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第9話 転生エルフ(100)、先輩に出会う。
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「リースよ、森の外へ出たいという思いはあの頃から変わっておられんのですな?」
族長の言葉に俺は小さく頷いた。
俺――リース・ファランは100歳になった。
年を重ねるほどに身体の調子が上がっていくのがよく分かる。
族長が試験の場として選んだのは、エルフ居住区の象徴的存在でもある《ユグドラシルの古代樹》の真下の広場だ。
神事が行われる時にしか解放されないこの場所は、エルフ族の中でも神聖なものとされている。
「なかなか活きのいい子が出てきたみたいだね、族長」
ふと、そよ風と共に広場に何者かの声が響き渡る。
「わざわざ呼び寄せてすまんな」
空を見つめて族長は呟く。
「いいよ、同胞が外で《喰いモノ》にされるのを見るよりはね。わたし程度どうしようも出来ないなら外の世界でもどうしようもないと思うし」
族長につられて空を見上げてみれば、今度はふわりと甘い香りがした。
「それに、わたしが外の世界に行ったばかりに後を追いたがる子も出てきてるらしいじゃないか」
「やんちゃな子はいつの時代も出てくるものでな。……外の世界にやられた者も少なくはない」
エルフ族は、基本的に一生をこの古代樹の中で過ごしていく。
だが外の世界に興味を持つ者もそれなりにいたらしい。
そんなエルフが軽々しく外に出てしまえば……結果は見え透いている。
家暮らしが長い猫が突然車道に飛び出るのと一緒だ。
「でも意外だね。族長の言いつけを守ってちゃんと100年修行してるエルフを見るのは初めてだ。わたしは300年掛かったけど、たった100年で族長が試験の許可を出すくらいには優秀なんだ」
「優秀なぞの言葉では言い表せぬ。それは今からお主がよくよく体感するであろうて」
「へぇ、それは楽しみかもね」
するといつの間にか、俺の目の前には一人の小さな女の子が立っていた。
透き通るような金髪のツインテールに整った顔。でも表情は一切動かない。
小さな杖を持ってちょこんと佇むその姿はまるでお人形さんみたいだ。
「リース、此奴は――」
「ラハブ・ロウリィ。ちょっと中年に差し掛かったエルフだ。呼び方は任せるよ」
族長の言葉を遮って、少女――ラハブさんは持っていた杖をトンと地面に着いた。
じわり、じわりと族長には気付かないレベルで魔法力の根が地面に張り始める。
ラハブ・ロウリィ。
族長が族長になってから、初めて正式に森の外に出ることを許された唯一のエルフだと言う。
年齢は……淑女に聞くのは大変失礼だから黙っておくとして、400歳は超えているだろう。
外の世界からやってくる魔道書には、数百年前からいくつかエルフの存在が出てくるがそのほとんど全てに《ラハブ》の名前が刻まれている。
神出鬼没に病める人間の元に現れては、貴重な木の実と引き換えにそれを治して去って行く。
そんな自由気ままな伝承がいくつか残っている。
エルフとしても大先輩、外の世界にいる人としても大先輩なわけだ。
ラハブさんが張った魔法の根は徐々に俺の元へと向かってきていた。
攻撃魔法の仕掛け――?
だが、族長が言うには彼女は外の世界に出向くまでは回復魔法しか極めていなかったと聞く。
外の世界で何かを得ているということか……?
「試験は簡単だ。わたしが繰り出す攻撃に、わたしが良いというまでただ耐えてくれれば良い。避けても、防いでも、治してくれても良いよ。とってもシンプルだろう?」
……表情が一切変わらないのがなおさら怖いね!
冷や汗が流れるなかで、俺は手に魔力を溜めた。
それを見てラハブさんも杖に魔法力を溜め始める。
「じゃ、リースくんのタイミングで始めていいよ」
ひらひらと無表情に手を振るラハブさん。
ラハブさんの試験に合格すれば、これで俺も晴れて外の世界に――。
小さく息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。
「では、よろし――」
ドドォォォォォォッッ!!
瞬間、ラハブさんが張っていた魔法力が爆発して目の前の大地から土で出来た槍が現れた。
土煙が轟々と舞い、ラハブさんの姿は見えなくなる。
「ヒト族ってのはね、獰猛で、狡猾で、卑怯な存在なんだ。杖から魔法が出ると思ったら、気付かないところで別の魔法が用意されている。回復魔法しか使えないと言われているはずなのに、別の魔法が出てくる。そんなものばっかりでさ。リースくんが外の世界に出たいというなら――」
土煙が明けると、表情を変えなかったラハブさんが驚いているのが分かった。
「土属性魔法、大地堅牢。大地を隆起させて盾にするこの魔法は、ラハブさんの土槍からは対になる魔法ですね」
俺が繰り出した大地の盾を前にして、ラハブさんの土槍は砕け散っていた。
先ほどの土煙は、ラハブさんの魔法が砕け散ったものだ。
「……へぇ、面白い子。まるでヒト族みたいだ」
――皮肉にも、俺の前世はそんなヒト族なのだ。
「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします、先輩ッ!」
100年間の集大成を見せる試験が、今始まった――!
族長の言葉に俺は小さく頷いた。
俺――リース・ファランは100歳になった。
年を重ねるほどに身体の調子が上がっていくのがよく分かる。
族長が試験の場として選んだのは、エルフ居住区の象徴的存在でもある《ユグドラシルの古代樹》の真下の広場だ。
神事が行われる時にしか解放されないこの場所は、エルフ族の中でも神聖なものとされている。
「なかなか活きのいい子が出てきたみたいだね、族長」
ふと、そよ風と共に広場に何者かの声が響き渡る。
「わざわざ呼び寄せてすまんな」
空を見つめて族長は呟く。
「いいよ、同胞が外で《喰いモノ》にされるのを見るよりはね。わたし程度どうしようも出来ないなら外の世界でもどうしようもないと思うし」
族長につられて空を見上げてみれば、今度はふわりと甘い香りがした。
「それに、わたしが外の世界に行ったばかりに後を追いたがる子も出てきてるらしいじゃないか」
「やんちゃな子はいつの時代も出てくるものでな。……外の世界にやられた者も少なくはない」
エルフ族は、基本的に一生をこの古代樹の中で過ごしていく。
だが外の世界に興味を持つ者もそれなりにいたらしい。
そんなエルフが軽々しく外に出てしまえば……結果は見え透いている。
家暮らしが長い猫が突然車道に飛び出るのと一緒だ。
「でも意外だね。族長の言いつけを守ってちゃんと100年修行してるエルフを見るのは初めてだ。わたしは300年掛かったけど、たった100年で族長が試験の許可を出すくらいには優秀なんだ」
「優秀なぞの言葉では言い表せぬ。それは今からお主がよくよく体感するであろうて」
「へぇ、それは楽しみかもね」
するといつの間にか、俺の目の前には一人の小さな女の子が立っていた。
透き通るような金髪のツインテールに整った顔。でも表情は一切動かない。
小さな杖を持ってちょこんと佇むその姿はまるでお人形さんみたいだ。
「リース、此奴は――」
「ラハブ・ロウリィ。ちょっと中年に差し掛かったエルフだ。呼び方は任せるよ」
族長の言葉を遮って、少女――ラハブさんは持っていた杖をトンと地面に着いた。
じわり、じわりと族長には気付かないレベルで魔法力の根が地面に張り始める。
ラハブ・ロウリィ。
族長が族長になってから、初めて正式に森の外に出ることを許された唯一のエルフだと言う。
年齢は……淑女に聞くのは大変失礼だから黙っておくとして、400歳は超えているだろう。
外の世界からやってくる魔道書には、数百年前からいくつかエルフの存在が出てくるがそのほとんど全てに《ラハブ》の名前が刻まれている。
神出鬼没に病める人間の元に現れては、貴重な木の実と引き換えにそれを治して去って行く。
そんな自由気ままな伝承がいくつか残っている。
エルフとしても大先輩、外の世界にいる人としても大先輩なわけだ。
ラハブさんが張った魔法の根は徐々に俺の元へと向かってきていた。
攻撃魔法の仕掛け――?
だが、族長が言うには彼女は外の世界に出向くまでは回復魔法しか極めていなかったと聞く。
外の世界で何かを得ているということか……?
「試験は簡単だ。わたしが繰り出す攻撃に、わたしが良いというまでただ耐えてくれれば良い。避けても、防いでも、治してくれても良いよ。とってもシンプルだろう?」
……表情が一切変わらないのがなおさら怖いね!
冷や汗が流れるなかで、俺は手に魔力を溜めた。
それを見てラハブさんも杖に魔法力を溜め始める。
「じゃ、リースくんのタイミングで始めていいよ」
ひらひらと無表情に手を振るラハブさん。
ラハブさんの試験に合格すれば、これで俺も晴れて外の世界に――。
小さく息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。
「では、よろし――」
ドドォォォォォォッッ!!
瞬間、ラハブさんが張っていた魔法力が爆発して目の前の大地から土で出来た槍が現れた。
土煙が轟々と舞い、ラハブさんの姿は見えなくなる。
「ヒト族ってのはね、獰猛で、狡猾で、卑怯な存在なんだ。杖から魔法が出ると思ったら、気付かないところで別の魔法が用意されている。回復魔法しか使えないと言われているはずなのに、別の魔法が出てくる。そんなものばっかりでさ。リースくんが外の世界に出たいというなら――」
土煙が明けると、表情を変えなかったラハブさんが驚いているのが分かった。
「土属性魔法、大地堅牢。大地を隆起させて盾にするこの魔法は、ラハブさんの土槍からは対になる魔法ですね」
俺が繰り出した大地の盾を前にして、ラハブさんの土槍は砕け散っていた。
先ほどの土煙は、ラハブさんの魔法が砕け散ったものだ。
「……へぇ、面白い子。まるでヒト族みたいだ」
――皮肉にも、俺の前世はそんなヒト族なのだ。
「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします、先輩ッ!」
100年間の集大成を見せる試験が、今始まった――!
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