【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、魔法薬の勉強をはじめたら留学先の皇子に求婚されました

楠結衣

文字の大きさ
4 / 14

4

しおりを挟む

 ◇

 
 アカデミーでは魔法薬の講義や実習、それからクラウト王国の歴史と文化を学ぶ。中でも、クラウト王族がドラゴンに変化できることにとても驚いた。

 育てた薬草から魔法薬を生成する手順を黒板から書き写しながら、目を細める。次からはもっと前に座ろうと決めて、眼鏡を外し目頭を軽く揉む。眼鏡を掛け直し、魔法薬の素材である薬草や道具に向き合った。

「よし……っ!」

 乳鉢ですりつぶした数種類の薬草を混ぜ合わせ、熱魔法と氷魔法で温めるのと冷やすのを繰り返して粉にする。秤で計量し風魔法を使い圧縮させ錠剤にすれば魔法薬の完成となる。
 すべての魔法薬を薬瓶に詰め終わり一息つくと、隣に座るレオナード様に声をかけられた。

「アイリーンできた?」
「はいっ! バッチリです!」

 上手くできた魔法薬が嬉しくて笑顔で見せると、レオナード様の手が伸びてきて私の頭にぽんっと置かれた。


「「…………っ!?」」


 私の肩が大きく跳ねて目を丸くすると、レオナード様も目を見開いて手を引っ込める。すぐに手が離れたのでホッとして視線を向ければ、片手で顔を覆ったレオナード様と目が合った。

「ああ──…ごめん。アイリーンがあまりにも嬉しそうに笑うから、可愛くて、つい手が伸びてしまった……ごめん」

「…………へ? えっと、あの、だ、だ、大丈夫です……っ!」

 レオナード様の言葉にじわじわと顔に熱が集まり火照ほてる。どうしていいか分からず動揺していると、わざとらしく咳払いをしたレオナード様が口をひらいた。
 

「アイリーン、そうだ、もしかして眼鏡の度数が合ってない?」
「えっ? っ、あっ! そ、そうなんです……っ! アカデミーにある魔法薬の本が面白くて、つい夜更けまで読んでいるので……視力が落ちたのかもしれませんっ!」

 レオナード様の気まずい空気を変えようとしてくれる優しさに全力で甘え、こくこくと頭を縦に振る。

「度数が合っていないのは困るよな。俺のお勧めの眼鏡店に連れていってあげるよ」
「えっ……? あの、お店を教えてもらえるだけでも……? レオナード様はお忙しいでしょうし……っ」

 なぜか話が違う方向に変わっていて、目を瞬かせた。

「いや、大丈夫だよ。俺も自分用にひとつ作りたいと思っていたからね。ちょうど薬草マーケットもあるし、案内してあげるよ」
「薬草マーケットの案内……?」
「うん。世界一と呼ばれるクラウト王国自慢の薬草マーケットの定番から穴場まで、俺なら自信を持って案内できるよ」

 ずっと行きたかった憧れの薬草マーケットに気持ちが大きく揺れ動く。でも、王太子のレオナード様と出掛けるのはハードルが高すぎて悩んでしまう。

「アイリーンは、他では見られない珍しい薬草見たくない?」
「見たいですっ!」

 私の頭の中から迷いがあっさり消え去る。

「それじゃあ、決まりね。一緒に薬草マーケットデートに出かけよう」

 レオナード様の言葉に、私は期待に胸を弾ませて大きくうなずいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

【完結】魔力の見えない公爵令嬢は、王国最強の魔術師でした

er
恋愛
「魔力がない」と婚約破棄された公爵令嬢リーナ。だが真実は逆だった――純粋魔力を持つ規格外の天才魔術師! 王立試験で元婚約者を圧倒し首席合格、宮廷魔術師団長すら降参させる。王宮を救う活躍で副団長に昇進、イケメン公爵様からの求愛も!? 一方、元婚約者は没落し後悔の日々……。見る目のなかった男たちへの完全勝利と、新たな恋の物語。

【完結】今更、好きだと言われても困ります……不仲な幼馴染が夫になりまして!

Rohdea
恋愛
──私の事を嫌いだと最初に言ったのはあなたなのに! 婚約者の王子からある日突然、婚約破棄をされてしまった、 侯爵令嬢のオリヴィア。 次の嫁ぎ先なんて絶対に見つからないと思っていたのに、何故かすぐに婚約の話が舞い込んで来て、 あれよあれよとそのまま結婚する事に…… しかし、なんとその結婚相手は、ある日を境に突然冷たくされ、そのまま疎遠になっていた不仲な幼馴染の侯爵令息ヒューズだった。 「俺はお前を愛してなどいない!」 「そんな事は昔から知っているわ!」 しかし、初夜でそう宣言したはずのヒューズの様子は何故かどんどんおかしくなっていく…… そして、婚約者だった王子の様子も……?

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

成功条件は、まさかの婚約破棄!?

たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」 王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。 王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、 それを聞いた彼女は……? ※他サイト様にも公開始めました!

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

処理中です...