最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第二章 空中編

第三十話 スカイ王国国王主催トーナメント 五

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「さあ今、決戦が始まろうとしています。皆さま、戻ってきましたでしょうか。ランチタイムはおしまいですよー」

 観戦席は人で溢れている。席は全て埋まっており、他の者たちは立っている。
 病室から出たクシーは、闘技場の目の前にまで着いた。そのまま扉の方へ向かう。指パッチンをして、家族をあらかじめ複製した。

「この試合、絶対勝つぞ」

 クシーは家族を奮い立たせた。一方サフィア捜索会も、決勝戦前の儀式をしていた。

「さあ、全員私の手の上に手を置くんだ」
「なんの意味があるんだい?」
「こうすると、チームワークが高まるんだ。昨日、ラルドとそのテイムする魔物ともした」
「なんだかゴツい見た目の割に可愛いところあるんだな」
「か、可愛い……? これが私たちの世界では普通だが……」
「まあ良いや。手を乗せよう」

 一行の全員が手を上に置き、ニキスの号令とともに天へ掲げた。

「両者とも準備が整ったようです。それでは扉を開きましょー!」

 モゴロの声とともに、扉が開く。カワネギとサフィア捜索会は中へと入っていった。

「さー、ラルド君。晴れの舞台だ。全力でかかってきなさい」
「クシーさんこそ、手を抜かないでくださいよ」
「では。三、二、一……試合開始!」

 試合が始まった。まずはジシャンが水の呪文でクシー以外の者を蒸発させた。クシーは急いで火球を作る。隙だらけなので、ラルドはメジスに乗り急接近した。だが、剣は身体を貫通し、斬れなかった。

「な、実体はあるはずなのに、剣が効かないなんて……」
「ほぉら出来あがったぞ。火球だ。これでお前たちの視界を封じる」

 クシーは出来あがった火球を自慢げに見せるが、ニキスからもらった物の力で全く効果がない。

「ほう、俺の火球を見ても平気とは、やるではないか。だが、ぶつけたらどうなるかな?」

 クシーはカタラたちに向かってやったように、火球を押し付けてくる。ジシャンはそれに大量の水をかけ、なんとか避けられる程度の大きさになった。一行は全員避けた。

「おぉーっと、クシー選手、主力を早速潰されてしまったー。果たしてどう出るのでしょうか」
「なーに、これはまだ序章に過ぎない。さあ、俺の本気を見せてやろう」
「まずい。何かする気だ。攻撃しても止められない……どうすれば良いんだ」
「あの構えは……あらゆる属性の呪文を使うつもりだな。私たちも呪文で対抗しよう」
「えぇ。そんなこと言ったって、俺たち魔物は呪文を使えないぞ」
「ならば端っこで見ていろ。くれぐれも飛び火に当たったりするなよ」

 魔物を除いた一行は、呪文の玉を作り始めた。

「ほほう、真っ向から立ち向かうか。俺の魔力を、なめるなよ」

 クシーは勢い良く七色の呪文を放った。それに対抗して、ラルドたちも呪文を放つ。ぶつかり合う両者の呪文。ニキスなら【退屈】の一言で片付けそうな戦況が続く。

「ちっ、このままじゃらちが明かない。誰か、あいつに攻撃をしてくれ」
「でも、物理攻撃は当たらなくて、呪文も拮抗してる。どうやって攻撃しろって言うんだ」
「ふむぅ……そう言われるとわからないなぁ。心眼もないだろうし。うーむ」
「お前、随分と余裕そうだな」
「このまま試合はのんびり続くだろうからな。まったく、あくびが出そうだ」
「とりあえず僕が近づいて攻撃してみるよ。さっき斬ったところがたまたまダメだった可能性もあるし。メジスに乗れば、きっと向かい風にだって対抗できる」
「ふむ。じゃあ、頼んだぞ」

 ラルドはメジスに乗ると、向かい風を受けながらも前へ進んだ。メジスの脚力は凄まじく、ほんの一瞬でクシーの近くへ移動した。ラルドはクシーのそこら中に剣を入れる。しかし、どこもダメージが通っている感じがしない。

(ちくしょう、全然ダメだ。一体この人の弱点はなんなんだ……?)

 ラルドはメジスを走らせ、一行の場所に戻った。どこを斬っても貫通してしまうことをニキスに話した。

「ほう、そうか。この状態が永遠に続くと」
「クシーさんは疲れてる様子がなかった。こっち側もまだまだやれるから、本当にその通りだな」
「はぁ……せっかくの決勝戦がこんなんじゃ、誰も興奮しないよなぁ」

 ニキスは周りを見渡す。やはり観戦席から歓声は聞こえない。あくびをしている者までいた。

(何か策はないか……考えろ、考えるんだ)

 ラルドは呪文を放ちながら考える。この状況を打開する一手が思いつかない。

(確かカタラたちとの試合の結果はほぼ引き分けだった。あのとき、クシーさんが倒れたのは……は! そうか!)
「僕、良いこと思いつきました。ニキス、手伝ってくれるか?」
「ふん。ようやくこの状況が変わるか。して、私に何を手伝ってもらいたいんだ?」
「爆発呪文を二回受け止めてほしい。さっきの試合で、クシーさんは爆発呪文を二回も撃った疲労で倒れたんだ。僕たちが食らえばひとたまりもないけど、お前なら耐えられるだろう?」
「人使いが荒いな。爆発呪文の盾になれだなんて」
「それしか無いんだ。あの人が爆発呪文を使うように仕向けるから、頼んだぞ」
「まあ、良いだろう。早速取りかかってくれ」
(まずはクシーさんを怒らせることから始めなくちゃいけないな)

 既に二人は仲良くなってしまっている。仲良し相手を怒らせるのは、かなり難しいだろう。ラルドはどう怒らせるか、考えた。

(……心苦しいけど、今はこれしかないか)
「火で家族を再現してる可哀想なクシーさーん。あなたの力はその程度でちゅかー?」
「な、なんだと!」
(よし、作戦成功だ!)
「ニキス、あとは頼んだ!」

 ラルドは急いでニキスの後ろに隠れる。ニキスは全ての呪文を一つの身で受ける。そしていよいよ、爆発呪文のときがきた。

「ふんぬぅぅ! 食らえー!」

 爆発の瞬間、ニキスは前に出て、受け止めた。ニキスは少し腹をさする。

「……思ったより痛かったなぁ」
「痛かっただろう? まだまだいくぜ! ふんぬぅ!」
「うっ。二発でこの威力……やるな。でも、もう終わりか」

 いよいよ戦いが終わると思われた。しかし、まだクシーはピンピンとしている。

「まだ何発でも撃てるぞ。全てコクリュウに受け止めさせるつもりか?」
「ニキス、大丈夫か?」
「ふん。爆発くらいなら、どうとでもなる」
「無理だけはしないでね。私の結界呪文だってあるから」
「話してる場合か? 三発目、いくぞ!」
「ふん!」
「四発目!」
「ふんぅ!」
「五発目!」
「ま、まだやるか」

 六発、七発……なぜか尽きないクシーの体力に、一行は驚く。

「ニキス、本当に大丈夫か」
「私の強さは知っておろう。この程度の爆発呪文、なんとも、ない……」
「は、八発目!」
「ぐぅ! げほっ、げほっ。いかん、煙が出すぎだ……」
「はぁ、はぁ、九発目ぇ!」
「ぐはぁ!」
「ニキス!」
「まだまだ……この私に咳を吐かせたことは認めよう。だが、負けることは決してない!」
「ふぅ……ふぅ……じゅ、十発目!」
「ぐおぉ! ま、まだまだ……」
「待って! クシーさん、もうやめてください!」
「ラルド!? バカ、前に出るんじゃない!」
「クシーさん、それ以上爆発呪文を使ったら死んでしまいますよ!」
「はぁ、はぁ、俺の願いのためなら、この命、軽いもんだ……くっ」

 クシーはその場にひざまずいた。片手をラルドに向けている。

「これで最後だ……コクリュウの後ろに隠れていようと、避けることはできない! うぉぉー!」

 クシーの手が一瞬光ると、戦場を覆うほどの大爆発がおきた。闘技場全体を覆うほどの煙が発生する。

「クシー選手の驚きの大技! 果たしてサフィア捜索会は無事なのかー! げほっげほっ」

煙が段々晴れてきて、戦場が見え始めた。

「……ふぅ。良かった。みんな、間に合ったみたいね」

 一行は結界の中にいたため、無事であった。結界はひび割れており、その威力の高さがうかがえる。一方、最後の大技を放ったクシーは、その場に仰向けになっていた。ラルドが駆け寄る。

「クシーさん、クシーさん!」
「どうした。勝ちだぞ。喜べよ」
「あんな大技を撃たなくたって良かったじゃないですか! せっかく生き残ったのに、死んじゃうなんて……」
「……その件だが、俺は思い出したのだ」
「え?」
「俺は……もう死んでいたんだ。お前の姉が黒煙を凝縮して出来あがった、模造品だったんだ。それを今さっき思い出した」
「だから、あんな大技を……」
「死者が戦場で踊るなど滑稽なことだ。ここで散ろう……」
「あぁ……クシーさん……」

 クシーの身体が徐々に消えていく。クシーはそれを安らかな顔で受け入れる。

「最期に言っておきたいことがある。お前の姉に会ったら、俺が感謝していたことを伝えてくれ」
「ぐすっ……はい、必ず伝えます」
「そろそろ全身が消える時間だな……ありがとう。最期の戦い、熱かったぜ……」
「クシーさん!」

 クシーは完全に消え去った。

「勝者、サフィア捜索会! 優勝は、サフィア捜索会に決定した!」

 これでもかと歓声が聞こえる。

「それでは、表彰式の準備を始める。サフィア捜索会は、準備が整うまで、控え室で待機したまえ」
「おいラルド、行くぞ」
「……あぁ(クシーさん、どうぞ安らかに……)」

 一行は控え室へ向かった。
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