【完結】【百合論争】こんなの百合って認めない!

千鶴田ルト

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第三話(1/3) 百合様がみてる

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 イベントスタッフさんに迷惑をかけたことを謝罪して、わたしたちは会場を後にした。
 気を失って倒れてしまったこともだし、イベントの会場で騒ぎを起こしたこともある。麻衣まいは、わたしのスペースに置いてあった荷物を片付けてくれていたし、更にわたしを家まで送ってくれた。
「リリフェスも終わったことだし、しばらくムリしないでゆっくりしなね」
「うん……。今日は麻衣にも迷惑かけてごめん。いつもありがとね。ほんと助かってるよ」
「いいよ別に。茜音あかねには、また新作を描いてもらわなきゃだからね!」
 麻衣はそう言って、微笑んだ。帰ろうと背を向けようとした瞬間、そうそう、と補足した。
悠乃ゆのさんも心配してたよ。ほんとに一度連絡しておいたほうがいいよ」
「そ、そうだね……」
 そうか。麻衣はいなかったから、わたしと悠乃さんがキスをし合ったことを知らない。いったい、どんな風に声をかければいいというのか。
 とにかく、いろんな疲れを流すために、家に帰ったらまずはゆっくりとお風呂に入ることにした。

 熱いお湯に浸かってぼんやりしていると、イベントでのことが頭をよぎる。
 ――なんで、あんなことしちゃったんだろう。
 悠乃さんの顔と、唇。柔らかかった。吐息を感じた。
『お返しです』
 悠乃さんの声を思い出して顔が熱くなるのは、お風呂のせいだけではない。
 わたしは顔を湯船に沈め、声にならない叫び声をあげた。泡はわたしの感情と同じく形にならず、水面に弾けていく。
 黙らせてやる、なんて言って。わたしは、キスをしたかっただけなんじゃないか?
 悠乃さんの研究本に書かれていたことを思い出した。
『ここでは「手をつなぎたい」「キスをしたい」といった身体的接触への欲求を根拠に恋愛感情と判断した。』
 恋愛感情。わたしは悠乃さんに対して抱いているのだろうか。
 のぼせる寸前でお風呂を上がった。ほかほかの体で髪を乾かしながら、部屋でスマホをちらりと見てみると……。

 ユリッターの通知がものすごい数になっている。よく分からないメンションがたくさん付いている。それに、過去のブルームや上げたイラストの引用も多数。
 ――何だろう? 何かバズったのかな?
 反応を見てみると、衝撃のブルームが目に飛び込んできた。

『今日のリリフェスでとんでもないことが起こった! #リリフェス2025 #リアル百合』

 それは動画付きだった。スマホで撮ったらしい、少し手ブレとノイズの入り混じった映像。人だかりの向こうに、二人の女性がイベント会場で言い争っている。――わたしと、悠乃さんだ。顔はよく見えないが、知っている人が見たら明らかに誰か分かる。口論の内容は途切れ途切れになっていて聞こえにくい。そして、わたしが悠乃さんに掴みかかって、その……キスをした。瞬間、どよめきが起こり映像は乱れ、動画は終わった。
「な、何これ……っ!?」
 誰かがこんな瞬間を勝手に撮って、世界に晒してしまったなんて――。
 髪から水滴がぽたぽたとスマホに落ちたが、わたしは画面を見たまま動けないでいた。
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