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停滞
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朝。食卓には、様々な料理が並んでいる。
じゃがいもとワカメの味噌汁。マッシュドポテト。じゃがいもの千切りを混ぜ込んだ卵焼き。
今日も芋ずくしである。
「しょうがないわよ。うちは貧乏なんだから」
まだなにも言っていないのに、母の返答が聞こえる。
それもしょうがないか。毎日のようにしているやりとりなんだから。
2020年初頭。実をつけるだけでかなりの量のエネルギーを発生させるじゃがいもの品種が偶然発見された。ひとつにつき16kJだそうだ。
その二週間後、植物からエネルギーを取り出す研究が発表された。曰く、エネルギー研究における世界的な技術革新、らしい。
それから半年、僕たち庶民のくらしも一変しつつある。電気代なんかはいっぺんに安くなり、部屋の電気をつけっぱなしにしていても母からガミガミ言われたりしない。
世間はついこの間までさんざん、エコだとか、再生可能資源だとか、温室効果ガスだとか騒いでいたくせに。皆本当はエコなんてしたくなかったのだろう。
特に温室効果ガスなんてすごい勢いで減っているらしく、テレビでは偉そうな人が
「地球の気温は下がり過ぎではないか」
とかなんとか議論を交わしていたけれど、多分これくらいが丁度いいんじゃないかな。
僕は味噌汁で体を温めながら、テレビのチャンネルを変える。
『本日は9月11日! 最高気温は、13℃で~す!』
お天気お姉さんの元気な声が聞こえる。
夏にしてはちょっと寒い。でも僕はどちらかというと、夏に汗だくで頭をキーンといわせながらアイスを食べるよりも、冬の冷え切った体に染み渡るラーメンを食べるほうが好きな人間だ。
終始無言の父が、突然テレビをニュース番組に変える。
『――群馬の地熱発電所では、地面からの熱が――』
父は、そこまで真面目な人間ではない……と思う。このあと始まる朝の連続ドラマを見たいのだろう。
特に異存のない僕は、そのドラマを見ながら芋ばかりの朝食を食べ終わる。
あー……。
「学校、行くか~……」
母にいってきますを告げ、玄関を開ける。
途端、ぴゅうと強めの風が吹いた。手袋をはいた両手でマフラーをずりあげ、そのまま家を出る。
ふと思った。
じゃがいものエネルギーって、どこから来ているんだろう。
ちょっと考えてみたが、さっぱりわからない。そりゃあそうだ。世界中の偉い科学者たちが考えてわからないものが、僕にわかるわけがない。
「ああ……ラーメン食いてえなあ……」
鼻をずびびっと啜り、僕は寒空の下をトボトボと歩いていった。
じゃがいもとワカメの味噌汁。マッシュドポテト。じゃがいもの千切りを混ぜ込んだ卵焼き。
今日も芋ずくしである。
「しょうがないわよ。うちは貧乏なんだから」
まだなにも言っていないのに、母の返答が聞こえる。
それもしょうがないか。毎日のようにしているやりとりなんだから。
2020年初頭。実をつけるだけでかなりの量のエネルギーを発生させるじゃがいもの品種が偶然発見された。ひとつにつき16kJだそうだ。
その二週間後、植物からエネルギーを取り出す研究が発表された。曰く、エネルギー研究における世界的な技術革新、らしい。
それから半年、僕たち庶民のくらしも一変しつつある。電気代なんかはいっぺんに安くなり、部屋の電気をつけっぱなしにしていても母からガミガミ言われたりしない。
世間はついこの間までさんざん、エコだとか、再生可能資源だとか、温室効果ガスだとか騒いでいたくせに。皆本当はエコなんてしたくなかったのだろう。
特に温室効果ガスなんてすごい勢いで減っているらしく、テレビでは偉そうな人が
「地球の気温は下がり過ぎではないか」
とかなんとか議論を交わしていたけれど、多分これくらいが丁度いいんじゃないかな。
僕は味噌汁で体を温めながら、テレビのチャンネルを変える。
『本日は9月11日! 最高気温は、13℃で~す!』
お天気お姉さんの元気な声が聞こえる。
夏にしてはちょっと寒い。でも僕はどちらかというと、夏に汗だくで頭をキーンといわせながらアイスを食べるよりも、冬の冷え切った体に染み渡るラーメンを食べるほうが好きな人間だ。
終始無言の父が、突然テレビをニュース番組に変える。
『――群馬の地熱発電所では、地面からの熱が――』
父は、そこまで真面目な人間ではない……と思う。このあと始まる朝の連続ドラマを見たいのだろう。
特に異存のない僕は、そのドラマを見ながら芋ばかりの朝食を食べ終わる。
あー……。
「学校、行くか~……」
母にいってきますを告げ、玄関を開ける。
途端、ぴゅうと強めの風が吹いた。手袋をはいた両手でマフラーをずりあげ、そのまま家を出る。
ふと思った。
じゃがいものエネルギーって、どこから来ているんだろう。
ちょっと考えてみたが、さっぱりわからない。そりゃあそうだ。世界中の偉い科学者たちが考えてわからないものが、僕にわかるわけがない。
「ああ……ラーメン食いてえなあ……」
鼻をずびびっと啜り、僕は寒空の下をトボトボと歩いていった。
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