Momo

ももちよろづ

文字の大きさ
上 下
2 / 7

笑顔の行方①

しおりを挟む
「痛ててて……」


見知った天井が目に入る。

まごう事無き、スマイル団アジトの俺の部屋だ。

俺は、ベッドの上に横たわっていた。

(あぁ、モモに攻撃呪文、掛けられたんだっけ……)

体がまだ、ひりひりする。

窓の外が明るい。

どうやら、一晩、気絶していたらしい。

ニコニコ

ニコニコ

ニコニコ

ニコニコ

ニコニコ

ニコニコ

ニコニコ……

壁に掛かったニコニコ時計が、7回笑った。

「……ず、動ける様にならんと」

両手で、いんを組む。

「……ナーロッパにわす、八百万やおよろずの神々よ……。我は、僧侶・クーヤなり!我の願いを聞こし召せ、奇跡を授け賜え……!」

周囲の気が、てのひらに集まって来る。

全身を、金色の光が包む。

体が、フッと軽くなる。

「よし!」

体の痛みが取れると、途端に、腹が猛烈に減っている事に気付いた。

安心すると、減ってる事に気付くよな。

「モモ、何か作ってくれ」

――へんじがない。ただのs(略

(居ないのか)

何だか、拍子抜けしてしまう。

いつも当たり前に、空気の様にとなりに居たのに。

(怒ってたもんな……)

真逆まさか、あのニコニコしたモモが、あんなに逆上するとは思わなかった。

女性は分からない。

(何か作るか……)

そう思って辺りを見回すと、視界の隅に、白いふっくらした物を発見した。

ベッドサイドのテーブルに、肉まんが置いてある。

「……モモ」

目を覚ましたら食べる様に、早起きして蒸しておいてくれたのだろう。

(怒ってる訳じゃ無かったのか)

面と向かって謝れないなんて素直じゃ無いな、などと考え乍ら、俺は肉まんにかぶりつく。

(美味い。やっぱり、モモの料理が一番だな)


(⌒ω⌒)ニコニコ



(・ω・)ムムッ?



(@д@)グォエエェエエ!


具の真ん中まで到達した所で、俺は肉まんを吐き出した。

何っっじゃこの味は。

急いでキッチンに行ってみると、缶切りと、シュールストレミングの空き缶が放ったらかしになっていた。

缶から、生ゴミを直射日光に一ヵ月晒した様な異臭が漂っている。

「…………(TωT)ナニユエ?」

涙目で、空き缶だけは急いで厚手のビニール袋できつくきつく封をする俺。

冷蔵庫の側面に貼ったホワイトボードに、赤いマジックで、見慣れた女性の文字があった。

『 バ カ ♡ 』

……怒ってる、らしい。
しおりを挟む

処理中です...