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第五話 「教えてくれ」

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「そもそもなにしてるの?」

「柚月がお腹すいたって言うからだろ!!」

「は?それだけ?」

「好きな女の望みは叶えてやりたくなるものだ」

下げていた頭が驚きで、ロミオの顔を見上げようとした。
でも叶わなかった。
私の頭の上にはロミオの手が置かれていた。

「見るな、ばか…」

手の指の隙間から見えたロミオの顔は真っ赤に染まっていて、ロミオはその場でへたり込んだ。

「教えてくれ」

そっと大事そうに私を抱きしめる。

「どうしたら、柚月を大切に扱える?笑ってほしい」

この人は馬鹿だ。
私に答えを求める時点で間違っている。

「とりあえず、服着れば?」

「あと、そーゆーの気持ち悪いから」

私は愛など、知らない。
ロミオに振り返らず、元居た場所へと向かう。
ロミオの傷ついた顔なんて気づかない振りをした。

「馬鹿だな、俺は……」

柚月が去った方向を悲しく、愛しそうな瞳で見つめていた。
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