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まず必要なのは動かすための講習である
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収穫機が完成したので山へと持ち込んで農家?の人たちに使い勝手がどんなものか試してもらう事になった。
「おい!大丈夫か!」
しかし、鉱山のオッサンたちは難なく操縦していた二足歩行の収穫機だが、農民?達はうまく扱う事が出来ずにとうとう転倒する者が出てしまった。
もともと転倒を前提に機体を作ってあるのでシートベルトで体を固定している為、操縦者は無事だったが、傍目からはその危険性が際立って見えた事だろう。
「こんな山がちの所でよく分からない機械を動かすのは無理なんじゃないのか?」
そんな意見が出るのも仕方が無いだろう。
持ち込んだのは1機ではなく、アタッチメントを変えた2機を持ち込んでおり、完熟した実をもぎ取るマニピュレーター型と木をゆするU字腕型だ。
転倒したのはU字腕型の機体で、段差のある斜面を歩かせていた。
「山がちかどうかよりも、動かし方が難しいのが問題だな」
マニピュレータ機に乗り込んで平地で歩かせていた農民がそんな事を言う。
「そんな事ねぇだろ。鉱山で歩かせたときはコケることなく歩いてたぞ」
輸送を担当した鍛冶師がそう反論する。
「アンタらはこれを作ったから動かし方が分かるだけじゃないのか?」
農民からはそう反論が来る。
「俺はそうかもしれねぇが、鉱夫の奴らも動かしてるぞ?お前たちもモノレールを使ってるんだから、変わりねぇはずだが?」
鍛冶師がそう首をひねる。
「モノレール?アレは始動さえさせれば勝手に終点まで行くだけじゃないか」
それを聞いた鍛冶師が驚いている。
「マジか?アレは途中で載せ降ろしするのに運転手が乗り込むんじゃないのか?」
「勝手に走って勝手に止まるだけだろ?」
農民にとっては始動のために操作盤に触れる事はあっても、それ以後はレール側に取り付けられた停止センサーが作動するまで自動で動かすものという認識だったらしい。
「じゃあ、動かし方はほぼ知らないという事か?」
「俺たちもちゃんと動かしてるぞ?」
やはり、話しがかみ合っていない。
なぜこんなことになるのかよく分からなかったが、そう言えばと思い至る事があった。
鉱山では魔動装置が出来る以前から様々な機械が稼働しており、当然ながら、鉱夫はそうした装置の扱いに慣れている。
兵士たちにしてもバリスタを操作する以上、機械類の操作に慣れている。
しかし、パンの実畑では農業によくある水車や犂といった器具類を使う事が無いので、機械の取り扱いに無縁だ。
つまり、まるで知識や経験のない者にいきなり自転車や車を運転しろと言う様なものだ。マトモに動かせる訳が無いではないか。
会話が平行線をたどる鍛冶師と農民に対して声を掛ける。
「二人とも、なぜ話がかみ合わないのか思い至った。聞いてくれないだろうか」
そして、先ほどの思考を二人に語ると、理解したらしい。
「機械自体に縁がないってのか?」
「パンの実を採るのにも、木を育てるのにも、ドラゴン退治や鉱山で使う道具類は必要ないですな」
そう言う事らしい。
使った事がないモノを与えられてすんなり使える奴が居たら、ソイツは嘘をついているか余程の天才だろう。普通はそれがどんなもので、どう操作すればよいかを教える必要がある。
鉱夫や兵士は前提となる道具の扱いを知っていたからああ言ったモノが扱えたのであって、農民のように何も知らなければ、当然扱えない。
「まず、適性を見る事から始めて、動かし方を教えていくことにしよう」
いきなり収穫機を持ち出すのはどうかと思ったので、まずはモノレールを任意に動かすという初歩から始める。これなら適性も関係なく、誰でもはじめる事が出来るだろう。
迂遠な感じもするが、鉱夫や鍛冶師という変人ならいざ知らず、普通の人々にはまず初歩から教える必要がある。これまでの環境がそんな本来常識であるべき部分を忘れさせていたことに自ら驚いたのは誰にも言えない。
こうして山に講師役の鍛冶師を残して一度戻る事になった。
「そうか、俺たちが動かせるからって誰もがそうとは限らないのか」
鍛冶師や鉱夫がそんな事を言っている。
分からなくはない。自分にとって常識ならば、相手にとってもそうだと思っているのはよくある事だ。
が、そこから何故か大きく話が飛んだ。
「という事は、ドラゴンを倒す巨人を作っても兵士や騎士はすぐには動かせないって事か?」
「そう言う事になるな。そうなると、農民だけでなく、騎士や兵士からも適性者を募って動かし方を教える必要があるって事だな」
などと、ありもしないロボット話を始めてしまっている。もしかして、収穫機が完成したから次のオモチャってか?
「ドラゴン対策の前に、収穫機を数十と作る必要があるが、大丈夫なのか?」
そう聞きたくなるのも分かるだろ?
「気にすることは無い。巨人は収穫機を作る息抜きにやるさ」
きっと、収穫機のモデルチェンジもハイペースになるだろうな、コレ
「おい!大丈夫か!」
しかし、鉱山のオッサンたちは難なく操縦していた二足歩行の収穫機だが、農民?達はうまく扱う事が出来ずにとうとう転倒する者が出てしまった。
もともと転倒を前提に機体を作ってあるのでシートベルトで体を固定している為、操縦者は無事だったが、傍目からはその危険性が際立って見えた事だろう。
「こんな山がちの所でよく分からない機械を動かすのは無理なんじゃないのか?」
そんな意見が出るのも仕方が無いだろう。
持ち込んだのは1機ではなく、アタッチメントを変えた2機を持ち込んでおり、完熟した実をもぎ取るマニピュレーター型と木をゆするU字腕型だ。
転倒したのはU字腕型の機体で、段差のある斜面を歩かせていた。
「山がちかどうかよりも、動かし方が難しいのが問題だな」
マニピュレータ機に乗り込んで平地で歩かせていた農民がそんな事を言う。
「そんな事ねぇだろ。鉱山で歩かせたときはコケることなく歩いてたぞ」
輸送を担当した鍛冶師がそう反論する。
「アンタらはこれを作ったから動かし方が分かるだけじゃないのか?」
農民からはそう反論が来る。
「俺はそうかもしれねぇが、鉱夫の奴らも動かしてるぞ?お前たちもモノレールを使ってるんだから、変わりねぇはずだが?」
鍛冶師がそう首をひねる。
「モノレール?アレは始動さえさせれば勝手に終点まで行くだけじゃないか」
それを聞いた鍛冶師が驚いている。
「マジか?アレは途中で載せ降ろしするのに運転手が乗り込むんじゃないのか?」
「勝手に走って勝手に止まるだけだろ?」
農民にとっては始動のために操作盤に触れる事はあっても、それ以後はレール側に取り付けられた停止センサーが作動するまで自動で動かすものという認識だったらしい。
「じゃあ、動かし方はほぼ知らないという事か?」
「俺たちもちゃんと動かしてるぞ?」
やはり、話しがかみ合っていない。
なぜこんなことになるのかよく分からなかったが、そう言えばと思い至る事があった。
鉱山では魔動装置が出来る以前から様々な機械が稼働しており、当然ながら、鉱夫はそうした装置の扱いに慣れている。
兵士たちにしてもバリスタを操作する以上、機械類の操作に慣れている。
しかし、パンの実畑では農業によくある水車や犂といった器具類を使う事が無いので、機械の取り扱いに無縁だ。
つまり、まるで知識や経験のない者にいきなり自転車や車を運転しろと言う様なものだ。マトモに動かせる訳が無いではないか。
会話が平行線をたどる鍛冶師と農民に対して声を掛ける。
「二人とも、なぜ話がかみ合わないのか思い至った。聞いてくれないだろうか」
そして、先ほどの思考を二人に語ると、理解したらしい。
「機械自体に縁がないってのか?」
「パンの実を採るのにも、木を育てるのにも、ドラゴン退治や鉱山で使う道具類は必要ないですな」
そう言う事らしい。
使った事がないモノを与えられてすんなり使える奴が居たら、ソイツは嘘をついているか余程の天才だろう。普通はそれがどんなもので、どう操作すればよいかを教える必要がある。
鉱夫や兵士は前提となる道具の扱いを知っていたからああ言ったモノが扱えたのであって、農民のように何も知らなければ、当然扱えない。
「まず、適性を見る事から始めて、動かし方を教えていくことにしよう」
いきなり収穫機を持ち出すのはどうかと思ったので、まずはモノレールを任意に動かすという初歩から始める。これなら適性も関係なく、誰でもはじめる事が出来るだろう。
迂遠な感じもするが、鉱夫や鍛冶師という変人ならいざ知らず、普通の人々にはまず初歩から教える必要がある。これまでの環境がそんな本来常識であるべき部分を忘れさせていたことに自ら驚いたのは誰にも言えない。
こうして山に講師役の鍛冶師を残して一度戻る事になった。
「そうか、俺たちが動かせるからって誰もがそうとは限らないのか」
鍛冶師や鉱夫がそんな事を言っている。
分からなくはない。自分にとって常識ならば、相手にとってもそうだと思っているのはよくある事だ。
が、そこから何故か大きく話が飛んだ。
「という事は、ドラゴンを倒す巨人を作っても兵士や騎士はすぐには動かせないって事か?」
「そう言う事になるな。そうなると、農民だけでなく、騎士や兵士からも適性者を募って動かし方を教える必要があるって事だな」
などと、ありもしないロボット話を始めてしまっている。もしかして、収穫機が完成したから次のオモチャってか?
「ドラゴン対策の前に、収穫機を数十と作る必要があるが、大丈夫なのか?」
そう聞きたくなるのも分かるだろ?
「気にすることは無い。巨人は収穫機を作る息抜きにやるさ」
きっと、収穫機のモデルチェンジもハイペースになるだろうな、コレ
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