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二話
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(ここは、どこだ……?)
舜弥は、目を閉じている。
鈴虫の音がする。地面はなんだかふかふかしている。草の匂いもするので、草が絨毯代わりになっているのだろう。
(僕、草が生えている場所にいたっけ……?)
舜弥は恐る恐る目を開け、上体を起こした。
「……は?」
目の前にあったのは、巨大な樹。
周りを見渡すと樹、樹、樹、樹。
光が入らないくらい樹が上に上にと生えている。
立ち上がる。
「……あれ?」
舜弥は首を傾げた。
「草って、こんなに長いっけ?」
手入れされてないのかなぁ……と呟く。
そして上を見る。
「この樹もでかいなぁ……僕、百五十センチくらいだから、その三倍はあるなぁ……てことは、四メートル五十センチくらい?」
感心している舜弥は歩き始める。
「なーんか妙な違和感があるな……足が短くて動きづらいって感じ。」
歩いていると開けた場所に出た。
「へぇー!きれいな湖!……でも僕の家の近くに森とか湖ってあったっけ……?」
舜弥の家は都会中の都会、東京にある。
その中の府中市にある。
けやき通りがあるので他の都会と比べたら確かに自然豊かかもしれないが、森林公園でもないのに湖があるなんて、ありえない。
「ここどこだろう……?なんで僕はここにいるんだ?……拉致?」
そう考えただけで思わず身震いする。
「はぁ……早く家に帰りたいなぁ……ここどこ?スマホないし……どっかでなくしたかな?」
舜弥は湖に近づく。
そして覗き込んだ。
「わぁ……透明なきれいな水……ん?」
違和感を感じた。
「は?!」
水面を凝視する。
「これって……」
舜弥は空いた口が塞がらない、という感じでポカーンとしていた。
「な、なんか、幼児の姿になってるし……」
水面の中の自分は濃茶の髪に目、そして背丈はどう見ても、三歳くらいの幼児だった。
「だ、誰?!僕だよね?!神浦舜弥だよね?!でも、これ、誰?!」
どう見ても自分の顔じゃない、しかし意識は自分だ。
「変な感じがする……」
自分が自分じゃない体を動かしている。
考えてみれば声も高くなっている。
「……どういう事……?何が起きたんだ……?何もかもが意味不明……」
舜弥は頭を抱えた。
「僕は、母さんにおつかい頼まれて、買いに行った。
帰るとき花野さんから電話が来て、忘年会に誘われた。そして……たしか……誰かの叫び声が聞こえて……そして……上を見たら、マンションの瓦礫が……」
おつかいから電話に至るまで隅々と思い出そうと頑張る。最後らへんはあまり思い出せなかったが、瓦礫のことを思い出すと、何が起こったのかなんとなく想像ついた。
「僕、死んだ……?」
途端に頭がパニックになる。
「え?!うそ!じゃあ、なんで僕生きてるわけ?!怖!自分怖っ!」
だんだん自分自身が恐ろしくなってくる。
そんな状態だったので後ろから近づいてくる足音に気が付かなかった。
「どうしたんだい、坊や?」
(ぼ、坊やって……)
中身は中学生だが、外見は三歳そこらに見えるだろう。なので急に現れた人を責めることはできない。
後ろを向くと恐らく二十代後半の男性が首を傾げながら立っていた。
男性は優しい笑顔で微笑むと、舜弥の頭を撫でた。
「ここらへんは魔獣が出るから、あまり来ないほうがいいよ。どこから来たんだい?おじさんが送っていってあげよう」
舜弥は固まった。
(どうしよう。場所がわからないからどこに行けばいいのかわかんない……)
「ここ、どこ?」
至極丁寧に「ここはどこだから教えていただけないでしょうか」と言っても良かったんが、さすがにそう言う三歳児はいないだろう、と思ったので、舜弥は三歳児っぽくそう言った。
「ここはこの国の南の方にある森だ。この国と近い国の国境にもなっているんだ」
一瞬沖縄か、と思ったが、最後の言葉でフリーズした。
日本は島国のはず。国境は海の上だ。
森が、国境?それって、もう日本じゃないんじゃ……
「ここ、なんて国?」
すると男性は目を瞬かせた。
「さすがにそれは分かってると思ってたんけどなぁ……まぁ、いいや。ここはユージリア王国。分かるかい?」
(ユージリア?そんな国、聞いたこともない。もしかしたら僕も分かんないくらい小さな国?)
舜弥は首を振る。
「そうなんだ。意外だな、ここ、結構大きい国なんだけどな……まぁ、知らないんだから仕方ないか……」
(え?大きい国?うそ……僕知らないんだけど……)
「もしかして、君、孤児かい?……かわいそうに、じゃあ、おじさん家で暮らすかい?ここは危なすぎる。ここであったのもなんかのめぐり合わせだ。な?」
舜弥は頷く。
子供のように満面の笑みを浮かべたが、本当に訳のわからない場所で一緒に過ごせるのは心が嬉しかった。
「よし!じゃあ、帰ろう!」
「うん!」
「じゃあ、飛ぶよ!」
「はい!……え?飛ぶ……?それって、どういう……」
「見てればわかる!じゃあ、行くよ!」
そして男性は舜弥の体を軽々抱き上げる。
「は、はいって、うわぁ!!」
体が空中に浮いた。
「え、ええ?!うそ!浮いてる!!なんで?!」
予想もしなかった超現象に舜弥は目を丸くする。
「これは魔法だよ!」
男性が言った。
「ま、魔法って……」
(そんなの、地球にはないよ!もはや、地球なのかさえ怪しいけど!)
「もしかして、ここって……」
舜弥が小さくつぶやく。
(異世界ってやつ?!実在したの?!うそ!それにこれって……転生ってやつ……?)
「いやいや、あり得ない……」
空高く昇ると、そこには見たこともない景色が広がっていた。
舜弥は、目を閉じている。
鈴虫の音がする。地面はなんだかふかふかしている。草の匂いもするので、草が絨毯代わりになっているのだろう。
(僕、草が生えている場所にいたっけ……?)
舜弥は恐る恐る目を開け、上体を起こした。
「……は?」
目の前にあったのは、巨大な樹。
周りを見渡すと樹、樹、樹、樹。
光が入らないくらい樹が上に上にと生えている。
立ち上がる。
「……あれ?」
舜弥は首を傾げた。
「草って、こんなに長いっけ?」
手入れされてないのかなぁ……と呟く。
そして上を見る。
「この樹もでかいなぁ……僕、百五十センチくらいだから、その三倍はあるなぁ……てことは、四メートル五十センチくらい?」
感心している舜弥は歩き始める。
「なーんか妙な違和感があるな……足が短くて動きづらいって感じ。」
歩いていると開けた場所に出た。
「へぇー!きれいな湖!……でも僕の家の近くに森とか湖ってあったっけ……?」
舜弥の家は都会中の都会、東京にある。
その中の府中市にある。
けやき通りがあるので他の都会と比べたら確かに自然豊かかもしれないが、森林公園でもないのに湖があるなんて、ありえない。
「ここどこだろう……?なんで僕はここにいるんだ?……拉致?」
そう考えただけで思わず身震いする。
「はぁ……早く家に帰りたいなぁ……ここどこ?スマホないし……どっかでなくしたかな?」
舜弥は湖に近づく。
そして覗き込んだ。
「わぁ……透明なきれいな水……ん?」
違和感を感じた。
「は?!」
水面を凝視する。
「これって……」
舜弥は空いた口が塞がらない、という感じでポカーンとしていた。
「な、なんか、幼児の姿になってるし……」
水面の中の自分は濃茶の髪に目、そして背丈はどう見ても、三歳くらいの幼児だった。
「だ、誰?!僕だよね?!神浦舜弥だよね?!でも、これ、誰?!」
どう見ても自分の顔じゃない、しかし意識は自分だ。
「変な感じがする……」
自分が自分じゃない体を動かしている。
考えてみれば声も高くなっている。
「……どういう事……?何が起きたんだ……?何もかもが意味不明……」
舜弥は頭を抱えた。
「僕は、母さんにおつかい頼まれて、買いに行った。
帰るとき花野さんから電話が来て、忘年会に誘われた。そして……たしか……誰かの叫び声が聞こえて……そして……上を見たら、マンションの瓦礫が……」
おつかいから電話に至るまで隅々と思い出そうと頑張る。最後らへんはあまり思い出せなかったが、瓦礫のことを思い出すと、何が起こったのかなんとなく想像ついた。
「僕、死んだ……?」
途端に頭がパニックになる。
「え?!うそ!じゃあ、なんで僕生きてるわけ?!怖!自分怖っ!」
だんだん自分自身が恐ろしくなってくる。
そんな状態だったので後ろから近づいてくる足音に気が付かなかった。
「どうしたんだい、坊や?」
(ぼ、坊やって……)
中身は中学生だが、外見は三歳そこらに見えるだろう。なので急に現れた人を責めることはできない。
後ろを向くと恐らく二十代後半の男性が首を傾げながら立っていた。
男性は優しい笑顔で微笑むと、舜弥の頭を撫でた。
「ここらへんは魔獣が出るから、あまり来ないほうがいいよ。どこから来たんだい?おじさんが送っていってあげよう」
舜弥は固まった。
(どうしよう。場所がわからないからどこに行けばいいのかわかんない……)
「ここ、どこ?」
至極丁寧に「ここはどこだから教えていただけないでしょうか」と言っても良かったんが、さすがにそう言う三歳児はいないだろう、と思ったので、舜弥は三歳児っぽくそう言った。
「ここはこの国の南の方にある森だ。この国と近い国の国境にもなっているんだ」
一瞬沖縄か、と思ったが、最後の言葉でフリーズした。
日本は島国のはず。国境は海の上だ。
森が、国境?それって、もう日本じゃないんじゃ……
「ここ、なんて国?」
すると男性は目を瞬かせた。
「さすがにそれは分かってると思ってたんけどなぁ……まぁ、いいや。ここはユージリア王国。分かるかい?」
(ユージリア?そんな国、聞いたこともない。もしかしたら僕も分かんないくらい小さな国?)
舜弥は首を振る。
「そうなんだ。意外だな、ここ、結構大きい国なんだけどな……まぁ、知らないんだから仕方ないか……」
(え?大きい国?うそ……僕知らないんだけど……)
「もしかして、君、孤児かい?……かわいそうに、じゃあ、おじさん家で暮らすかい?ここは危なすぎる。ここであったのもなんかのめぐり合わせだ。な?」
舜弥は頷く。
子供のように満面の笑みを浮かべたが、本当に訳のわからない場所で一緒に過ごせるのは心が嬉しかった。
「よし!じゃあ、帰ろう!」
「うん!」
「じゃあ、飛ぶよ!」
「はい!……え?飛ぶ……?それって、どういう……」
「見てればわかる!じゃあ、行くよ!」
そして男性は舜弥の体を軽々抱き上げる。
「は、はいって、うわぁ!!」
体が空中に浮いた。
「え、ええ?!うそ!浮いてる!!なんで?!」
予想もしなかった超現象に舜弥は目を丸くする。
「これは魔法だよ!」
男性が言った。
「ま、魔法って……」
(そんなの、地球にはないよ!もはや、地球なのかさえ怪しいけど!)
「もしかして、ここって……」
舜弥が小さくつぶやく。
(異世界ってやつ?!実在したの?!うそ!それにこれって……転生ってやつ……?)
「いやいや、あり得ない……」
空高く昇ると、そこには見たこともない景色が広がっていた。
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