囚われの白夜〜狼王子は身代わり奴隷に愛を囁く〜

天宮叶

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心の距離

6〜ライル視点〜

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他人が俺に興味を持つ理由は大抵がαの第1王子だからだ。それを何かの感情に当てはめたことは無く、悲しいだとかそんなことは思わない。ただ単純に俺の価値はソレだからと幼い頃から理解していた。

だからだろうか。アズハルの灰色の瞳が真っ直ぐに俺を射抜きながら発した言葉に、やけに心が昂るのを感じるのは。

俺自身を知りたいのだという番に口付けをして、華奢な身体を抱きしめながら、ぽつぽつと自身のことを語って聞かせてやる。

「俺が8歳の頃、王妃である母上は亡くなった。それからは孤独だ」

「……どうして亡くなられたのか聞いても?」

「……殺された。食事に毒を盛られていたんだ。毒の種類までは知らないがな。当時、事件を調査した者しか詳細は分からない」

尋ねたことを後悔したのか、アズハルの目が驚きに見開いたあと微かに俺から逸らされた。

その表情の変化を観察しながら、分かりやすいやつだと笑いを噛み殺す。

「母上が亡くなってから俺は第1王子としてしか生きてこなかった。だからだろう、好む食事や趣味など気にしたこともない」

気にする暇が無かったと言った方がいいだろう。
戦時中も王子の俺ですら食事にありつけるだけ有難かった。

何かを欲することを知らなすぎて、それをどうしようもなく欲していた気がする。

だが、今はもう必要ない。

困り顔を浮かべるアズハルの額に唇を寄せながら笑ってやる。

「唯一好ましいと思う者は有る」

「それはなんですか?」

「当ててみろ」

長いまつ毛が動揺で揺れる様すら愛おしい。

アズハルがそうやって俺のことで一喜一憂する様を見るのが好きなのだ。この世で唯一俺に愛を教えてくれた。

「……分からないです」

「なら、分からせてやろう」

アズハルの衣装の中に手を滑らせて、細い腰を撫でてやる。

「ら、ライル様!?」

「暴れるな」

命令すれば、微かに震えながらも俺に応えようとするいじらしさがたまらない。

だから、手放してやれないのだ。

「口を開けろ」

何度目かの口付けは、何度繰り返しても熱く甘い。

アズハルに触れていると、まるで砂漠の真ん中に居るかのように全身が熱く火照ってくる。

それに伴って姿を表す狼の特徴。

昔は煩わしいと思っていたそれを、アズハルが輝く瞳で愛おしそうに見つめることに気がついてから、煩わしさは消え失せた。

俺はアズハルに毒されている。

愛という毒が俺の心を蝕むのだ。
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