異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第三章 黒猫杯

元日本人の獣人の子

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 我らがブラックキャットFCの初戦から四日後。
 予選の試合は全て終わり、ベスト十六が出揃った。
 うちのチームは無事に本戦進出した。
 コロさんのチームとアキナさんのチームも本戦に進んだ。
 そうなればいいなと思ってはいたけど、どうやら本戦から賭けが行われるらしい。
 シンプルに優勝チームを当てるやつと、優勝チームと準優勝チームを当てるやつ、それからベストスリーを当てるやつの三つがあるようだ。
 誰が決めたのかは知らないけど、オッズも出た。
 一番人気はうちのチームだった。
 フランは「ふん、当然だし」とか言ってたが、どことなく嬉しそうではあった。
 二番人気はアキナさん率いる「アキナ様に祝福を」だ。
 チーム名はエリーゼさんがつけたらしい。
 アキナさんは最後まで反対したが、アキナさん以外のギルド職員が全員賛成だったのでどうしようもなかったようだ。
 アキナさん、愛されてるなぁ。
 三番人気はコロさん率いる「代表者コロ・セオ」だ。
 これは、申込用紙のチーム名を記入する場所に間違えて代表者コロ・セオと書いてしまったらしい。
 予選の試合当日までこのことに気づかなかったらしく、すでに街中にトーナメント表を配ってしまっていたので変更はできなかったとのこと。
 コロさん……。
 普段書類仕事のほとんどを部下に投げっぱなしだからこんなしょうもないミスをするんですよ……。
 個人的に意外だったのは、コロさんのチームよりもアキナさんのチームのほうがオッズが低かったことだ。
 そう判断されるだけの試合を予選で見せたのだろう。
 普段のアキナさんの可愛らしい姿からは想像できないが、俺は予選を見てないのでなんとも言えない。
 むしろ、実際に試合を観るのが今から楽しみだ。

「ではみなさん、本戦における注意事項は以上になります。
 何か質問などありませんか?」
 エリーゼさんがそう聞くが、みんな黙っている。
 まぁ、実際質問なんてないんだろう。
 エリーゼさんたち運営スタッフは本戦出場チームを集めて、改めてのルール確認と注意事項をみんなに伝えた。
 俺も主催者なので、エリーゼさんの後ろで黙って聞いている。
「最初にお伝えしていた通り、本戦からはスタジアムで試合が行われます。
 本戦の前に子供の部が四日間にわたって行われます。
 それに伴い、スタジアムを一般開放致します。
 初めての試みですのでなんとも言えないのですが、予選の様子を見るにそれなりの人数の観客が来ると予想されます。
 多数の人の目があるということをお忘れなきようお願い致します。
 ルールを守るのはもちろん、トラブルを起こしたりして審判長のバハムート様のお手を煩わせないようお願い致します。
 くれぐれもお願い致します」
 大事なことなんだろう、二回言った。
 まぁ、大丈夫だろうけどね。
 ドラゴンが、しかもドラゴンのトップがいる中でトラブルを起こすように命知らずなんてそうはいないだろう。
 予選でも特にトラブルは起きなかったしね。
「では、本日は以上になります。
 お集まり頂き、ありがとうございました」
 一礼してエリーゼさんたちスタッフの人たちは退出した。
 エリーゼさんたちが退出した後、ざわざわと部屋が賑やかになる。
 ホームルームが終わって先生が教室から出ていった後みたいな感じだ。
 こういうのはどこでも一緒だなぁ。
 俺たちはコロさんやアキナさんたちと少し話した後、特に用事もなかったので家に帰った。
 翌日、俺たちは子供の部を観るためにスタジアムに向かった。
 試合開始一時間前くらいに着いたが、思ってた以上にたくさんの人がスタジアムに集まっていた。
 このままがんばれば、ガイアにサッカーを根付かせることができるかもしれない。
 そう思わせてくれるような光景だ。
 ちょっと感動。
 その後、俺と薫子さんは主催者ということでVIP席で、それ以外のみんなはスタンドの客席で子供の部の試合を観戦した。
 試合の内容はというと、小学生の体育の授業のサッカーの試合という感じの内容だった。
 楽しそうにサッカーをしていたのは良かったが、ルールをちゃんと理解できてなかったりといったことがちらほらと見られた。
 まぁ、最初はこんなものだろう。
 大会を何度も開催していけば、子供たちのサッカーレベルもどんどん上がっていくはずだ。
 今は、サッカーは楽しいもの、という風に思ってもらえてるだけで上出来だ。
 そう思っていたが、子供の部二日目にとんでもないチームが出てきた。
 チーム名「軟骨SC」。
 俺はまずこのチーム名にピクッときた。
 軟骨はまぁともかく、SCという単語。
 ガイアにはそもそもスポーツ自体少ないし、スポーツのための団体や組織なんてたぶんない。
 なのに、SC。
 まさかと思いながら試合を観てみると、確信に変わった。
 軟骨SCの子供たちは、パス・シュート・トラップがちゃんとできている。
 パスやシュートの練習をするのはまぁわかる。
 でも、一ヶ月ちょい前にサッカーとはどういう競技かというのを知ってから、トラップまで練習をしてきっちり仕上げてくる子供たちがいるだろうか?
 俺はいないと思う。
 極めつけはこのチームの中でぶっちぎりで上手くて目立っている猫系の獣人の子。
 走り方がキャプ○ン翼のキャラの走り方に似てる!
 普通に走ってあんな風にはならないはず。
 絶対に寄せてる!
 ツッコミ待ちか!?
 とりあえずあの子は、元日本人で前世の記憶がある系、もしくは日本人が転移だったり召喚だったりでガイアに来たあげくに獣人にされた系、もしくはなんらかの手段で日本の知識を仕入れたガイアの獣人。
 ぱっと思いつくのはこんなとこだろうか。
 他にもいろんな可能性はあるかもしれないけど、今は思い浮かばない。
 とにかく、あの子は要チェックだ。
 そして、四日間にわたって行われた子供の部は、やはりというかなんというか、軟骨SCの優勝で終わった。
 未経験者の中にクラブチームが紛れているような感じで圧倒的だった。
 表彰式の後、俺は軟骨SCの例の猫系獣人の子に会いに行った。
「ちょっと聞きたいんだけど、あの走り方ってさ、わざと?
 っていうより、とある漫画をマネしてる?」
 なんて聞いていいかわからず、こんな聞き方になった。
 その子は追いかけてきた俺にびっくりしていたが、俺の言葉を聞いて目を輝かせた。
「もしかして、わかるの!?
 キミも前世の記憶がある人?
 しかも日本人?」
 もはや答えのような質問が返ってきた。
「俺はちょっと違って転生なんだ。
 君は前世の記憶がある系なんだね。
 それにしてもびっくりしたよ」
「それはオレもだって!
 スポーツってのがほぼないようなガイアで、急にサッカー大会開催のお知らせなんてあるもんだからビックリしたよ!
 大会をひらいた人は地球と関係ある人なのかなーとも思ってた!
 今の人生は家族に恵まれて幸せだけど、娯楽がないからなー。
 サッカーができるなんて夢みたいだよ!」
「あはは、そっかそっか。
 楽しんでもらえたなら何よりだよ。
 てか君すごく上手いね。
 あんなズラタンのような吸い付くようなトラップ、生で観たの初めてだよ」
「オレは前世では小中校ずっとサッカーやってたからね。
 プロにはなれなかったけど。
 知識があってイメージもできて、んで獣人の運動神経があるからね。
 地球のトップレベルの選手くらいのことならだいたいできそうだよ」
「マジかー……。
 やっぱこっちの人は身体能力すごいんだなぁ」
「まぁねー。
 そんな俺が子供の部に、しかもチームメイトも鍛えて出場するのはずるいかなとは思ったけど、父ちゃんと母ちゃんに楽させたいからね。
 心を鬼にして賞金をゲットしにいったよ!」
「両親のために賞金を……。
 なんてええ子なんや……!」
「あ、そろそろ行かないと親が心配しちゃう。
 もう行くね!
 また大会やってね!
 ばいばい!」
「あ、うん、ばいばーい!」
 猫系獣人の子は元気よく走っていった。
 元日本人と遭遇したってのに、なんだかあっさりとした感じだなぁ。
 まぁ、家族に恵まれて幸せって言ってたし、そんなもんか……。
 大会をひらけばまた出場してきそうだし、縁があればまた会うこともあるだろう。
 ていうか、あの子のプレーはまた観たい。
 絶対にまた大会をやろうと心に誓った。
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