アルカナの衣を。〜クラスの人気イケメンに告白されたけど、ごめんなさい!僕、男なんです〜

天宮叶

文字の大きさ
27 / 36
2

しおりを挟む
放課後、僕は図書室に来ていた。
柊木君におすすめする本を探すために小説が並ぶ棚の前に移動した。誰もいない図書室は学校の中で特に落ち着ける場所だ。

さらっと本の背表紙を撫でると目に止まった本を棚から取り出して開く。
パラパラと中を見ていたら知らない単語が出てきて手を止めた。

「…アルカナ?」

スマホを取り出して単語の意味を検索すると何個か候補が出てくる。『秘密』『神秘的』と載っていて僕はそれを確認してからスマホをカバンに戻した。

「…秘密…。」

秘密と言う単語に嫌に反応してしまうのは僕が柊木君に隠し事をしているからだろうか。本に書かれたアルカナという文字を指で撫でてから本を元の位置に戻した。僕はシンデレラみたいに女装っていう衣を纏って自分の本当の姿を隠しながら好きな人に近づいている。

「アルカナの衣……なんてね。」

パッと思いついた言葉を発してその言葉に自分で苦笑いした。もしそのアルカナの衣を脱ぎ捨てて好きな人に本当の自分を見せる日が来たらその時彼はどんな反応をするんだろう。
シンデレラでは王子様とシンデレラは結ばれるけれど僕はそうはならないだろうな…。

「性別…同じだし。」

今日はもう帰ろうと思って図書室から出た。

「…あ…宿題忘れた。」

教室に忘れた宿題のプリントを取りに戻るために教室の方に方向を変える。廊下が夕日に照らされていて少しだけ眩しく感じた。
外には部活をしている生徒や下校する生徒の姿が見えていて僕も早く帰ろうと思い教室に向かうスピードを早める。

「……の?」

「…~…でさー。」

教室に近づくと誰かの話し声が聞こえてきて足を止める。バレないようにそっと入口から中を覗くと柊木君と里中さんが窓際の壁に背中を預けて話をしているのが分かった。
柊木君が笑顔で何かを話していてそれを里中さんが相槌を打ちながら聞いている。耳をすませると微かに会話が聞こえた。

「へー!柊木君の彼女さんって遠坂君の双子の妹さんなんだ~。」

「そうなんだよ。びっくりだよな。」

どうやらゆかりと僕の関係について話してるようで僕はそのまま黙って話を聞いた。

「彼女さん名前なんていうの?」

「ゆかりっていうんだ。」

愛おしそうな顔でゆかりの名前を口にした柊木君を見て心臓がドクドクと早くなった。そんな顔を僕にも向けて欲しいと思ってしまう。

「え?変なの。」

ゆかりの名前を聞いて里中さんが不思議そうに首を傾げたのを遠巻きから見て嫌な予感がした。

「双子で同じ名前なんだね。」

「どういうこと?」

里中さんの言葉に今度は柊木君が首を傾げた。

「知らないの?遠坂君の下の名前、縁っていうんだよ。」

「……え?」

里中さんの言葉を聞いた瞬間僕はその場から駆け足で逃げ出した。プリントが回収できなかったとかそんなことは頭から吹っ飛んでいて、早くここから離れないとってことしか頭に浮かばなかった。

僕の名前を教えられた柊木君がどんな顔をしてたのかなんて確認する余裕はなくて、彼がどう思ったのかは全くわからなかった。でも、何かがおかしいって彼はきっと気づいたはずだ。

はあはあと息を吐き出しながら家まで全速力で駆け抜ける。
通り過ぎる人がすれ違う僕を見てくるけれど今は気にしてられなくて見えてきた自分の家に飛び込んで2階に駆け上がると自分の部屋に入って扉を閉めた。

鞄を机の上に置いて靴下を脱ぎ散らかして制服のままベッドに飛び込む。
コンタクトはそのままで目をぎゅっと閉じた。
その時、ピロンってスマホから音が聞こえてきて閉じた目をゆっくりと開く。スマホを手に取って通知を確認すると柊木君からメールが来ていた。

『遠坂、今家?』

返信をするか悩む。
そのまま気づかなかったフリをしてしまおうかと思ったけど、結局問題を先延ばしにしただけで何も解決しないってことが分かっていて返信をすることにした。

『家だよ』

短いメールを送ると1分も経たずに直ぐに返信が来た。

『ちょっと出てこれない?』

メールを確認して、どうするか考える。
素直に柊木君と会っても何を言えばいいのか分からなかった。柊木君はもしかしたら別のことで用事があるのかもしれないって自分を言い聞かせてみても多分違うって頭では理解しているから今柊木君に会うのは嫌だって思う。

『無理かな…。』

意気地無しの僕は結局問題を先延ばしにすることを選んだ。

メールを送るとスマホをポイッとベッドのスミに投げて毛布を頭まで被った。
ピロンピロンって2回通知音がなって、我慢我慢と自分に言い聞かせる。見たい衝動を数分我慢したけれど結局耐えれなくて中を覗いてしまった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2:10分に予約投稿。   【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸にクリスがひたすら愛され、大好きな兄と暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスは冤罪によって処刑されてしまう。  次に目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。    巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過保護な兄たちに可愛がられ、溺愛されていく。  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな気持ちで新たな人生を謳歌する、コミカル&シリアスなハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? 夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)は、見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良ワーウルフの悪友(同級生)まで……なぜかイケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、異世界学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

処理中です...