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人ならざる者
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叡智に呼びかけた直後、脳裏には不思議と洞窟内の地図が浮かんだ。どちらに行けばどこへ続くのかが手に取るように分かる。
洞窟を進むと、あちこちにクリスタルが生えている事に気がついた。非常に綺麗なものだ。
折角だし、ひとつ持って帰ろうか。これで指輪でも作ればモテそうではないか。
なあ叡智、この石の価値はどんなもんだ?
《解答。該当の魔鉱石は非常に高純度の魔素を取り込んでいるため、1gあたり銅貨1枚程度でしょう》
ごめん、聞き方が悪かった。
金貨1枚って日本円でどれくらい?
《解答。銅貨1枚は1万円に相当します。》
おお!沢山持って帰って大金持ちになろうじゃないか。
今手に持っている欠片だけでも100万円になりそうだ。
ところで、魔素ってなんだ? アニメとかだと魔獣が出す匂いみたいなやつだと記憶しているが。
《解答。その知識で間違いありません。》
つまり、つよーいモンスターが潜んでたりします?
《解答。100階に封印された大神龍アストラルが放つ強烈な魔素により多くの魔獣が引き寄せられ滞在しています。》
ですよね!そんな事かと思ったよ。
ところで、俺みたいなタダの人間が生きて地上に戻る方法はあるのだろか。折角前世の記憶をもって異世界ファンタジーに転生したのだ。美人なエルフを拝む前に死んでなるものか。
魔鉱石は帰りに拾う事にして、俺は最深部へと足を進める。
なあ叡智、そこにある花はなんだ?
道端に咲く美しい花に目が惹きつけられた。
《解答。該当の植物は薬草の一種「楊貴妃」です。搾り汁を水で薄めたものは回復薬として販売されています。》
回復薬になるのか。今後、いつ怪我を負うか分からない。採取して持っていこう。
俺は楊貴妃を手に取り、ポッケットにしまった。
最深部に進みつつ、楊貴妃を採取しながら道を進むと直ぐに両手と全てのポケットが埋まってしまった。
これだけ持っていれば、多少の怪我には安心だろう。
《警告。近づく複数の生命体を感知。推定階級はDです。》
ここに来て、最初にバトルか。推定階級ってなんだ? 俺とどっちが強い?
《解答。全ての生命体は能力に応じてSS~G-に振り分けられます。なお、現在の階級はGです。》
終わった。これは死んだかもしれん。
逃げるのは簡単だが、今の俺は一番下からひとつ上のGクラスだ。
恐らく、俺以下の魔物はこの階層には居ないだろう。そうなれば、逃げ回り動けなくなった所を殺されるのがオチだ。
話が通じる相手であれば、配下に入れてもらおう。
俺は腹を括り、道の中心に立って遭遇の時を待つ。
遠くから足音と話し声が聞こえる。
「この先に魔物の気配を感知しました。階級は低そうですが、戦闘に備えてください。」
「この階層に来て魔物と遭遇か。気配を弱く見せて我々が油断した隙を突いて殺す気かもしれぬ。全員武器をもて。」
「かしこまりました。」
人間の声だ。友好的に接すれば、仲間にしてもらえるかもしれない。
徐々に足音が近づき、ついに姿が見えた。
「あ、あのぉっと」
話し掛けようと一歩踏み出したタイミングで足元の石に足を取られて大きく前につんのめった。
それとほぼ同時に、頭のすぐ上を何か光るものが通り抜けた事を感じる。
「私の太刀筋を見切るとは。やはり貴様は只者ではあるまい? 」
刀を持つ老人が俺に向かい話しかけてくる。
出会い頭から殺しに来るなんて。もし石に躓かなければ今頃は仏さんだ。
「違う、待ってくれ。話をしよう。俺は人間だ! 」
「嘘をつくなよ。魔物が。貴様から溢れる魔素をどう説明するのじゃ?」
あ、そうか、そうだそうだった。俺死んでこの世界に来たんだったわ。たしかに今はヒトじゃないわ!
「あー確かに、その通り俺は人間じゃない。だが、聞いて欲しい。俺は、前の世界で人間だった。つまり前世が人間だ。死にたくないと強く願ったら、記憶をそのままに転生したんだ。それなのに、転生先はこんな洞窟で・・・・・・」
「なるほど? しかし、それを証明できるものはなかろう。」
「俺のこの格好が証拠にはならないか? こんな格好してる奴、この世界にも沢山いるのか? スーツ姿の奴が溢れるファンタジーの世界とか絶対に嫌だ。」
「スーツ・・・・・・ファンタジー・・・・・・すみません、ちょっといいですか? 」
俺と老人の会話に1人の青年が割って入る。
姿からして魔術師だろうか。
「私は、アストラル王国専属魔術師団のマツモトサチオです。6年前、魔術師団に召喚されて日本からこの世界に来ました。理由は違えど、もしかしたら貴方もと思いまして。お話を伺ってもいいですか? 」
話が通じそうな奴が来た!
嬉しい!これで生きる筋が見えたかも!
「ああ、俺の名前はオオツキシノブだ。ブラック企業で働いていたんだが、まさに不眠不休だった。それでレッドブルでも飲んで元気出そうと思ったんだが、死んじまった。」
「そうだったのですね。お気の毒に、ある意味、翼を授かったのですね」
うるせーよ。何が翼を授かるだ。
まあ良いか。コイツと仲良くなって仲間に入れてもらおうか。
洞窟を進むと、あちこちにクリスタルが生えている事に気がついた。非常に綺麗なものだ。
折角だし、ひとつ持って帰ろうか。これで指輪でも作ればモテそうではないか。
なあ叡智、この石の価値はどんなもんだ?
《解答。該当の魔鉱石は非常に高純度の魔素を取り込んでいるため、1gあたり銅貨1枚程度でしょう》
ごめん、聞き方が悪かった。
金貨1枚って日本円でどれくらい?
《解答。銅貨1枚は1万円に相当します。》
おお!沢山持って帰って大金持ちになろうじゃないか。
今手に持っている欠片だけでも100万円になりそうだ。
ところで、魔素ってなんだ? アニメとかだと魔獣が出す匂いみたいなやつだと記憶しているが。
《解答。その知識で間違いありません。》
つまり、つよーいモンスターが潜んでたりします?
《解答。100階に封印された大神龍アストラルが放つ強烈な魔素により多くの魔獣が引き寄せられ滞在しています。》
ですよね!そんな事かと思ったよ。
ところで、俺みたいなタダの人間が生きて地上に戻る方法はあるのだろか。折角前世の記憶をもって異世界ファンタジーに転生したのだ。美人なエルフを拝む前に死んでなるものか。
魔鉱石は帰りに拾う事にして、俺は最深部へと足を進める。
なあ叡智、そこにある花はなんだ?
道端に咲く美しい花に目が惹きつけられた。
《解答。該当の植物は薬草の一種「楊貴妃」です。搾り汁を水で薄めたものは回復薬として販売されています。》
回復薬になるのか。今後、いつ怪我を負うか分からない。採取して持っていこう。
俺は楊貴妃を手に取り、ポッケットにしまった。
最深部に進みつつ、楊貴妃を採取しながら道を進むと直ぐに両手と全てのポケットが埋まってしまった。
これだけ持っていれば、多少の怪我には安心だろう。
《警告。近づく複数の生命体を感知。推定階級はDです。》
ここに来て、最初にバトルか。推定階級ってなんだ? 俺とどっちが強い?
《解答。全ての生命体は能力に応じてSS~G-に振り分けられます。なお、現在の階級はGです。》
終わった。これは死んだかもしれん。
逃げるのは簡単だが、今の俺は一番下からひとつ上のGクラスだ。
恐らく、俺以下の魔物はこの階層には居ないだろう。そうなれば、逃げ回り動けなくなった所を殺されるのがオチだ。
話が通じる相手であれば、配下に入れてもらおう。
俺は腹を括り、道の中心に立って遭遇の時を待つ。
遠くから足音と話し声が聞こえる。
「この先に魔物の気配を感知しました。階級は低そうですが、戦闘に備えてください。」
「この階層に来て魔物と遭遇か。気配を弱く見せて我々が油断した隙を突いて殺す気かもしれぬ。全員武器をもて。」
「かしこまりました。」
人間の声だ。友好的に接すれば、仲間にしてもらえるかもしれない。
徐々に足音が近づき、ついに姿が見えた。
「あ、あのぉっと」
話し掛けようと一歩踏み出したタイミングで足元の石に足を取られて大きく前につんのめった。
それとほぼ同時に、頭のすぐ上を何か光るものが通り抜けた事を感じる。
「私の太刀筋を見切るとは。やはり貴様は只者ではあるまい? 」
刀を持つ老人が俺に向かい話しかけてくる。
出会い頭から殺しに来るなんて。もし石に躓かなければ今頃は仏さんだ。
「違う、待ってくれ。話をしよう。俺は人間だ! 」
「嘘をつくなよ。魔物が。貴様から溢れる魔素をどう説明するのじゃ?」
あ、そうか、そうだそうだった。俺死んでこの世界に来たんだったわ。たしかに今はヒトじゃないわ!
「あー確かに、その通り俺は人間じゃない。だが、聞いて欲しい。俺は、前の世界で人間だった。つまり前世が人間だ。死にたくないと強く願ったら、記憶をそのままに転生したんだ。それなのに、転生先はこんな洞窟で・・・・・・」
「なるほど? しかし、それを証明できるものはなかろう。」
「俺のこの格好が証拠にはならないか? こんな格好してる奴、この世界にも沢山いるのか? スーツ姿の奴が溢れるファンタジーの世界とか絶対に嫌だ。」
「スーツ・・・・・・ファンタジー・・・・・・すみません、ちょっといいですか? 」
俺と老人の会話に1人の青年が割って入る。
姿からして魔術師だろうか。
「私は、アストラル王国専属魔術師団のマツモトサチオです。6年前、魔術師団に召喚されて日本からこの世界に来ました。理由は違えど、もしかしたら貴方もと思いまして。お話を伺ってもいいですか? 」
話が通じそうな奴が来た!
嬉しい!これで生きる筋が見えたかも!
「ああ、俺の名前はオオツキシノブだ。ブラック企業で働いていたんだが、まさに不眠不休だった。それでレッドブルでも飲んで元気出そうと思ったんだが、死んじまった。」
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