爛々幽雅

堕天使ピエロ

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道標

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「皆さん、この人は私と故郷が同じです。敵意はなさそうですし、ここは見逃してあげませんか?」

「うむ。無害ならば良いだろう。突然の比例を詫びよう。済まなかった。では、これで。」

リーダー格と思われる男が頷き、俺に詫びを入れた。
頑丈な鎧の上からでも屈強な体つきであることが伺える。

「ちょっと待ってくれ。俺を仲間に入れてもらえないか? 邪魔になったら捨ててくれても構わない。だから、地上まで同行させて欲しい。」

俺の横を通り過ぎようとする男に慌てて声をかけ引き止めた。

「悪いが、それはできない提案だ。我々は封印の結界を修繕するために此処を訪れたのだ。これから最深部へ向かい、それから地上を目指す。食料も人数分しかない上に、道に迷ってしまってな。もちろん、地図は持っていたのだが魔獣同士の争いで地形が変わってしまったようでな。」

男は、そう言って苦笑いを浮かべる。

「なら、ちょうど良かった。俺は、この世界に来たタイミングで加護を授かったんだ。その加護のおかげで、この洞窟内の地図が手に取るように頭に浮かんでいる。俺が道案内をする代わりに、強い敵から守ってくれ。飯の心配はいらない。みんなが倒した魔獣でも食べるさ。」

「いいのではないですか? 道案内をしてもらえるなんてありがたい話です。」

「団長殿、私も異論はございませぬ。ご一緒してもよろしいのではなかろうか。」

サチオと老人が賛成してくれる。

「ああ、そうだな。貴様、名はオオツキと言ったな? 私はアストラル王国近衛騎士団所属、アールグラットだ。よろしく頼む。」

「先程は済まなかったのぉ。私はノブシゲと申す。ただの老骨じゃ。よろしくの。」

アールグラットに続いてノブシゲが自己紹介をしてくれる。

ノブシゲ・・・・・・日本人っぽいな

「実はノブシゲさん、ご先祖様が転生者なんだそうです。御先祖様は、かなりの剣術をお持ちだったとか。おとぎ話では剣聖と呼ばれています。今となっては分かりませんが、僕らと同じ日本の方かもしれませんね。」

俺の疑問にサチオが補足を入れてくれた。

「改めてまして、オオツキシノブです。日本で死んで、こっちに来ました。好きなアニメはワンビースです。よろしく。」

俺がペコりと頭を下げ、頭をあげると2人の少女が増えていた。

「ではでは次に、私達にも自己紹介させてくださいね! 私はティアロ、こっちが姉のティステナ姉様です。私達は、アストラル王国の影として大活躍してます! 影の姿を見れる機会って少ないんだよ? お兄さんツイてるね! 」
「ティステナです。よろしく。」

桃色の髪をツインテールにした小さくて明るい、影と言うよりは太陽のような少女がティアロ、お淑やかで落ち着いた髪色の少女がティステナのようだ。

「こちらこそよろしく。さっきまで気配を感じなかったけど、どこに居たの?」

率直な疑問を ぶつけてみる。

「私達は何かの影に隠れるのが得意なんです!アールグレットさんの影に隠れてたのであります! 」
「これは代々受け継がれてきた秘技“同化一体”によるものです。自分より小さなものにも隠れることが出来ますが、アールグリットさんのように大きな方には隠れやすいです。」

「だ! か! ら! 私はアールグラットだといつも言っているではないか・・・・・・私の影に隠れるのなら、いい加減名前を覚えたらどうだ。」

アールグラットはこの姉妹と長い付き合いなのだろうか? だとしたら気の毒な話だ。

「あ! そうだ! お兄さん、せっかくだから同化一体教えてあげましょうか? だってだって、お兄さんみたいに弱い人が戦闘中に突っ立ってたら真っ先に死んじゃいますよ? 守りながら戦うのも大変だし! 」
「ティアロ、さすがに秘技を教えるのは・・・・・・それに簡単には習得できないわよ? 私達だって何年も掛かったじゃない。」
「それもそっかー。じゃあお兄さん、一応コツだけ教えてあげるよ。時間ある時に練習してみたら? 」

妹の方がどんどんフランクになって来ている。なんか懐かれたかもしれない。

「それじゃあいくよ、意識を集中させて、スーってなったら、ヒューって風に乗る感じで、サーっと対象の影に入るの! 」

スっとティアロの姿が消える。
いやわからん。こいつ感覚で覚えるタイプだ。

《報告。マイスタースキル「同化一体」を取得しますか?》
《YES or NO》

叡智先輩スゲェっす。今の解説で分かったのかよ。
もちろんYESだ。

「うっし、じゃあ俺もやってみるぞ! そらっ」

試しに、隠れやすい事に定評のあるアールグラットの背中を借りてみる。

「嘘でしょ・・・・・・」
「お兄さんやるぅ!」

どうやら隠れられたようだ。

「どう? ちゃんとできてた?」

同化一体を解除し、ドヤ顔を必死に隠して尋ねてみる。

「完璧じゃったのぉ。まさか1回で身に付けてしまうとは。私も見習いたいもんじゃ。ホッホッホ。」

ノブシゲが孫の成長でも見守るかのように目を細めている。

「お前は、近い将来で魔王にでもなりそうだな。その時は、人間と友好的であってくれよ? 」

こう言ってアールグラットは笑っている。

いつぶりだろうか。楽しいと、ワクワクすると、生きていると感じられるのは。
ブラック企業時代には感じられなかった感覚だ。
これからたくさんの事を感じていこうと思う。
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