イクジナシ

ももちよろづ

文字の大きさ
上 下
7 / 25

拓児、帰宅

しおりを挟む
「只今~!」

「た……拓児さぁ~ん……!」

会社から、シェアハウスに帰るなり、ぐったりと疲れ果てた瞳ちゃんが、倒れ込んで来た。

「もー! この子ったら、

 泣くし、漏らすし、お腹減らすし!

 オムツと粉ミルク代、出して下さいよ?」

テーブルの上に、ドラッグストアの袋が置いてある。

「悪い、悪い。 お疲れさん」

「今先刻さっき、やっと寝付いてくれたとこですよ……」

瞳ちゃんは、唇に人差し指を当てて、しーっ、と小声で言う。

赤ちゃんは、彼が敷いたであろう、布団の上で、スゥスゥと寝息を立てている。

「しかも、女の子でしたよ」

「えっ」

「オムツ替えてて、犯罪臭と、罪悪感が、半端無いです……」

「ひ、瞳ちゃん……よく、頑張ったよ」

「うぅっ……。

 で! どうするんですか?」

「う~ん……」

まぁ、順当に行けば、警察に連絡するのが、筋、なんだろうけど……。

「……訳あり、なんだろうなぁ」

「……流石さすがに、理由も無く、新生児を置き去りになんて、しないでしょうけど」

チラッと、横目で、赤ちゃんを見る。

「……俺達で、母親を、捜せないかな?」

「えぇっ!?」

「産まれたばかりの赤ちゃんを手放すなんて、余っ程の事だと思うんだ。

 だから、面倒を見ながら、お母さんを捜して……「いやいやいやいやいや!」

瞳ちゃんが、食い気味に制して来た。

「冷静に考えて下さい! 見ず知らずの他人の赤ちゃんを!」

「でも……困った上での、決断なんだろうし」

「それ! それですよ! その性格!

 頼られたら、何でも、受け入れちゃう!

 それが、自分の首も、周りの首も、絞めるんです!」

「ぐぅっ」

心当たりが、学生時代から有り過ぎて、ぐぅのも出ない。 ぐぅ。

「大体、星夜せいやさんには、どう説明するんです?」

「うっ……」

もう一人の同居人、流 星夜ながれせいや

確かに、アイツが、喜んで子育てにいそしむイクメンだとは、到底、思えない。

「星夜……には……」

「おう、帰ったぞー」

「! やばっ、帰って来た!」

「どっ、どうしましょう!?」
しおりを挟む

処理中です...