16 / 30
第16話
凍えるほど冷たい雰囲気のモクレンと、あくまで余裕の笑みを崩さないエニシダ。
両者の睨み合いはしばし続いたが、やがて目を逸らしたのはモクレンの方だった。
エニシダがにんまりと、猫のように目を細める。
「孤児院で偶然会った時も、今みたいにずいぶん必死だったよなぁ、モクレン?」
「そうでしたか?」
「ああ。そんでもってお前がここまで焦るのは、ある人物が関わってる時だけだ」
赤茶色の瞳が、シルフィアの上で止まる。
「ーーなぁ、ボス?」
確信に満ちた口調を、否定することなどできなかった。
嘘を重ねるのは簡単だ。
けれどこれ以上嘘をついて、その場しのぎで誤魔化して、彼らを遠ざけたくない。
「……いつから、気付いていたの?」
喉をカラカラにしながら、肯定と同義の質問を返す。
すると、視界が燃えるような赤に染まった。
エニシダに抱き締められている。
理解した瞬間身をすくませたものの、相手の方がずっと震えていたから何も怖くなかった。
シルフィアは、彼の体にそっと手を回す。
腕が回りきらないほど広く逞しい背中なのに、ますます強くしがみつくエニシダは子どものようだ。
「黙っていて、ごめんなさい」
「ボス……ッ、ずるいよ、何で死んじゃったんだよ! 俺、あんたのために立派になろうって、あんたに報いようって、滅茶苦茶頑張ったのに……!」
「ええ、ごめんね」
「ずっと側にいろよ! これからは、ずっと!」
「ええ、ずっと側にいるわ」
「ーーシルフィア様!!」
モクレンの厳しい声にビクリと肩を震わす。
何ごとかと振り返ると、彼は顔を覆い天を仰いでいた。
「何て軽率な……。あなたは本当に、なぜそんなにも考えなしなんですか……」
「え? どういうこと?」
混乱するシルフィアの腕の中で、エニシダの広い肩が小刻みに揺れる。ゆっくり上体を起こす彼は、いたずらっぽく笑っていた。
「フフン。言質は取ったぜ」
「え? 言質??」
「ああ、いいのいいの。ボスはただいつも側にいて、俺だけを見ててくれればいいから」
「だけ、というのは無理があると思うけれど……」
無意識に答えながらも考える。
もしや必死な様子は、全て演技だったのか。
けろりと笑う元養い子を見ていれば、さすがに鈍いシルフィアでも分かる。
それでも状況に頭が追い付かず、疑問符だらけで見上げていると、エニシダはシルフィアの肩を抱いたまま柔らかく目を細めた。
「もう、絶対逃がさないから」
一瞬赤茶色の瞳が剣呑に輝いて見えたが、あくまで無邪気な笑顔に気のせいだろうと思い直す。
傍らで救いがたいとばかりにもう一人の元養い子がうめいているが、シルフィアは気付かない。
エニシダが彼に向け不敵に笑んだことも、それを受けモクレンの眉間のシワが一層深まったことも。
「エニシダ、いつから気付いていた?」
モクレンが低い声で問う。
「そりゃ出会った瞬間に? やっぱ運命だからー」
エニシダの軽口に、彼は眉一つ動かさない。
かつては喧嘩をしながらも馬が合っていたのに、なぜここまで険悪なのか。
シルフィアはしきりに首を傾げるも、エニシダは気にした素振りもなく肩をすくめた。
「なぁんて。実は初めて会ったあの日、ボス達が孤児院を出るまでずっと監視してたんだよー」
「は? 確か、会議と言ってませんでしたか?」
「あんなの嘘に決まってんじゃん。仮にあったとしても、会議なんか即中止だっての」
さらりと軽い調子での暴露に、シルフィアもモクレンも耳を疑った。
「孤児院にはお昼過ぎに行って、お暇したのが夕方だったから……つまり、数時間も粘ったのね」
「驚異の変態ですね」
引きぎみの視線を一身に受け、さすがのエニシダも焦って反論した。
「いやいや人聞き悪すぎるって! 何か怪しいと思ったら、多少時間がかかろうと普通調べちゃうでしょ。それがボスのことならさ」
あいにく半眼になるのは止められそうにないが、それもこれも前世を隠そうとしたためなのだろう。と無理やり自分を納得させる。
シルフィアは気持ちを切り替え手を叩いた。
「とりあえず、移動しましょうか。お茶でも飲みながらゆっくり話しましょう」
話す内容が内容だけに、応接間では都合が悪い。シルフィアは私室へとモクレン達を案内した。
彼らを招き入れ、ミーナに紅茶の用意を頼む。
重要な話し合いのためしばらく三人だけにしてほしいと頼み込むと、渋々ながら認めてくれた。
フィソーロ代表という肩書きを持つモクレンがいるからこそ、特別に許可が下りたのだろう。
ティカップに口を付け一息ついてから、シルフィアは話を切り出した。
「とにかく、ばれたものは仕方がないわ。こうなったらエニシダ、あなたにもとことん協力してもらうわよ」
先ほど彼は、東街区の火事について独自のつてを駆使して調べていると言っていた。
商人の彼には、フィソーロとは異なる情報網と人脈がある。それを利用しない手はない。
傲慢ともとれる命令に、むしろ待ってましたという素早さでエニシダが膝を付いた。
「もちろん。あんたのためなら何なりと」
姫君に対するようにうやうやしくシルフィアの手を取ると、彼は軽く口付けを落とした。
次の瞬間モクレンに腕を害虫のごとく叩き落とされていたが、それでもエニシダは笑っている。
昔ならすぐ喧嘩に発展していたものだが、やはり大人になったということなのだろう。
「ほら、エニシダにばれても問題なかったでしょう? 大人になっているじゃない」
首を傾げるシルフィアに、モクレンは極限まで苦り切った顔になった。
「あなたには、そいつの邪悪で下心丸出しの笑みが見えないんですか」
「あー気にしなくていいよ、ボス。モクレンだって結局、独占したかっただけなんだし」
「それこそ人聞きの悪い」
エニシダはソファに戻ると、深く腰を落ち着けながら上機嫌に笑った。
「でも他の奴らに言わないのは俺も賛成。面倒なのが増えても困るし」
「そうですね。シオンとか」
「そうそう、シオンとかシオンとか」
ここぞとばかり息を合わせて神妙に頷き合う二人に、シルフィアの中で謎が深まるばかりだ。
シオンはなぜそこまで問題視されているのか。
養い親の死によって傷付いているのなら、何とかしたいと思ってしまう。
クシェルとしてが無理なら、せめてシルフィアにできることはないだろうか。
思案していると、不意にエニシダが振り向いた。
「ところでボス、その話し方窮屈じゃねぇの? 俺達の前では無理しなくていいよ?」
義兄の言葉に、モクレンも首肯する。
「それが俺にも解せないんです。以前はボスそのものの荒っぽい口調だったんですが」
「そ、そんなのは何でもいいでしょう」
モクレンには散々粗野な振る舞いを見せてしまっているが、せめてこれ以上幻滅されたくないから。
そんな本音を口にできるはずもなく、シルフィアは咳払い一つで誤魔化した。
「それより話の続きよ。モクレン、付け火の可能性が高いとエニシダから聞いたけれど」
事務的に問うと、モクレンはすぐ仕事に切り替える。
「三番目の被害者であるエリカさんへの聞き込みのやり直しと平行し、こちらでも調べが済んでいます。エニシダと見解が一緒というのは遺憾ですが」
「根拠は?」
「出火元から、原因とみられる可燃物がどうしても確認できないんです」
確かに骨董店では書物の類いも扱っていたが、最も激しく燃えた形跡のある店舗の右側には、主に銅像などが置かれていたのだという。
建材に木が使われているものの、種火もなく突然発火するというのはまれだ。
補足するようにエニシダが口を開いた。
「特殊な油が使われたんじゃないかと俺は睨んでる。種類によっては常温で揮発して突然発火するものもあるって聞くし。細かい時間の指定は難しいが、それならただ待っているだけでいい」
「そういえば、現場に独特の臭気がありましたね」
「場合によっては爆発事故になることもある。今回は小火程度で済んで、不幸中の幸いってやつだな」
幸いと言いつつ彼らの表情が曇っているのは、一歩間違えれば大惨事になっていたと理解できるからだ。
人命は失われなかったけれど、何もかもが無事だったわけではない。
ただですら、付け火の被害に遭った店主とその家族は苦境に立たされている。
子どもを助けるために火の海へ飛び込もうとしていた母親。炎の中で助けを待っていた少年。
彼らは今、家族一丸で店を建て直そうと必死だ。
街の人々の手伝いもあり、再建がかなりの早さで進んでいるとは、ベッドから起き上がれない間にモクレンからもたらされた情報だった。
「火の手が上がる前に、不審な人物を見たという話は?」
付け火だとしたら。
ある一つの予感に駆られながら問うと、モクレンは顔をしかめた。
「あの時間帯あの場にいたほとんどの人に確認を取っていますが、今のところ何も」
「まぁ、油を仕掛けた時間が特定できないからな」
「それでも、誰も姿を見ていないというのは……通り魔事件の状況と、酷似しているわね」
想像通りの返答に、シルフィアは唇を噛んだ。
連続通り魔事件といい、こちらの怒りを買うためだというなら全く正しい作戦だ。
呟きを聞き咎めたモクレンが、目を見開いた。
「もしやシルフィア様、同一犯だと考えて?」
僅かに躊躇ったものの、シルフィアは絞り出すように口を開いた。
「……見てしまったのよ。あの時、屋根の上から見下ろしていた、黒ずくめの人間を」
高みの見物を気取っていたのなら、付け火に関わっていないはずがない。
状況証拠しかないが、それはほとんど確信に近かった。
「通り魔事件は、おそらくもう起こらないわ。犯人は、もう見つけてしまったから」
「どういうことですか?」
「もっと早くに気付くべきだった。被害者にはーー確かに共通点があったのよ」
両者の睨み合いはしばし続いたが、やがて目を逸らしたのはモクレンの方だった。
エニシダがにんまりと、猫のように目を細める。
「孤児院で偶然会った時も、今みたいにずいぶん必死だったよなぁ、モクレン?」
「そうでしたか?」
「ああ。そんでもってお前がここまで焦るのは、ある人物が関わってる時だけだ」
赤茶色の瞳が、シルフィアの上で止まる。
「ーーなぁ、ボス?」
確信に満ちた口調を、否定することなどできなかった。
嘘を重ねるのは簡単だ。
けれどこれ以上嘘をついて、その場しのぎで誤魔化して、彼らを遠ざけたくない。
「……いつから、気付いていたの?」
喉をカラカラにしながら、肯定と同義の質問を返す。
すると、視界が燃えるような赤に染まった。
エニシダに抱き締められている。
理解した瞬間身をすくませたものの、相手の方がずっと震えていたから何も怖くなかった。
シルフィアは、彼の体にそっと手を回す。
腕が回りきらないほど広く逞しい背中なのに、ますます強くしがみつくエニシダは子どものようだ。
「黙っていて、ごめんなさい」
「ボス……ッ、ずるいよ、何で死んじゃったんだよ! 俺、あんたのために立派になろうって、あんたに報いようって、滅茶苦茶頑張ったのに……!」
「ええ、ごめんね」
「ずっと側にいろよ! これからは、ずっと!」
「ええ、ずっと側にいるわ」
「ーーシルフィア様!!」
モクレンの厳しい声にビクリと肩を震わす。
何ごとかと振り返ると、彼は顔を覆い天を仰いでいた。
「何て軽率な……。あなたは本当に、なぜそんなにも考えなしなんですか……」
「え? どういうこと?」
混乱するシルフィアの腕の中で、エニシダの広い肩が小刻みに揺れる。ゆっくり上体を起こす彼は、いたずらっぽく笑っていた。
「フフン。言質は取ったぜ」
「え? 言質??」
「ああ、いいのいいの。ボスはただいつも側にいて、俺だけを見ててくれればいいから」
「だけ、というのは無理があると思うけれど……」
無意識に答えながらも考える。
もしや必死な様子は、全て演技だったのか。
けろりと笑う元養い子を見ていれば、さすがに鈍いシルフィアでも分かる。
それでも状況に頭が追い付かず、疑問符だらけで見上げていると、エニシダはシルフィアの肩を抱いたまま柔らかく目を細めた。
「もう、絶対逃がさないから」
一瞬赤茶色の瞳が剣呑に輝いて見えたが、あくまで無邪気な笑顔に気のせいだろうと思い直す。
傍らで救いがたいとばかりにもう一人の元養い子がうめいているが、シルフィアは気付かない。
エニシダが彼に向け不敵に笑んだことも、それを受けモクレンの眉間のシワが一層深まったことも。
「エニシダ、いつから気付いていた?」
モクレンが低い声で問う。
「そりゃ出会った瞬間に? やっぱ運命だからー」
エニシダの軽口に、彼は眉一つ動かさない。
かつては喧嘩をしながらも馬が合っていたのに、なぜここまで険悪なのか。
シルフィアはしきりに首を傾げるも、エニシダは気にした素振りもなく肩をすくめた。
「なぁんて。実は初めて会ったあの日、ボス達が孤児院を出るまでずっと監視してたんだよー」
「は? 確か、会議と言ってませんでしたか?」
「あんなの嘘に決まってんじゃん。仮にあったとしても、会議なんか即中止だっての」
さらりと軽い調子での暴露に、シルフィアもモクレンも耳を疑った。
「孤児院にはお昼過ぎに行って、お暇したのが夕方だったから……つまり、数時間も粘ったのね」
「驚異の変態ですね」
引きぎみの視線を一身に受け、さすがのエニシダも焦って反論した。
「いやいや人聞き悪すぎるって! 何か怪しいと思ったら、多少時間がかかろうと普通調べちゃうでしょ。それがボスのことならさ」
あいにく半眼になるのは止められそうにないが、それもこれも前世を隠そうとしたためなのだろう。と無理やり自分を納得させる。
シルフィアは気持ちを切り替え手を叩いた。
「とりあえず、移動しましょうか。お茶でも飲みながらゆっくり話しましょう」
話す内容が内容だけに、応接間では都合が悪い。シルフィアは私室へとモクレン達を案内した。
彼らを招き入れ、ミーナに紅茶の用意を頼む。
重要な話し合いのためしばらく三人だけにしてほしいと頼み込むと、渋々ながら認めてくれた。
フィソーロ代表という肩書きを持つモクレンがいるからこそ、特別に許可が下りたのだろう。
ティカップに口を付け一息ついてから、シルフィアは話を切り出した。
「とにかく、ばれたものは仕方がないわ。こうなったらエニシダ、あなたにもとことん協力してもらうわよ」
先ほど彼は、東街区の火事について独自のつてを駆使して調べていると言っていた。
商人の彼には、フィソーロとは異なる情報網と人脈がある。それを利用しない手はない。
傲慢ともとれる命令に、むしろ待ってましたという素早さでエニシダが膝を付いた。
「もちろん。あんたのためなら何なりと」
姫君に対するようにうやうやしくシルフィアの手を取ると、彼は軽く口付けを落とした。
次の瞬間モクレンに腕を害虫のごとく叩き落とされていたが、それでもエニシダは笑っている。
昔ならすぐ喧嘩に発展していたものだが、やはり大人になったということなのだろう。
「ほら、エニシダにばれても問題なかったでしょう? 大人になっているじゃない」
首を傾げるシルフィアに、モクレンは極限まで苦り切った顔になった。
「あなたには、そいつの邪悪で下心丸出しの笑みが見えないんですか」
「あー気にしなくていいよ、ボス。モクレンだって結局、独占したかっただけなんだし」
「それこそ人聞きの悪い」
エニシダはソファに戻ると、深く腰を落ち着けながら上機嫌に笑った。
「でも他の奴らに言わないのは俺も賛成。面倒なのが増えても困るし」
「そうですね。シオンとか」
「そうそう、シオンとかシオンとか」
ここぞとばかり息を合わせて神妙に頷き合う二人に、シルフィアの中で謎が深まるばかりだ。
シオンはなぜそこまで問題視されているのか。
養い親の死によって傷付いているのなら、何とかしたいと思ってしまう。
クシェルとしてが無理なら、せめてシルフィアにできることはないだろうか。
思案していると、不意にエニシダが振り向いた。
「ところでボス、その話し方窮屈じゃねぇの? 俺達の前では無理しなくていいよ?」
義兄の言葉に、モクレンも首肯する。
「それが俺にも解せないんです。以前はボスそのものの荒っぽい口調だったんですが」
「そ、そんなのは何でもいいでしょう」
モクレンには散々粗野な振る舞いを見せてしまっているが、せめてこれ以上幻滅されたくないから。
そんな本音を口にできるはずもなく、シルフィアは咳払い一つで誤魔化した。
「それより話の続きよ。モクレン、付け火の可能性が高いとエニシダから聞いたけれど」
事務的に問うと、モクレンはすぐ仕事に切り替える。
「三番目の被害者であるエリカさんへの聞き込みのやり直しと平行し、こちらでも調べが済んでいます。エニシダと見解が一緒というのは遺憾ですが」
「根拠は?」
「出火元から、原因とみられる可燃物がどうしても確認できないんです」
確かに骨董店では書物の類いも扱っていたが、最も激しく燃えた形跡のある店舗の右側には、主に銅像などが置かれていたのだという。
建材に木が使われているものの、種火もなく突然発火するというのはまれだ。
補足するようにエニシダが口を開いた。
「特殊な油が使われたんじゃないかと俺は睨んでる。種類によっては常温で揮発して突然発火するものもあるって聞くし。細かい時間の指定は難しいが、それならただ待っているだけでいい」
「そういえば、現場に独特の臭気がありましたね」
「場合によっては爆発事故になることもある。今回は小火程度で済んで、不幸中の幸いってやつだな」
幸いと言いつつ彼らの表情が曇っているのは、一歩間違えれば大惨事になっていたと理解できるからだ。
人命は失われなかったけれど、何もかもが無事だったわけではない。
ただですら、付け火の被害に遭った店主とその家族は苦境に立たされている。
子どもを助けるために火の海へ飛び込もうとしていた母親。炎の中で助けを待っていた少年。
彼らは今、家族一丸で店を建て直そうと必死だ。
街の人々の手伝いもあり、再建がかなりの早さで進んでいるとは、ベッドから起き上がれない間にモクレンからもたらされた情報だった。
「火の手が上がる前に、不審な人物を見たという話は?」
付け火だとしたら。
ある一つの予感に駆られながら問うと、モクレンは顔をしかめた。
「あの時間帯あの場にいたほとんどの人に確認を取っていますが、今のところ何も」
「まぁ、油を仕掛けた時間が特定できないからな」
「それでも、誰も姿を見ていないというのは……通り魔事件の状況と、酷似しているわね」
想像通りの返答に、シルフィアは唇を噛んだ。
連続通り魔事件といい、こちらの怒りを買うためだというなら全く正しい作戦だ。
呟きを聞き咎めたモクレンが、目を見開いた。
「もしやシルフィア様、同一犯だと考えて?」
僅かに躊躇ったものの、シルフィアは絞り出すように口を開いた。
「……見てしまったのよ。あの時、屋根の上から見下ろしていた、黒ずくめの人間を」
高みの見物を気取っていたのなら、付け火に関わっていないはずがない。
状況証拠しかないが、それはほとんど確信に近かった。
「通り魔事件は、おそらくもう起こらないわ。犯人は、もう見つけてしまったから」
「どういうことですか?」
「もっと早くに気付くべきだった。被害者にはーー確かに共通点があったのよ」
あなたにおすすめの小説
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。