転生エルフによる900年の悠久無双記~30歳で全属性魔法、100歳で古代魔術を習得。残り900年、全部無双!~

榊原モンショー

文字の大きさ
54 / 57

エピローグ①:魔王討伐3年後

しおりを挟む
 瘴気空間から明けた俺が見たのは、皆がミノリを囲むようにして話している所だった。
 恥ずかしげな雰囲気を漂わせつつも、以前のような他を寄せ付けない雰囲気はもうない。

「ミノリも成長したねぇ」

 その光景には思わず俺も笑みがこぼれた。
 すると、ミノリそっちのけでふと横のジン君を目がけて走ってくる一団があった。

「ジンーーーーーー! やったな、お前ついにやってくれたか!! もしおっ死んだら一生恨んでた所だったぞ!!!」
「ジンさんお疲れさまです! 本当にやりましたね、お怪我はラハブ様に……ってお怪我があまりないじゃないですか!? ラハブ様――」

 ――と、彼らがジン君の見つけた新たな仲間達であることはいい。
 だが、俺が驚愕したのはその後ろで「やっほ」と手を振ってる御方だった。

「ら、ラハブ師匠!? どうしてこんな所に!?」

「いやぁ、そこらを適当に旅してたらね、どうも君のことを師と仰ぐ面白いパーティーが現れたから暇つぶしに付いてきてみたんだ」

「ひ、暇つぶしにって! どうしてすぐ近くにいるなら言ってくださらなかったんですか!?」

「んー、面白そうだったからかな? 実際この3年は面白かったよ、リース師匠」

「ぐっ……!?」

 ケラケラと他人事のように言うラハブさん。
 大分意地が悪いな……!
 パーティーメンバーの皆が不思議がっているなかでジン君は問う。

「あ、あのリース師匠とラハブ様ってやはりお知り合い、だったんでしょうか?」

 何も知らされてなかったこの子達は、文字通り何も悪くない。
 どちらかというと知ってて3年も黙っていたラハブさんが少しイジワルだったというだけだ。
 ジン君達の純粋な目、そしてラハブさんの余裕ぶりに少しだけ気恥ずかしさが増す。
 コホンと咳払いをして俺は隣で小さく胸を張るラハブさんを改めて紹介した。

「ラハブ・ロウリィさんは俺の師匠だ。俺がここに出てくるために必要なことは、全部このヒトから教わったんだ」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!?』

 皆の驚きにも構わず無表情で両手ピースを決め込むラハブさん。

「ふふふ、弟子のこの顔が見れただけでこの3年の元は取れたよ」

「人のことは言えませんけど、ラハブさんも相変わらず時間感覚がバグっておいでですね……」


 魔王を倒し、晴れて《勇者パーティー》となった希望の旅人ラグリージュ
 結成から3年間で新たに一つ大きな爆弾(特にジン君にとって)が投げ込まれた瞬間だった。
 


●●●


 勇者が魔王を打ち倒してから3年が経った。

 あれから勇者パーティー希望の旅人ラグリージュの名は、ククレ城塞の有名パーティーだったのが一気にオゥル皇国全土に響き渡ることになったという。

 それに合わせてククレ城塞に押し寄せてくる魔獣や魔族の数もめっきり減った。
 残された魔王軍でもあり、俺たちの身内である洗脳状態下のグルゲア君が魔族領域ダレスの番人になってくれているからだ。
 彼には魔王軍解体後の魔族領域再建も託してある。
 本人もやる気になってくれていたし、そのおかげでクォータおばあちゃんの元にも、元の優しいお孫さん達が帰って来てくれたようだ。


 今はみんなで村の畑仕事をしているらしく、一年に一度俺たちの元にはクォータ村からの名産品が届けられる。
 瘴気を魔法で取り除けば俺たちにも美味しく食べられるものばかりだから、そのうちガリウスくんに瘴気除去の魔法を教えたら人間界と魔族領域の架け橋にでもなれるんじゃないだろうか。


 戦場後も綺麗なままだったユグドラシルの分枝の下には、その苗も植えられた。
 すくすく育つクォータ村産の苗を見るのは今の日課の一つだ。
 小屋が一つも傷付いていなかったことは俺たちにとっても僥倖だった。
 ここに住み続ける理由はいくつかある。
 1つは魔王から摘出した《輪廻転生》の因子は瘴気の近くでないと研究が進まない。
 それに魔族領域《ダレス》で獲得した多量の魔導書を読んで魔法を実践するには、瘴気の近くであることの方が都合が良かったからだ。

 俺の目線の先では、今日もミノリが修行をしている。

 フォンッ――と。

 ミノリは鮮やかに剣を振った。
 ユグドラシルの分枝から舞い散る葉っぱに狙いを定めて――。

「上級火炎魔法、陽炎剣インフェルニア

 瞬時の魔力と剣戟で、葉っぱは一瞬にして炎を上げて真っ二つとなる。

「……うん、文句なしだ」

 言うと、ミノリはぱぁっと明るい笑みを浮かべる。

「っ! ありがとうございますっ!」

 ぺこりと頭を下げると、汗に濡れた紅の長髪がふわりと揺れた。
 とても可愛い。それでいてその剣筋はとても美しい。
 完璧に無駄の削がれた動きと、必要量ピッタリの魔法操作はもはやミノリにしか出来ない領域となっていた。
 
 今後はミノリに移植する予定の《輪廻転生》因子の解析研究と、瘴気を用いた魔法の習得、そしてミノリ自身の剣の成長を眺めつつほのぼの暮らすのも悪くない。

――と、呑気に外を眺めていればユグドラシルの分枝に一羽の鳥が止まった。

『クルッポー! クルッポー!』

 軒先にやって来たのは魔伝鳩メッセルタオペ
 魔法で出来た伝書鳩は、この山奥にも定期的にやって来てくれる。
 ガリウスくんが気を利かして飛ばしてくれているからだ。
 山奥でも世の中の情報を手軽にもらえるのはありがたい。

 ミノリが汗を拭いながらやって来る。

「今日の夕刊です。特集は……今日もジン君達のパーティーですね」

 ミノリに渡された新聞記事には、今日もジン君達の活躍が事細かに載せられている。

 ――【特報】希望の旅人ラグリージュ、オゥル皇国史上初のSS級ダンジョン制覇! 

 ――【勇者の軌跡】ダンジョン踏破・魔獣討伐数チェッカー

 ――【今日の勇者】ジン・フリッツの勇者覚醒裏話 8話目掲載!

 ……という感じで、最近の記事はいつも勇者パーティーの話題で一色だ。

 知らず知らずのうちに蓄積されていた瘴気による世界への不安も取り除かれた今、明るい話題と希望に包まれたい世相と勇者の『その後』の活躍情報の需要がピッタリ合っていたのだろう。

 とはいえ、これだけ弟弟子の活躍を見ているとミノリも疼くとは思っていたんだが――。

●●●

 ――ミノリさん、やはりぼく達と一緒に来てくれませんか。

 魔王戦終結後、ジン君はミノリをヘッドハンティングしようとしたことがあった。

 ――ミノリさんの力はぼく達の足りない所でもあります。ミノリさんが加わればさらにパーティーの完成度が高まると思うんです。

 止めたかったが、それが果たしてミノリのためになるのか……なんてこの期に及んで自分の感情に素直になれない俺をそっちのけで、ミノリはジン君に笑顔で告げた。

 ――わたしは生涯をリース様のお側で過ごすと決めたので。弟弟子の活躍は、ここから応援していますよ。

●●●

 昔も今も、俺なんかよりよっぽどミノリの方が大人だったということだ。
 そんなこともあって、ミノリは俺の研究に付きあってくれつつ自己研鑽も同時に積み重ねている。
 とはいえミノリも何かやりたいこと・・・・・・のために頑張っているみたいだけど、それは果たしていつのことになるのやら――なんて思っていたら。

「リース様、折り入ってお話があります」

 今日の分量分の修行を終えたミノリは居住まいを正して俺の前へと座った。
 汗で濡れたその瞳は決意に満ちていた。
 
「やりたいこと、出来そうになったかい?」

 問うと、彼女はこくりと小さく頷いた。

「――剣術道場を開きたいのです。リース様から教わった技をここで潰えさせたくはない……だからこそ、リース様から教わった技を広める許可を、わたしに頂けないでしょうか」

 時は止まらず進んでいく。
 しかしそのスピードは俺とミノリで一定ではないようだ。
 人間族ミノリの時間は、エルフ族リースなんかよりも、ずっとずっと早く――。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...