最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第三章 ウスト遺跡編

第四十五話 創造神の憂鬱

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「さあ、着いたな。お前たち、体力はまだ残ってるか?」
「チンピラ三人相手しただけだ。大した疲れじゃない」
「僕たちが離れる頃にはオークたちが集まってきてたし、きっともうウスト遺跡も安泰だな」
「そうか。それなら良い。ここの道は相変わらず長いからな」

 一行は城へ歩き始めた。以前よりも慣れてきたのか、休憩なしで例の階段を登ることまで出来た。門から城の中へ入り、ニキスがボタンを押す。前と同じ轟音が下から聞こえる。

「そろそろ創造神様も上がってこよう。服装は正しておけよ」

 一行はこぞって服装を確認する。レイフはマントを深々とつけ、ウォリアは鎧のズレを直し、ジシャンはローブのほこりを水の呪文で洗浄し、ラルドとエメはお互いを見つめあって、服装がきちんとしているか確かめた。全員準備万端のようだ。それからすぐに、創造神が現れた。

「ふー。あら、コクリュウ、ラルド君たちをまた連れてきたのね」
「ウスト遺跡にいた奴からの紹介で参りました。どうやら、聞きたいことは創造神に聞けと言われたようで……」
「あら? どんな内容かしら。ラルド君、教えてくれますか?」

 ラルドは唾を飲んで、心臓をバクバクさせながら質問した。

(下手したら殺されるんだよな……怖い、怖いよ……)
「ラルド君……?」
「あっ、はい、あの、えっと、そのー……」
「何でしょうか?」

 ラルドは覚悟を決めた。

「こ、古代文明の時代にあった世界が崩壊するような出来事を教えてください!」
「……あぁ。そうですか。その話ですか」

 一瞬にして微笑んでいた創造神の口角が下がる。心なしか眉間にしわがよっているようにも見える。なんとなく血管が浮き出ているようにも見える。その様子を見たラルドは、顔面蒼白になった。

(やばい! 僕、殺されるかも……)
「……」
「あの! すみません! 今言ったことは忘れてください!」
(へへっ、ラルドのやつ、怯えてやがる。そうだよな。微笑んでいた創造神が急にこんな顔になったらビビるよな。でも、そんなに怯えないでも、サフィアの弟だから許されると思うがな)
「……いいえ、良いです。古代文明に何があったのか、私がなぜそれを話したがらないのかをお教えします」
「ようやく、私もその話を聞けるときがきましたか」
「随分長い話になりますけど、大丈夫でしょうか?」
「はい。姉さんを見つける手がかりになれば」

 創造神が杖で床をトントンすると、空間が入れ替わり、空へ出た。

「う、うわー! 落ちるぅ! ……あれ? 全然大丈夫だ」
「ここははるか昔、古代文明が栄えていた頃の空です。あそこに見えるのが、当時の最高の都、ウスト王国です。今回は末期のウストなので、文明レベルはかなり進んでいます。二千年以上は続いている大国です。他の場所に王国はなく、村や町がバラバラに存在している感じです」
「本当に平和そうな世界ね……どうやったらこの世界が崩壊するのかしら」
「皆様をこの時代の天界にお送りいたします」

 また場面が切り替わり、今度は天界の城に着いた。そこには一人の男性と一人の女性がいた。

「おっきい……まるでそうぞうしん様みたいだ」
「右の女性が私の母、一個前の創造神で、左の男性が私の父、破壊神です」
「はかいしん……?」
「今の世にはいない、もう一人の神です。この時期の二人は、毎日のように喧嘩をしていました」
「どうしてですか? 子宝にも恵まれたと言うのに……」

 ラルドの言う通り、創造神の腹が膨らんでいる。その中にきっと今の時代の創造神がいるのだろう。

「二人は人間という存在を消すかどうかで揉めていたのです」
「なぜ消そうとしているのですか?」
「では、ここでもう一度空へ戻ってみましょう」

 また場面が空に戻った。そして、創造神は杖でウスト王国の方とその南にあるもう一つの王国をさす。

「先程は王国はウスト一つだけだと言いましたが、例外が一つだけあります。それが、あのサウス王国です」
「ほぉ、サウス王国はこんな昔から存在していたのか」
「サウスとウストの間の道を良く見てみてください」

 一行は言われるがままそこを見る。すると、人間同士で殺し合いをしていた。

「なるほど。サウス人とウスト人が何かしらの理由で争っていると」
「はい、そうです。私の母は創造しか出来ないため、人間の争いを止める物を生み出すのに必死になっていました。しかし、何を与えど人間は争いをやめませんでした。そこで、創造とは反対の、破壊の力を持つ父が人間という存在を破壊しようとしていたのです。人間を残したい母と人間を消したい父は、さっきのようにいつまでも喧嘩をしていました。まるで人間のように」
「しかし創造神様、それくらいのことなら私に教えてくれても良かったのでは? わざわざ隠す必要があるようには思えないのですが」
「ここからよ。ちょっと時を進めるわね」

 創造神は時間を進めた。すると、破壊神が地上へと降りていた。破壊の限りを尽くしている。

「なるほど。これが世界の崩壊……あれだけ栄えていたウスト王国が、ボロボロにされている……」
「サウスなんか、跡形も無くなってるじゃない。はかいしんさんの力は恐ろしいほど強いわね」
「村も町も消えちまってるよ。おっそろしい……」
「上を見てください。こちらに母が向かってきています。私がお腹の中にいるのに、無理して動いています」
「そうか。破壊神を止めるために頑張って地上へ降りてきたんだな」

 破壊神と創造神が衝突し、光と闇が交互に世界に広がる。ウスト王国の者たちはその隙に、急いで地中に何かたちを隠している。

「あ、変なのたちが地面に埋められている」
「彼らは機械と呼ばれる物です。まだ今の文明がたどり着いていないところの作り物です」
「なんだか、知ってはいけないことを知ってしまった気がする」
「サフィアちゃんと仲良しだったあなたたちにだけ、特別に見せています。絶対に他の人たちには喋らないでくださいね?」
「はい(もしも逆らったら……あぁ、恐ろしい)」
「あ、見て! 破壊神が……」

 ジシャンが指差した方で、創造神が破壊神にとてつもなく強力な光を放っていた。太陽よりも眩しく、直視できない。

「創造神様、あれはなんですか! 眩しくて何をしてるのかわかりません!」
「父を止める手段を色々使いましたが、いよいよ最後の手段に出たのです。それは、父の封印。そうすることで、世界が壊れることを防いだのです」
「悲しいですね。愛し合っていた夫婦がたった一つの生物のせいで、そこまで仲違いするなんて」

 眩しくてずっと目をつむり手で覆っていた一行だったが、光がおさまってきて、目が開けるようになった。目を開いたところに、破壊神はいなかった。役目を終えた創造神は、腹を抱えながら急いで天界へと戻っていった。

「昔のそうぞうしん様、涙を流していましたね。夫を封印するのが苦しかったのでしょうか」
「それもあると思います。しかし、何よりも涙を流していた理由は……」

 創造神がまた場面を切り替える。天界の城の中のようだ。股を開き、腹をさすりながら苦しそうな表情をしている。やがて、創造神から今の創造神が生まれた。

「なるほど。生まれそうで痛みに堪えていたのか」
「でも、私を生んで喜ぶのではなく、対になる破壊の力を持つ者を失った世界を憂いていました。もし、私が破壊神だったら、母を悲しませることはなかったでしょう。でも、唯一残った家族だから、母は私にとても優しくしてくれました。しかし、父に関することは死んでも教えてくれませんでした」
「お父さんの存在はどこで知ったのですか?」
「母亡き後、死者を司る部分を担当することになって初めて知りました。その場所にあった本の中に、母の遺書があり、この映像も入れてありました。そして、破壊の力の無くなった世界はろくなことにならないことも記されていました。私、とてもショックで……」
「創造神様!」

 創造神がその場に倒れ込む。映像が終わり、一行は現代の天界の城に戻ってきた。

「私が死ねば、この世界は終わりです。だから、死なないためにたくさんの努力をしました。そのおかげで、今は魔王のいなくなったそこそこ平和な世界に戻すことが出来たのです」
「まあ確かに、国レベルでの争いは今のところ起きていませんね」
「この映像を見せた人がもう一人だけいるのです」
「! それって……」
「ええ、あなたの姉、サフィアちゃんです。私亡き後に創造神になってもらうために話したのです。それは、あなたたちがトーナメントに優勝したその日です」
「じゃあ、姉さんはウストに王国があったことを知っていたのですね」
「ええ。彼女、好奇心旺盛だから、きっとそこへ行ったんじゃないかと思ったのです」
「そこにいた奴……僕はダイヤと名付けましたが、あいつは姉さんにあったと言っていました。どこかへ去ってしまったようですが……」
「そうでしたか。この話をしてしまった以上、隠していても損するだけです。これを、ラルド君に渡します。どうかサフィアちゃんを見つけてください」

 ラルドは創造神からコンパスをもらった。

「これは……?」
「その中にサフィアちゃんのデータを入れてます。サフィアちゃんのいる場所がそれでわかるはずです。どうか天界から出られない私の代わりに見つけてください」
「創造神様、ここにきて凄い反則なアイテムを渡しましたね」
「次の創造神候補ですもの。そのくらい本気を出すわよ」
「でも、そうぞうしん様。僕は、姉さんを家に連れて帰ります。そうぞうしんにはさせられません」
「……そこの話は彼女が見つかってからにしましょう。さあ、コンパスの示す方向に行ってみてください」
「わかりました。そうぞうしん様、何から何までありがとうございました」
「ごきげんよう」

 一行は城を出ていった。
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