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!コミカライズ発売記念!
◇コミカライズ1巻◇発売お祝いSS
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※コミカライズの設定に沿ったストーリーになっております! 第7話、みんなで勉強会をしている場面より。
テスト勉強など手を付けていない状態だったひなこを案じて、急遽三嶋家にて勉強会が開かれていた。
主導した優香に、常に学年トップを独走する実力を買われた楓。
彼らが対面するのは初めて教室で言葉を交わした時以来。果たして仲良くできるのだろうかと、ひなこの方がハラハラしてしまう。
結論からいうと、それは杞憂に終わった。
秀才同士だからか、どちらかが発言すればその内容に対する的確な返しができる。
努力するしか能のないひなこからすれば、一と一が出会って百や千になっているようだった。遥か高みで会話が弾んでいる。
途中から茜や柊も加わり、勉強会はとても順調に進んでいった。
そんな時、リビングに小さく響く腹の音。
集中していたひなこが顔を上げると、茜が恥ずかしそうにお腹を擦っている。
慌てて時計を見れば、いつの間にかだいぶ時間が経っていた。
まだ空が明るいから気付かなかったが、食べざかりの子どもなら空腹になる頃だろう。
「ごめんね、そろそろ夕食の支度をはじめないといけない時間だったね」
ノートや教科書を片付けて立ち上がろうとしたひなこを、スマートフォンをいじる楓が引き留めた。
「テスト期間中くらい、家事もほどほどでいいんじゃねぇ? それくらい親父だって多めにみてくれる」
「でも、」
「つーか、もう連絡済みなんだわ。『あんたが落第したら困るから学業優先で頑張れ』だってよ」
「楓君、私の落第で押し通そうとするのやめてくれる……?」
もう恥ずかしいやら居たたまれないやら。
けれど、その気遣いが嬉しいのは確かだ。
今回はお言葉に甘えることにして、寿司の出前を取ることになった。
まだ食事に制限のある柊には、冷凍しておいたごはんを食べてもらおう。
まとまりつつあった家族会議に元気よく参加したのは、優香だった。
「私もひなこのごはん食べたい!」
咄嗟に答えられず、ひなこは楓を窺った。
いつもおいしそうに食べてくれる親友のお願いを、無下にはできない。
けれど、三嶋家のお世話になっているひなこには決定権などないのだ。
楓はというと、心底面倒くさそうに優香を睨み付けていた。
「は? 厚かましいんだよ、勉強が終わったら速攻帰れ」
「あんたじゃなくてひなこに訊いてるの。口出さないでくれるー?」
「ここ俺ん家なんですけど」
「だから何、三嶋楓がごはん作ってるわけじゃないでしょ? まぁ、あんたが作ってたとしたら食べたいなんて思わないけど」
「奇遇だな。俺だって、たとえあんたが世界最高峰のシェフだとしても、絶対食べたくならねぇよ」
両者の間に挟まれたひなこは、顔を青くして震えた。
勉強会の協力体制から一転、今度は軽快な嫌み合戦を繰り広げはじめたではないか。
とにかく仲裁しなければと、ひなこはおずおず口を開いてみる。
「あ、あのね、でも私、このお家にご迷惑はかけられないから……」
優香にはハウスキーパーとして雇ってもらっていると話しているので、これが一番当たり障りのない説明だろう。
だが、なぜか口喧嘩をしていたはずの両者が即座に反論した。
「迷惑なんか微塵もかけられてねぇし、変な遠慮すんな」
「そうよ! 気配り上手なところはひなこの長所だけど、それじゃあ家の中なのに気が休まらないでしょ!」
怒りつつも気を遣ってくれる二人に、ひなこは目を瞬かせた。
さっきまで喧嘩していたかと思えば、息ぴったり。
楓と優香は、もしかしたらよく似ているのかもしれない。
口は悪いけれど、何だかんだ世話焼き。困っている人を見捨てることができない。
それに、気を許した相手にしか素を見せないところなんて、特に似ている。
学院にいる時の楓は、いつももっと物腰穏やかな好青年だ。軽薄そうに見せて人当たりがよく、だからこそ人気があるのだろう。
けれどそれは、家での彼とは全然違う。
どちらの楓も素敵なので、ひなこは常々もったいないと思っていたのだ。ありのままでいいのに。
楓と優香は、まだ数えるほどしか話したことがない。それなのに素顔を見せられるなんて、すっかり打ち解けているという証拠ではないだろうか。
何だか微笑ましくさえ感じ、ひなこは頬を綻ばせた。
「二人共、ありがとう。私はやっぱり、一緒にごはんが食べれたら嬉しいな」
楓達だけでなく、優香とも。
そうして彼らがもっと仲良くなれたら、もっと幸せ。
そんな気持ちで本心を口にすると、楓が力なく項垂れた。
「あんたそれ、ずるいだろ……」
「え? あっ、ごめんね! 全然脅迫とか強制ではないんだよ!?」
「だから余計に質が悪ぃんだよ……」
「ふっふーん! 私は完全勝利だから全然文句ないわーー!」
見当違いの謝罪をするひなこの隣では、優香が勝ち誇っていた。
一連のやり取りを黙って眺めていた茜は、彼らに届かない声で呟く。
「……楓兄、北風と太陽の旅人みたい」
聞こえたのは横にいた柊だけで、彼は何度か目を瞬かせたあと、輝く笑顔で頷いた。
「あぁ! 確かにひなこって、お日様みたいだよな!」
「……柊もいい子だよ」
純粋無垢な笑みを向けられ、茜は思わず弟の頭を撫でる。
年少組の密やかなやり取りは、優香の高らかな笑い声に掻き消された。
テスト勉強など手を付けていない状態だったひなこを案じて、急遽三嶋家にて勉強会が開かれていた。
主導した優香に、常に学年トップを独走する実力を買われた楓。
彼らが対面するのは初めて教室で言葉を交わした時以来。果たして仲良くできるのだろうかと、ひなこの方がハラハラしてしまう。
結論からいうと、それは杞憂に終わった。
秀才同士だからか、どちらかが発言すればその内容に対する的確な返しができる。
努力するしか能のないひなこからすれば、一と一が出会って百や千になっているようだった。遥か高みで会話が弾んでいる。
途中から茜や柊も加わり、勉強会はとても順調に進んでいった。
そんな時、リビングに小さく響く腹の音。
集中していたひなこが顔を上げると、茜が恥ずかしそうにお腹を擦っている。
慌てて時計を見れば、いつの間にかだいぶ時間が経っていた。
まだ空が明るいから気付かなかったが、食べざかりの子どもなら空腹になる頃だろう。
「ごめんね、そろそろ夕食の支度をはじめないといけない時間だったね」
ノートや教科書を片付けて立ち上がろうとしたひなこを、スマートフォンをいじる楓が引き留めた。
「テスト期間中くらい、家事もほどほどでいいんじゃねぇ? それくらい親父だって多めにみてくれる」
「でも、」
「つーか、もう連絡済みなんだわ。『あんたが落第したら困るから学業優先で頑張れ』だってよ」
「楓君、私の落第で押し通そうとするのやめてくれる……?」
もう恥ずかしいやら居たたまれないやら。
けれど、その気遣いが嬉しいのは確かだ。
今回はお言葉に甘えることにして、寿司の出前を取ることになった。
まだ食事に制限のある柊には、冷凍しておいたごはんを食べてもらおう。
まとまりつつあった家族会議に元気よく参加したのは、優香だった。
「私もひなこのごはん食べたい!」
咄嗟に答えられず、ひなこは楓を窺った。
いつもおいしそうに食べてくれる親友のお願いを、無下にはできない。
けれど、三嶋家のお世話になっているひなこには決定権などないのだ。
楓はというと、心底面倒くさそうに優香を睨み付けていた。
「は? 厚かましいんだよ、勉強が終わったら速攻帰れ」
「あんたじゃなくてひなこに訊いてるの。口出さないでくれるー?」
「ここ俺ん家なんですけど」
「だから何、三嶋楓がごはん作ってるわけじゃないでしょ? まぁ、あんたが作ってたとしたら食べたいなんて思わないけど」
「奇遇だな。俺だって、たとえあんたが世界最高峰のシェフだとしても、絶対食べたくならねぇよ」
両者の間に挟まれたひなこは、顔を青くして震えた。
勉強会の協力体制から一転、今度は軽快な嫌み合戦を繰り広げはじめたではないか。
とにかく仲裁しなければと、ひなこはおずおず口を開いてみる。
「あ、あのね、でも私、このお家にご迷惑はかけられないから……」
優香にはハウスキーパーとして雇ってもらっていると話しているので、これが一番当たり障りのない説明だろう。
だが、なぜか口喧嘩をしていたはずの両者が即座に反論した。
「迷惑なんか微塵もかけられてねぇし、変な遠慮すんな」
「そうよ! 気配り上手なところはひなこの長所だけど、それじゃあ家の中なのに気が休まらないでしょ!」
怒りつつも気を遣ってくれる二人に、ひなこは目を瞬かせた。
さっきまで喧嘩していたかと思えば、息ぴったり。
楓と優香は、もしかしたらよく似ているのかもしれない。
口は悪いけれど、何だかんだ世話焼き。困っている人を見捨てることができない。
それに、気を許した相手にしか素を見せないところなんて、特に似ている。
学院にいる時の楓は、いつももっと物腰穏やかな好青年だ。軽薄そうに見せて人当たりがよく、だからこそ人気があるのだろう。
けれどそれは、家での彼とは全然違う。
どちらの楓も素敵なので、ひなこは常々もったいないと思っていたのだ。ありのままでいいのに。
楓と優香は、まだ数えるほどしか話したことがない。それなのに素顔を見せられるなんて、すっかり打ち解けているという証拠ではないだろうか。
何だか微笑ましくさえ感じ、ひなこは頬を綻ばせた。
「二人共、ありがとう。私はやっぱり、一緒にごはんが食べれたら嬉しいな」
楓達だけでなく、優香とも。
そうして彼らがもっと仲良くなれたら、もっと幸せ。
そんな気持ちで本心を口にすると、楓が力なく項垂れた。
「あんたそれ、ずるいだろ……」
「え? あっ、ごめんね! 全然脅迫とか強制ではないんだよ!?」
「だから余計に質が悪ぃんだよ……」
「ふっふーん! 私は完全勝利だから全然文句ないわーー!」
見当違いの謝罪をするひなこの隣では、優香が勝ち誇っていた。
一連のやり取りを黙って眺めていた茜は、彼らに届かない声で呟く。
「……楓兄、北風と太陽の旅人みたい」
聞こえたのは横にいた柊だけで、彼は何度か目を瞬かせたあと、輝く笑顔で頷いた。
「あぁ! 確かにひなこって、お日様みたいだよな!」
「……柊もいい子だよ」
純粋無垢な笑みを向けられ、茜は思わず弟の頭を撫でる。
年少組の密やかなやり取りは、優香の高らかな笑い声に掻き消された。
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