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春、桜が新たな門出を祝うように空を舞い散り、多くの新入生を出迎える。
私立鷹耀学院は幼稚園から高等学校まである一貫教育校で、威厳のありそうな名前のイメージ通り日本有数の名家のご子息が集っている。多くの生徒が小学校から鷹耀に通うため、中学からの外部入学は全体の二割、高校は三割ほどしかいない。そのため今日行われる鷹耀学院高等学校の入学式では、新入生のほとんどが既に仲の良い生徒と固まり、リラックスした状態で談笑していた。反対に硬い表情でひとりで歩いている生徒は外部生だとすぐにわかる。
そんな中千紘は余裕の表情で、レンガ造りの重厚感ある校門に足を踏み入れた。今日から新たな生活が始まる。つい一週間前までカナダに住んでいた千紘にとって、日本は十年ぶりだ。家では日本語で会話をしていたため、特に言語の壁にぶつかる心配はないし、長期休暇には祖父母に会いに何度か帰って来たことはあった。そのため日本の文化や礼儀作法も問題ないはずだ。
新たな出会いに胸を躍らせながら、クラス分けの名簿を確認する。一応十年前に鷹耀の幼稚園に通っていたのだが、当時のことは何一つ覚えていないため知った名前はひとつもない。
少し落胆する気持ちもなくはないが、切り替えて教室へ歩き出そうとしたとき、突然女声の甲高い声が聞こえてきた。ここは男子校のはずだから女性教師の声だろうか。騒ぎの起きた方に視線を向けると既に人だかりができている。こっそり輪に入り、野次馬に溶け込もうとしたその瞬間、突然モーセの海割りのように人々が廊下の両端に別れた。
何が現れるのかと見守っていると、少しずつ甲高い歓声が再び沸き始め、徐々に伝染していく。声が次第に大きくなるにつれて人の影が見えてきた。前の人間の後頭部の隙間から覗いていると、そこに五人の学生が現れた。
一目見て、他の群がる有象無象とは違うオーラに千紘は驚いた。整った顔立ちにスタイルの良さ、歩き方ひとつに魅了される。なるほど、騒ぎの正体はこの人たちか。周囲を見渡すとオーラに充てられてか眩暈を起こす生徒もおり、場は騒然としている。だがそんなこと日常茶飯事なのか、五人は気にすることもなく真っ直ぐ歩いていく。三角形に綺麗に並んで歩く彼らをぼんやり眺めていると、その内のひとりにどこかで見覚えがあった。
はっきりとは思い出せないが、幼稚園のときの同級生だろうか。祖父母の家に滞在していたとき、遊んだことがある分家の子供の可能性もある。
後で声を掛けてみるかと考えていたとき、突然鈍い痛みが頭を襲った。まるで鈍器に後ろからかち割られたような衝撃だった。思わず倒れそうになるのを、足に力を込めて踏ん張るが、鈍痛は何度も何度も千紘に降り注ぐ。意識が遠のくのを感じ、目をつぶりかけた刹那、また急に痛みが引き、変わって大量の記憶が降りてきた。
なんだこれは、何の記憶だ。幼少期よりも、もっとずっと前の。自分じゃない知らない人間の記憶。だがその情景は子どもの頃の思い出よりも鮮明に浮き出てくる。口うるさい姉ちゃんがソファを独占しながら、どうでもいいゲームについて語ってくる。姉ちゃんはオタクの友達がいなかったから、俺によく壁打ちのように話してきてたんだ。
タイトルは確か―――俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコ書記、そして庶務の双子とドキドキな毎日を送る―――当時界隈の一世を風靡した伝説のゲーム『どうしようもなく君を』。
俺はどうやら前世で姉が好きだったBLゲームの世界に転生したみたいだ。
私立鷹耀学院は幼稚園から高等学校まである一貫教育校で、威厳のありそうな名前のイメージ通り日本有数の名家のご子息が集っている。多くの生徒が小学校から鷹耀に通うため、中学からの外部入学は全体の二割、高校は三割ほどしかいない。そのため今日行われる鷹耀学院高等学校の入学式では、新入生のほとんどが既に仲の良い生徒と固まり、リラックスした状態で談笑していた。反対に硬い表情でひとりで歩いている生徒は外部生だとすぐにわかる。
そんな中千紘は余裕の表情で、レンガ造りの重厚感ある校門に足を踏み入れた。今日から新たな生活が始まる。つい一週間前までカナダに住んでいた千紘にとって、日本は十年ぶりだ。家では日本語で会話をしていたため、特に言語の壁にぶつかる心配はないし、長期休暇には祖父母に会いに何度か帰って来たことはあった。そのため日本の文化や礼儀作法も問題ないはずだ。
新たな出会いに胸を躍らせながら、クラス分けの名簿を確認する。一応十年前に鷹耀の幼稚園に通っていたのだが、当時のことは何一つ覚えていないため知った名前はひとつもない。
少し落胆する気持ちもなくはないが、切り替えて教室へ歩き出そうとしたとき、突然女声の甲高い声が聞こえてきた。ここは男子校のはずだから女性教師の声だろうか。騒ぎの起きた方に視線を向けると既に人だかりができている。こっそり輪に入り、野次馬に溶け込もうとしたその瞬間、突然モーセの海割りのように人々が廊下の両端に別れた。
何が現れるのかと見守っていると、少しずつ甲高い歓声が再び沸き始め、徐々に伝染していく。声が次第に大きくなるにつれて人の影が見えてきた。前の人間の後頭部の隙間から覗いていると、そこに五人の学生が現れた。
一目見て、他の群がる有象無象とは違うオーラに千紘は驚いた。整った顔立ちにスタイルの良さ、歩き方ひとつに魅了される。なるほど、騒ぎの正体はこの人たちか。周囲を見渡すとオーラに充てられてか眩暈を起こす生徒もおり、場は騒然としている。だがそんなこと日常茶飯事なのか、五人は気にすることもなく真っ直ぐ歩いていく。三角形に綺麗に並んで歩く彼らをぼんやり眺めていると、その内のひとりにどこかで見覚えがあった。
はっきりとは思い出せないが、幼稚園のときの同級生だろうか。祖父母の家に滞在していたとき、遊んだことがある分家の子供の可能性もある。
後で声を掛けてみるかと考えていたとき、突然鈍い痛みが頭を襲った。まるで鈍器に後ろからかち割られたような衝撃だった。思わず倒れそうになるのを、足に力を込めて踏ん張るが、鈍痛は何度も何度も千紘に降り注ぐ。意識が遠のくのを感じ、目をつぶりかけた刹那、また急に痛みが引き、変わって大量の記憶が降りてきた。
なんだこれは、何の記憶だ。幼少期よりも、もっとずっと前の。自分じゃない知らない人間の記憶。だがその情景は子どもの頃の思い出よりも鮮明に浮き出てくる。口うるさい姉ちゃんがソファを独占しながら、どうでもいいゲームについて語ってくる。姉ちゃんはオタクの友達がいなかったから、俺によく壁打ちのように話してきてたんだ。
タイトルは確か―――俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコ書記、そして庶務の双子とドキドキな毎日を送る―――当時界隈の一世を風靡した伝説のゲーム『どうしようもなく君を』。
俺はどうやら前世で姉が好きだったBLゲームの世界に転生したみたいだ。
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