最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第二章 空中編

第二十九話 クシーの願い

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「あー、あー。現在、決勝戦に進んだカワネギチームのメンバーを治療中です。次の試合まで時間があるので、食事をしたい方や排泄をしたい方は、今がチャンスですよ」

 控え室にアナウンスが響く。ラルドはソファから起き上がり、部屋を出ようとした。

「ラルド君、どこへ行くんだい?」
「カタラたちの見舞いに行こうかと思って」
「そうか。試合が始まる頃には帰ってきてな」

 ラルドはうなずくと、病院へと走っていった。
 病院についたラルドは、早速扉を開ける。そして、受付に聞いた。
「すみません。カタラが入ってる病室はどこですか」
「カタラさんたちはこちらの病室にいます。傷は深いですが、命に別状はないでしょう」
「ありがとうございます」

 病室に入ると、傷ついた者たちの治療をしている院長がいた。

「おや、客人か。君、この子の知り合いかい?」
「はい、知り合いです。今そいつと話せますか?」
「まあ、一応意識はあるけど、傷を治してる途中だから治しながら話すことになるよ」
「うぐ……ラルドか」

 横になっていたカタラが顔を上げる。

「いてて!」
「こら、無理して動いちゃダメだと言ったろう」
「す、すみません……ラルド、負けた俺たちを笑いに来たのか?」
「そんなわけあるか。死んでないか確認しにきたんだ」
「全員生存してるさ。全くあのクシーとかいう奴、遠慮が一切無かったな」
「お前が煽ったからだろ」
「はっ、そうだな。……お前に一歩先を越されてしまったな」
「大丈夫だ。僕たちが勝って、姉さんを連れて帰ってくるよ」
「悔しいなぁ。俺もあの本があればなぁ」

 本の話題になると、ラルドは黙り込んでしまう。

「……すまない。俺は恩を仇で返す男だからな」
「いいや、気にしてないよ」
「そうか、それなら良かった。お前は、クシーに勝つ自信はあるか?」
「ああ。自信はある」
「気をつけろ。あいつは火の使い方がバカみたいに上手い。火から人間を創り出したり、あの巨大な火球を発生させたり。水の呪文が使えなきゃ話にならないぞ」
「きっとジシャン様が使えるから、そこは心配ないな」
「じゃあ、頑張れよ。俺たちの分まで」

 カタラは痛みに耐えながら、ラルドに手を差し出す。

「こら、勝手に動くなと言っておろう」
「握手、させてほしい。ほらラルド、握れ」
「どうしたんだ急に」
「約束だ。必ずあいつに勝つと誓え」

 ラルドは差し出された手を握った。

「じゃあな」
「また会おう」

 ラルドは病院を出ようとした。そのとき、別の病室から話し声が聞こえた。ラルドは声のする部屋へ向かい、壁に耳をつけた。

「いやー、クシーさん。接戦でしたね」
(! クシーの部屋か)
「流石に二回も爆発を起こすと、身体にかかる負担が凄いな。四肢が言うことを聞かない」
「無理はなさらず。ところでクシーさんの願いってなんなんですか?」
「……少し長い話になるけど、大丈夫?」
「私たちはどうせ暇ですから、良いですよ」
「俺の叶えたい願いは二つある。二つとも叶えてもらえるかわからないが。一つは、俺の家族を生き返らせること。そしてもう一つは、浮かせ奴隷の解放だ」

 浮かせ奴隷……聞いたことのない言葉に、ラルドは驚く。

「まあ……ご家族様を失っていたのですね」
「そうだ。火で家族に良く似た人型を創ってるが、虚しくてしょうがない。だから、本物を生き返らせたいのだ」
(なんて願いだ……でも、僕の願いだって大事な物だ)
「それで、浮かせ奴隷の解放とは?」
「君も知っているだろう。ここがこうして空に浮かんでる理由を」
「それは、高度な知能を持った地上人を奴隷にして浮かせてるからですよね?」
(そんな……賢者じゃなかったのか)

 ラルドは落胆する。

「そうだ。でも、俺は一度地上人に助けられているんだ。その人のために、地上人に恩返しをしたい」
「その割には地上人の相手をボコボコにしてましたよね」
「その話は無しにしてくれ」
「すみません。でも、地上人を解放したら、どうやってこの国を空へ浮かべるんですか?」
「もちろん、俺たちスカイ人が浮かせるんだ。優秀な魔導機がある以上、俺たちの力だけでも浮かせることは可能なはずだ」
「そんなこと、王様が許すでしょうか」
「優勝者の願いを叶えるのが王の仕事だろう? きっと許してくれるさ。そのためには、あの少年たちにも勝たなくてはならないな」
「あー、サフィア捜索会ですか?」
「サフィア……俺の恩人と同じ名前だ。家が火事になったとき、真っ先に動いてくれたのが彼女だったな。地上人なのに、あんなに迫害されていたのに、それでも人助けをする。まさに聖女だった。もしかして、同じ人なのかな」
「そうかもしれませんね。直接聞いたらどうでしょうか」
「そういえば、さっき彼の声が聞こえたような気がするな。廊下を見に行きたい」
(げっ、気づかれてたのか。どうしよう、逃げようかな……)

 ラルドはこの場を離れるかどうか悩んだ。結論を出す前に、クシーの病室の扉が開かれた。

「あら、ラルド君、ちょっと良いかしら?」
「は、はい。なんでしょう(結局入ることになっちゃったな……)」
「クシーさんがあなたと話をしたいそうよ」

 ラルドは病室に入った。クシーが横になっているベッドまで行き、クシーに話しかけた。

「ど、どうも……」
「やあラルド君。ちょうど良かった。少し話し合わないか?」
「良いですけど」
「君の願いが何か知りたい。俺の願いは壁に耳をつけてたから知っているだろう?」
「な、なぜそれを……」
「はっきり聞こえてたぞ。この部屋の前で足音が止まるところ。さあ、君の願いを教えてくれ」
「僕は、天界に行ける権利をもらうのと、あと、地上人差別をやめさせることです」
「なるほど。良い願いだ。俺の願いとどっこいどっこいってところだな」
「姉さんは天界に行った可能性が高いんです。それで、天界に行く権利をもらうために、あのトーナメントに参加したんです」
「君、彼女の弟だったんだな。てっきりさっき戦ったテイマーたちが家族かと思ったよ」
「なんだか、こんな話してるとお互い戦い辛くないですか?」
「大丈夫だ。君も俺も、忖度無しで戦えば良い。俺は強いぞ」
「じゃあ、失礼しますね」
「あっ、待ってくれ。さっき俺と戦った人たちは、君の友達かい?」
「ええ、そうですが、それが何か?」
「すまなかったな。君の友達をあんなに傷つけてしまって」
「戦場に情けはありません。仕方のないことです。殺さなかっただけまだ良い方ですよ。それでは」

 ラルドは病室から出ていくと、控え室へ走った。
 控え室に戻ったラルドは、何があったのかを語っていた。

「……というわけなんです。なんだか僕、やり辛いです」
「まあ、確かにな。でも、俺たちは勝たなくちゃならないだろう? そのことは綺麗サッパリ忘れて、戦いに集中出来るようにするべきだ」
「ラルド、お前がぐずぐずしてたら、こっちも困るんだ。少しは無理やり働かされてる俺たちの身にもなって欲しいぜ」
「ふん!」
「いたっ! そんなに怒るなよ……」
「……うーん。エメを殴ったところで、何も変わらないんだよなぁ」
「それよりラルド君、何か彼の弱点のようなものは聞かなかったの?」
「火から生み出す人間たちは、みんな水の呪文でなんとか出来るってことしかわかりません。あんまり面と向かって話してなかったので」
「うーん、彼自体は実体を持っているのよね? そうなると、水の呪文だけではいけないような気がするわ。なんとか彼の倒し方を考えておかないと」
「とりあえず巨大な火球はニキスの作ったこれでどうにかなるので、大丈夫そうですね」
「まあ、あとは実戦で学ぶしかないかしら。みんな、頑張りましょ」

 一行が話していると、アナウンスが鳴り響いた。

「あー、今、カワネギが回復したとの報告がありました。試合を始めますので、両者とも扉の前へ行ってください」
「あら、意外と早いわね」
「さあ、決勝戦、頑張ろうか」

 一行は扉の前へ向かった。
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