最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第三章 ウスト遺跡編

第五十三話 創造神と破壊神

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 天界の入り口に着いた二人は、早速その場所に降りようとした。しかし、入り口にいた竜が攻撃をしかけてきた。

「や、やめろ。私はここに入る権利がある」
「背中に人間を乗せた竜のどこにそんな権利があるのだ。人間ごと焼き払ってやる」
「ラルド、念じてくれ。夢の中でもケガをするのは嫌だろう」
「すぅー……ふー」

 入り口の竜のブレスをニキスは避け続ける。ラルドが落ちないように気を遣って動いているため、ギリギリで非常に危ない。ラルドは出来るだけ急いで強く念じる。

「ふっ。ブレス程度では軽く避けられてしまうか。ならば肉弾戦といこう」

 竜は飛び立ち、ニキスの腹めがけて拳を突き上げた。その拳をニキスは両手で受け止める。ニキスの肘が曲がり、手が震える。竜は一旦拳を離し、ちょっと後ろに下がった。

「片手だけでこれなら、両手でいけば終わりだな」
「ラルド、まだか。私も長くは持たんぞ」
(そろそろだ……そろそろ、あの竜を落ち着かせることが出来る)

 早速竜に変化が見え始めた。

「なっ。拳が握れない。どうなっているんだ」
「フフフ。この調子で頑張れ、ラルド」
「背中のガキが本体か! 拳など握らずとも、引っ叩いてやる!」

 竜は背後に周り、ラルドめがけて掌を叩きつけようとした。間一髪、その手が謎の壁にはばまれる。ラルドの歪める力が効いてきたようだ。

「お、お前たちは……何者だ。この俺が手も足も出ないとは」
「まあ、最高のコンビってところだな。さあどけ。私たちはここに入る権利がある」
「な、身体が勝手に」

 竜は入り口に戻り、お利口さん座りをさせられた。悔しそうな表情を浮かべる竜をよそに、ラルドとニキスは天界へと入った。そのまま進もうとする二人を、竜は止めた。

「待て。人間ごときが創造神様と破壊神様に会いに行くのか。ふざけるな。人間だけはここに置いていけ」
(なんで人間は行ったらダメなんだ?)
「あの壁の時点で薄々勘づいてるだろ。本来ここは聖域。人間が入って良い場所ではない。どれだけ強い力を持っていようと、身分はゴミカス以下だ。調子に乗るなよ」
(ゴミカスでも良い。そうぞうしんとはかいしんに会えるならな。さ、ニキス、行こう)
「おい、待てよ。待てって! ちっ、身体さえ動けば、あんな奴、イチコロなのに……」

 ラルドとニキスは竜を無視して城へ歩き始めた。

「こんなことでは、門番失格だな……待てよ。まさかあいつが夢装置の関係者か? それなら俺が負けるのも納得いく。創造神様、ようやく現れましたぞ」

「はぁ……昔でもここの長さは変わらないんだな。これだけ長いと、昔のそうぞうしんに会うまでに目覚めてしまうかもな」
「ラルド、風の呪文でスピードアップとか出来ないのか? さっき空中でやったみたいに」
(直線だったらそれで良いかもしれないけど、グニャグニャの曲がり道だろ? 下手に使えば、建物に頭ぶつけて死んじゃうぞ)
「夢の中なら死にはしないだろ。やってみろ」
(わかったよ。やってみる)

 ラルドは振り向き、ジャンプして風の呪文の反動で遠くへ飛んでいった。壁にぶつかりそうになるが、急いで振り返り風の呪文で速度を落としたことで、ダメージはなかった。ニキスが低空飛行ですぐ後を追う。

「やれば出来るじゃないか。その調子でいけば、時短になる」
(そうだな。ちょっと話したいことがあったけど、それは夢から覚めた後にするよ)

 ラルドは風の呪文で飛んでは反動をやわらげての繰り返しで、予定よりも早く城に着くことが出来た。
 城は、ラルドたちの生きる時代のものとほとんど同じで、違うところといえば竜が大量に登り降りしていることくらいだ。人間を見つけた竜たちは視線を向けるが、歪められているため攻撃はされない。しかし、ラルドを見るその目は怒りに満ちていた。

「人間ごときが、なぜここに……」
「まあ気色悪い。さっさとここから出ていきなさい」
(なんか反応が冷たいな……攻撃できない分、口で攻撃しようってか)
「ラルド、そんなことを考えてる暇があるなら少しでも早く階段を上がるんだ。他竜など今は関係ないだろう。なぜこんなに大量に出入りしているのかは、少し気になるが……」
(そうだな。こんな声を真に受けてたら、自分の実力をまた測り違えることになる)
「最弱テイマーのことか。実際お前の実力じゃないからそれは正解だろ」
(なにー!?)
「冗談だ。私を倒せる時点で最弱の冠は別の奴が被ることになるだろう。なんかそういう知り合いとかいないのか?」
(ニキス。今から名言を言ってやるよ)
「ほう?」
(自分が最弱じゃないことを、誰かになすりつけて証明するのはかわいそうな奴のやることだ。最弱と言われようが、ゴミカスと言われようが、僕は誰かにそれをなすりつけたりはしない!)

 高らかに宣言したラルド。あまりに大声だったため、その場にいたニキス含めた竜たちが固まる。

「まあ、その……良いセリフではあるかもな」
(な、なんでニキスまで冷たくなってるんだ……)
「話は終わりか? それじゃあ、さっさと上がるぞ」
(ちょっと待てよ。なんでそんなに反応薄いんだよ)
「お前は旅に出てすぐの人間だ。だから、私たちにとってその発言は軽く見える。歴戦の勇者がそれを言うのなら私たちの心に響くだろうが、そんな奴に会ったことはない」
(レイフ様はどうなんだ?)
「私にとってはまだまだ若造よ。さあ、目が覚めないうちに行くぞ」

 ラルドは納得いかなかったが、渋々階段を上がることにした。直線であるため、風の呪文で一気に駆け上がった。その速さにニキスは低空飛行することでギリギリ追いついていた。
 そんなに時間がかからないうちに、二人は城の入り口にたどり着いた。

「さあ、開けるぞ。ラルド、心の準備は?」
(大丈夫。ゴミカスとて殺そうとしたりはしないだろう)
「私たちの時代の創造神様は、母は優しかったと言っていたな。立場は随分と違うが。それじゃあ、行くぞ」

 ニキスは巨大な扉を押し開いた。中には、巨大な創造神と破壊神が言い争いをしていて、竜たちがそれをなだめる様子が映し出されていた。扉が開かれたことで、創造神と破壊神の視線は一瞬二人の方に向く。

「に、人間だあ! ついに現れおったか!」

 破壊神がとてつもない速さでラルドを掴む。ラルドは天に掲げられ、破壊神に顔をじーっと見られる。創造神は手を離すように言ったが、ずっと握ったままだ。

「お前か……お前が夢の世界を……!」
「あなた、やめて! まだこの子は何も言ってないじゃないの!」
「話を訊くまでもなかろう。ここに人間がいるというのはそういうことだ」
「破壊神様。確かに人間は美味いだけの下等生物ですが、話くらい訊いてやりましょうよ」
「なんだぁお前たちまで。こいつに毒されたか。夢だもんな。やりたい放題だ」
(あなたも鎮めてみせますよ、はかいしん様)

 ラルドは身体の自由が奪われようとも必死に念じて抵抗した。徐々に破壊神の手を握る力が緩くなっていく。そのことに恐怖を感じた破壊神は、早々に手を離し後ずさった。

「だ、ダメだ……やはり人間は消すべき存在だ。神である俺にこんなことが出来るなど、あり得ぬ……」
「えーっと、君の名前は? 隣の竜の名前も訊きたいわ」
(僕はラルドと申します)
「私は……どっちにしようかな……えっと、ニキスだ」
「そう。それで、どうしてここに? 夢装置を使ってまで何かしたかったのですか?」
(僕たちは未来から来ました。ウスト王国にある紋章の岩の秘密を探っているのです。あの岩の説明が書かれた本でも、最大の能力だけは破られていて読めなかった。だから、そうぞうしん様なら何か知っているんじゃないかと)
「えぇ。君の期待通り、あの岩の最大の能力を知っています。でも、それを教えるのは不可能です」
(そうぞうしん様には悪いですけど、ここは夢の世界なので、暴露させることも出来ますよ)

 ラルドのその言葉を聞き、破壊神は怒った。

「やはり人間は失敗作だ。夢の世界を自由に動けるなど、ずるい、ずるすぎる」
「あなた、落ち着いて。きっと人間と言ってもこのような者ばかりではないはずです」
((あーあ。二人の僕に対する好感度はゼロだ。脅すようなことするんじゃなかった))
「創造神様、うちの人間が失礼なことをしました。しかし、ヒントだけでももらえませんか?」
「そうですね……もしものときのために作られた岩です。そのときが来ないことを祈るばかりですが。最近あそこに王族の遺体が埋められると聞いて干渉するかどうか悩みました」
「なるほど、やはりあそこを掘ってはいけないと。掘ればどんな効果があるかわかるということでしょうか」
「はい。ですが、やめてください。詳しくは言えませんが、かなり浅めに掘らなければいけません。少しでもラインを超えたら……それ以上は言えません」
(そうぞうしん様、僕はそんな悪いことしないのでここで帰ります。ニキス、もう目覚めようぜ)
「そうだな。創造神様、破壊神様、私たちはこの世界から抜けます。また会えたらそのときはよろしくお願いします。では」

 二人はなんの成果も得られなかったことを悔しがりながら、目を覚ました。
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