転生エルフによる900年の悠久無双記~30歳で全属性魔法、100歳で古代魔術を習得。残り900年、全部無双!~

榊原モンショー

文字の大きさ
51 / 57

第51話 勇者、覚醒する。

しおりを挟む
「そして君たちが私たちと争わないもう一つの理由がここにある」

 パチンとウーヴァが指を鳴らすと、彼の隣の空間が歪んだ。

「君たちが欲している勇者の剣とやらはこれだろう?」

 それはウーヴァが持つことすら躊躇うほどの聖なる力を宿していた。
 いつの時代の勇者も、聖剣を持ち合わせていた。
 聖なる剣で魔を討ち滅ぼしこの世に安寧をもたらす。
 歴代の勇者は皆、一様にその《聖剣》を用いて魔族たちと対峙していたという。
 勇者の力を完全解放すべくジンたちが探していた代物そのものだったのだが――。

「聖剣アスカロン。700年前に我等が魔王はこんな短剣一本で滅ぶハメになった。勇者魔法とやらで魔力付与したものでもない、これそのものが聖なる力を有している剣だ。こんなものがあるから、貴様等は期待するんだ。破壊魔法、破砕の鉄槌ガルダロス

 そんなことを露とも知らず、ウーヴァはいとも簡単に剣を魔力で粉々に打ち砕いた。

「さぁ、これで君たちに勝ち目がないことは分かったはずだ。大人しく我等との和平を結ぼうじゃないか」

 先ほどとは打って変わってにっこりと笑みを浮かべるウーヴァ。
 
 ――本気で格好良い冒険者に憧れ始めたのはいつからだっただろうか。

 お伽噺の中の冒険者像を、母に読み聞かせてもらってた時か。
 村に出てきた魔狼ハウンドウルフをたまたま討伐して褒められた時か。
 冒険者パーティー《クロセナール》で延々と雑用を担当していた時か。
 はたまた、圧倒的な強さで敵を討つエルフの姿を見て、想いが再燃した時からか――。

「その世界は、瘴気に耐性がないエルフ族も共存できる世界なのか?」

「エルフ族? さぁ。人間様が嫌いな《亜人》のことなど君達が気にする必要もあるまい」

「……ならそれには答えられないな。リース師匠が帰ってくるときに、リース師匠がいた故郷まで侵食されてしまったらぼくはぼくを一生許せない」

「この意志やくわりが世界の理であろうと、ぼく自身でなかろうとそんなことはどうでもいい。ぼくはぼくで、目指してきて、やりたいもののためにお前達と戦う。だから――!」

 ――いいかい、ジン君。

 リースとの約束を果たすべき時が来た。

 ――これからしばらくの間この剣は君を守ってくれるだろう。だけどもし君が人生最大の戦いを迎える時が来たのならば、俺を信じてありったけの魔力を注ぎ込んでみてほしい。きっと君の力になってくれるだろうからね。

「リース師匠、ここがその人生最大の戦いってことですね……!」

 この5年間、ジンの勇者魔法は着実に力を付けてきていた。
 だが勇者魔法を受け止めてくれる強度を持つ武具は見つかることもなく、リースから貰った修行用の剣が彼の相棒代わりだった。

「勇者魔法、最大火力魔力付与エンチャント……ッッ!!」

 ありったけの魔力を注ぐと、剣は許容できる魔力量を大幅に超えてビキビキと音を立てていく。
 身体中の魔力を、全て剣に乗せていく。
 暴発寸前まで勇者魔法を溜め込んだ剣は――。

 バリィィィィィンッッ

 音を立てて呆気なく柄から先を吹き飛ばしてしまった――が。
 吹き飛んだ破片は光に包まれ再度別もの・・・の剣として再集合していく。

 その様子に、ウーヴァは思わず目を疑った。

「疑似聖剣……だと!?」

「これなら……いけるっ! リース師匠、お力お借りしますッ!!!!」

 どれだけ身体が軋んでもいい。
 今、この空間でウーヴァと一対一で戦えるこの間だけ、これまでの自分の限界を超えて行ければ良い。

「そんな馬鹿げたことがあってたまるか! 聖剣を疑似創成するなど――神の所業ではないかッ!!!!」

 大上段に疑似聖剣を掲げるジンは、魔力不足でふらふらになりながらも笑みを浮かべた。

「あぁ。ぼくにとっては、そのヒトはまさしく神にも等しい存在だ」

 ――一閃。

 最後の力を振り絞ったジンの剣は、今までまるで歯が立たなかったウーヴァの剣を真っ二つに叩き折る。

「……なっ!?」

 ウーヴァの表情に初めて焦りが見えた。
 だが時はすでに遅い。
 ジンの身体を巡る聖なる力は増大し、周りの瘴気すらも浄化するまでに至っていた。
 剣の柄に聖なる力が集まり、ジンの身体と一体化する。
 脳裏に浮かぶその剣の名はどの伝承でも聞いたことがないものだ。
 それでもジン・フリッツは師匠を信じて言葉に魔力を乗せ、聖剣の名を口にした。

「吠えろ、聖剣レーヴァテイン」

似非エセ勇者の、分際でェェェェッッ!!!」

 ウーヴァはこれまでで最も強い闇の魔力を持ってジンへ魔法を撃って出る。

 だが、名を得た聖剣は強く光り輝いた。
 ウーヴァが溜めた破壊の魔法も、瘴気で魔力付与《エンチャント》した歪な剣も全てを飲み込み、消滅させる。

 ザシュッ――!!

 交錯する最中、ウーヴァの角から光が失われた。
 ジンが最後の力を振り絞って横に薙いだ一撃は確実にウーヴァに届いていた。

「わ、たしごときが、魔王軍の足を引っ張るなど……許されるはずが……」

 瘴気のオーラも掻き消えて、ドチャリと音を立てて倒れ行くウーヴァ。
 魔族の天敵とも呼べる聖なる力が全身を貫いたのだ。もはや再起は不可能だった。

「……ハァッ、ハァッ……!」

 身体の力がドッと抜ける。
 瘴気の過剰摂取と魔力の枯渇で身体は思うように動かない。

「リース師匠、これでぼくも、格好良い冒険者に近付けましたかね……?」

 魔法を使えなかった自分が、ついには魔王軍の最高峰を打ち倒すことができた。
 リースがいなければ、とっくの昔に力尽きていた。
 目の前に燦然と輝くユグドラシルの古代樹に一瞬だけ身を預けるほどに疲弊しきっていた。

 だが、これで終わりではない。
 瘴気で覆われたこの空間の外からは未だ乱戦の様子が窺える。
 希望の旅人ラグリージュやククレ城塞兵たちにこの勝利を伝え、加勢しなければならない。
 ようやく掴んだ勇者の力で今こそ皆に恩返しを。
 そう意気込んで、重たい剣を持ち上げようとした――その時だった。

 ドテッと。 

 意志に反して身体が地面に転がった。
 
「……あれ? こんな時に、なんで……」

 これからだというのに。
 せっかく勇者の力を十全に発揮できるようになり、聖剣が目の前にあるというのに。
 指が一本も動かなかった。
 その時だった。

「ふはは……今の空気はこんなにも澄んでしまっているのか。さぞ同胞達は暮らしづらかったことだろう。700年。実に長かった」

 ふとウーヴァの倒れる後方から、不気味な質量を持った声がした。
 ウーヴァの魔力ではない。いや、むしろウーヴァのそれが温《ぬる》いと感じるほどだ。

 辺りに留まっていた瘴気が後方の存在に全て吸い寄せられていく。
 ウーヴァですら全て取り込むことができなかった量だ。
 
「む、ウーヴァが死んだか。まぁ、これ・・にしてはよくやった方か。勇者と相打ちならば上出来だ。死の間際に不完全であれど俺を呼び戻したことは幾星霜に渡る殊勲である」

 ――この最悪なタイミングで、《魔王》この世に復活してしまったのだ、と。

 理解するのに時間は掛からなかった。
 もはや姿をはっきり見ることすらも叶わない。
 ……と同時に、その意味の全てを悟らざるを得なかった。

「……格好良い冒険者に……」

 勝ち目など、あるはずもない。
 もう力は使い果たしていた。
 それでも、もう一度だけ――。

「このままじゃ、リース師匠に、顔向けができないじゃないか……」

 地べたを這いずり、剣を握る。
 後方では異常な量の魔力が錬成されていた。

「我が配下ウーヴァ・カルマの仇は取っておくとしよう。受け取るが良い。破滅魔法、冥府の死風ヴァイエルン

 バケモノの発した言葉に魔力が乗る。
 防ぎようもない質量と空気さえもを飲み込む魔力は、聖なる力を宿していても敵うわけがない。
 もはや死を覚悟して目を瞑った、その時だった。

「よく頑張ってくれた。おかげさまで周りの敵も一掃できた。破滅魔法には破滅魔法だ。魔王の一撃ブラックホールッ!」

 懐かしい声だった。
 飄々とした様子で微塵も危機を感じさせない雰囲気。
 瘴気も魔力も渦巻く中で、颯爽と現れる心地よい風。
 何度も何度も近くで見てきた穏やかで、強大な魔力は健在だった。

「君のようなヒト族が勇者になってくれて良かった。後は任せ――いや」

 目の前に現れたその史上最強のエルフ族はあの時のように・・・・・・・ジンの前に何の躊躇いもなく手を差し伸べた。
 
「――後少しだ。立てるね?」

 一番最初に会った時は、守られることしかできなかった。
 でも今は――。

「……っ! はいっ!」

 世界で一番尊敬している師と共に立ち向かえる。
 それだけでもう怖いものなど何一つなく感じられた。


 ジン・フリッツ、20歳。
 次代の勇者は、5年の月日を経て今日――《勇者》となった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...