【完結】妹が魔法少女だったので、姉のわたしは立つ瀬がない

千鶴田ルト

文字の大きさ
15 / 21
第三章 姉も魔法少女

第十二話 ドキドキ姉妹風呂

しおりを挟む
 ちゃぷん。
 浴槽のお湯が揺れ、弾ける音が一人きりの浴室に響いた。瑛夏エナは体を洗い終え、ゆっくりと浸かって息を整えている。 
「お姉ちゃん、入るよ」
 脱衣所から美冬ミトの声が聞こえてきた。思わず顔を背けると、扉が開かれる音がした。そしてシャワーの音が聞こえ、美冬ミトは体を洗い始めた。夕食後、美冬ミトを風呂に誘ったのには訳がある。瑛夏エナはまだ目線を外したまま、尋ねた。
「ほんとに、ここなら大丈夫なの?」
 彩芽あやめとの戦いの後。美冬ミトに聞いた、『オーちゃんにバレないように話をする方法』。それは、お風呂であるとのことだった。美冬ミトはあまり気にしていないように見えるが、数年ぶりの裸の付き合いなので瑛夏エナは少し恥ずかしさと緊張を感じている。
「うん。オーちゃんは私のプライバシーは守ってくれるみたい。トイレとかも、見られたくない、聞かれたくないって言ったら分かってくれた。そういうところで信頼を失わないように気をつけてるんだって。まあ、そうじゃなくても普段からいつも監視されてる訳じゃないっぽいけど」
 美冬ミトは、オーちゃんに対して何度か鎌をかけてみて、お風呂であったことを把握してないことを確認したらしい。さすがしっかりしてる。
「……話したいことって?」
彩芽あやめさんの、ことなんだけど」
 彼女の名前を口にすると、切ないような気持ちになる。高ぶりを抑えて、話し始めた。彩芽と乃愛のあが〈黄のコスモス〉出身であること。〈黄のコスモス〉が壊滅の危機にあること。その〈ホロビ〉を止めるために〈ツクロイの力〉を集めていたこと。オーちゃんに聞かれて〈上役〉にまで伝わると、〈黄のコスモス〉が狙われてしまうと彩芽が考えていたこと。
 美冬ミトは、ここが〈青のコスモス〉と呼ばれていることは知っていたが〈黄のコスモス〉については初めて聞いたらしい。
「そうだったんだ……」

 話し終えると、丁度美冬ミトが体と髪を洗い終わり浴槽に入ろうとしていた。美冬ミトは髪が長いので、湯船で濡れないようタオルをターバンのように巻いている。眼鏡を外しているのではっきりとは見えないが、美冬ミトの脚は瑛夏エナよりも長く細いように感じられ、ドキッとしてしまった。身長は少しだけ勝っているはずだけど、全体的に姿勢やスタイルが良くてとてもそうは見えない。浴槽は、お母さんとお父さんも一緒に入ることがあるようなので、姉妹二人なら充分に入ることができそうだ。脚の間に入るのは恥ずかしすぎるので、向かい合う形で体操座りのように閉じた足をお互い左右に寄せて入ることにした。美冬ミトが腰を下ろすと、浴槽からあふれたお湯がざざぁっと流れた。
 あまり美冬ミトの体を見ないように、目線をずらしたまま瑛夏エナは続けた。
美冬ミトがオーちゃんのことをどこまで信頼してるか分からないから、失礼なこと言っちゃったらゴメン。私は、彩芽さんの〈黄のコスモス〉を救ってあげたい。もちろん、〈修繕者の原石リペアラー・ストーン〉を無理やり奪うなんて方法じゃなく。でも、オーちゃんにバレないようにしたい。雛菊やさやか、それに乃愛ちゃんとも協力してやっていく必要があると思う。私の我儘だけど、協力してくれたら嬉しい……」
 ボヤけた視界の中で、美冬ミトが呆れたような顔でため息を付いた。
「どうしてそうなるの?」
「……ダメ?」
「お姉ちゃんの我儘なんかじゃないでしょ。私だって、人を助けたいから〈修繕者リペアラー〉やってるんだよ。協力とかじゃなくて、是非とも救ってあげなきゃいけないでしょ、そんなの」
 さすがの妹だった。当たり前に誰かを助ける価値観。それが、かつて自分に刃を向けた相手だったとしても。
美冬ミト、ありがとう。そう言ってくれて本当に嬉しい」
「それで、アイデアはあるの? 私、お姉ちゃんが〈修繕者リペアラー〉になるのを許したわけじゃないからね」
「大丈夫。美冬ミトが嫌がることを、無理にはしないよ」
 お母さんとの会話で、気づいたことがあった。瑛夏エナは、美冬ミトのことを『お姉ちゃんとして』守ろうとしすぎていた。それは、ともすれば上から目線での支配や押しつけとなりかねない。美冬ミトの思いを尊重し、その上でどう折り合いをつけるか。本当の目的は何かを、見失わないようにしようと思った。
「方法は一応考えてる。でも正しいかどうかわからないから、判定して欲しい」
 〈修繕者リペアラー〉になろうとなるまいと、美冬ミトとは対等の関係なんだ。それが、真に妹を愛するための第一歩なんだと思った。

(私、少しは役に立ててるかな――)

 ************************************************

 ――彩芽と乃愛の住むマンション。
 彩芽が、乃愛の部屋の扉を叩く。
「乃愛、どうしたのですか? 私が何かしてしまったのならごめんなさい。話をさせてください」

 昨晩、戦いから帰ってきた彩芽は何も覚えていなかった。戦いで負ったケガと共に、綺麗さっぱり記憶もなくなっていたのだ。今まで〈修繕者リペアラー〉として戦ってきたことや、自分たちが〈黄のコスモス〉から来たことも。乃愛は、今朝は気を奮い立たせて何とか学校に向かったが、何も手がつかなくて早退し、そのまま部屋に閉じこもっている。高校から帰ってきた彩芽が、心配して様子を見に来てくれている。
 ――? 本当にあれが彩芽なんだろうか。彼女からの愛情は、変わらず感じられる。頭を撫でてくれる手の温もり、話しかけてくれる透き通った声、抱きしめてくれるふところの香り。どれも今までと変わらない。でもそれが逆に辛かった。
 彩芽と乃愛の故郷〈黄のコスモス〉のことを忘れ、〈青のコスモス〉における仮初かりそめの生活が、本物になってしまった。追い出された本物の生活は、どこへ行ってしまうのだろう。
 許せない。彩芽をあんなふうにしたヤツらを。自分を一人にした彩芽を。すべてが憎い。彩芽を取り戻そう。どんなことをしてでも。どこからでもいい、〈修繕者の原石リペアラー・ストーン〉さえ手に入れれば、彩芽は記憶を取り戻せる。今までに奪った〈修繕者の原石リペアラー・ストーン〉は、すべて〈ツクロイの力〉の糧にしてしまったので、新たに手に入れなければいけない。
 乃愛は〈修繕者リペアラー〉姿になり、窓から飛び出して夜の空を駆けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...