【完結】売れっ子アイドル、転生したら嫌われ子豚だった!~アイドル魂で子豚人生満喫中です~

赤井たまご

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最終章・アイドルの幸せ

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***

-王妃宮-

朝焼けの空に、ぼんやりと浮かぶ有明月。

夜明けの空に月白色の光を放つ月は、淋しげであり、孤独を感じさせる。

静寂した王宮の一室には、寄り添い眠る二つの影があった。

腹部にまわされた逞しい腕の重さと、隣から聞こえてくる微かな寝息に、王妃・エレジーはうっすらと瞼を開く。

昨夜の激しい営みにより、思うように体を動かせないエレジーは、カーテンの隙間から見える白っぽい薄明の空をぼんやりと眺める。

エイビスの逞しい腕に触れながら、エレジーは再び瞼を閉じた。

まるで、現実から目を背くように…。

***

-マーレ王国・王宮-

数ヵ月前

海の香り漂う涼しげな風が、草花を大きく揺らす。

太陽の日差しが照り付ける王宮の廊下を、エレジーはワゴンを押しながらゆっくりと歩く。

「~♪~♪♪~…(ビス、喜んでくれるかな…?)」

本来ならば侍女の仕事であるが、エレジーは業務で忙しいエイビスの為に「少しでも疲れを癒やしてあげられたら…」と、自ら執務室に赴くことを決めた。

この「決断」が、エレジーの「未来」を大きく狂わせるのだった。

***

ワゴンを押しながら、執務室前にやって来たエレジー。

扉に近付くと、既に扉が少し開いていた。

「----ぃ-----ジー----……」

「-----ぉ------っ----」

中ではエイビスと宰相が「何やら」深刻な顔で話し込んでおり、エレジーは時間を改めようと踵を返す。

すると

「……エレジー」

「!!」

自分の名が出てきたことに驚き、良心が痛むものの、エレジーは扉に耳を澄ました。

聞こえてきた会話の内容に、エレジーは「絶望」する。

「王妃様は何故、子を授からないのでしょう?こんなにも国王が毎夜、通われているというのに…」

「……子は授かり物だ、そう焦るではない……」

エレジーは自分でも「気にしている」ことを話題にされ、体がこわばる。

「しかし…!貴族達から「不満の声」が上がっているのは事実です!」

「一層のこと「側妃」を娶ってはいかがでしょうか?」

「!!!」

宰相の言葉に、エレジーは顔を青ざめ立ち竦む。

「…(側妃…そんな…ビスが僕でない者と…子を…)」

エレジーは「そんなの嫌だ!」と、体をガタガタ震わせるも

「…側妃など必要ない」

「余の子を産むのは、エレジーだけだ」

エイビスの言葉にエレジーはホッ…と、胸を撫で下ろす。

しかし

「エレジーは聖歌人ヒムなのだからな!」

エレジーは一瞬にして「地獄」に突き落とされた。

「側妃など娶って、離縁だと言い出しらどうするのだ…?聖歌人ヒムと離縁など「民」から暴動が起きる!」

「隙をつかれ「他国」に奪われたら…?余は笑い者ではないか!」

「………………」

エレジーは扉の前で茫然とする。

「他国は喉から手が出るほど、聖歌人ヒムを欲しているのだ!」

「それが余の「番」だぞ!愉快で堪らん!」

「……っ……」

エレジーは皮膚に爪が食い込むほど、固く拳を握りしめた。

喉を鳴らしながら、不気味な笑みを浮かべるエイビスの姿に

「自分が見てきたエイビスは「偽物」だった…」

エレジーの頬には涙が伝う。

エレジーとエイビスは「政略結婚」だった。

最初こそは愛がなく、毎日が不安だったエレジー。

だが、エイビスは誠実にエレジーと向き合ってくれた。宝物を扱うように優しく触れられ、真っ直ぐな愛を毎日、囁いてくれた。

そんなエイビスを、エレジーは次第に「愛して」いった。

しかし

それは全て「エレジーが聖歌人ヒム」だったから…。

「…(僕が聖歌人ヒムでなかったら、とっくに捨てられてた…それどころか)」

「…(ビスに選ばれもしなかったんだ…)」

「偽りの愛」だったと知ったエレジーは、ただひたすらに涙を流し続けたのだった…。

***
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