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エピローグ①:魔王討伐3年後
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瘴気空間から明けた俺が見たのは、皆がミノリを囲むようにして話している所だった。
恥ずかしげな雰囲気を漂わせつつも、以前のような他を寄せ付けない雰囲気はもうない。
「ミノリも成長したねぇ」
その光景には思わず俺も笑みがこぼれた。
すると、ミノリそっちのけでふと横のジン君を目がけて走ってくる一団があった。
「ジンーーーーーー! やったな、お前ついにやってくれたか!! もしおっ死んだら一生恨んでた所だったぞ!!!」
「ジンさんお疲れさまです! 本当にやりましたね、お怪我はラハブ様に……ってお怪我があまりないじゃないですか!? ラハブ様――」
――と、彼らがジン君の見つけた新たな仲間達であることはいい。
だが、俺が驚愕したのはその後ろで「やっほ」と手を振ってる御方だった。
「ら、ラハブ師匠!? どうしてこんな所に!?」
「いやぁ、そこらを適当に旅してたらね、どうも君のことを師と仰ぐ面白いパーティーが現れたから暇つぶしに付いてきてみたんだ」
「ひ、暇つぶしにって! どうしてすぐ近くにいるなら言ってくださらなかったんですか!?」
「んー、面白そうだったからかな? 実際この3年は面白かったよ、リース師匠」
「ぐっ……!?」
ケラケラと他人事のように言うラハブさん。
大分意地が悪いな……!
パーティーメンバーの皆が不思議がっているなかでジン君は問う。
「あ、あのリース師匠とラハブ様ってやはりお知り合い、だったんでしょうか?」
何も知らされてなかったこの子達は、文字通り何も悪くない。
どちらかというと知ってて3年も黙っていたラハブさんが少しイジワルだったというだけだ。
ジン君達の純粋な目、そしてラハブさんの余裕ぶりに少しだけ気恥ずかしさが増す。
コホンと咳払いをして俺は隣で小さく胸を張るラハブさんを改めて紹介した。
「ラハブ・ロウリィさんは俺の師匠だ。俺がここに出てくるために必要なことは、全部このヒトから教わったんだ」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!?』
皆の驚きにも構わず無表情で両手ピースを決め込むラハブさん。
「ふふふ、弟子のこの顔が見れただけでこの3年の元は取れたよ」
「人のことは言えませんけど、ラハブさんも相変わらず時間感覚がバグっておいでですね……」
魔王を倒し、晴れて《勇者パーティー》となった希望の旅人。
結成から3年間で新たに一つ大きな爆弾(特にジン君にとって)が投げ込まれた瞬間だった。
●●●
勇者が魔王を打ち倒してから3年が経った。
あれから勇者パーティー希望の旅人の名は、ククレ城塞の有名パーティーだったのが一気にオゥル皇国全土に響き渡ることになったという。
それに合わせてククレ城塞に押し寄せてくる魔獣や魔族の数もめっきり減った。
残された魔王軍でもあり、俺たちの身内である洗脳状態下のグルゲア君が魔族領域の番人になってくれているからだ。
彼には魔王軍解体後の魔族領域再建も託してある。
本人もやる気になってくれていたし、そのおかげでクォータおばあちゃんの元にも、元の優しいお孫さん達が帰って来てくれたようだ。
今はみんなで村の畑仕事をしているらしく、一年に一度俺たちの元にはクォータ村からの名産品が届けられる。
瘴気を魔法で取り除けば俺たちにも美味しく食べられるものばかりだから、そのうちガリウスくんに瘴気除去の魔法を教えたら人間界と魔族領域の架け橋にでもなれるんじゃないだろうか。
戦場後も綺麗なままだったユグドラシルの分枝の下には、その苗も植えられた。
すくすく育つクォータ村産の苗を見るのは今の日課の一つだ。
小屋が一つも傷付いていなかったことは俺たちにとっても僥倖だった。
ここに住み続ける理由はいくつかある。
1つは魔王から摘出した《輪廻転生》の因子は瘴気の近くでないと研究が進まない。
それに魔族領域《ダレス》で獲得した多量の魔導書を読んで魔法を実践するには、瘴気の近くであることの方が都合が良かったからだ。
俺の目線の先では、今日もミノリが修行をしている。
フォンッ――と。
ミノリは鮮やかに剣を振った。
ユグドラシルの分枝から舞い散る葉っぱに狙いを定めて――。
「上級火炎魔法、陽炎剣」
瞬時の魔力と剣戟で、葉っぱは一瞬にして炎を上げて真っ二つとなる。
「……うん、文句なしだ」
言うと、ミノリはぱぁっと明るい笑みを浮かべる。
「っ! ありがとうございますっ!」
ぺこりと頭を下げると、汗に濡れた紅の長髪がふわりと揺れた。
とても可愛い。それでいてその剣筋はとても美しい。
完璧に無駄の削がれた動きと、必要量ピッタリの魔法操作はもはやミノリにしか出来ない領域となっていた。
今後はミノリに移植する予定の《輪廻転生》因子の解析研究と、瘴気を用いた魔法の習得、そしてミノリ自身の剣の成長を眺めつつほのぼの暮らすのも悪くない。
――と、呑気に外を眺めていればユグドラシルの分枝に一羽の鳥が止まった。
『クルッポー! クルッポー!』
軒先にやって来たのは魔伝鳩。
魔法で出来た伝書鳩は、この山奥にも定期的にやって来てくれる。
ガリウスくんが気を利かして飛ばしてくれているからだ。
山奥でも世の中の情報を手軽にもらえるのはありがたい。
ミノリが汗を拭いながらやって来る。
「今日の夕刊です。特集は……今日もジン君達のパーティーですね」
ミノリに渡された新聞記事には、今日もジン君達の活躍が事細かに載せられている。
――【特報】希望の旅人、オゥル皇国史上初のSS級ダンジョン制覇!
――【勇者の軌跡】ダンジョン踏破・魔獣討伐数チェッカー
――【今日の勇者】ジン・フリッツの勇者覚醒裏話 8話目掲載!
……という感じで、最近の記事はいつも勇者パーティーの話題で一色だ。
知らず知らずのうちに蓄積されていた瘴気による世界への不安も取り除かれた今、明るい話題と希望に包まれたい世相と勇者の『その後』の活躍情報の需要がピッタリ合っていたのだろう。
とはいえ、これだけ弟弟子の活躍を見ているとミノリも疼くとは思っていたんだが――。
●●●
――ミノリさん、やはりぼく達と一緒に来てくれませんか。
魔王戦終結後、ジン君はミノリをヘッドハンティングしようとしたことがあった。
――ミノリさんの力はぼく達の足りない所でもあります。ミノリさんが加わればさらにパーティーの完成度が高まると思うんです。
止めたかったが、それが果たしてミノリのためになるのか……なんてこの期に及んで自分の感情に素直になれない俺をそっちのけで、ミノリはジン君に笑顔で告げた。
――わたしは生涯をリース様のお側で過ごすと決めたので。弟弟子の活躍は、ここから応援していますよ。
●●●
昔も今も、俺なんかよりよっぽどミノリの方が大人だったということだ。
そんなこともあって、ミノリは俺の研究に付きあってくれつつ自己研鑽も同時に積み重ねている。
とはいえミノリも何かやりたいことのために頑張っているみたいだけど、それは果たしていつのことになるのやら――なんて思っていたら。
「リース様、折り入ってお話があります」
今日の分量分の修行を終えたミノリは居住まいを正して俺の前へと座った。
汗で濡れたその瞳は決意に満ちていた。
「やりたいこと、出来そうになったかい?」
問うと、彼女はこくりと小さく頷いた。
「――剣術道場を開きたいのです。リース様から教わった技をここで潰えさせたくはない……だからこそ、リース様から教わった技を広める許可を、わたしに頂けないでしょうか」
時は止まらず進んでいく。
しかしそのスピードは俺とミノリで一定ではないようだ。
人間族の時間は、エルフ族なんかよりも、ずっとずっと早く――。
恥ずかしげな雰囲気を漂わせつつも、以前のような他を寄せ付けない雰囲気はもうない。
「ミノリも成長したねぇ」
その光景には思わず俺も笑みがこぼれた。
すると、ミノリそっちのけでふと横のジン君を目がけて走ってくる一団があった。
「ジンーーーーーー! やったな、お前ついにやってくれたか!! もしおっ死んだら一生恨んでた所だったぞ!!!」
「ジンさんお疲れさまです! 本当にやりましたね、お怪我はラハブ様に……ってお怪我があまりないじゃないですか!? ラハブ様――」
――と、彼らがジン君の見つけた新たな仲間達であることはいい。
だが、俺が驚愕したのはその後ろで「やっほ」と手を振ってる御方だった。
「ら、ラハブ師匠!? どうしてこんな所に!?」
「いやぁ、そこらを適当に旅してたらね、どうも君のことを師と仰ぐ面白いパーティーが現れたから暇つぶしに付いてきてみたんだ」
「ひ、暇つぶしにって! どうしてすぐ近くにいるなら言ってくださらなかったんですか!?」
「んー、面白そうだったからかな? 実際この3年は面白かったよ、リース師匠」
「ぐっ……!?」
ケラケラと他人事のように言うラハブさん。
大分意地が悪いな……!
パーティーメンバーの皆が不思議がっているなかでジン君は問う。
「あ、あのリース師匠とラハブ様ってやはりお知り合い、だったんでしょうか?」
何も知らされてなかったこの子達は、文字通り何も悪くない。
どちらかというと知ってて3年も黙っていたラハブさんが少しイジワルだったというだけだ。
ジン君達の純粋な目、そしてラハブさんの余裕ぶりに少しだけ気恥ずかしさが増す。
コホンと咳払いをして俺は隣で小さく胸を張るラハブさんを改めて紹介した。
「ラハブ・ロウリィさんは俺の師匠だ。俺がここに出てくるために必要なことは、全部このヒトから教わったんだ」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!?』
皆の驚きにも構わず無表情で両手ピースを決め込むラハブさん。
「ふふふ、弟子のこの顔が見れただけでこの3年の元は取れたよ」
「人のことは言えませんけど、ラハブさんも相変わらず時間感覚がバグっておいでですね……」
魔王を倒し、晴れて《勇者パーティー》となった希望の旅人。
結成から3年間で新たに一つ大きな爆弾(特にジン君にとって)が投げ込まれた瞬間だった。
●●●
勇者が魔王を打ち倒してから3年が経った。
あれから勇者パーティー希望の旅人の名は、ククレ城塞の有名パーティーだったのが一気にオゥル皇国全土に響き渡ることになったという。
それに合わせてククレ城塞に押し寄せてくる魔獣や魔族の数もめっきり減った。
残された魔王軍でもあり、俺たちの身内である洗脳状態下のグルゲア君が魔族領域の番人になってくれているからだ。
彼には魔王軍解体後の魔族領域再建も託してある。
本人もやる気になってくれていたし、そのおかげでクォータおばあちゃんの元にも、元の優しいお孫さん達が帰って来てくれたようだ。
今はみんなで村の畑仕事をしているらしく、一年に一度俺たちの元にはクォータ村からの名産品が届けられる。
瘴気を魔法で取り除けば俺たちにも美味しく食べられるものばかりだから、そのうちガリウスくんに瘴気除去の魔法を教えたら人間界と魔族領域の架け橋にでもなれるんじゃないだろうか。
戦場後も綺麗なままだったユグドラシルの分枝の下には、その苗も植えられた。
すくすく育つクォータ村産の苗を見るのは今の日課の一つだ。
小屋が一つも傷付いていなかったことは俺たちにとっても僥倖だった。
ここに住み続ける理由はいくつかある。
1つは魔王から摘出した《輪廻転生》の因子は瘴気の近くでないと研究が進まない。
それに魔族領域《ダレス》で獲得した多量の魔導書を読んで魔法を実践するには、瘴気の近くであることの方が都合が良かったからだ。
俺の目線の先では、今日もミノリが修行をしている。
フォンッ――と。
ミノリは鮮やかに剣を振った。
ユグドラシルの分枝から舞い散る葉っぱに狙いを定めて――。
「上級火炎魔法、陽炎剣」
瞬時の魔力と剣戟で、葉っぱは一瞬にして炎を上げて真っ二つとなる。
「……うん、文句なしだ」
言うと、ミノリはぱぁっと明るい笑みを浮かべる。
「っ! ありがとうございますっ!」
ぺこりと頭を下げると、汗に濡れた紅の長髪がふわりと揺れた。
とても可愛い。それでいてその剣筋はとても美しい。
完璧に無駄の削がれた動きと、必要量ピッタリの魔法操作はもはやミノリにしか出来ない領域となっていた。
今後はミノリに移植する予定の《輪廻転生》因子の解析研究と、瘴気を用いた魔法の習得、そしてミノリ自身の剣の成長を眺めつつほのぼの暮らすのも悪くない。
――と、呑気に外を眺めていればユグドラシルの分枝に一羽の鳥が止まった。
『クルッポー! クルッポー!』
軒先にやって来たのは魔伝鳩。
魔法で出来た伝書鳩は、この山奥にも定期的にやって来てくれる。
ガリウスくんが気を利かして飛ばしてくれているからだ。
山奥でも世の中の情報を手軽にもらえるのはありがたい。
ミノリが汗を拭いながらやって来る。
「今日の夕刊です。特集は……今日もジン君達のパーティーですね」
ミノリに渡された新聞記事には、今日もジン君達の活躍が事細かに載せられている。
――【特報】希望の旅人、オゥル皇国史上初のSS級ダンジョン制覇!
――【勇者の軌跡】ダンジョン踏破・魔獣討伐数チェッカー
――【今日の勇者】ジン・フリッツの勇者覚醒裏話 8話目掲載!
……という感じで、最近の記事はいつも勇者パーティーの話題で一色だ。
知らず知らずのうちに蓄積されていた瘴気による世界への不安も取り除かれた今、明るい話題と希望に包まれたい世相と勇者の『その後』の活躍情報の需要がピッタリ合っていたのだろう。
とはいえ、これだけ弟弟子の活躍を見ているとミノリも疼くとは思っていたんだが――。
●●●
――ミノリさん、やはりぼく達と一緒に来てくれませんか。
魔王戦終結後、ジン君はミノリをヘッドハンティングしようとしたことがあった。
――ミノリさんの力はぼく達の足りない所でもあります。ミノリさんが加わればさらにパーティーの完成度が高まると思うんです。
止めたかったが、それが果たしてミノリのためになるのか……なんてこの期に及んで自分の感情に素直になれない俺をそっちのけで、ミノリはジン君に笑顔で告げた。
――わたしは生涯をリース様のお側で過ごすと決めたので。弟弟子の活躍は、ここから応援していますよ。
●●●
昔も今も、俺なんかよりよっぽどミノリの方が大人だったということだ。
そんなこともあって、ミノリは俺の研究に付きあってくれつつ自己研鑽も同時に積み重ねている。
とはいえミノリも何かやりたいことのために頑張っているみたいだけど、それは果たしていつのことになるのやら――なんて思っていたら。
「リース様、折り入ってお話があります」
今日の分量分の修行を終えたミノリは居住まいを正して俺の前へと座った。
汗で濡れたその瞳は決意に満ちていた。
「やりたいこと、出来そうになったかい?」
問うと、彼女はこくりと小さく頷いた。
「――剣術道場を開きたいのです。リース様から教わった技をここで潰えさせたくはない……だからこそ、リース様から教わった技を広める許可を、わたしに頂けないでしょうか」
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