラルド君は自分に魔力はほとんど無いって言っていたけれど、火の呪文を使える魔力があれば、そのまま他の呪文だって使えるわ」
「じゃあ、試してみても良いですか? 風の呪文が使えるかどうか」
「本で学んだ通りにやってちょうだい。ダメなところは私が正してあげるから」

 ラルドは目をつむり、風を強くイメージした。しかし、手のひらの上に風は一切発生しない。ラルドは顔が真っ赤になるまで力を込めたが、結局風は発生しなかった。疲れ切ったラルドはその場にへたり込んでしまう。

「はぁ……はぁ……出来ませんでした」
「じゃあ、今度は私の呪文を唱える姿を見ていてくれる?」
「わかりました」

 ジシャンは目をつむることも踏ん張ることもなく、指パッチン一つで風の玉を発生させた。

「す、凄い。一体あの一瞬で何をしたんですか」
「指パッチンをしただけよ。正しく言うなら、見掛けは指パッチンをしただけってことね」
「では、やっぱりイメージしたりしてるんですか?」
「うーんそうね、イメージしたというよりは、風を捕まえたのよ」
「風を、捕まえる……?」

 ラルドは全くわからない言葉に困惑する。

「ラルド君が読んだ本には書かれていなかったかもしれないけれど、この世は呪文が使えるように環境が整備されているの。例えば、ほら、あそこ」

 ジシャンはベッサ城の頂きを指差す。目で追うと、頂きで小さなプロペラが回っていた。

「ああいうのを魔導機って言ってね、一定の範囲内で呪文が使えるようになるの。あれがある場所では、風の呪文が使えるってわけ」
「その魔導機が一番大事ということですか?」
「そうね。あれが無いとよほど一流の魔法使いでもない限り使えないわ。ラルド君が火の呪文を放てるってことは、この王国のどこかに火の流れを生み出している魔導機があるということよ」
「火の流れ……それがあるってことはつまり、風の流れもあるということでしょうか」
「その通り。ほら、ちょうど心地良い風が吹いているでしょう?」

 草が揺れる程度のそよ風を、ラルドは感じた。

「は! これが風の流れ!」

 ラルドはその瞬間風をイメージした。すると手のひらの上に風の玉が発生した。

「で、出来た! ジシャン様、僕にも出来ました!」
「良いわね。ばっちりよ」
「あとはこの風を上に放てば……」

 ラルドは風の玉を上に飛ばした。その流れに乗ってラルドも高く上がる。

「あは、凄いや。ジシャン様があんなに小さいよ」

 着地時も、風の玉で落下を緩和し安全に着地出来た。

「やるじゃないラルド君」
「いえいえ、ジシャン様の教え方が上手かっただけですよ。魔導機なんて物も知らなかったですし」
「それじゃあ、これをあげるわ」

 ジシャンはポーチから地図を取り出した。ラルドは受け取った地図を見る。

「これはなんの地図でしょうか」
「全世界の魔導機がある場所を記した地図よ。私はもう暗記してるから、あなたにあげる」
「ありがとうございます」

 ラルドは地図をカバンにしまった。

「そういえばジシャン様、一流の魔法使いは魔導機が無い場所でも呪文が使えるって言ってましたよね。その人たちは一体どうやって呪文を唱えているんですか?」
「これよ」

 ジシャンはペンダントを前に突き出した。

「これはどの呪文も唱えられる魔導機よ。私や他の一流魔法使いは、勉強の果てにこれをもらうのよ」
「全員に渡せば良いのに、なんで特定の人だけに渡しているのですか?」
「私が生まれるずーっと前にそう考えた人もいたんだけどね、悪用する輩がたくさんいたから世界中の魔導機が使えないようにされちゃったの。そこから反省して、魔導機は国が管理することになったのよ」
「そうだったんですね」
「あとは、魔王を討伐したレイフとウォリアももらっているはずよ」
「レイフ様が呪文を使っているところはこの前見ましたね」
「サフィアちゃんを見つけたら、あなたにもこの魔導機がプレゼントされるかもね。これのためにとは言わないけど、サフィアちゃんを見つけられるよう頑張ろうね」
「はい!」
「さあ、まだまだ風の呪文を安定して出せるように練習しましょ」

 ラルドとジシャンは、日が暮れるまで練習した。
 すっかり外は暗くなってしまったので、二人はレイフの家に入る。

「ただいまー。今からご飯を作るわね」
「二人ともお帰りなさい」

 キャイが出迎えた。

「あら? レイフたちはどうしたの」
「魔王スゴロク満喫中よ。未だ一周終わってないらしいわ」
「私がご飯を作り終える頃には終わってるかしら」
「終わってると思うわよ。さあ、ラルド君はこっちへ」
「ジシャン様、美味しいご飯、期待してます」

 ジシャンはキッチンへ、ラルドはいつもの部屋へ向かった。

「くー、最後の最後で誰も魔王が倒せないとは」
「もう引き分けで良くないか?」
「流石にこれだけ進まないと、飽きが来るな」

 キャイの言う通り、三人は魔王スゴロクで遊んでいた。

「レイフ様、もう少しで夕飯ですよ。そのへんで終わった方が良いんじゃないですか?」
「そうだなぁ。エメ、ウォリア、今回は引き分けってことで良いか?」
「ギギィ……仕方ない。今回は引き分けだ」
「やむをえんな。俺も引き分けで良い」

 エメは魔王スゴロクを畳むと、ラルドのカバンに戻した。それと同時に、レイフが立ち上がる。

「さて、それじゃあキッチンの方を見てくるか。配膳とか手伝ってやんないとな。ウォリア、手伝ってくれ」
「おう」
「僕たちは手伝わなくても大丈夫なんですか?」
「今日はそんなに豪華な飯でもないだろうから、三人で十分だ。ラルド君とエメ君は座って待っていてくれ」
「はい、わかりました」

 レイフとウォリアはキッチンへと向かっていった。
 エメは、修行の成果をラルドに訊ねる。

「ラルド、呪文の方はどうだったんだ?」
「風の呪文を使えるようになったよ。どうやら、魔導機っていうのがある場所でしか使えないみたいだけどな」
「魔導機なんてもんがあるんだな。初めて知った」
「ジシャン様がつけてるペンダント、あれも魔導機らしいんだ。辛い辛い勉強の果てにようやくもらえる程の物らしい」
「俺にそんなこと言っちゃって良いのか? 盗んじまうかも知れないぜ?」
「盗んだらすぐに契約を解除してぶっ殺す」
「じょ、冗談だよ、冗談。ささ、足音が聞こえてきたぞ。そろそろ飯だ」
「ラルド君、エメ君、おまたせ。今日のご飯はその辺で釣った魚だ」

 三人は配膳をする。配膳を済ましたら、座った。全員は手を合わせ、いただきますと言った。食事中、エメがジシャンに話しかけた。

「ジシャン、この魚は一体なんの魚だ?」
「うーん、ベッサウオかしらね。この辺で釣ったとなると」
「ジシャン様の調理は凄く美味しいですね。これまで食べてきた物で二番目に美味しいです」
「ふふ、ありがとう」

 あっという間にベッサウオを平らげた男たちは、ごちそうさまをした。

「さあ、飯も食ったし、さっさと寝にいくか」

 エメは真っ先に二階へ上がっていった。ラルドも席を立ち上がろうとすると、レイフに止められた。

「ラルド君、もしも俺たちが戦った夢を見たら、今度こそ魔王がサフィアに伝えようとしていたことを教えてくれ」
「はい、必ず魔王の言いたかったことを暴いてみせます」

 ラルドは二階へと上がっていった。
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