【完結】【百合論争】こんなの百合って認めない!

千鶴田ルト

文字の大きさ
9 / 21

第三話(3/3)

しおりを挟む
 さっきから心臓はずっとドキドキしっぱなしだけど、自傷行為じみたユリッターのタイムラインを追うのが止められない。わたしがあんな場所でキスしたのが悪いんだ。悠乃さんは悪くない。悠乃さんが傷つけられているのが、耐えられない。

 動画投稿元のアカウントはずっと反応がない。悠乃さんは、自分の抗議のブルームに対してつけられた、無関係なアカウントからの心無いリプライに対して律儀に返信を続けている。
『公共の場でキスしておいて被害者ぶるの草 晒されるのが嫌ならやらなきゃいい』
 →『公共の場にいるからと言って、盗撮されることを許しているわけではありません』
『宣伝になってよかったじゃん むしろ感謝するべき』
 →『結果的に宣伝になったとしても、肖像権やプライバシーを侵害することは許されません』
『尊いって言ってもらってるんだから良いのでは?』
 →『善意であっても、プライバシーを侵すことが許されるわけではありません』
『これが侵害になるなら防犯カメラで街を見張ることもできないですねwwww』
 →『防犯カメラの映像は不特定多数に公開されるわけではないので、まったく別物です』

 ――悠乃さん、なんて強いんだろう。悪意の書き込みに対して、毅然とした態度で返信している。全部わたしのせいなのに。

 悪意のあるブルームは、増え続けていた。
 イベント会場でわたしが麻衣と一緒にいるところを見た人が、「二股だ」「節操なしのビッチ」などと根も葉もない噂を広めた。鍵アカウントにしたわたしのことを、「ユリノキ(悠乃さんのアカウント名)を盾にして自分は閉じこもってる」「やましいところがあるから隠れてる」と邪推する人もいる。悠乃さんとわたしに対する、酷いセクハラの書き込みもいくつか見た。悠乃さんとわたしがキスするところをイラストにする非常識な絵描き。それどころか、もっと過激な行為をするイラストまで描かれて拡散されている。
 目に入る一つ一つの心無いブルームが、少しずつ脳みそを削り取っていく。
 そのとき、わたしのスクロールする指が止まった。
 それは悪意に満ちたものではない。激情に任せて書かれたものでもない。淡々と静かに、しかし重く、わたしの心にのしかかった。

『こういう百合営業って、当事者からするとすごく迷惑。レズビアンの存在が話題作りの道具にされてるみたいで、正直、嫌悪感しかない。』

 数秒、呼吸するのを忘れて、冷たい血液が体を巡った。内臓が針で刺されるような、鋭い痛みが走った気がした。

 ――違う。わたしは当事者を踏みにじるつもりはなかった。
 ――何言ってんの? 『つもり』なんか関係ない。
 ――百合を創作するのも、百合営業するのも、同性愛を消費するのは同じでしょう?
 ――悪意でわたしたちを百合扱いして面白おかしく囃し立てるのと、「尊い」なんて言って百合創作をするのと、何が違うの?
 ――わたしだって、このユリッターの向こう側にいる人たちと同じなんじゃないの?

「ごめんなさい……」
 伝わるはずもない言葉を口にする。そもそも、伝えたところで罪は消えない。
 吐き気がする。被害者ぶる資格なんか、わたしには無い。今までやってきたことの、報いを受けてるんだ。
 スマホを手放し、ベッドに潜り込んだ。お母さんが夕飯に呼びに来たけど、何も食べたくない。胃がキリキリと締め付けられるので、空腹を感じなかった。
 そのまま消え入るように意識を失い、悪夢の中へと沈んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

名もなき春に解ける雪

天継 理恵
恋愛
春。 新しい制服、新しいクラス、新しい友達。 どこにでもいる普通の女子高生・桜井羽澄は、「クラスにちゃんと馴染むこと」を目指して、入学早々、友達作りに奔走していた。 そんな羽澄が、図書室で出会ったのは—— 輝く黒髪に、セーラー服の長いスカートをひらりと揺らす、まるで絵画から抜け出したような美しい同級生、白雪 汀。 その綺麗すぎる存在感から浮いている白雪は、言葉遣いも距離感も考え方も特異で、羽澄の知っている“普通”とは何もかもが違っていた。 名前を呼ばれたこと。 目を見て、話を聞いてもらえたこと。 偽らないままの自分を、受け入れてくれたこと—— 小さなきっかけのひとつひとつが、羽澄の胸にじわりと積もっていく。 この気持ちは憧れなのか、恋なのか? 迷う羽澄の心は、静かに、けれど確かに、白雪へと傾いていく—— 春の光にゆっくりと芽生えていく、少女たちの恋と、成長の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

処理中です...