【完結】【R18支配百合】年下大学生のおっぱいに甘えて依存して支配されています

千鶴田ルト

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第二章

第九話 水野理絵

 九月。
 夏の暑さは和らぐことがなく、むしろ『九月なのに暑い』というギャップから、より不快感があるような気すらしている。
 朝霧あさぎり詩音しおんは、クライアントと打ち合わせするためにオフィスビルを訪れていた。
 地方都市のオフィス街にあるそのビルには、複数の企業が入っている。一階にはコンビニとカフェ。二階が、詩音の取引先のソフトウェア開発会社『クレストソリューションズ』だった。
 地方の中堅企業という立ち位置のこの会社とは、既に従業員向けの保険の契約があった。今回は新たに保険の種類追加を検討したいということで、提案に訪れることになった。
「準備は完璧?」
 隣にいるのは、杉山課長。四十代後半の男性で、詩音の直接の上司にあたる。放任主義で、ある程度勝手の分かってきた詩音にとっては大きな害はないが、余裕のないときにはデリカシーのない発言や無責任な言動に心を乱されることもある。
 今回も資料の確認すらほとんどせず、責任者として付いてきているだけで交渉は詩音に任せると事前に言われている。
「大丈夫です。事前に送った資料に目を通していただいた感じでは好印象でしたし」

 エントランスを抜け、吹き抜けになっている階段で二階に上がると、ガラス扉の前に女性が立って待っていた。
 落ち着いた色のスカートスーツ姿で、ピシッと決めているが、どこか柔らかな雰囲気も漂わせている。長い黒髪は美しく、後ろで一つ結びにしている。眼鏡はクラシカルな細身の丸型で、知的に見えるが冷たさを感じさせない。若そうだが落ち着いた雰囲気の女性だった。

 女性は詩音と杉山と目が合うと、薄く微笑んで頭を下げたので、詩音たちも返した。
「お世話になっております。十時から打ち合わせ予定のハーモニー保険サービス株式会社の朝霧です」
「お待ちしておりました。クレストソリューションズ総務の水野です」
 名前を聞いて、彼女が今回の打ち合わせの担当者であることに気づいた。詩音は、受付係の人かと思ってしまった自分を恥じた。
 挨拶を済ませると、事務所スペースの横にある来客用会議室に案内された。

 名刺を交換し、詩音が水野の名刺を確認する。
『総務部 労務課 係長 水野みずの理絵りえ
 ――係長? 私と同じくらいの年齢なのに……。
 詩音が少し驚き理絵の顔を見ると、笑みで返される。

 席につくと、杉山課長は話し始めた。
「それでは、今回ご検討いただいております保険商品について、朝霧からご説明します」
 杉山が、詩音に視線を向けた。詩音は資料を理絵の見やすい方向に向けて差し出す。
「はい。こちらを御覧ください。既にご契約いただいております団体保険に追加する形で……」
 詩音は理絵に気圧されないように気を張っていたが、受け答えは穏やかで、とても話しやすく気を遣ってもらえていることが分かった。
「保険料の試算なんですが、既存の保険加入者をもとにお見積もりしようと思います。何名か教えていただけますか?」
「ええと、確認します。……二百十名ですね」
「承知しました。それでは、幅を持たせていくつかお見積りをお出ししますね。帰社したら、お見積書をお送りいたします」
「よろしくお願いします」
 説明の後、詩音と理絵のやり取りが何度か続く。上司の杉山は、時々頷くだけでほとんど口を挟まない。

 打ち合わせが始まって三十分ほど経った頃、杉山が腕時計をちらりと見た。
「では、そろそろ次の予定があるので失礼させていただきます。すみませんね、水野さん。ここからは朝霧に任せますので」
 そう言って席を立った。
「朝霧、後はよろしく」

 杉山がいなくなり会議室に二人きりになると、理絵はまた柔らかく笑みを浮かべた。
「朝霧さん、とても信頼されているんですね。任せて行かれるなんて」
「いえ、そんな……。いつもああなんです」
 詩音が苦笑すると、
「うちも似たようなものです。課長が不在なので」
 そう言って、二人は顔を見合わせて笑った。
「水野さんも、お若そうなのに会社を代表して契約に携わられているんですよね?」
「二十六です。朝霧さんも同じくらいですか?」
「あ、じゃあ同い年なんですね。私も今年で二十六です」
 堂々とした佇まいや、それでいて落ち着く柔らかな雰囲気。同い年なのに、詩音は自分もいずれこうなりたいと思った。
「詩音さん」
「え?」
「……とお呼びしても良いですか? きれいな名前ですね」
「ああ、もちろんです。えっと、理絵、さん……」
 そう言うと、理絵は目を細めて笑ってくれた。
「すみません、急に馴れ馴れしいですよね。でもなんか、詩音さんって他人に思えなくて」
 それは、詩音も感じていたことだった。『こうなりたい』と思えるのも、どこか自分の延長線上に理絵がいるような気がしているからだ。性格が大きく異なる訳ではなく、落ち着いた雰囲気や自信の持ち方、人への気遣い、ハキハキとした喋り方を身に付ければ……。ある意味、現実的な理想の姿が理絵なのであった。
「いえ、そう言ってもらえると嬉しいです。理絵さんって、すごくしっかりしていて、頼もしいですから」
「詩音さんの説明も、とても分かりやすくて助かりました。実は少し、緊張してたんです。詩音さんが同年代の女性で良かったです」
 詩音は理絵に褒めてもらえて嬉しかったが、照れ隠しに話を戻した。
「……えっと、他にご質問あるでしょうか」

 打ち合わせを終え、外に出ると熱気と日光が詩音の体を襲った。オフィス内の冷房が強めだったため、その暑さも少し心地良いが、それもすぐに不快感に変わるだろう。それでも、詩音の心は爽やかだった。
 ――仕事でこんなに楽しかったの、久しぶりだな。
 理絵と会い、話ができたことだった。普段、仕事の関わる人でここまで好感を覚える相手はいない。また、次に打ち合わせする予定がある。それが楽しみになった。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 夏目なつめ柚子香ゆずかは、部屋で一人、詩音の帰りを待っている。
 茉莉の件を乗り越えたことで、柚子香は詩音との絆が確固たるものになったと実感していた。
 ちなみに茉莉はというと、あの後会社に復帰することはなくそのまま退社したと詩音から聞いた。詩音も、心配はしているがそれ以上に安堵しているようだった。
 詩音の仕事も落ち着いてきている。甘えに来ることは変わりないが、それがあるからこそ自分の存在意義を感じることができるし、詩音にとっても必要なことなので甘やかしている。
「今日のご飯は何にしようかな」
 鼻歌を歌いながら、夕飯の準備をしているとスマホが鳴った。
 ――詩音が帰る時間を連絡してきたのかな?
 メッセージアプリの通知を見ると、それは詩音からではなかった。差出人は――。

『水野理絵』

 ドクン、と心臓が跳ね上がる。
 ――理絵……!? そんなまさか……。
『久しぶり。元気にしてる?』
 そんな何でもないメッセージ。しかし、柚子香は立っていることができないほどにショックを受けていた。
 ――どうして、今になって……。
 既読をつけたまま、返事をすることができなかった。メッセージはそれっきり。理絵が何の用で柚子香に連絡を取ったのかは分からない。何が狙いなのか。どうしたらいいのか。混乱する頭で、思い浮かんだのは詩音のことだった。
 嫌な予感がして、詩音にメッセージを送った。
『今日、何時に帰ってくる?』
 すると、すぐに返事が来た。
『今帰ってるよ。どうかした?』
『何でもない。気をつけてね』
 柚子香はホッとして、詩音の位置情報を調べる。茉莉との件以来、詩音にはまた位置情報を共有設定させたのだ。
 駅から、このアパートに向かって歩いている。居ても立ってもいられず、靴を履いて外に出た。
 スマホを見ながら、詩音のもとに向かう。

 コンビニの角の向こうに、詩音の姿が見えた。
 柚子香を見つけて意外そうな顔をしている詩音に向かって、早歩きで駆け寄る。
「あれ? どうしたの柚子香……」
 柚子香は何も言わずに抱きついた。
「ちょっ……柚子香? ほんとにどうしたの?」
「……何でもない。おかえり、詩音」
 抱きついたまま、顔を見せずに言う。
 詩音は、少しだけ低い位置にある柚子香のミルクティー色の髪を、そっと撫でた。
「うん……ただいま」
 柚子香の心のモヤモヤは晴れない。しかし、詩音を絶対に手放さない、誰にも渡さないという決意を新たにするのだった。
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