【完結】売れっ子アイドル、転生したら嫌われ子豚だった!~アイドル魂で子豚人生満喫中です~

赤井たまご

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最終章・アイドルの幸せ

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***

-茉莉花宮・広間-

レオンとの再会にフルールは涙ぐみ

「馬鹿っ……!心配したんだから!もう…!!」

レオンの逞しい胸筋を、力強く叩いて抗議した。

しかし

フルールの細い腕から繰り出される攻撃では、痛くも痒くもなく、寧ろレオンに取っては「ご褒美」の為、終始デレデレ顔でフルールを見つめる。

「心配をおかけして申し訳ありません…聖歌人ヒム様」

「…事情はティムから聞いたよ…ぐすっ…」
「でも、連絡もなかったし…マーレは大丈夫なの?」

フルールは大きな瞳に涙を浮かべながら、コテン…と、首を傾けレオンに問いかけた。

「んふっ、もう大丈夫ですよ…ありがとうございます」
「…(涙目&上目遣い…尊い!!その涙を永久保存させて欲しい……ハスハス…///)」

「…………(レオンこいつの考えてる事が、手に取る様に分かるな…)」

こんな時ですら自分に正直なレオンに、ビクトリアは冷めた視線を送るのだった。

***

「ところで……」

「レオンがライブの演出を手伝ってくれるの…?」

フルールはメイに用意された紅茶を啜りながら、向かいに座るレオンに問いかける。

「んふっ…はい、私が「何処にでも」お供いたします」

「……レオン…魔法省大臣でしょう?仕事いっぱいあるんじゃないの?」

魔法省大臣であるレオンは、ウルティムスに負けず劣らず「忙しい重役」である。

その為、各国で開催されるライブツアーに、レオンが着いて来れるとは思わず…フルールは首を傾げるも

「んふっ、私の部下。。は優秀ですので…」
「私がいなくても、全く問題ありません!」

「……そう、なの…?なら安心だね!」

「…………」

レオンの言葉を疑わない、純粋無垢なフルールの背後で、ビクトリアは眉間にシワを寄せた。

ビクトリアは半べそをかきながら、てんやわんやしている魔法省副大臣、シェル・トータスの姿を思い出し、同情から瞳を細める。

「…(はぁー…俺も護衛でライブに同行するしな…手伝ってやれないし…どーすっかな…)」

「んふっ、それに…」

「何かあったら「恋人」が「すぐに」駆け付けるでしょうから…全く心配はしておりません」
「…ねぇ~…?ビクトリア騎士団長様…?」

「!!!」

「………?」

レオンにニタリ…と、不気味な微笑みを向けられ、ビクトリアは顔を引きつらせる。

レオンには「全て」お見通しであったが、フルールは何一つ理解しておらず…二人の顔を交互に見ては、首を傾けるのだった。

その後

フルールはお菓子を摘まみながら、レオンとライブの演出について熱く語り合った。

所々、プライベートの話を挟んでは、笑い声をあげるフルールとレオン。

レオンとの「打ち合わせ」という名の、久しぶりの「お茶会」に、フルールは笑顔が絶えなかった。

その反面、ビクトリアの顔は「青白く」何処か「遠く」を見つめていた事に、フルールが気付くことはなったのだった。

***

-王妃宮-

ウィズダムは相変わらずの無表情で、宮殿の長い廊下を突き進む。

コンコンッ…

「王妃様、例の資料をお持ちしました」

低く落ち着いたウィズダムの声が、辺りに響き渡る。

「ありがとう!入って」

「失礼いたします」

ウィズダムが静かに扉を開くと、そこには書類と睨めっこをするスノーの姿があった。

スノーの真面目に業務に取り掛かる姿に、感心し

「…少し休まれては…?」

ウィズダムは労いの言葉を掛ける。

しかし

「んー…でも…今日中に終わらせたいから…」

スノーの視線が書類から外れる事はなかった。

「…王にも、少しは見習って貰いたいですね…」

そう、ウィズダムが本音を溢すと

「すぐ聖歌人ヒム様の所に行っちゃうんだっけ…?前に言ってたもんね」

「まぁ、仕方ないわよ!あんなに可愛いんだもの!ずっと側に置いておきたい気持ち、私も分かるわ~…」

「わざとらしい」程に元気なスノーの声が返ってくる。

「…………」

だが、スノーの瞳は「雪」のように冷たく、浮かべる笑顔は明らかに「紛い物」であった。

「……………王のことは、諦めるのですか…?」

突然の問いにスノーは瞳を大きく見開き、ウィズダムを見つめ返す。

この日、二人は初めて視線を重ね合わせた。

「………………」

「………………」

「……スノードロップ…」

ボソッ…

「……?」

少しの沈黙後、先に口を開いたのはスノーだった。

「私が生まれた日、庭にはスノードロップが咲いていたそうよ…だから、私は「スノー」と名付けられたの」

「…………」

「可愛いわよね、スノードロップ……でも、知ってる?」
「スノードロップって「草」なのよ」

スノーは手にしていた書類を机に置くと、視線を窓の向こうに移した。

「道端に生えた、よくある「草」…」

「…「」が「フルール」に、勝てる訳ないじゃない…」

「…………」

スノーの言葉には「哀愁」が感じられ、相手を切ない気持ちにさせる。

すると

「…………草でも何でも…」

「…?」

「私は好きですけどね…「スノードロップ」が」

「………っ…」

「…どんな「花」よりも…」

真っ直ぐスノーを見つめるウィズダム。

その表情は相変わらず無表情だったが、瞳の奥にある「激しい熱」に、スノーは気付いてしまった。

「では、失礼いたします」

「………………」

バタンッ…

「………………………………へっ?」

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ……!?////」

スノーの大きな絶叫が、王宮内に響き渡る。

この日からスノーは「馬鹿みたいに大袈裟に」ウィズダムを意識する様になり、気付いた時には、ドロドロの「沼」にハマってしまっていたのだった。

そんな「単純」で「愚か」なスノーを、ウィズダムは愛おしげに見つめる。

その瞳は、まるで「狩」を成功させた「猛禽類」そのもの。

ウルティムスは言う

「俺様やレオン、ビクトリアよりも……」

「ウィズが一番「変態でヤバい」ぞ…」

と……。

***

-茉莉花宮・寝室-

「~♪~♪♪~♪~…」

開かれた寝室の窓から、花の香り纏う優しい風がフルールを包み込む。

暗闇の中、圧倒的な存在感を放つ満月を見上げながら、フルールは新曲を口ずさむ。

「~♪♪~♪~♪……」

窓際に腰を降ろしたフルールは、とても穏やかな表情を浮かべる。

何故なら…

バダクからはネックが、マーレからはレオンの母・イーリスが「子を身籠った」のだ。

大切な人達の幸せな報告に、フルールは心をほっこりさせる。

同時に「いつか自分も…」と、夢を見るも

「ルル…風邪引くぞ」

背後から感じる「愛しい番」のぬくもりが、それは「夢では終わらない」と、フルールに教えてくる。

それが嬉しくて、愛おしくて

「ティム…いつか、僕も…」
「…ティムとの赤ちゃん……産みたい」

「!!……はっ、安心しろ」
「俺様の子を産むのは……ルルだけだ…」

二人は優しい口づけを交わし合う。

それはまるで「誓いのキス」

満月の光に照らされた二人の影は、いつまでも重なりあっていたのだった…。

***
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