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第三話(3/3)
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さっきから心臓はずっとドキドキしっぱなしだけど、自傷行為じみたユリッターのタイムラインを追うのが止められない。わたしがあんな場所でキスしたのが悪いんだ。悠乃さんは悪くない。悠乃さんが傷つけられているのが、耐えられない。
動画投稿元のアカウントはずっと反応がない。悠乃さんは、自分の抗議のブルームに対してつけられた、無関係なアカウントからの心無いリプライに対して律儀に返信を続けている。
『公共の場でキスしておいて被害者ぶるの草 晒されるのが嫌ならやらなきゃいい』
→『公共の場にいるからと言って、盗撮されることを許しているわけではありません』
『宣伝になってよかったじゃん むしろ感謝するべき』
→『結果的に宣伝になったとしても、肖像権やプライバシーを侵害することは許されません』
『尊いって言ってもらってるんだから良いのでは?』
→『善意であっても、プライバシーを侵すことが許されるわけではありません』
『これが侵害になるなら防犯カメラで街を見張ることもできないですねwwww』
→『防犯カメラの映像は不特定多数に公開されるわけではないので、まったく別物です』
――悠乃さん、なんて強いんだろう。悪意の書き込みに対して、毅然とした態度で返信している。全部わたしのせいなのに。
悪意のあるブルームは、増え続けていた。
イベント会場でわたしが麻衣と一緒にいるところを見た人が、「二股だ」「節操なしのビッチ」などと根も葉もない噂を広めた。鍵アカウントにしたわたしのことを、「ユリノキ(悠乃さんのアカウント名)を盾にして自分は閉じこもってる」「やましいところがあるから隠れてる」と邪推する人もいる。悠乃さんとわたしに対する、酷いセクハラの書き込みもいくつか見た。悠乃さんとわたしがキスするところをイラストにする非常識な絵描き。それどころか、もっと過激な行為をするイラストまで描かれて拡散されている。
目に入る一つ一つの心無いブルームが、少しずつ脳みそを削り取っていく。
そのとき、わたしのスクロールする指が止まった。
それは悪意に満ちたものではない。激情に任せて書かれたものでもない。淡々と静かに、しかし重く、わたしの心にのしかかった。
『こういう百合営業って、当事者からするとすごく迷惑。レズビアンの存在が話題作りの道具にされてるみたいで、正直、嫌悪感しかない。』
数秒、呼吸するのを忘れて、冷たい血液が体を巡った。内臓が針で刺されるような、鋭い痛みが走った気がした。
――違う。わたしは当事者を踏みにじるつもりはなかった。
――何言ってんの? 『つもり』なんか関係ない。
――百合を創作するのも、百合営業するのも、同性愛を消費するのは同じでしょう?
――悪意でわたしたちを百合扱いして面白おかしく囃し立てるのと、「尊い」なんて言って百合創作をするのと、何が違うの?
――わたしだって、このユリッターの向こう側にいる人たちと同じなんじゃないの?
「ごめんなさい……」
伝わるはずもない言葉を口にする。そもそも、伝えたところで罪は消えない。
吐き気がする。被害者ぶる資格なんか、わたしには無い。今までやってきたことの、報いを受けてるんだ。
スマホを手放し、ベッドに潜り込んだ。お母さんが夕飯に呼びに来たけど、何も食べたくない。胃がキリキリと締め付けられるので、空腹を感じなかった。
そのまま消え入るように意識を失い、悪夢の中へと沈んでいった。
動画投稿元のアカウントはずっと反応がない。悠乃さんは、自分の抗議のブルームに対してつけられた、無関係なアカウントからの心無いリプライに対して律儀に返信を続けている。
『公共の場でキスしておいて被害者ぶるの草 晒されるのが嫌ならやらなきゃいい』
→『公共の場にいるからと言って、盗撮されることを許しているわけではありません』
『宣伝になってよかったじゃん むしろ感謝するべき』
→『結果的に宣伝になったとしても、肖像権やプライバシーを侵害することは許されません』
『尊いって言ってもらってるんだから良いのでは?』
→『善意であっても、プライバシーを侵すことが許されるわけではありません』
『これが侵害になるなら防犯カメラで街を見張ることもできないですねwwww』
→『防犯カメラの映像は不特定多数に公開されるわけではないので、まったく別物です』
――悠乃さん、なんて強いんだろう。悪意の書き込みに対して、毅然とした態度で返信している。全部わたしのせいなのに。
悪意のあるブルームは、増え続けていた。
イベント会場でわたしが麻衣と一緒にいるところを見た人が、「二股だ」「節操なしのビッチ」などと根も葉もない噂を広めた。鍵アカウントにしたわたしのことを、「ユリノキ(悠乃さんのアカウント名)を盾にして自分は閉じこもってる」「やましいところがあるから隠れてる」と邪推する人もいる。悠乃さんとわたしに対する、酷いセクハラの書き込みもいくつか見た。悠乃さんとわたしがキスするところをイラストにする非常識な絵描き。それどころか、もっと過激な行為をするイラストまで描かれて拡散されている。
目に入る一つ一つの心無いブルームが、少しずつ脳みそを削り取っていく。
そのとき、わたしのスクロールする指が止まった。
それは悪意に満ちたものではない。激情に任せて書かれたものでもない。淡々と静かに、しかし重く、わたしの心にのしかかった。
『こういう百合営業って、当事者からするとすごく迷惑。レズビアンの存在が話題作りの道具にされてるみたいで、正直、嫌悪感しかない。』
数秒、呼吸するのを忘れて、冷たい血液が体を巡った。内臓が針で刺されるような、鋭い痛みが走った気がした。
――違う。わたしは当事者を踏みにじるつもりはなかった。
――何言ってんの? 『つもり』なんか関係ない。
――百合を創作するのも、百合営業するのも、同性愛を消費するのは同じでしょう?
――悪意でわたしたちを百合扱いして面白おかしく囃し立てるのと、「尊い」なんて言って百合創作をするのと、何が違うの?
――わたしだって、このユリッターの向こう側にいる人たちと同じなんじゃないの?
「ごめんなさい……」
伝わるはずもない言葉を口にする。そもそも、伝えたところで罪は消えない。
吐き気がする。被害者ぶる資格なんか、わたしには無い。今までやってきたことの、報いを受けてるんだ。
スマホを手放し、ベッドに潜り込んだ。お母さんが夕飯に呼びに来たけど、何も食べたくない。胃がキリキリと締め付けられるので、空腹を感じなかった。
そのまま消え入るように意識を失い、悪夢の中へと沈んでいった。
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