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心の距離

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次の日になっても、カイス様から言われた言葉が頭から離れなくてどうしたらいいのかと悩んでいた。

「悩み事?」

「えっ、う、ううん。少し頭が痛くて」

食事を用意してくれていたアランに話しかけられて意識が覚醒すると、慌てて言い訳を口に出した。

実際に頭が痛いのは本当なのだけれど、原因はよく分からない。

「気分が楽になるお香があるから炊いておくね。甘い香りがして幸せな気分になるよ」

「ありがとう」

アランの気遣いが身に染みる。

なんだか少しずつだるさが増してきている気がするけれど、疲れているだけだと思う。

お香の甘い香りが漂い始めると、いい香りが部屋を満たして、心が癒されていく気がした。

頭もスッキリしてきて、考えも少しずつまとまってくる。

(明日カイス様に会って、直接心配しないで欲しいって伝えよう)

明日、中庭に行かなければなにも無かったことに出来るのだろう。でも、僕に良くしてくれるカイス様が中庭で1人立ち尽くしている姿を想像すると申し訳無い気持ちが出てくるから、ちゃんと会って話したいって思うんだ。

「そういえばΩの子達はほとんどが家に返されたみたいだよ」

「そうなの?」

「うん。1部は修道院に移ったみたいだけれど、驚いたのが数人、城に務めている人達に嫁いだ子も居るんだって。もしかしたら運命の番だったのかも!なんて噂されてるよ」

「運命の番……」

「知らない?見た瞬間その相手のことしか考えられなくなって、自分の意思とは関係なく魂が惹かれ合うってやつ!そんな夢物語みたいな出会いがあるなら僕も体験してみたいよ」

「……そうなんだ」

アランの言葉に曖昧に相づちを返して、用意されていたお茶を1口飲んだ。

ライル様は僕のことを運命の番だと言っていた。僕もライル様を見ると胸が熱くなるような不思議な感覚に陥る。

僕達は本当に運命の番なのかな。

だとするなら、運命は残酷だ。
僕と彼では身分が釣り合わない。

もしも僕がライル様のお子を身篭ったとしても、僕が彼と結ばれる事はない気がした。

きっと、ライル様の様な素敵な方は身分が高くて美しい、女性やΩの子と結ばれるんだと思う。

番にはなってしまったけれど、ライル様がそういう人を見つけたら僕は潔く身を引いて、彼の前から姿を消そう。

そう頭では思うのに、もしもその時になったらライル様は僕を引き止めてくれるのだろうか?なんて考えてしまうんだから笑える。

そもそも、ライル様は奴隷である僕が運命の番だということをどう受け止めているのだろうか。

「……聞けないよね」

「ん?何か言った??」

「ううん。なんでもないよ」

アランに返事を返すと、納得してくれたのかまた自分の仕事へと戻っていく。

それを見つめながら小さくため息をこぼした。
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