邪神さんはキミを幸せにしたい

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三話

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 ※ふふふふふふ( ・ω・)
 まさか三話目まで出るなんて思わなかっただろう( ・ω・)



 フォレストオーク。
 頭は悪いがその巨体から繰り出される豪腕の一撃は巨木すらも易々とへし折る。
 森では野草を食べたり小動物を捕まえたりして生活しており豚の頭と大きな身体が特徴的な魔物だ。
 彼等は種族特有の魔法で蓄えた脂肪をエネルギーに変え、飢えを凌いだり戦いの際に力へと変換するなどユニークな生態を持つ。
 その為かフォレストオークは大きければ大きいほど強く、群れの中でも高い地位を得る。

「これだけ大きければそれなりに強かったんだろうな」

 突然だが触手の一本を使ってそれはもう驚くほどの巨体なフォレストオークの腹を貫き、体内を掻き分けて心臓を破壊している最中だ。
 フォレストオークの臭いは覚えていたので森の中に捜索用の魔力を波のように放ち、居場所を探す。
 口で言うのは簡単だが一度覚えた種族でないと使えないし、反響で返ってくる情報も多いので処理がそこそこ面倒なのが厄介だ。
 そうして見つけたフォレストオークの集まっている洞窟にやってきたのだが思ったより数が多い。
 しかも一際大きいのがいたのでおそらくこのデカイのが群れの長だろう。
 脂肪を蓄えている分、美味しいかもしれないのでこいつは私の物にしようと思い真っ先に仕留めた。

「さて、残りは……メスを残してオスを二、三匹残せばいいか」

 フォレストオークは繁殖力も高い……高かったような気がする。
 多少残しておけば絶滅はしないだろう。
 長であろう個体を突然殺めた私に気付いた他のフォレストオーク達の反応は様々だった。
 いきり立ち棍棒を振りかざすものや逃げるもの、戸惑うもの等々である。
 向かってくる者達は苦しまないように頭と心臓を触手で一息に刺し貫き、数の調整のために逃げ惑うフォレストオークの中からオスだけを選別して丁寧に刺し殺す。
 我ながら中々に気の効いた配慮ではなかろうか。

「仕留めたのは十五匹か。 他に偵察に出ているものなどもいるだろうからこの程度間引いても問題はあるまい」

 なんとなくこれが私が危険な生き物だと思われる行動だろうとは感じる。
 別に良心の呵責など微塵も覚えはしないが。
 収納用異空間を開き中に刺し殺したフォレストオーク達を放り込み、その場を後にする。
 鈍いフォレストオーク達では移動した私の影すらも追えない。


 フォレストオークのいた場所から再びアイレノールの民の元へ戻ると、いまだ移動は終わっていないようだった。
 えらく行動が遅いなとも思ったが、そもそも自分の基準で考えてしまっては遅いと感じてしまうのは仕方無いかもしれない。
 私は基本的に即断即決即行動を信条としている。
 少しでも何か気になることが残っているとモヤモヤしてしまうタイプだからだ。
 そんな私の基準で考えて行動してもアイレノールの民が私と同様に動ける訳ではないので差異が出るのも当然だ。

「面倒だがまた時を止めるか」

 再び魔法で時を止め、あの男を捕まえて再度男の時間の流れを戻す。

「ん? あれ、また……ほあっ!? 主様!? な、何かありましたか!?」

「フォレストオークを狩ってきた。 十五頭もいれば多少は食い繋げるだろう? 追加でまた持ってくるが、先に渡しておこう」

「え、もう!? まだ半時も経っていませんぞ!?」

「大したことはない。 それよりどこに置いておけばいい?」

「あ、えっとその……ま、まだ来たばかりで地均しも済んでおりませんし、食料を保存する場所や調理する場所も決めておりませんので少しお待ち頂きたいのですが」

「む? ……ああ、そうか。 人間というものは住まいを持つのだったな。 ということは今から家を建てたりするのか?」

「そうなりますな。 まずは簡易拠点を作りますので全体の作業が済むまで半月はかかるかと」

「なんと……それほど時間がかかるのか?」

「ええ、やはり森ですので一番は地均しが厄介ですな。 整地をしっかりしておかねば後々自分達が困ることになりますので」

 ふむぅ……これが文化の違いというやつか。
 生活のためにそこまで整えないといけないとは。
 それはレーティアも体調を崩すはずだ。
 彼女を私のもとで一時的にでも住まわせるなら、最低限彼女に必要なことをある程度知っておかねばならないか。
 ……少し手伝うか。

「待つのが面倒だ。 どこからどこまでを整地したいのだ?」

「え? あ、あの川辺からここら一帯……丁度良い大樹もいくつかあるのであれを寄る辺としてその周辺を均していこうかと思っておりますが」

「分かった」

 男の言葉でなんとなくのイメージはついた。
 つまり大樹の周辺の邪魔な草木や凹凸のある地面を平らにすればいいのだな。
 両手に排出口を作り出し、そこから闇を生み出して必要なものだけを呑み込ませていく。
 これは闇を使った魔法で、どんなものであろうと呑み込み消滅させる非常に使い勝手が良いようでそうでもないものだ。
 私のように魔法を使う際にリスクをそれ程負わないならば問題ないが、人間が使えばその消費魔力の大きさと負荷に耐えられず場合によって発動した瞬間に即死する魔法だ。
 そんな危険物質な闇を素早く広げ邪魔になるものを全て呑み込ませ、荒れた土を触手で一気に叩き固めて整地していく。
 我が頭部の触手にかかれば一分かからず余裕である。

「よし、これでいいな。 ……我ながら見事な手際だな」

「……………………」

「うん? どうした? 何を固まっている?」

 男が非常に間抜けな表情で固まっていた。
 なるほど私の整地の技術に感銘を受けたのかもしれない。可能なら真似してみてもいいぞ。
 記録を更新されたら更に私がその上を行ってみせる。

「あ、ああ、いえ……はい。 じ、じゃああの川の近くに置いていただければ。 今夜までにレーティアの分の衣服をまとめておきます」

「分かった。 ではまた来る」

 収納空間を川辺に展開して十五頭のフォレストオークを放り出し、さっさとその場を去る。

「……これなんて説明しよう」

 去り際にポツリと男の声が聞こえた。
 確かに時間を止めているから突然平地が出来たように見えるからな。
 ちょっとどんな反応をするか気になるから様子を見ていこう。
 アイレノールの民からは見えない位置で時間停止を解除し念のため姿も隠す。
 時間が流れると同時にあちこちでなんとも言えない悲鳴のようなものが聞こえ始めた。
 その悲鳴に対して懸命に男が声を上げて説明を始めた。
 ギブレ族長と呼ばれているが、あの男が族長だったのか。
 ストレスで胃痛が酷くならないといいな。
 若干……いや、かなり困った表情をするギブレ族長を尻目にその場を去ることにした。





※気が向いたらブクマやコメントよろしくお願いします(*´ω`*)
たぶん明日か明後日には続き出るよ!多分!
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