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3、王子様と婚約したい!
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ワガママ令嬢を演じること5年。私、キャサリン・アーチボルトは10歳になった。その間に歴史だけでなくありとあらゆる勉学を最大限吸収し、一般的な生活魔法、ダンスや礼儀作法を叩き込まれ、幼かった顔は次第に母に似て美しい少女と成長する。
ある日、娘にだけひたすら甘いという汚点を除けばとんでもなく有能な父が、私に婚約の話を持ちかけてきた。
「キャシーはお姫様になりたいといっていただろう? だから、王子様と結婚できるように取り計らった」
演じたワガママの中には「私はお姫様になるの!」と豪語しながら少女趣味というか、幼稚なデザインのドレスを欲しがるものがある。ピンクや水色の、大きなリボンやフリルがたくさんついた子どもっぽいデザインを父に強請れば、仕事で一緒に買い物に行けない父が母に全てを託す。計画を知っている母はこともなげに「お父様の前でだけ子どもらしくしていればいいわ」と言ってのけ、父と過ごす時用のお子ちゃまデザインのドレスを適当に見繕うと、あとは洗練されたドレスを数着購入してくれた。なんだかんだ、母も私に甘いのだった。
フリフリのロリータなドレスに身を包み父の膝に抱っこされながら、私は何も知らないと言った顔で「王子様?」と首を傾げて見せる。母は蕩けた顔の父の肩に手を添えて「素晴らしいわ」と褒め称えるのを忘れない。父は母のことも大好きなので、とても上機嫌だ。険しい顔の厳しい父しか知らない部下たちが見たら卒倒するだろう。
「ああ、お相手はエドワード・ロックウェル様。 お前も名前は知っているだろう、この国の王子様だ」
小説の流れ通り、キャサリンは王子と婚約する。流石に国のトップの名前が出てきてしまっては、計画に賛同してくれていた母も掌を返すのではないかと不安に思ったが「王族相手なら、先方の有責が通れば莫大な慰謝料が手に入るわね」と守銭奴のような発言が出てきたので、杞憂だったと胸を撫で下ろす。母は美しい容貌とは裏腹にこんな性格なので、王族に血を連ねるという野心は持ち合わせていないようだった。聞けば父も、私のお姫様発言がなければ王子との婚約は見送るつもりだったらしい。というか「うちの娘は誰にもやらん」的な思考をしているらしく、王の頼みでなければ婚約話は蹴るつもりだったという。これは婚約破棄に期待が持てそうである。
晴れて王子の婚約者となった私は、叩き込まれた教養とマナーで王族に取り入り、王と王妃にすっかり気に入られることに成功した。件のエドワード王子はというと、表面上婚約者に対し優しく接してはいるものの、有難いことにキャサリンには惹かれていないように見える。円満な婚約破棄にはもってこいの状況である。
私は小説の内容をしっかり反芻させ、これでもかとばかりに婚約者・次期王妃アピールをし、エドワード王子がキャサリンを忌避するよう仕向けた。目を惹く派手な外見ばかりはどうしようもないが、貞淑な姫には程遠い、勝ち気で強引で、そしてワガママな令嬢に、王子様の心は目に見えて離れていくのだった。
その頃、中身が父親似に育ってきた兄マシューは、若干のシスコン要素を窺わせていた。計画の一端を担っているため、マシューには外交的に「うちの妹はワガママで」と触れて回ってもらっているのだが、どうもバ可愛い妹を見守る優しいお兄ちゃんの立ち位置が確立されてきている。このままでは将来の逆ハーレムに支障をきたすと見て、兄に度が過ぎて甘やかされた際には冷たい態度を取るなどして適切な距離を保ち、矯正することにした。
そろそろ侍女アンナも解放する頃かと思ったのだが、なんと彼女も自らの意思で私の元に留まった。マシューの件もあったので女同士ではあるが溺愛フラグに注意はしつつ、騎士団に赴かせるなどして、男性との接触を図った。父の職場である騎士団の団員と結婚すれば辺境伯の屋敷に勤め続けられる可能性が高いと進言すると、アンナは結婚に前向きになってくれた。
ある日、娘にだけひたすら甘いという汚点を除けばとんでもなく有能な父が、私に婚約の話を持ちかけてきた。
「キャシーはお姫様になりたいといっていただろう? だから、王子様と結婚できるように取り計らった」
演じたワガママの中には「私はお姫様になるの!」と豪語しながら少女趣味というか、幼稚なデザインのドレスを欲しがるものがある。ピンクや水色の、大きなリボンやフリルがたくさんついた子どもっぽいデザインを父に強請れば、仕事で一緒に買い物に行けない父が母に全てを託す。計画を知っている母はこともなげに「お父様の前でだけ子どもらしくしていればいいわ」と言ってのけ、父と過ごす時用のお子ちゃまデザインのドレスを適当に見繕うと、あとは洗練されたドレスを数着購入してくれた。なんだかんだ、母も私に甘いのだった。
フリフリのロリータなドレスに身を包み父の膝に抱っこされながら、私は何も知らないと言った顔で「王子様?」と首を傾げて見せる。母は蕩けた顔の父の肩に手を添えて「素晴らしいわ」と褒め称えるのを忘れない。父は母のことも大好きなので、とても上機嫌だ。険しい顔の厳しい父しか知らない部下たちが見たら卒倒するだろう。
「ああ、お相手はエドワード・ロックウェル様。 お前も名前は知っているだろう、この国の王子様だ」
小説の流れ通り、キャサリンは王子と婚約する。流石に国のトップの名前が出てきてしまっては、計画に賛同してくれていた母も掌を返すのではないかと不安に思ったが「王族相手なら、先方の有責が通れば莫大な慰謝料が手に入るわね」と守銭奴のような発言が出てきたので、杞憂だったと胸を撫で下ろす。母は美しい容貌とは裏腹にこんな性格なので、王族に血を連ねるという野心は持ち合わせていないようだった。聞けば父も、私のお姫様発言がなければ王子との婚約は見送るつもりだったらしい。というか「うちの娘は誰にもやらん」的な思考をしているらしく、王の頼みでなければ婚約話は蹴るつもりだったという。これは婚約破棄に期待が持てそうである。
晴れて王子の婚約者となった私は、叩き込まれた教養とマナーで王族に取り入り、王と王妃にすっかり気に入られることに成功した。件のエドワード王子はというと、表面上婚約者に対し優しく接してはいるものの、有難いことにキャサリンには惹かれていないように見える。円満な婚約破棄にはもってこいの状況である。
私は小説の内容をしっかり反芻させ、これでもかとばかりに婚約者・次期王妃アピールをし、エドワード王子がキャサリンを忌避するよう仕向けた。目を惹く派手な外見ばかりはどうしようもないが、貞淑な姫には程遠い、勝ち気で強引で、そしてワガママな令嬢に、王子様の心は目に見えて離れていくのだった。
その頃、中身が父親似に育ってきた兄マシューは、若干のシスコン要素を窺わせていた。計画の一端を担っているため、マシューには外交的に「うちの妹はワガママで」と触れて回ってもらっているのだが、どうもバ可愛い妹を見守る優しいお兄ちゃんの立ち位置が確立されてきている。このままでは将来の逆ハーレムに支障をきたすと見て、兄に度が過ぎて甘やかされた際には冷たい態度を取るなどして適切な距離を保ち、矯正することにした。
そろそろ侍女アンナも解放する頃かと思ったのだが、なんと彼女も自らの意思で私の元に留まった。マシューの件もあったので女同士ではあるが溺愛フラグに注意はしつつ、騎士団に赴かせるなどして、男性との接触を図った。父の職場である騎士団の団員と結婚すれば辺境伯の屋敷に勤め続けられる可能性が高いと進言すると、アンナは結婚に前向きになってくれた。
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