無人島と殺人

ゆーゆ

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続く二人目「沢野ノリスケ」

雨の中での殺人

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 てんやわんやあったけど、とりあえず夕飯の時間となった。
「おーいノリスケ君、人参取って~」
「分かりました~」
 村上(むらかみ)シンジョウ君に言われて、ノリスケ君はニンジンを取りに行く。
 おれには殺人犯の容疑がかかっているので、夕飯は作れない事になっている。
 夕飯作りに紛れて、毒とか入れないように、な。
 まあ、おれ自身は、サボれて嬉しいけど。
 でも、こうしてみんなが忙しく作業しているのを見ていると、何だか手伝いたくなってくる。
「あの、何か手伝う事無いかな?」
 勇気を出して、近くにいたゲンヤ君に言った。
「ダメだダメだ。お前は、何しでかすか分からねぇからな」
 ……冷たくあしらわれてしまった。
 何だよ、おれは殺人犯確定なのかよ。

 ポツッ

 ん?
「あれー、雨降ってきたよぉ」
 川田さんが言うと、みんな外を覗きに集まってきた。
 ちなみに、みんなが夕飯を作っているのは、木と木の間にでっかいブルーシートを張り巡らせた、簡易的な屋根の下だ。
 そして、みんなが口々に言う。
「マジで?」
「嘘ー」
「本当だ」
「降ってきてるー」
「ヤバ」
「花火出来ないの?」
「それな」
「出来ないと思う」
「嘘、楽しみだったのに」
「俺もー」
 はーい、おれもおれも。
 じつは花火は、キャンプファイヤーよりも楽しみだった。
 だって、火のついている花火に、火のついていない花火を合わせれば、火のついていない花火にも、火がつくだろ?
 おれはそれを、宮野さんとやりたかったんだよ。
 それが、宮野さんに近づける、最大のチャンスだから。
 でも、おれがこんな状態だから、駄目だろうな。
 あーあ!
 駄目な事ばっかじゃねーかよ!
 すると、ノリスケ君が
「傘さして、散歩でもすれば良いんじゃないかな?」
 と言った。
 それを聞いたみんなは、もう乗り気だった。
「いーじゃん」
「賛成っ!」
「良いかもね」
「楽しそ~」
「宮野さんと……」
「ペアに🖤」
 最後の方の奴らは、やっぱり宮野さん目当てか。
 全く、どいつもこいつも!(←椅子に縛られた時も同じような理由だったから怒っている)

 ペアは、またくじ引きで決める事になった。
 とは言っても、おれには殺人の容疑(濡れ衣だ!)がかかっているので、ペア無しの一人で行くことに。
 ちなみに、宮野さんのペアは井沢さんだったらしい。
 女子だったので、男子軍は「他の男がペアになるよりかは遥かにマシだ」と、諦めたそうだ。
 おれは、なんと最後の七番目だった。





 ……暇だ。
 さっきからずっと待っているが、順番がやって来る気配が全く無い。
 三番目に行ったペアが、まだ帰ってこないのだ。
 遅すぎないか?
 辺りは暗くなってきていて、おれは「こりゃ、おれは行けないだろうな」と、早々に諦めていた。

 ガサッバキッ
 ガサバキッ
 ガサッバキッ

 突然、走っているような、急いでいるような、そんな足音が聞こえてきた。
「大変っ!大変よぉおっ!」
 駆けて来ていたのは、ノリスケ君のペアの、川田さんだった。
「どうしたんだ?」
 リクが、川田さんに聞いた。
 そして、驚くべき事を言ったのだ。



「沢野君が、殺されたのッッ!」



 なんだって!
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