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第10話
どこか店に入ろうと提案するモクレンに、シルフィアは屋台で間に合わせると答えた。
遠慮ではない。表通りの中心地にズラリと連なる屋台が、芳しい匂いで誘惑しているからだ。
香草で下味を付けた鶏肉を揚げたものや、茄子やパプリカにトマトソースとチーズをかけて焼いた、ロントーレでは定番のグリル。海老や貝を串に刺して豪快に炙っている屋台もある。
「おっ! ミーナじゃねぇか!」
「久しぶり! たまにはうちにも寄ってくれよ!」
「ミーナ! あんたの好きな木の実のヌガー、今日はたくさん作ってあるよ!」
屋台の前を通ると、口々に声をかけられる。
シルフィアは呆れて専属メイドを振り返った。
「あなた、この辺りも食べ歩いているのね……」
「誤解です! 単に西街区は、私が生まれ育った街なんですよぅ!」
「なるほど。近所で有名な食いしん坊だったのね」
「お嬢様!」
さらに進むと、ふっくら焼いた小麦粉の生地に薄切りした豚バラ肉や千切りキャベツを載せた、見たことのない食べものに行き当たった。
たっぷりかけられたソースの香ばしい匂い、つやつやの照りに誰が抗えるというのか。
シルフィアが迷いなく選ぶと、屋台のおじさんはおまけにと目玉焼きを載せてくれた。
プルプルの半熟卵が美しい、凶悪なまでに魅力的な造形が完成してしまった。
「おいしそう……というか口に入れてないのに、既にもうおいしい気がする……」
「何を言っているのやら。シルフィア様、何か飲みものでも買ってきますけど」
「できるだけこの素晴らしい食事の邪魔をしない控えめかつすっきりとした香ばしい味わいのものを」
「つまるところ?」
「黒茶で」
「了解しました」
黒茶とは、王都の西方一帯で古くから親しまれている発酵した茶葉を指す。値段がお手頃であるため、庶民の食卓に上がることも多い。
権威を大事にする多くの貴族はあまり飲みたがらないが、ロントーレ家では特に禁止されていなかった。さっぱりした飲み心地は、事にぴったりだ。
モクレンが、近くの茶屋に入っていく。
さすがに立ち食いははしたないので、シルフィアは座れる場所を探した。
ミーナがテントの張られた休憩所に案内する。屋台で食べものを買った者は、大体ここを利用するのだとか。
モクレンが戻ってくるまで我慢できるはずもなく、熱々の内にかぶり付いた。
「おいしい……!」
はふはふと熱さを逃がしながら必死に咀嚼する。
ソースの焦げた風味と瑞々しいキャベツ、豚肉の旨みが渾然一体となって迫ってくるようだった。
手が止まらずに二口目。
今度は思いきって、黄身を潰してみる。
まろやかさが引き立ち、まるで別の味わいだ。
カリッとしたフライドガーリックに当たり、思わずドレスの下で小さく足を踏み鳴らす。
「何というか、ものすごく静かに興奮してますね」
苦笑と共に戻ってきたモクレンに笑みだけ返し、黒茶を受け取る。
先ほどから興奮のあまり、クシェルだった時のように彼を顎で使ってしまっている。
我に返ると、しっかりせねばと気を引き締めた。
ミーナは特に違和感がないようで、いつものようにのほほんと笑っている。
「地元の味をお嬢様が気に入ってくださって、私もとても嬉しいですぅ」
「これ、色々具材を変えられそうよね」
「そうなんですよぉ。うちの実家では、上からさらにチーズをかけてました」
「何てこと……!」
ソーセージやコーンを追加したり、ネギをたっぷりかけたり。肉を海鮮に変えるなど、各家庭で様々な工夫が施されているらしい。
ぜひ全ての味を堪能したいと考えていたら、あっという間に完食してしまった。
食後の黒茶で一息ついていると、斜め前の椅子に男性がドカリと腰を下ろした。
荷物を地面に置いてレモン水を飲み始める男性に、モクレンは驚きの表情で立ち上がった。
「君は……」
「ーーあ。あんた、確かフィソーロの」
二人のやり取りに、シルフィアは目を瞬かせる。どうやら顔見知りらしい。
モクレンがシルフィアを振り返る。
「シルフィア様。四人目の被害者、キリ君です」
「そうなのね、彼が……」
まさかこんなところで出くわすとは思っていなかった。
しかも成人前の十五歳と聞いていたが、ずいぶん体格がいいようだ。
シルフィアはすぐに気持ちを切り替えると、黒茶をテーブルに置いて名乗った。
「初めまして。シルフィア・ロントーレと申します。今日は、事件について聞かせてもらうためここに来ました」
「申し訳ないのですが、当時のことをもう一度詳しくお聞かせいただければと」
すかさず言い添えるモクレンに、キリは母に頼まれ買いもの中なのだと話した。
「まぁ、いいか。どうせこうしてサボってんだから、怒られるのは目に見えてるし」
「私達に引き留められていた、ということにしてしまえば問題ないかしら?」
「ああ、いい考えですね」
ふっと口角を上げて笑うキリは、やはり大人びている。けれど上腕にはまだ包帯が巻かれていて、それがひどく痛々しい。
しっかりして見えるが、まだ未成年だ。
トーカを相手にしていた時のように、慎重に話を進めるべきだろう。
シルフィアはまず、事件に関係ない雑談をした。
「お母さんのお手伝いなんて、偉いわね」
「子ども扱いはやめてくれませんかね。俺、一応これでも十五歳なんで」
ふてくされながらも拙い敬語を忘れない少年に、思わず笑みがこぼれた。
「だからこそ、よ。親に反発したくなる時期でしょう」
シルフィアの言葉に、彼は神妙な顔になった。
「……うちは、昔から父親がいなかったから。朝から晩まで必死に働いてる母親を見てたら、普通自分でできることくらいやるだろ」
彼は昔から、母親が苦労している姿を見て育ったのだと話した。
既に来年石工の工房に入ることが決まっているのも、何とか家計を助けたい一心からだそうだ。
「早く働き始めて、独り立ちして。……少しでも、楽させてやりたいですから」
何とも母親思いの少年で、シルフィアはとてつもなく義侠心に駆られる。
必ず犯人を捕まえてみせると決意を新たにした。
「職人を目指す子どもの腕を切り付けるなんて、ますます犯人が許せないわね」
憤然と腕を組んで文句を漏らしていると、成り行きを見守っていたモクレンが控えめに口を開く。
「あまり思い出したくないでしょうが、襲われた直後のことを聞かせてください。犯人は、何か言い残していきませんでしたか?」
「犯人が? いや……特には」
トーカは、『違う』という犯人の言葉を聞いた。
同じようにキリも何か言われていないか確認したかったようだが、これは空振りらしい。しきりに首をひねる姿に嘘はないようだ。
シルフィアには、質問の意図が分かった。
犯人が何を探しているのか未だ不明だが、不正解だからこそまた人を狙う。
つまりもし正解に行き当たれば、それは結果的に事件の終息に繋がるということだ。
ーーこれは、一番最近被害に遭ったランにも確認しておかなければね……。
頭の中でメモをしながら、シルフィアは最も気になっていたことを聞いた。
「犯人の姿は、見なかったのよね? それはやっぱり気が動転していたから?」
突然襲われれば誰だって怖い。
それは理解できるけれど、達観した態度を見ているとどうしても違和感があった。
度胸も十分に備わっていそうな彼が、本当に犯人から目を逸らすだろうか。
シルフィアの疑問に、キリは目を瞬かせた。
「いや、確かに動揺したけど、見なかったっていうより見えなかったんです。犯人は髪も目も隠してたから、特徴らしい特徴なんて全身黒い服だったってくらいで。でもそんなの、着がえちまえばどうとでもなることだし、わざわざ話す必要ないでしょ?」
シルフィアとモクレンは呆然と目を見開いた。
こんな重要なことを黙っていたなんて。
やがてモクレンは、やや荒っぽい仕草で銀髪を乱しながら嘆息した。
「そういったことは、以前訪ねた時に話していただけると嬉しかったのですが……」
「彼のせいにするのはやめなさい。おおかた、モクレンの聞き方に問題があったのではなくて? いっそのこと聴取の基本を学び直してみたらいかが?」
トーカの時もそうだが、ここまで証言に抜けがあると、モクレンに手落ちがあったとしか思えない。
元々人付き合いが苦手なことは知っているが、それで済むならフィソーロの代表という肩書きに何の価値がある。
シルフィアの嫌みに、彼は頬を引きつらせた。
「……そうですね。一応これでも先々代フィソーロ代表に育てられた身ですし、彼からもっと多くの技術を学ぶべきだったんでしょう」
クシェルが死んだ時、モクレンはまだ七歳。
生き抜く術はある程度叩き込んでいたけれど、フィソーロ代表の心構えなど教えるわけがない。
シルフィアはともかく、前世であるクシェルにとっては最高の皮肉だ。
バチバチと火花を飛ばし始める二人から、キリがそっと距離を置いた。
「いや、ちゃんと話さなかったこっちも悪かったし、頼むからそういうのは俺のいないところでやってくれよ……」
シルフィア達は途端に冷静になった。
街の顔役が醜い言い争いを見せるなんて失態だ。
「ありがとうキリ、とても助かったわ。あなたのお母様にもよろしくお伝えしてちょうだい」
情報をしっかり聞き出し終えたので、お礼で締めくくる。彼は苦笑いをしながら去っていった。
シルフィアは若干の怠さを感じながら、少し温くなった黒茶を一気に飲み干した。
「全身黒ずくめ、ね。日中はさぞ目立つでしょう」
「犯行時以外は屋根づたいに移動しているのかもしれません。かなり身軽な人物ですね」
「トーカとキリが男と断定していないのも厄介よね。犯人像が全く掴めないわ」
高くも低くもない声。男性とも女性とも、大人とも子どもともとれる体型。
それが分かっただけでも収穫だが、何一つ焦点が定まらないのも事実。
黙り込む二人の耳を、鋭い叫びがつんざいた。
「ーーーー火事だ!!」
遠慮ではない。表通りの中心地にズラリと連なる屋台が、芳しい匂いで誘惑しているからだ。
香草で下味を付けた鶏肉を揚げたものや、茄子やパプリカにトマトソースとチーズをかけて焼いた、ロントーレでは定番のグリル。海老や貝を串に刺して豪快に炙っている屋台もある。
「おっ! ミーナじゃねぇか!」
「久しぶり! たまにはうちにも寄ってくれよ!」
「ミーナ! あんたの好きな木の実のヌガー、今日はたくさん作ってあるよ!」
屋台の前を通ると、口々に声をかけられる。
シルフィアは呆れて専属メイドを振り返った。
「あなた、この辺りも食べ歩いているのね……」
「誤解です! 単に西街区は、私が生まれ育った街なんですよぅ!」
「なるほど。近所で有名な食いしん坊だったのね」
「お嬢様!」
さらに進むと、ふっくら焼いた小麦粉の生地に薄切りした豚バラ肉や千切りキャベツを載せた、見たことのない食べものに行き当たった。
たっぷりかけられたソースの香ばしい匂い、つやつやの照りに誰が抗えるというのか。
シルフィアが迷いなく選ぶと、屋台のおじさんはおまけにと目玉焼きを載せてくれた。
プルプルの半熟卵が美しい、凶悪なまでに魅力的な造形が完成してしまった。
「おいしそう……というか口に入れてないのに、既にもうおいしい気がする……」
「何を言っているのやら。シルフィア様、何か飲みものでも買ってきますけど」
「できるだけこの素晴らしい食事の邪魔をしない控えめかつすっきりとした香ばしい味わいのものを」
「つまるところ?」
「黒茶で」
「了解しました」
黒茶とは、王都の西方一帯で古くから親しまれている発酵した茶葉を指す。値段がお手頃であるため、庶民の食卓に上がることも多い。
権威を大事にする多くの貴族はあまり飲みたがらないが、ロントーレ家では特に禁止されていなかった。さっぱりした飲み心地は、事にぴったりだ。
モクレンが、近くの茶屋に入っていく。
さすがに立ち食いははしたないので、シルフィアは座れる場所を探した。
ミーナがテントの張られた休憩所に案内する。屋台で食べものを買った者は、大体ここを利用するのだとか。
モクレンが戻ってくるまで我慢できるはずもなく、熱々の内にかぶり付いた。
「おいしい……!」
はふはふと熱さを逃がしながら必死に咀嚼する。
ソースの焦げた風味と瑞々しいキャベツ、豚肉の旨みが渾然一体となって迫ってくるようだった。
手が止まらずに二口目。
今度は思いきって、黄身を潰してみる。
まろやかさが引き立ち、まるで別の味わいだ。
カリッとしたフライドガーリックに当たり、思わずドレスの下で小さく足を踏み鳴らす。
「何というか、ものすごく静かに興奮してますね」
苦笑と共に戻ってきたモクレンに笑みだけ返し、黒茶を受け取る。
先ほどから興奮のあまり、クシェルだった時のように彼を顎で使ってしまっている。
我に返ると、しっかりせねばと気を引き締めた。
ミーナは特に違和感がないようで、いつものようにのほほんと笑っている。
「地元の味をお嬢様が気に入ってくださって、私もとても嬉しいですぅ」
「これ、色々具材を変えられそうよね」
「そうなんですよぉ。うちの実家では、上からさらにチーズをかけてました」
「何てこと……!」
ソーセージやコーンを追加したり、ネギをたっぷりかけたり。肉を海鮮に変えるなど、各家庭で様々な工夫が施されているらしい。
ぜひ全ての味を堪能したいと考えていたら、あっという間に完食してしまった。
食後の黒茶で一息ついていると、斜め前の椅子に男性がドカリと腰を下ろした。
荷物を地面に置いてレモン水を飲み始める男性に、モクレンは驚きの表情で立ち上がった。
「君は……」
「ーーあ。あんた、確かフィソーロの」
二人のやり取りに、シルフィアは目を瞬かせる。どうやら顔見知りらしい。
モクレンがシルフィアを振り返る。
「シルフィア様。四人目の被害者、キリ君です」
「そうなのね、彼が……」
まさかこんなところで出くわすとは思っていなかった。
しかも成人前の十五歳と聞いていたが、ずいぶん体格がいいようだ。
シルフィアはすぐに気持ちを切り替えると、黒茶をテーブルに置いて名乗った。
「初めまして。シルフィア・ロントーレと申します。今日は、事件について聞かせてもらうためここに来ました」
「申し訳ないのですが、当時のことをもう一度詳しくお聞かせいただければと」
すかさず言い添えるモクレンに、キリは母に頼まれ買いもの中なのだと話した。
「まぁ、いいか。どうせこうしてサボってんだから、怒られるのは目に見えてるし」
「私達に引き留められていた、ということにしてしまえば問題ないかしら?」
「ああ、いい考えですね」
ふっと口角を上げて笑うキリは、やはり大人びている。けれど上腕にはまだ包帯が巻かれていて、それがひどく痛々しい。
しっかりして見えるが、まだ未成年だ。
トーカを相手にしていた時のように、慎重に話を進めるべきだろう。
シルフィアはまず、事件に関係ない雑談をした。
「お母さんのお手伝いなんて、偉いわね」
「子ども扱いはやめてくれませんかね。俺、一応これでも十五歳なんで」
ふてくされながらも拙い敬語を忘れない少年に、思わず笑みがこぼれた。
「だからこそ、よ。親に反発したくなる時期でしょう」
シルフィアの言葉に、彼は神妙な顔になった。
「……うちは、昔から父親がいなかったから。朝から晩まで必死に働いてる母親を見てたら、普通自分でできることくらいやるだろ」
彼は昔から、母親が苦労している姿を見て育ったのだと話した。
既に来年石工の工房に入ることが決まっているのも、何とか家計を助けたい一心からだそうだ。
「早く働き始めて、独り立ちして。……少しでも、楽させてやりたいですから」
何とも母親思いの少年で、シルフィアはとてつもなく義侠心に駆られる。
必ず犯人を捕まえてみせると決意を新たにした。
「職人を目指す子どもの腕を切り付けるなんて、ますます犯人が許せないわね」
憤然と腕を組んで文句を漏らしていると、成り行きを見守っていたモクレンが控えめに口を開く。
「あまり思い出したくないでしょうが、襲われた直後のことを聞かせてください。犯人は、何か言い残していきませんでしたか?」
「犯人が? いや……特には」
トーカは、『違う』という犯人の言葉を聞いた。
同じようにキリも何か言われていないか確認したかったようだが、これは空振りらしい。しきりに首をひねる姿に嘘はないようだ。
シルフィアには、質問の意図が分かった。
犯人が何を探しているのか未だ不明だが、不正解だからこそまた人を狙う。
つまりもし正解に行き当たれば、それは結果的に事件の終息に繋がるということだ。
ーーこれは、一番最近被害に遭ったランにも確認しておかなければね……。
頭の中でメモをしながら、シルフィアは最も気になっていたことを聞いた。
「犯人の姿は、見なかったのよね? それはやっぱり気が動転していたから?」
突然襲われれば誰だって怖い。
それは理解できるけれど、達観した態度を見ているとどうしても違和感があった。
度胸も十分に備わっていそうな彼が、本当に犯人から目を逸らすだろうか。
シルフィアの疑問に、キリは目を瞬かせた。
「いや、確かに動揺したけど、見なかったっていうより見えなかったんです。犯人は髪も目も隠してたから、特徴らしい特徴なんて全身黒い服だったってくらいで。でもそんなの、着がえちまえばどうとでもなることだし、わざわざ話す必要ないでしょ?」
シルフィアとモクレンは呆然と目を見開いた。
こんな重要なことを黙っていたなんて。
やがてモクレンは、やや荒っぽい仕草で銀髪を乱しながら嘆息した。
「そういったことは、以前訪ねた時に話していただけると嬉しかったのですが……」
「彼のせいにするのはやめなさい。おおかた、モクレンの聞き方に問題があったのではなくて? いっそのこと聴取の基本を学び直してみたらいかが?」
トーカの時もそうだが、ここまで証言に抜けがあると、モクレンに手落ちがあったとしか思えない。
元々人付き合いが苦手なことは知っているが、それで済むならフィソーロの代表という肩書きに何の価値がある。
シルフィアの嫌みに、彼は頬を引きつらせた。
「……そうですね。一応これでも先々代フィソーロ代表に育てられた身ですし、彼からもっと多くの技術を学ぶべきだったんでしょう」
クシェルが死んだ時、モクレンはまだ七歳。
生き抜く術はある程度叩き込んでいたけれど、フィソーロ代表の心構えなど教えるわけがない。
シルフィアはともかく、前世であるクシェルにとっては最高の皮肉だ。
バチバチと火花を飛ばし始める二人から、キリがそっと距離を置いた。
「いや、ちゃんと話さなかったこっちも悪かったし、頼むからそういうのは俺のいないところでやってくれよ……」
シルフィア達は途端に冷静になった。
街の顔役が醜い言い争いを見せるなんて失態だ。
「ありがとうキリ、とても助かったわ。あなたのお母様にもよろしくお伝えしてちょうだい」
情報をしっかり聞き出し終えたので、お礼で締めくくる。彼は苦笑いをしながら去っていった。
シルフィアは若干の怠さを感じながら、少し温くなった黒茶を一気に飲み干した。
「全身黒ずくめ、ね。日中はさぞ目立つでしょう」
「犯行時以外は屋根づたいに移動しているのかもしれません。かなり身軽な人物ですね」
「トーカとキリが男と断定していないのも厄介よね。犯人像が全く掴めないわ」
高くも低くもない声。男性とも女性とも、大人とも子どもともとれる体型。
それが分かっただけでも収穫だが、何一つ焦点が定まらないのも事実。
黙り込む二人の耳を、鋭い叫びがつんざいた。
「ーーーー火事だ!!」
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