勇者は魔王!?〜愛を知らない勇者は、魔王に溺愛されて幸せになります〜

天宮叶

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ノクス過去編(番外編)

6(最終話)

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出かける支度を整えると、ソルの手を取りテレポートを行う。

到着した場所には、一面に広がる水面と、丘の上に建てられている小さなガゼボがあるだけだ。ガゼボの中央には鐘が備え付けてあり、昔はここで小さな結婚の儀を行っていたことがわかる。

「わあ!すごく大きな湖!!」
 
広がる水面を視界に入れて、ソルが声を上げる。風に靡く滑らかな金髪を撫でてやりながら、微かに笑みを零す。

「あれは海だ」
「海?絵本や歴史書に出てくる海のこと?」
「そうだ。この場所は、母によく連れてこられていた」
「じゃあ、ノクスにとってはとても大事な場所なんだね」
「ああ。あちらへ行こう」
 
ソルの手を引き、ガゼボへと向かう。ガゼボからは、広大な海が一望でき、手を伸ばせば空を舞う鳥に手が届きそうな気さえしてくる。幼い頃、母は度々私をこの場所に連れてきては、父の話を聞かせてくれた。

「私は父の顔を知らないのだ。母は、この場所で父と愛を誓ったのだと話していた」
「ノクスのご両親に会ってみたかったな」
 
繋いだ手にソルが微かに力を込める。慰めてくれているように感じられて、嬉しく思える。魔王教育は厳しいもので、母が危惧していたように、人間は絶対悪なのだと教えられて育った。だが、その言葉を完全に信じ込むことはなかった。
 
母は偉大な人だ。魔王だと分かっていながら、私のことを守り育ててくれた彼女が、私を真っ当な道へと導いてくれたのだろう。

「ソル、私はお前を愛している」
 
すべての人間を愛することは不可能だ。だが、私が愛したただ1人の人間を今生守りきることはできる。

幼き日の私が、未来で人間を……それも勇者を愛する日が来ると知ったなら声を大にして否定するのだろうな。

「僕もノクスのこと愛しているよ」
 
意思の強い、つぶらな瞳が細められる。淡い桃色の唇から紡がれる愛の言葉が、どうしようもなく私の心を揺さぶるのだ。

「なにが待ち受けていようと、私はお前を手放しはしない」
 
どちらともなく唇を合わせ、愛を誓い合う。強い風が吹き、鐘が祝福するように一つ音を鳴らした。
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みんなの感想(20件)

三波わかめ
2023.11.30 三波わかめ
ネタバレ含む
2023.12.01 天宮叶

感想ありがとうございます!
沢山応援していただけてとても嬉しかったです♡
二人の物語は終わってしまいましたが、二人の幸せを今後も願って頂けたら作者も嬉しいです✨

解除
カミヤルイ
2023.11.29 カミヤルイ

遅くなりましたが完結おめでとうございます。推している作品でしたので、鮮やかな回収と幸せな二人に癒やされています。
連載お疲れ様でした。

2023.11.30 天宮叶

ありがとうございます〜‼️応援して下さりとても嬉しかったです😳💗
楽しんでいただけたならなによりでした💕

解除
iku
2023.11.09 iku

ソルくん❣️ノクス様❣️😭😭😭
本当に本当におめでとうございます💒💕💕💕💕💕
ソルくん…🥹想いが通じて🙏本当に良かったね🩷🩷🩷
お幸せに😭🙌😘

2023.11.09 天宮叶

感想ありがとうございます♡
読んだくださってとても嬉しいです‼️2人を温かく見守って頂き、作者も幸せです(*˘︶˘*).。.:*♡

解除

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