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放課後、僕は図書室に来ていた。
柊木君におすすめする本を探すために小説が並ぶ棚の前に移動した。誰もいない図書室は学校の中で特に落ち着ける場所だ。
さらっと本の背表紙を撫でると目に止まった本を棚から取り出して開く。
パラパラと中を見ていたら知らない単語が出てきて手を止めた。
「…アルカナ?」
スマホを取り出して単語の意味を検索すると何個か候補が出てくる。『秘密』『神秘的』と載っていて僕はそれを確認してからスマホをカバンに戻した。
「…秘密…。」
秘密と言う単語に嫌に反応してしまうのは僕が柊木君に隠し事をしているからだろうか。本に書かれたアルカナという文字を指で撫でてから本を元の位置に戻した。僕はシンデレラみたいに女装っていう衣を纏って自分の本当の姿を隠しながら好きな人に近づいている。
「アルカナの衣……なんてね。」
パッと思いついた言葉を発してその言葉に自分で苦笑いした。もしそのアルカナの衣を脱ぎ捨てて好きな人に本当の自分を見せる日が来たらその時彼はどんな反応をするんだろう。
シンデレラでは王子様とシンデレラは結ばれるけれど僕はそうはならないだろうな…。
「性別…同じだし。」
今日はもう帰ろうと思って図書室から出た。
「…あ…宿題忘れた。」
教室に忘れた宿題のプリントを取りに戻るために教室の方に方向を変える。廊下が夕日に照らされていて少しだけ眩しく感じた。
外には部活をしている生徒や下校する生徒の姿が見えていて僕も早く帰ろうと思い教室に向かうスピードを早める。
「……の?」
「…~…でさー。」
教室に近づくと誰かの話し声が聞こえてきて足を止める。バレないようにそっと入口から中を覗くと柊木君と里中さんが窓際の壁に背中を預けて話をしているのが分かった。
柊木君が笑顔で何かを話していてそれを里中さんが相槌を打ちながら聞いている。耳をすませると微かに会話が聞こえた。
「へー!柊木君の彼女さんって遠坂君の双子の妹さんなんだ~。」
「そうなんだよ。びっくりだよな。」
どうやらゆかりと僕の関係について話してるようで僕はそのまま黙って話を聞いた。
「彼女さん名前なんていうの?」
「ゆかりっていうんだ。」
愛おしそうな顔でゆかりの名前を口にした柊木君を見て心臓がドクドクと早くなった。そんな顔を僕にも向けて欲しいと思ってしまう。
「え?変なの。」
ゆかりの名前を聞いて里中さんが不思議そうに首を傾げたのを遠巻きから見て嫌な予感がした。
「双子で同じ名前なんだね。」
「どういうこと?」
里中さんの言葉に今度は柊木君が首を傾げた。
「知らないの?遠坂君の下の名前、縁っていうんだよ。」
「……え?」
里中さんの言葉を聞いた瞬間僕はその場から駆け足で逃げ出した。プリントが回収できなかったとかそんなことは頭から吹っ飛んでいて、早くここから離れないとってことしか頭に浮かばなかった。
僕の名前を教えられた柊木君がどんな顔をしてたのかなんて確認する余裕はなくて、彼がどう思ったのかは全くわからなかった。でも、何かがおかしいって彼はきっと気づいたはずだ。
はあはあと息を吐き出しながら家まで全速力で駆け抜ける。
通り過ぎる人がすれ違う僕を見てくるけれど今は気にしてられなくて見えてきた自分の家に飛び込んで2階に駆け上がると自分の部屋に入って扉を閉めた。
鞄を机の上に置いて靴下を脱ぎ散らかして制服のままベッドに飛び込む。
コンタクトはそのままで目をぎゅっと閉じた。
その時、ピロンってスマホから音が聞こえてきて閉じた目をゆっくりと開く。スマホを手に取って通知を確認すると柊木君からメールが来ていた。
『遠坂、今家?』
返信をするか悩む。
そのまま気づかなかったフリをしてしまおうかと思ったけど、結局問題を先延ばしにしただけで何も解決しないってことが分かっていて返信をすることにした。
『家だよ』
短いメールを送ると1分も経たずに直ぐに返信が来た。
『ちょっと出てこれない?』
メールを確認して、どうするか考える。
素直に柊木君と会っても何を言えばいいのか分からなかった。柊木君はもしかしたら別のことで用事があるのかもしれないって自分を言い聞かせてみても多分違うって頭では理解しているから今柊木君に会うのは嫌だって思う。
『無理かな…。』
意気地無しの僕は結局問題を先延ばしにすることを選んだ。
メールを送るとスマホをポイッとベッドのスミに投げて毛布を頭まで被った。
ピロンピロンって2回通知音がなって、我慢我慢と自分に言い聞かせる。見たい衝動を数分我慢したけれど結局耐えれなくて中を覗いてしまった。
柊木君におすすめする本を探すために小説が並ぶ棚の前に移動した。誰もいない図書室は学校の中で特に落ち着ける場所だ。
さらっと本の背表紙を撫でると目に止まった本を棚から取り出して開く。
パラパラと中を見ていたら知らない単語が出てきて手を止めた。
「…アルカナ?」
スマホを取り出して単語の意味を検索すると何個か候補が出てくる。『秘密』『神秘的』と載っていて僕はそれを確認してからスマホをカバンに戻した。
「…秘密…。」
秘密と言う単語に嫌に反応してしまうのは僕が柊木君に隠し事をしているからだろうか。本に書かれたアルカナという文字を指で撫でてから本を元の位置に戻した。僕はシンデレラみたいに女装っていう衣を纏って自分の本当の姿を隠しながら好きな人に近づいている。
「アルカナの衣……なんてね。」
パッと思いついた言葉を発してその言葉に自分で苦笑いした。もしそのアルカナの衣を脱ぎ捨てて好きな人に本当の自分を見せる日が来たらその時彼はどんな反応をするんだろう。
シンデレラでは王子様とシンデレラは結ばれるけれど僕はそうはならないだろうな…。
「性別…同じだし。」
今日はもう帰ろうと思って図書室から出た。
「…あ…宿題忘れた。」
教室に忘れた宿題のプリントを取りに戻るために教室の方に方向を変える。廊下が夕日に照らされていて少しだけ眩しく感じた。
外には部活をしている生徒や下校する生徒の姿が見えていて僕も早く帰ろうと思い教室に向かうスピードを早める。
「……の?」
「…~…でさー。」
教室に近づくと誰かの話し声が聞こえてきて足を止める。バレないようにそっと入口から中を覗くと柊木君と里中さんが窓際の壁に背中を預けて話をしているのが分かった。
柊木君が笑顔で何かを話していてそれを里中さんが相槌を打ちながら聞いている。耳をすませると微かに会話が聞こえた。
「へー!柊木君の彼女さんって遠坂君の双子の妹さんなんだ~。」
「そうなんだよ。びっくりだよな。」
どうやらゆかりと僕の関係について話してるようで僕はそのまま黙って話を聞いた。
「彼女さん名前なんていうの?」
「ゆかりっていうんだ。」
愛おしそうな顔でゆかりの名前を口にした柊木君を見て心臓がドクドクと早くなった。そんな顔を僕にも向けて欲しいと思ってしまう。
「え?変なの。」
ゆかりの名前を聞いて里中さんが不思議そうに首を傾げたのを遠巻きから見て嫌な予感がした。
「双子で同じ名前なんだね。」
「どういうこと?」
里中さんの言葉に今度は柊木君が首を傾げた。
「知らないの?遠坂君の下の名前、縁っていうんだよ。」
「……え?」
里中さんの言葉を聞いた瞬間僕はその場から駆け足で逃げ出した。プリントが回収できなかったとかそんなことは頭から吹っ飛んでいて、早くここから離れないとってことしか頭に浮かばなかった。
僕の名前を教えられた柊木君がどんな顔をしてたのかなんて確認する余裕はなくて、彼がどう思ったのかは全くわからなかった。でも、何かがおかしいって彼はきっと気づいたはずだ。
はあはあと息を吐き出しながら家まで全速力で駆け抜ける。
通り過ぎる人がすれ違う僕を見てくるけれど今は気にしてられなくて見えてきた自分の家に飛び込んで2階に駆け上がると自分の部屋に入って扉を閉めた。
鞄を机の上に置いて靴下を脱ぎ散らかして制服のままベッドに飛び込む。
コンタクトはそのままで目をぎゅっと閉じた。
その時、ピロンってスマホから音が聞こえてきて閉じた目をゆっくりと開く。スマホを手に取って通知を確認すると柊木君からメールが来ていた。
『遠坂、今家?』
返信をするか悩む。
そのまま気づかなかったフリをしてしまおうかと思ったけど、結局問題を先延ばしにしただけで何も解決しないってことが分かっていて返信をすることにした。
『家だよ』
短いメールを送ると1分も経たずに直ぐに返信が来た。
『ちょっと出てこれない?』
メールを確認して、どうするか考える。
素直に柊木君と会っても何を言えばいいのか分からなかった。柊木君はもしかしたら別のことで用事があるのかもしれないって自分を言い聞かせてみても多分違うって頭では理解しているから今柊木君に会うのは嫌だって思う。
『無理かな…。』
意気地無しの僕は結局問題を先延ばしにすることを選んだ。
メールを送るとスマホをポイッとベッドのスミに投げて毛布を頭まで被った。
ピロンピロンって2回通知音がなって、我慢我慢と自分に言い聞かせる。見たい衝動を数分我慢したけれど結局耐えれなくて中を覗いてしまった。
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